転生したらネコムスメなんだけどの件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました! 五十六話です。






五十六話 ネコマンマ商会の暗殺者達

 

 

 グラブゲのアジト兼屋敷近くに、アネーロとイリアとメイム、トリアスが気配を隠し辺りと気配を同化させ、アジト兼屋敷から少し離れた所で、建物と建物の間の路地から腰を低くして様子を伺っていた。

 

 

「カヤ姉さん、遅いね」

「そうね。コントラバンド商会とアンソルスランに寄って来ると言ってたから、もう、そろそろ来るんじゃないかしらね」

 

 イリアがまだ来ないカヤを気にして口にだし、アネーロがそれに答えていると背後から人の来る気配を感じる。

 

 アネーロは低い姿勢から立つと、路地横の建物と建物の間に両手を横に広げ両側の壁に手を付くと、フッと息を吐き足だけで両側の壁をタッタッタッと蹴りながら、あっという間に三階建ての建物の屋根に上って行った。

 

 イリア達は完全に回りと気配を同化させ暗い路地の隅に腰を落とし、やって来た一人の男をやり過ごした。

 

 酔っぱらい男であった。かなり酒を飲んでるらしく陽気に唄を歌いながらふらつく足でイリア達の側を通り過ぎて行く。

 

 それを上から見ていたアネーロは(まいったわねぇ。私より気配を同化偽ることに()けてるなんて……ほんと、怖い子達ね。ふふ)軽く笑いが出たとこへ、いきなり背後に気配を感じ、バッと振り向くと――。

 

「にゃほー」カヤがいつの間にか背後に表れていた。

「カ! カヤ姉さ――むぐっぐぐ」

「こら。声がデカい、静かに」

 

 自分の知覚外からいきなり現れたカヤに少し動揺し、声が大きくなる所を口を塞がれ静かにと言われて、アネーロは小声で『だから、いきなり背後に表れるのはやめてくださいって、いつも言ってるじゃないですかぁー』との抗議の声にカヤは『フフー 修行が足りん! もっと仲間の気配を覚えないとね。ニャフ』と一蹴した。

 

 そう言った瞬間――ポンとアネーロの背中を押し、屋根から飛び降りて行く。

 

 不意打ちで背中を押され、飛び出す声を手で口を押え(何をするんですかあぁー!もう! このイタズラネコムスメー!!)とカヤを指差し、落ちながら心の中で文句をぶつけ、カヤはニヒヒと笑いながらふわりと地面に降り立ち、アネーロも壁に出てる窓の雨よけを経由しながらクッション代わりにし、鮮やかに降り立った。

 

『おお。流石アネーロ、鮮やかなもんだね!』

 

 パチパチ拍手しながら 小声で笑い言うとアネーロも小声で『何してくれるんですか! 死ぬかと思いましたよ!』 このカヤがやる不意打ち行為は、配下全員に行われていた。

 

 どんな状態、体勢からも突発的な事への対処能力を高める為、無作為に行っていたのだ。

 

 そこへメイムがカヤの前に来て、袂をチョイチョイと引っ張り「いかないの?」とカヤを見上げて言う。

 

「そだね。じゃあ、遊びに行こうか」

 

 と、腰に下げた皮袋から出した〝晒し首モモカ壱号さん〟を右手に下げ、メイム達にダミーの手枷を嵌めて、繋がった鎖をアネーロが持つ。

 

 そして、カヤはアネーロ達に転移する際の、転送対象者を大量の魔素から保護する結界を個別に展開してから、グラブゲのアジト兼屋敷前の表門に転移した。

 

 無機質な表情のカヤが門前に転移してきて、門番をしていた手下四人が一瞬ギョッとなるも、ボスから事情は告げられていたので、後ろにいるアネーロと鎖で繋がれたイリア達は見て門番の一人が手に持ったブロードソードをクイッとやり「付いて来い」そう言い、アネーロがカヤの背中を軽く押し、カヤ達は門番に付いて行く。

 

 歩きながらカヤは〝晒し首モモカ壱号さん〟に少し魔力を注ぐと、ケチャップで作ったダミー血液が、本物の血のような臭いと味に変質し、ポタポタと下に滴り落ち始め石畳の通路に血玉作って行った。

 

 この無駄に精巧に作られた〝晒し首モモカ壱号さん〟は、相当高度な『解析鑑定』を持つ者でなければ偽物だとは見破ることは不可能であった。

 

 流石はリムルである。

 

 グラブゲのアジト兼屋敷はかなり大きな屋敷で、横に長い三階建ての建物だった。

 

 二階、三階は手下の待機室や食堂、幹部の居室などがあり、一階がダートの私室兼執務室があり、他は豪華な浴場、幹部、ダートが使う会議室などあった。

 

 何故一階にダートの私室兼執務室があるのか――それは敵対組織に襲撃された時にすぐに逃げれるようにする為、三階にあった私室兼執務室を一階に移したのだ。

 見かけによらず、用心深く神経質なのである。

 

 そして地下には、奴隷女達の居室や、人身売買に掛ける女達を入れて置く地下牢が作られていた。

 

 門番に付いて行きながらカヤは『万能感知』で周辺を探りながら『思念伝達』でアネーロ達と会話をしていた。

 

『けっこうな数がいるねぇ。二百人くらいかな』

『組織から弾かれた者や厄介者など、手当たり次第に集めてましたからねえ』

『ふ~ん。ただ数集めれば、良いってもんじゃないのにねぇ。そんなの、すーぐ潰されて終わりじゃん。フヒヒ』

『確かに、そうですよね~。こっちにちょっかい出さずに、余所でやってくれですよ! 言い迷惑です!』

『アネーロに同感。ほんと頭にくるわ』

『だ、めなの。カヤ姉さんに手をだしたら、ダメなの』

『僕は、アルコを許さない。カヤ姉さんを蹴ったのは、絶対に許さない』

『お! ダートの私室兼執務室に付いたね。じゃあ、少し遊んでいこうか。ニヒヒヒ』

『『『『はい!』』』』

 

 私室兼執務室の前に付くと、門番がドアをノックして入り、すぐに出てきてカヤ達に

中に入るように言う。

 

 中に入るとダートが膝に奴隷女を座らせ、その横でアルコも同じように膝に奴隷女を座らせ、もう一人の奴隷女は幹部達に酒を注いで回っていた。

 

 私室兼執務室の広さは三十畳程の大きさがあり、奥に天幕付きのベッドや、高価な家具などが置かれていて、他にも魔獣の剥製や特質級のプレートメイルとグレートソードが飾られており、貴族の部屋を模した造りであった。

 

 丸いテーブルが二つあり、豪華な作りのテーブルにはダートとアルコ、もう一つのそれなりに豪華な作りのテーブルに側近の幹部達が七人座っていた。

 

 部屋に入って来たカヤを見るなり、ダートが下卑た嗤いで吐き捨てる。

 

「グワハハハ! どんな奴かと思えば、亜人のガキじゃねえか。上も腑抜けたものだなあ。そう思わねえか、アルコ!」

「まったくで、ボス」

「おい、クソ猫。その首を見せろ」

 

 ダートが見せろと言うとカヤは右手に持った〝晒し首モモカ壱号さん〟をアルコの足元に無造作に投げ転がし、奴隷女達はその光景にヒッと声を上げ立ち上がり、目を引きつらせる。

 

 ダートが顎をクイッとさせ、アルコは席を立ちモモカの首を掴み上げ、まじまじとみて頷くと「本物です。ボス」と告げる。

 

「ドゥワハハハハハ! よしよし、これをグレンダに差し出せば俺も、上部組織の幹部だ! 喜べお前ら、もっと贅沢をさせてやるぞ!!」

 

 喜びの笑顔を溢れさせ、ダートはアネーロが連れて来たイリア達に目を向ける。

 

「ガキどもは……女の子供は上玉だな、高く売れそうだ。男のガキは、〝呪言〟で縛り、暗殺者としてこき使ってやるか。グハハハ」

 

 幹部の一人に手下を呼んで、ガキどもを地下牢に入れて置けと命令し、やって来た手下二人の内一人にモモカの首を保存箱に入れるよう指示をする。

 

 手下がモモカの首を掴み上げたらいきなり目を開け「あらら、もう見ないの。ウフフ」と喋ったものだから驚き投げ捨てると、床には落ちず宙に浮いたまま、ケタケタと笑いだしていた。

 

「生きてやがるのか!」

 

 アルコがククリナイフを抜き構えると「おバカちゃんは、もう少しまってね」とダートの前まで漂い行き「さて。ダート・グラブゲ。あんたには、それ相応の報復が待ってるから、楽しみに待っててね~。ケケケケケ」そう告げ、首は天井近くまで浮き、いきなりパーーーンと破裂して紙吹雪をまき散らした。

 

 執務室を覆い尽くさんばかりの紙吹雪に、ダート達は呆然と降り注ぐ紙吹雪を見上げ、手下二人は驚き、転げる様に部屋から、逃げ出していた。

 

 しばらく天井を見上げていたダート達だが、ハッと我に返りカヤを見ると、カヤは腹を抱えて大笑いしていたのだ。

 

「ブハハハハハ! マヌケ面揃えて、なにして、ブハハハアッ、はらいたい~~~あほんだらどもの、顔がああああああああ!」

「カヤ姉さん。笑い過ぎ」

 

 アネーロがイリア達の手枷を外しながら、周りの幹部達、ダート、アルコに注意を向けながら、カヤに言う。

 

 そこへ、アルコが声を荒げカヤに言葉をぶつけて来た。

 

「テメエ! なんで支配されてねえんだ! おかしいだろうが!? ああ! 何しやがった!」

「んや? それはねぇ。そんなちんけな物じゃあ、あたしを支配なんて、むりなのよねえ~。そんなものすぐに抵抗(レジスト)してしまうんだよ~ わかった? ニヒヒヒ」

 

 笑いながらカヤが言ってるとダートが、もの凄い勢いで反論してきた。

 

「支配の宝珠だぞ! 魔王すら支配出来る代物なんだぞ! 魔王だぞ!? わかってるのか!! 只の亜人に何が出来るんだ!」

 

 そこまで言い切るとハァッハァッと息を切り、テーブルに置かれた酒を一気に呷った。

 

「言っとくけどね。亜人じゃなくてぇ、亜神なんだよ~」

「「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」」

 

 亜人ではなく亜神、その言葉にダート達は固まり、ようやくその回転の悪い頭でも状況が飲み込めて来た。

 

「ああ、そうそう。あたしに使った支配の宝珠は、とある方に渡して来たからこれは、レプリカなのよ」

 

 そう言い支配の宝珠を触るや、パーンとあっけなく砕け散ってしまった。

 その光景にダート達は絶句した。

 

 幹部の何人かは軽い錯乱状態に陥り、その一人が壁に飾られているブロードソードを手に取り、カヤに斬りかかって行った。

 

「うわああああああああ!」

 

 クイッと指で丸メガネを上げアネーロがカヤの前に立ち、振り降ろされる前にスッとその男の懐に入りブロードソードを持つ右手首を左手で掴む。

 

 すると、ジュウウッと肉の焼ける音が響き男の手首にアネーロの左手の爪が、ずぶずぶとめり込んでいった。

 

「ギャアアアア! 離せ離せ離せ! くそおおお、焼ける、手首がやけるうううう!」

 

 男の叫びを無視して右手の指先をポワッと光らせ、男の右腕の付け根と、左腕の付け根をスーッと撫で上げて男を軽く後ろに突き飛ばす。

 

 男はたたらを踏んで後ろに行き、ブロードソードを左手に持ち替え奇声を上げて今度はアネーロに斬りかかっていくが。

 

 「焼き斬れ」アネーロが指をパチンと鳴らし言うや、両腕の付け根をまるで導火線が巻き付けられたみたいにシュッと火花を上げ腕の付け根を一周すると同時に、両腕が焼き斬られ床に鈍い音を響かせ落ちた。

 

 炎系暗殺魔法『炎環斬(バーン・ザ・リッパー」)

 

 一度魔法を発動させ相手を撫でれば、その効力は術者が死ぬまで残り、生きている限り好きな時に発動できる、凶悪極まりない暗殺魔法であった。

 

 元、とある小国の天才宮廷魔導師で、どのような経緯で暗殺者になったのか……それは、誰も知らない。

 

 幹部の一人がアネーロを見て声を上げる。

 

「お前……炎爪(えんそう)の麗人か!?」

 

 そう声を上げた幹部の方に向き、サングラス状態の丸メガネから覗く目で幹部を見つめると、「ひいっ」と一声上げ目線を反らした。 

 

 両腕を失い悲鳴を上げその場で体を揺らす男を右廻し蹴り一閃で黙らし、倒れた男を見下ろす目は黒く染まったレンズの奥で、まるで魔人の如く妖しく光っていた。

 

 残る幹部連中は完全に戦意を失い、ダートも逃げる算段を始めていて、二階、三階にいる手下全員に通信水晶ですぐここに来るよう命令するも、二百近い手下達はこの部屋に入る事が出来なかったのだ。

 

 カヤがこの部屋に入る時に、〝幻隠〟の呪符をドアに張り付け、ダートが手下を呼んだのを見るや呪符を発動させていたので誰一人入り口のドアを認識できず、外の窓から入ろうと試みるも部屋全体が結界で覆われていて、為す術も無かったのである。

 

 そんな中アルコが、ユニークスキル『加速スル者(ハヤキモノ)』で隙を付きアネーロの首を落とさんとククリナイフを横に薙いだ――「ガハッ!」

 

 確かに首を落としたそう感じたのに、アルコの鳩尾(みぞおち)にアネーロの横蹴りが突き刺さり胸を抑えながら後ずさり

 

「な、なんで、見える、んだ」呻くように疑問の声を上げると「見えなくても、空間を移動するわけではないもの。どんなに見えない速度で動こうとも、動けば肌で大気の流れを感じて、どこから来るかわかるのよ。ふふ」

 

 クスリ嗤い言い、アルコはそれに「見えるわけがねえ! 偶然だ!」と叫び返し、またアネーロに襲い掛かろうとすると。

 

「やめときな」

 

 その、静かでいて覇気が籠った声にアルコは、一瞬で心臓を握りつぶされた感覚に見舞われ、自分の心臓がある部分を凝視した。

 

「あんた……何者なんだ」

 

 喉の奥から絞り出した言葉、に帰ってきた言葉は。

 

「あたしか? 〝覚醒魔王級〟と言われてたな。まあ、暴風竜ヴェルドラともガチで喧嘩できるぞ。ニャフフ」

「なあーっ……」

 

 〝覚醒魔王級〟と暴風竜とガチでやりあえる、その二つの言葉を聞いた時。その場にいる幹部達は泡を吹き白目を剥いて気絶してしまい、ダートは「いや、まじか? いやいや……俺はなんてもんに手を出したんだー」と頭を抱えテーブルに突っ伏し、アルコはこの世界に来てから、この世界の魔王と暴風竜には絶対に手を出すなと教えられていて、実際その恐ろしさの一端を東の帝国と魔国の戦争の話で聞いており、そいつらにだけは絶対に近寄らずにいようと決めていたのだが。

 

「そうだね~ アルコ。この子達と戦ってさ、勝てばこの件は無かったことにしてあげるよん。ニャンコは嘘言わない、ほんとだよ。フヒヒ」

 

 カヤからいきなりの提案に訝し気に尋ねる。

 

「本当なのか? 勝つと言うか、殺しても言いんですかね? ボス」

「いいよ、殺せるならね。ここに完全回復薬(フルポーション)が三本ある。あんたが死にかけてこれを使って三本無くなったら負け。一本でも残ったら、あんたの勝ちでいいよ」

「で、その約束を保証する者はいるのか?」

「うーん……魔王の知人いるから、連れて来ようか?(あいつが万が一勝ったら、ここら一帯吹き飛ばして、証拠隠滅してくれるわ! ニャホホホ)」

「いや、魔王は呼ぶな!」

 

 魔王と聞いて即座に断りを入れるアルコに、カヤは「約束は守るよ。あんたじゃあるまいし、たぶん。(まあ、あの子達に勝つのはあんたじゃ、無理だわ)」

 

「多分?」

「なんでもない!」

「いいぜ、その条件を吞もう」

 

 これ以上怒らせると、今言ってる条件も無くなる可能性が高いと踏んで、アルコはこの条件を吞んだ。

 

 完全に勝機が見えた状況に(俺は付いてる。この猫がお人よしの馬鹿で、よかったぜ)と密かにほくそ笑み、さっさとガキどもを殺して終わらせようと考える。

 

「カヤ姉さん、本当に大丈夫なんですか? イリア達」

「うん。封印してるスキル解除するし、多分負けるのはアルコくんだね」

「え? 封印? 何ですそれ?」

 

 カヤの言葉に聞き返すと、『思念伝達』が来てそれに『思考加速』が軽く三万倍掛けられていた。

 

『口が滑ったー テヘッ』

『いや、テヘッじゃないですし! なんですか封印って?』

『まだ、しばらくは秘密にしておきたかったんだけど、まあいいか。あの子達、エクストラスキルを持ってるんだよ』

『はあ? 何で? あの子達この世界の子供ですよね?』

『うん。あれよ、最後の枷外しの時にねぇ。なんでかさ、あの子達にエクストラスキルが付いてしまったんだよねぇ。たぶん――ゴニョ、ヤエの仕業だゴニョゴニョ』

『ヤ? なんです?』

『あ! なんでもない。そんなこんなでさ、エクストラスキル『身体強化・剛』って言うのが付いてしまってねぇ。これがさ、通常の『身体強化』のスキルの上位版に当たるみたいで、身体強化に加えて五感の強化に第六感まで強化されてるんだよー。子供でこれってさ、ヤバくない?』

『いやいや、何他人事みたいに何言ってんですか! カヤ姉さん』

 

 アネーロはつい先日のメイムとの訓練を思い出しあの強さで、もしこのエクストラスキルを使われてたら、私は勝てたのかと考えて背筋をブルっと震わせた。

 

『まあ、最初からこんな力使うと勘違いするでしょ? だから、使えない様に封印したの』

『封印ってできるんですか?』

『うん、ちょっと手間かかるけどねぇ。魔獣と遊ぶときには限定的に解除するんだけど、完全解除は今日が初めてよ?』

『いやいやいや、そこで首を(かし)げて疑問形にならないでください。カヤ姉さん!』

『ごめんごめん、ニヒヒ。アルコ位なら完全解除の慣らしにはちょうどいいかなあと、モモカも言ってたんだよ』

『モモカ姉さんがですか……。なら、大丈夫そうですね!』

『おい、ちょっとまて。なんでモモカなら良くて、あたしならダメなんだ! いい、わかった。もう、ここ吹き飛ばして帰る!!』

『ちょっと待ってください! カヤ姉さんがやったら、吹き飛ぶどころの騒ぎじゃ無くなるじゃないですか! 大惨事ですよ! 大惨事! (それって、何の罰ゲームですか~~~~!)』

『こんな愛らしい猫娘を、災害みたいに言うな! 怒るぞ!』

『わかりました、わかりました! 私が悪かったです! ほんとにカヤ姉さんが、本気出すのはやめて下さい! 帰りに吉田さんのお店で、ロールケーキ買ってあげますから』

『にゃ!? ほんとだな! 嘘つきはお尻ペンペンよ?』

『はいはい。終わったらテンペストに行って、お店の開店時間を待ちましょう。(ベゼット。あんたが言ったカヤ姉さんが子供みたいって言ったの、わかった気がするわ……)』

 

『ケ~キ! ケ~キ! ロ~ル、ケ~キ!』と浮かれながら一通りの説明をしてカヤは『思念伝達』と『思考加速』を切る。

 

 現実世界では、一秒すら時間が経っていなかった。 

 

 アルコに「ちょっと待ってろ」と言い、カヤがイリア達を呼び寄せ、目線を同じ位に腰を落とし告げていく。

 

「よし、これからスキルの封印を解くよ。いいかい、どんなに強力なスキルでも、スキルに使われるんじゃないよ。あんた達が使いこなすんだ。その為の技量は、磨いてきただろ?」

 

 優しくイリア達に語り掛け、三人は「はい」と返事を返す。

 

「スキル封印術式、完全解除。スキル封印、解」

 

 カヤがパンと短拍手を一つ叩くと、世界の言葉が響いてくる。

 

《告 スキル封印 解除しますか? YES/NO》

 

「「「はい」」」

 

《告 スキル封印 解除承認 確認しました。第一禁から第五禁までの封印術式を全て解除。エクストラスキル『身体強化・剛』完全解放します》

 

 エクストラスキルが解放された瞬間、イリア達の纏う気が変わった。

 そして、カヤが纏う赤い魔素粒子にも似た物が一瞬三人の足元から立ち昇り、霧散していく。

 

 内から溢れる力にイリア、メイム、トリアスは両拳を握ったり開いたりしながら、内から強化されていく自分の身体を確かめていく。 

 

(何だ……一瞬ガキ共の雰囲気が変わった……本当にガキなのか? まぁ、どうでもいいか。さっさと首を斬り落として、終わるか) 

 

 イリア達の雰囲気が変わったのを見て警戒するも、しょせん子供だと高を括ってしまう。

 

「さてと、誰が最初にいくのかにゃ?」

「僕がいく」

 

 トリアスが最初に名乗りを上げ、イリア、メイムはそれに頷き、後ろに下がりアネーロの側で立ち止まる。

 

 トリアスは最近身長の伸びが著しく、それに加え日々の訓練と称した遊びで、運動量が増え体の成長を促し、身長が四センチ伸びて百四十四センチの体重三十八キロになっていた。

 

 片やアルコは身長百七十六センチの少し痩せ気味に見えるが、絞られた筋肉で着痩せするタイプで黒皮のロングパンツにブーツ、上はグレーのタンクトップを着て、やはり黒革のジャケットを着ていた。

 

 トリアスはカヤとほぼ同じ恰好で、色だけ違う黒の膝丈の小袖に黒の脚絆を付け旅草鞋を模した、魔獣の皮で作った旅草鞋に下は黒のハーフパンツだった。

 

 イリアとメイムは下はハーフスパッツで後は同じで、三人の着る着物はシュナの工房で作られた特製であった。

 

 アネーロ達が着ているミリタリーベスト等も同じである。

 

 ネコマンマ商会の戦闘服を決める時にイリア達は、カヤ、モモカと同じ服がいいと頑として譲らず、イリア達はこの服装になったのだ。

 

 カヤがテーブルに突っ伏し気絶してる幹部達を摘まみ上げて、端に投げ捨てて行きテーブルを端に寄せ椅子を持って来て座り、呆けているダートに端に行けと手を振り、ダートは慌ててテーブルをガガッと引き、テーブルに乗った料理の皿や酒の瓶がカチャカチャ音を立て揺れていた。 

 

 端に寄せ、カヤを見ると座れと言う様に言われ、大人しく椅子に座る。

 

 アネーロ達もカヤのいるテーブルに座っていき、イリアは背中に背負っていた縦に長い布袋を下ろし、テーブルに立掛けた。

 

 真ん中にちょうど良い位のスペースが空き、カヤは奴隷女三人を呼び、ダートのテーブルにある酒と料理を持ってくるように言い、完全に観戦モードになっていた。

 

 対峙するトリアスと、アルコ。

 

「俺はなあ、人の首を斬るのがたまらなく好きなんだよな~ 熱したバターナイフでスーーッと斬るような感触が、もうたまらなく興奮するんだよおぉぉ。お前の首は、どんな感触なんだろうなあぁぁ~」

 

 狂気に染まった目でトリアスに言葉を吐き捨て、右手に持ったククリナイフの刃を長い舌でベローッと舐め上げ狂気の表情を曝け出していく。

 

 普通の子供ならこの時点で、アルコの狂気に呑み込まれ何もできずに、命を狩られるだろう。

 

 しかし。

 

 闇を受け入れ、闇を愛すトリアス達は、普通の子供ではない。

 

「アルコ。僕は、カヤ姉さんを蹴ったお前を、絶対に許さない」

 

 言いながら、両手を後ろに回し右手にテンペスト製のダガーナイフ、左手にカランビットナイフを持ち、ダガーナイフの切っ先をアルコに向け、カランビットナイフを胸の少し下辺りに構える。

 

「ガキが俺様の狂気に耐えられるかよ! 泣き喚きながら死ねやあぁー!」

 

 殺人をする事への喜びと狂気、それを剥き出しにトリアスにぶつけていった。 

 そんな狂気を平然と受け流し、トリアスは内なる闇を解放していく。

 

 闇は光に、光は闇に、僕は闇すらも喰らうもの

 

 僕は 闇夜よりいづる 

 

 無慈悲なる もの 

 

 パキッ。

 

 大気を覆う異質な気が、アルコに纏わりついていく

 

「な、何だこれは!?」

 

 狂気を喰らう闇がトリアスから解放され、アルコの狂気に喰らい付いていき、アルコは言い様の無い感覚に陥り、驚愕の目でトリアスを見ていた。

 

 

 

 

 




 五十六話を読んで頂き、ありがとうございます!

 次回の更新も、ぜひよろしくお願いします!






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