転生したらネコムスメなんだけどの件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました! 五十八話です。


 今回の作中に出てくる〝魔蟲〟はWeb版の外伝に出ていますので、タグが一つ増えました。

 〝Web版一部参照〟←こんな感じです。


五十八話 アホの子壱号と弐号

 

 

 アルコとの三本勝負に決着が着いた為、カヤが席を立ちダートの座るテーブルまで行き、前に立つ。

 

 

「さて、ダ~ト。よくもあたし達に、喧嘩売ってくれたよなぁ~。どうしてくれようか、ねぇ~。お前さあ、あんま舐めてると、魂ごと消し炭にしちゃうよ?」

 

 薄笑いを浮かべ、尻尾をゆらゆら揺らしながら微弱な妖気(オーラ)を漂わせていく。

 

「いえ、あの、その、すいませんでした! ほんとぉーーに申し訳ありませんでしたああああ!」

 

 ガッガガアッと音を立て椅子にすわったまま後ずさり、謝罪の言葉を叫んでいくダート。

 

 そこにはいつものカヤはいなく、漆黒の闇から這い出て来たような薄笑いと、空気すら喰らわんと耳に響くカヤの声。

 

 ダートの目に映るカヤは、この世の者とは思えない何かにしか見えてなかった。

 

「おい、手下は全員下にいるか? 二階、三階にいると死んでしまうぞ。皆、一階にいろと言いな」

 

 カヤの有無を言わせない言葉に、ダートは激しく何度も頷き、通信水晶球で絶対上に上がるなと手下達に命じた。

 

 すると口の中に小さい光球を作り出し、一気に魔力圧縮を始める。

 更に光球に集めた魔力を圧縮していく――魔力超圧縮。

 

 青白い輝きを放ちながら、コオオォォッと唸るような音が空気を振るわせていき、その光景にダートは腰を抜かしたままその場から動けず、アネーロは今まで感じた事も無い魔力と魔素量(エネルギー)に完全に目が点になり、イリア達は逆に何が起こるんだろうと、わくわくした目でカヤを見ていた。

 

 尻尾もわさわさと揺れながら放電現象を見せ始め、「最近、持ち技の一つがねぇ、一つ上の段階に至ったんだよぉ。見せてやんよ」と、静かに言い上を向くと。

 

「うに゛ゃあ゛あ゛あ゛あ゛ああああああああ!」

 

 口の中に形成した魔力球から、青白く輝く一筋の光線が放たれる。

 

 今まで変わらない熱放射光線に見えたが、青白い熱光線に放電現象が纏わり付いて無く、余分な魔力を漏らさず、高精度に超圧縮された超熱放射光線となっていた。

 

 〝荒暴砲口(フィアス・ブラスター)熱波咆哮(ヒートロア)の上位版である。

 

 一瞬で石造りの二階、三階を貫き蒸発させ大穴を開けて、更に『重力支配』で 口元に超重力による光の屈折を起こし、超熱放射光線の放射角を変えて、長方形の建物を、超熱放射光線がぐるりと舐める様に回って行った。

 

 ジャウ、ジャウッと激しい火花を散らし蒸発していく二階、三階。

 

 膨大な熱量の為、一階のカヤ達が居る部屋と周囲は揺らめく陽炎に包まれ、カヤが張った『多次元結界』が無ければ、そこに居るもの全て一瞬で蒸発していただろう。 

 

 カヤの放った超熱放射光線が、徐々に糸を引く様に消えて行き、超熱放射光線に照らされていた周辺も闇を取り戻していき、体内に溜まった超高熱を『重力支配』で上に向かって吐き出し、真っ赤に燃える炎を見せながら噴煙が立ち昇っていく。

 

 綺麗に二階、三階を蒸発させられた屋敷は、天井の無くなった一階から見える星々が瞬いて見え、一階壁に取り付けられた魔力ランプがカヤ達を照らしていた。

 

 その時――その膨大な魔力を感知している者が、二人いた。

 

「チッ……やっぱりか。リムルの奴、何か隠してるな。どんな魔物がいるんだ――あいつの所に。最初はドワルゴンで、今度はイングラシアか、あの辺りはあいつの国と関わり合いがあるから、間違いなくあいつの関与した魔物の仕業だな。こんな時に、厄介毎増やしやがって」

 

「む? またなのか。この凄まじく強い魔力と、ワタシに近い魔素量(エネルギー)を持つ者は……。いったい、誰なのだ?」

 

 ドワルゴン、そしてここイングラシア王国、カヤの放った超熱放射光線で、一番気付かれてはいけない二人に、とうとう存在を気付かれてしまっていたのだ。

 

 

「モモカ姉さん。あれ、カヤ姉さんですか?」

 

 天に昇りながら消えていく熱放射光線を指差し、ディーナがモモカに問う。

 

「そうよ。あのバカ、やり過ぎるなと言ったのに、まったく」

 

 はーっと溜息を付きながら言い放ち、グラブゲの屋敷の表門を開けると、広大な庭に屋敷から出て来ていた手下達二百人がいた。

 

 モモカ達三人は、真ん中モモカ、右にザーバ、左にディーナと並び、悠然と歩いていき、庭の中央辺りで手下達に気付かれ、次々とモモカ達の所へ集まって来た。

 

 ザーバは目深に被ったローブのフードを下ろし、綺麗に結い上げた銀髪を晒した。

 

「やれやれ。六十にもなって荒事なんて、ほんと人使いが荒いもんだよ。フエッフエッ」

 

 いつもの魔導師が着るローブを着て、どこかしか嬉しそうに軽い笑いを浮かべた。

 ローブ姿のザーバは、ディーナ達が着る戦闘服に「そんなもん、恥ずかしくて着れるかい!」と一蹴したのであった。

 

 老獪な魔導師ザーバ――サイファー最初期のメンバーであり、初代サイファーのボスでもあったザーバ。

 

 十年前、先代にボスの座を譲り、先代が依頼中に死んでサイファー最初期のメンバーはザーバだけになってしまった。

 

 それで、次のボスにベゼットを指名してから、蓄えた財産でのんびり組織の補佐をやりつつ、悠々自適に暮らしていたのだが……。

 

 そこへ、突如として現れた〝三賢酔(リエガ)〟、そしてサイファーを乗っ取りに現れたカヤとモモカによって、悠々自適な暮らしが崩壊してしまい、今に至るのだが。

 

 カヤとモモカによる、新組織・ネコマンマ商会での暮らしも、これはこれでありと何故か納得をしてしまい、現役に復帰したのである。 

 

「面倒だねぇ」

 

 そう言うとザーバは軽く右手を振ると、走り集まって来る手下数人を纏めて吹き飛ばした。

 

 空間干渉系魔法で、手下達の前にある空間を圧縮して飛ばしたのである。

 

「ほんと、面倒よねぇ」

 

 ディーナも面倒臭そうに言い、左手を振ると同じく走り集まっていた手下達数人を、足元の空間を圧縮してぶつけ、吹き飛ばしていた。

 

 同じく空間操作系魔法を使い、ザーバの弟子でもあるディーナはAランク相当の実力者であり、その師ザーバは、A+ランクの実力者であった。

 

 しかし、冒険者ランクに照らし合わせればの話であり、実際は同じAクラスの冒険者よりディーナは強く、ザーバ達も同様である。

 

 そんな猛者の集まりでも有ったからこそ、サイファーは〝三賢酔(リエガ)〟に反旗を翻したのだが、目を付けられた相手が悪かったのだ。

 

 そんなサイファーもネコマンマ商会となり、カヤとモモカの影響を少なからずとも受け、ベゼット達は今ままで以上に実力が上がりつつあった。

 

「仕方ないわねぇ~ 纏めて片付けましょうか」 

 

 モモカが指の間に呪符を具現化させると、わらわらと集まる手下集団目掛け投げ、集団の真ん中で呪符が舞い散り、桜の花弁(はなびら)に似た形態で、辺り一面を(おびただ)しい数の呪符花弁が覆い尽くした。

 

 手下達は目の前に広がり舞う、花弁みたいな呪符に目を奪われ、皆が一斉に動きを止めた。

 

 そこへ、聞こえる言霊(ことだま)

 

 闇に映えるは はかなくも 咲くも舞い散る 血桜よ

 

 散り斬り裂きなさい 〝徒桜(あだざくら)

 

 パンッと鳴り響く短拍手。

 

 ふわりふわり漂っていた呪符の花弁が、短拍手と共に手下達に襲い掛かり、超高速で動く花弁呪符に斬り刻まれてゆく。

 

 大勢の悲鳴が庭に木霊し、血飛沫(ちしぶき)を上げて倒れて行く人の群れ、それはまるで巨大な血をまき散らす噴水の様でもあった。

 

 モモカの開発した新呪符術 〝広域散斬(さんざん)呪符・〝徒桜(あだざくら)〟である。

 

「モモカ姉さん。殺したのかえ?」

「加減したから、死にゃしないわよ。たぶん、ね。フフッ」

「そうかい。フェッフェッ」

 

 ザーバの問い掛けに、コロコロと笑い返すモモカは、「さあ、いきましょうか」とカヤ達がいるダートの執務室へと歩を進めて行く。

 

 庭に残るは、血塗(ちまみ)れで倒れてる二百人の手下達だけであった。

 

 ダートの執務室に付くと、中からカヤの声が聞こえて来た。

 

「どうしてくれようかねぇ。うーーん……首だけになって、十年くらい生きてみる?」

「ひぃいいいいいい! 御助けをおおおお! もう二度とあなた様には手を出しません!! 何卒、お慈悲をおおおおおお!!」

 

 床に這いつくばりながら涙を流し懇願するダートに、カヤは立ったままどんな目に合わせようかと楽し気に口端を上げ、笑みを浮かべる。

 

 そこへ、モモカ達が執務室にやって来た。

 

「ん? 遅かったねぇ。モモカ達、なにしてたの? さぼり? ニャフッ」

「ちょっと、野暮用をね。フフ」

「やれやれ。もう、終わったのかい。つまらないね~ フェッフェッフェッ」

「ザーバ。これどつく? いいよ、あたしの代わりにどついても。ニャフフ」

「よしておくれよ。年寄りに何させるんだい、まったくカヤ姉さんは。フェッフェッ」

「おや。アネーロ、なに寛いでいるんだい? さぼりか? ハハッ」

「ほとんど、出る幕なしよ。あんたこそ遅かったじゃない。さぼり? ふふ」

 

 入って来たモモカ達に、カヤ、アネーロが軽口を叩き合い、ダートが床に押し当てていた顔を上げ、不可思議そうにカヤ達を見ていた。

 

 完全に戦意が削がれ、床に横たわったまま抜け殻の様なアルコの前へモモカが立ち、見下ろしながら凍てつくような声で言葉を吐く。

 

「アルコ。ボロボロじゃない、あれだけイキっておいて、なんなのその様は?」

「ふっ。殺せばいいだろう……もう、逆らう気も、何も起きねえよ。殺せよ」

「殺す? あんた、カヤに手を出して死ぬだけで済むと、思うのかしら?」

「拷問でもするか? 好きにしろや。その前に大暴れしてやるよ。ぐくくく」

「フフッ、拷問? それがお望み? 死んだ方がマシと思える苦痛を、プレゼントしてあげるわよ」

「な、なんだ、それは……さっさと殺さねえと、お前の大事にしてる者(・・・・・・・)を、殺しにいくぞ。ぐくく」

 

 一思いに殺してもらおうとモモカを煽ってみるが、最後に言った言葉がモモカの逆鱗に触れてしまった。

 

 モモカに、絶対に言ってはいけない言葉。

 

 モモカの瞳孔が縦にきゅんと細くなり仄かに目が金色に輝き始め、そこから一気に瞳孔が大きく丸くなり、凄まじい妖気(オーラ)がモモカから漏れ出てくる。

 

 漏れ出た妖気に触れたダートは「ひぎっ」と声を上げ白目を剥き、生温かい物を漏らしながらその場に崩れ落ちて気絶してしまい、アルコはモモカを見上げながら歯をガチガチと震わせていた。

 

 ザーバ達もこれほどまでの怒りと妖気を出すモモカをまじかで見たのは初めてで、今まで経験したことの無い感覚に指一本動かせなくなっていた。

 

 イリア達はカヤが来て三人共纏める様に抱きしめて、モモカが発する妖気の影響を軽減していた。

 

「ゆ、ゆ、許し、てく、だ、さい。俺、は、二度と、あんたらの、前には、あらわれま――」

「だまれ。しゃべるな。わたしの大事な者に手を出したらどうなるか、教えてあげるわ」

 

 圧倒的な殺意と妖気にアルコは両手で頭を抱え、「ゆるしてくれ、ゆるしてくれ」を力なく繰り返すだけであったが、モモカは口端を少し上げ嗤い、左手を軽く開き前に伸ばしていく。

 

 すると真下に小さな魔法陣が現れ、ぽうっと赤く光っていった。

 

「アルコ。ここに来る前にわたしの知り合いの悪魔族から、教えて貰ったんだけど。魔界にね、魔蟲がいるのよ。それは、とても面白い魔蟲がね。その魔蟲はね、魔人、魔獣、動物が餌なの。もちろん人間もね。でもね、この魔蟲の面白いところは、食べた対象を植物に変えてしまう事なのよ。ねえ、面白いでしょ? 食べられた部分が樹皮に変質していくの、そして生きた魔木と化すのよ。ああ、大丈夫、脳は食べないらしいから死ぬことはないの。安心してね。フフフ」

「ま、魔蟲?……」

 

 モモカの言葉がアルコの耳を刺し貫く様に響き、とても優しく淡々と言ってるモモカの声が、アルコの心を蝕むように覆い尽くしていく。

 

 恐怖、この世界に来て初めて目にした、抗う事すら許さない恐怖を、放つ者。

 

 その恐怖にアルコは立ち上がることも出来ずに、這って壁際迄行くと膝を抱えて丸くなり怯え、声に成らない声で呻くだけであった。

 

「何を怯えてるのかしら? これは初歩の〝魔蟲召喚〟なの。十年位で勘弁してあげようかと思ったけど、百年程生きた魔木になりなさいな。樹木族(トレント)は知ってるわよね? あんな感じかな。そうそう、この魔蟲はね、魔樹蟲(マジュジュ)と言うの。あんたを食べる時に、二種類の分泌液を出すんだけども、一つは食べた部分を樹皮に変える分泌液なの。で、二つ目が、快楽物質なのよ。この快楽物質のお陰であんたは、狂う事も出来ずに生きた魔木になるわけ。大丈夫よ~ 魔木になって百年間正気を保てるよう精神保護の術式を、あんたの魂に刻んであげるわ。ねえ、面白いでしょう? ウフフフ、アハハハハ」

 

 モモカの投げた一枚の呪符はアルコの胸辺りで掻き消えると、精神を保護する術式が魂ごと心核を包み込んでいく。

 

 これで、なにがあっても正気を保ったままアルコは百年間の間、精神が狂う事も出来なくなってしまった。

 

「ぎゃあああああああ!」アルコの鼓膜を裂くほどの激しい悲鳴が上がり、それを合図に〝魔蟲召喚〟が完成し、モモカの袂からムカデに酷似した多足蟲がぞぞぞと湧き出して、床にボトボトと落ちて行き、アルコに向かって群がり始める。

 

 そしてアルコは、あっという間に魔樹蟲の群れに覆われてしまう。

 

「痛い! 痛い! 痛い! 助けて! 許して! 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だああああああああああ!!」

 

 体中の肉を喰われ、喰われた部分が徐々に樹皮化していく、アルコ。

 

 カヤが「あんまり、見ちゃダメ。あんたらには、まだ刺激が強すぎるからね」と抱き抱えたまま言うと、虫の苦手なイリアはカヤにしがみ付くように顔を伏せ、トリアスは(僕は、虫そんなに怖くないのにな)と思いながらも一応見ない様にして、虫の平気なメイムはカヤの腕の隙間から覗き見していた。

 

 アルコが魔樹蟲に喰われてる間、モモカは庭に倒れてる手下数人にハイポ―ションを振り掛け、その数人に個人個人が装備しているポーションを使って失血死しないよう命じると、回復した手下数人は恐怖の目でモモカを見て震えながら頷き、慌ててその作業に取り掛かって行った。

 

 執務室ではカヤが不可視の結界でアルコを覆い、奴隷の女性達に話し掛けていた。

 

「あんたら、買われて長いの?」

 

 この問いに三人の奴隷女性が、おずおずと答える。

 

「十六の時にここに売られて来ました。名前はシプカです。歳は、十八になります」

「私もシプカと同じ十八才、です。名はヴィカと、言います」

「私は……ステアと言います。歳は二人と同じです。私達は同じ辺境の村で育ち、十六の時に、山賊に村を襲われました。その時に拉致されて、人買いに売られ、奴隷としてここに買われて来たんです」

 

 イリア達が座っていた席にはステア達が座っていて、カヤに問われたことを答えてから、いきなりテーブルに突っ伏してワアッと泣き出してしまった。

 

 それに釣られてシプカ、ヴィカも顔を両手で覆い泣き出してしまう。

 

「気が済むまで泣くといいよ。とりあえず、これはもう要らないね」

 

 カヤはそう言い、ステア達に向かって三回軽く人差し指を振ると、カチリと小さな音が響き、ステア達が嵌められていた奴隷制約用の首輪がするりと首から外れ落ちた。

 

 首輪が外れた首を三人は何で? と言う様に撫でて、カヤを涙でクシャクシャになった顔で見た。

 

「どうして? また、別の所に売られるのですか? 貴方様の所で、買っては頂けないのでしょうか?」

 

 何故という疑問をシプカが、恐る恐る聞いてみた。

 

「ん? あたしの組織では奴隷はいらないしぃ。そうだねぇ……。三人共生まれ育った村に帰る?」

「村は、もう、ありません」

「あらら~ そうなんだ。う~ん、そうだ! ねえ、あんたら魔国に住んでみない? そこなら仕事もあるし、人間も魔物も一緒に協力して働いてるんだけどぉ。どうかな?」

 

 ステア達はお互いに顔を見合わせ、カヤの提案を考慮するも自分達が元奴隷で、もしそれが周囲にバレた時にどういった仕打ちに会うか考えると、返事が出来ずにいた。

 

 ステア達がダート達から受けた二年間の仕打ちは、普通に暮らしてる者からは想像もできない悲惨なものであり、それが故全ての人間に恐怖し、自分達の人生を諦めていたのだ。

 

(この娘達の目……。完全に生きる事を諦めた、目だ。人間に対する極度の恐怖に飲まれ、諦めると言う覚悟。生殺与奪権を他者に握られ、一片の自由すら無い日々を送れば、こうなるよねぇ)

 

 三人の娘達を見てカヤはふと戦国時代の事を思い出し、乱世の世に生きてきた者達の中にも、こう言う目をした者がいたなぁと思い耽ってると、そこへヴィカが重々しく口を開いてきた。

 

「あのぉ、不躾で申し訳ないんですけど。私達をあなた様の組織に、置いては頂けないでしょう、か」

「だめ。せっかく掴んだ運をさ、自分から手放してどうすんの? こんな、運はもう二度と来ないんだよ? ダートのあほんだらが、あたし達に喧嘩売ったお陰で、今のあんたらがあるんだよ。あんたら人は殺せるのかい? 恨みもない人を殺せる? あたしの組織に入ると言う事は、そう言う事なんだ。一度入れば、二度と抜ける事は出来ないよ? 娼館の方なら、ある程度働いて引退って手もあるけども。悪いけど、あんたらは娼館では使わない」

「それは……」

 

 そこまで言い、グラスに入ったワインを飲み干すと、カヤの後ろに立っていたイリアが空になったグラスにワインを注ぎながら少し心配そうな目でカヤを見て、同じく後ろに立っていたトリアスも同じような目で見ていて、彼女達の事が気になっていたみたいだった。

 

 ヴィカは人が殺せる? と問われ、俯き言葉に詰まり、他の二人も俯いたままであった。

 

 そんな三人を見て、カヤは猫耳をポリポリ搔きながら、少し思案に耽る。

 

(この子達の極度の人間怖いは見て分かってたけども、ちと、厄介だよねぇ。人間嫌いのあたしが言うのもなんだけど、あたしの組織も人間ばかりだしなぁ。まぁ、最近は一部の人間位はいいかなと思う自分はいるんだけども。それにしてもこの娘達の覚悟は、諦めの感情に支配されてるからなぁ。いつ死んでもいいと言う覚悟なんだよねぇ。それに気付かないと、平気で命を投げ出すもんねぇ。そんなの、いらんし! 虐げられた日々が当たり前になってるから、あたしの組織に来れば前よりマシという言う考えが透けて見えるんだよね。まずそれを自分達で取り除かないと、いつまで経っても奴隷は奴隷なんだよね。はぁー ミョルマイルさんに頼んで、リグルド達に預けてみようかな。うん、そうしよう)

 

 思案を止めると、おもむろにカヤが口を開く。

 

「じゃあさ。魔国で魔物達とだけ、一緒に仕事できるように取り計ってあげるから、それでやってみな。それが嫌なら、また別の所に売るしかないよ?」

 

 売ると言った言葉に三人は体をビクッとさせ、カヤの言った提案に黙って頷き受け入れた。

 

 カヤ達がそんな話をしている最中、メイムだけはアルコに張られた結界の前にしゃがみ込み、中の見えない結界を拳でコンコンと叩いてみたり、耳を当てて中の音を聞こうとしたりして、ディーナに「そこは駄目だよ。離れな」と言われるも「いい、の。ちょっと、おしらべ中、なの」と動かず。

 

 そんなメイムを見て、思わずディーナは苦笑いを浮かべザーバを見てる。

 またザーバも、やれやれと言った感じで肩を竦めていた。

 

 はにかみ屋さんなのに、変に肝の座った子なのである。

 

 そうしてる内にモモカが執務室へ戻って来て、メイムをディーナの所まで下がらせると、カヤの張った結界を解除し、魔樹蟲の群れを魔界に送還して召喚魔法を解除した。

 

「痛い……体中が……痛い……痛い……」

 

 魔樹蟲が魔界に送還された後には、丸太にも似た生きた魔木と化したアルコが床に横たわっていた。

 

 両腕に当たる部分は左右に枝みたいに伸びており、木の真ん中上辺りに目と鼻口があって、アルコの面影を残していた。

 

 ポロポロと涙を流しながら、痛い、痛い、と泣く姿はもはや哀れでしかなかった。

 

 それを見たメイムが興奮しながら。

 

「はわぁ。摩訶不思議、せいぶつ、なの!」

 

 と、驚きの声を上げる。

 

 そこへ、カヤが土を入れた大きな鉢植えを抱え持って来てアルコの前にドスンと置くと、アルコを抱え鉢植えに突き刺した。

 

「植林完了! ウヒャヒャヒャ」

 

 そう言うと、大声で笑い始めた。

 

 更にポロポロと泣くアルコに、カヤが嬉しそうにのたまう。

 

「木が、木が、木が泣いてるぅー。メソメソする魔木、アルコくん! ドヒャヒャヒャ! メソメソする木、略してメソキ! メソキ……。ドゥワッハハハハハハ!!」

 

 腹を抱え床をドンドコ叩きながら大笑いするカヤに、グラブゲに処分を言い渡しに部下を二人引き連れて来たグレンダが、執務室に入るなり目を丸くしてカヤを見た。

 

「あー 取り込み中でしたかい?」

 

 と、モモカに言うと。

 

「あら、ごめんなさいね。この子は放っておいていいわよ」

 

 とモモカは、グレンダの相手をする。

 

 グレンダの部下がダートを起こし、グレンダが来ていることを確認したダートは「何故、ボスが直々に……」と、すぐさま跪き、グレンダが処分の内容を告げるのを黙って聞くしかなかった。。

 

「ダート。上層部の通達を無視して、勝手にネコマンマ商会に仕掛けた事への処分を言い渡す! まず、傘下組織二つ、一部財産等はネコマンマ商会へ迷惑料として譲渡。そして、グラブゲの解体、以上で今回の騒動の始末を付ける! あんたは、〝三賢酔(リエガ)〟アジトで下働きからやり直しな!」

「はい……謹んで、お受け、致します」

「これで、よろしいか? ネコマンマ商会のボス」

「ええ、よくてよ」

 

 告げられた瞬間、その場に崩れ落ちる様にうな垂れ、訳の分からない何かをブツブツと口にするだけであった。

 

 すると、ひとしきり笑い終えたカヤが鉢植えを抱えてグレンダの所へ持って来て「プレゼント」と、にこやかに告げる。

 

 それをグレンダが慌ててカヤを部屋の隅に呼んで、「何の嫌がらせですか!」と魔木の押し付け合いを始めてしまう。

 

「こんなのアジトに置いたら、絶対にリムル様が、激怒しますよ!」

 

 グレンダはそう食い下がり、最終的には〝三賢酔〟の監督不行き届きもあったと言う事から、傘下組織持ち回りで、百年間魔木ことアルコ改めメソキの面倒を見ることで、グレンダも良い見せしめにもなると納得をし、〝三賢酔〟アジトに来るのだけは阻止したのであった。

 

 

 初めての〝三賢酔〟傘下組織との争いは、ネコマンマ商会の勝利に終わり、これを機にネコマンマ商会の名は裏で広く知られることになる――恐怖の象徴、あっかんべーをした猫の紋章と共に。

 

 これ以降、配下同士の争いはあれど、二度とカヤとモモカに手を出そうとする愚か者は現れなかったのだ。

 

 

 

 グラブゲとの争いから、二日後のテンペストにあの時の奴隷女性三人が来ていた。

 

「ミョルマイルさん。例の娘達なんだけど、先に来た四人の彼女達同様、お願いするね。元奴隷だけど、いい娘達だからリグルドに頼んで、ゴブリナ達と一緒に働かせてもらえるかな?」

「おお、この娘達ですな。既にリグルド殿には伝えてありますので、住居も確保してますぞ。まあ、一人部屋と言うわけにもいかず三人相部屋ですが、そこはご勘弁をですかな。うわっはははは」

「ありがとう、ミョルマイルさん」

 

 ミョルマイルの砕けた言葉に緊張が解けたのか三人は、ミョルマイルに頭を下げ挨拶しカヤに向き直し、三人共両膝を付き両手を合わせ胸の間に持っていき、ステアが口を開きお礼をカヤに述べた。

 

「カヤ様、本当にありがとうございます。この、ご恩は決して、忘れません」

「忘れてもいいよ。悪党の恩なんて」

 

 ステアの言葉に穏やかな顔で、ステア達に語り掛ける。

 

「あたしらも、グラブゲと同じ悪党なんだよ。その、悪党に恩なんて感じちゃ、また攫われちゃうぞ? さっさと辛かった日々を埋めるような人生を、見つけるといいよ。忘れる事はできない――でもね、それを、楽しい事で埋める事は、出来るんだよ。だから、忘れる努力なんて、しなくていいから楽しい日々を送る、努力をしな」

「はい……でも、私達は……」

「たまたま拾った運なんだからさ、好きに生きな。わかったね」

「「「はい……本当に、ありがとうございます。私た――」」」 

 

 カヤの好きに生きなの言葉に、ステア達は大粒の涙を流しながら頭を垂れたまま感謝の言葉を口にし、続く言葉を言おうとしてカヤに遮られる。

 

「――あたしは、神様じゃないから、祈るような真似はやめてよね。フヒヒ。じゃあ、この娘達をお願いね、ミョルマイルさん」

「ええ。確かに、引き受けましたぞ」

 

 カヤは少し照れ臭そうに言い、背を向けて歩き出す……。

 

 しかし、十数歩程歩いて立ち止まると、猫耳をカシカシ搔きながら振り向きステア達の前まで戻ってくると、初めてステア達の名前を読んだ。

 

「はあぁっ。まったく、あんたらは。ステア、ヴィカ、シプカ。本当に、ネコマンマ商会に来たいなら、色んな覚悟がいるよ。その覚悟が、何なのか? それがわかったら、ここにいるミョルマイルさんに言いな。そしたら、あたしらの組織に渡りを付けてくれるから。いい、これからは、決してネコマンマ商会の事を口にしない事。これを破ったら、組織には入れないからね。しばらくは、ゴブリナ達と楽しい時間を過ごしながら、ゆっくりと考えるといいよ。それじゃ、またね」

「「「――はい!」」」

 

 カヤから「またね」と言ってもらい安心したのか、三人共涙をグイッと拭くと立ち上がりカヤの目をしっかり見据えて深く一礼をし、右手を軽く上げ立ち去るカヤの後ろ姿が見えなくなるまで、そこを動かなかった。

 

 またミョルマイルもそんな彼女達を優しく見つめ、カヤの立ち去る後姿を見送っていた。

 

 後に、ミョルマイルに三度進言して却下され、四度目で何を捨てて何の覚悟がいるのかをようやく理解し、ステア達はコントラバンド商会に所属することになる。

 

 最初こそはナガンに師事し色々教わるも、いつしかナガンをも上回る商才を発揮して、彼女達三人が中心となりコントラバンド商会を切り盛りしていく事になるのだが……。

 

 それはまた別の、お話である。

 

 

 

 更に三日後の午後を過ぎた、天気の良い昼下がり。

 

 アンソルスラン、コントラバンド商会の再編も終わり、今日はネコマンマ商会の配下一同が、ネコマンマ亭の地下会議室に集まり、全員の顔合わせと称した簡単な会議をしていたが人数が増えた為、最初は広く見えた地下会議室も少し手狭に見えて来ていた。

 

 アンソルスラン、夜蝶組十六人にイサカを支配人にしてその部下五人。

 

 コントラバンド商会、商人(あきんど)組、番頭ナガンを筆頭に、その部下八人。 

 

 昼組、夜組、夕組、夜蝶組、商人組の計五十人の組織になったネコマンマ商会。

 

 そして、首から何かを書かれた札を下げて床に正座させられている者が、二人いた。

 

 一人はマリラ、魂を回収する呪符の発動を止めるのを忘れていて、モモカの所に持って来てた時には、色々な魂を回収していて、その中には寿命を迎え亡くなった人間の魂もあり、その呪符を見て「あんた、なにやってんの!?」とモモカの雷が落ちて、シュークリームを盗み食いしたのもバレての正座である。

 

 マリラの首から下げた札には――

『あタしは、呪符の発動を止めるのを忘れ、あまつさえ魔力冷蔵庫にあったシュークリームを盗み食いした、アホの子弐号です』

 

 と、書かれていた。 

 

 その隣に正座している、アホの子壱号ことカヤ。

 

 首から下げた札には――

『あたしは、コントラバンド商会から奪った金貨七百枚をネコマンマ商会に納めず、自分の財布に入れた、アホの子壱号です』

 

 と、書かれていた。

 

 

「で、これからのネコマンマ商会の方針は以上です。新しくネコマンマ商会に属した者も、これからは、しっかり励みなさい。そして、そこに正座している、アホの子壱号と弐号みたいな愚行は起こさない様に、いいわね! 馬鹿はいらない。馬鹿やる奴は、わたしが許さないわよ! 肝に命じなさい、以上!」

 

「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」

 

 カヤとマリラを除いた全員が一斉に跪き、頭を垂れる。

 

 

「カヤ姉さん、何してるんですか~ 金貨七百枚を着服するなんてぇ。横領ですよぉ~。ま~た、飲み食いに散財するつもりだったんでしょう~。フシシ」

「やっかまっしいわ! あんたこそ、あれだけ魂を回収したら、呪符の発動止めるのを忘れるなって言ったじゃん! それに、シュークリームを盗み食いしてるし! ってかさ、ここに隠してたのかモモカの奴めー。これじゃあ、つまみ食い出来ないじゃん!」

「ええー 聞いてないし―。でもー、カヤ姉さんが家で盗み食いするからぁ、モモカ姉さんここに隠してたんですよぉ~」

「いや、言ったじゃん!それに、 あたしのは盗み食いじゃないし、味見だし! 聞けよ人の話しは! 」

「人違うし~ カヤ姉さん、亜神さんですよねぇ~? 魔物ですよねぇ?」

「そこは話の流れで聞けよ! ってか、 何であたしが壱号で、あんたが弐号なんだよ! おかしいだろうがぁーー!」

「カヤ姉さんも、話が飛んでますよ~ いきなり壱号とか、弐号とか言われてもぉー こまっちゃう~」

「だあーーーー。マリラーー! お尻ペンペンすんぞぉーー、ごるあぁっーーー!」

「やだ~ もう、どSさんなんだから~」

「にゃにおー! どSにどS呼ばわりされるおぼえなぞ、ないわーー!」

「それ~ どSの自覚あるって~、言ってます~?」

「ないわーー! このどSの権化があああああ! だから聞けよ人の話し!」

「えぇ~~、だってぇ、カヤ姉さん猫亜神さんだし~」

 

 正座させられて反省するどころか、頓珍漢な言い合いを始める二人にベゼット達はまたかと笑い始め、新しく属した者達は笑っていいのかどうか判らず、込み上げる笑いを堪える為引きつった顔になっていた。

 

 ネコマンマ商会の問題児代表、カヤとマリラ。

 自由人の二人が会話すると、話がずれ捲るのはいつもの事である。 

 

「あんたら。反省もせず、なぁーに、遊んでるのかな?」

 

 モモカが二人の前に立ち、右手に持ったハリセン(張り扇)を左掌にバンバンと打ち付けながら、にこにこと冷ややかな笑顔で睨む。

 

「えーーと、モモカさん。その扇子の親分みたいな物、なにかな?」

「モモカ姉さん、なんですか~、それ~?」

「これはね、とある方(リムル)が作ってくれた、お仕置き用ハリセンなのよ。フフ」

「ハリセン? そんなので、どうお仕置きをすると? ククク」

「モモカ姉さん、流石にそれは無いと、思いますよ~ クスクス」

 

 そんな物で何するのとケタケタ笑って二人だが、次の言葉を聞いて、絶句することになる。

 

「これはね~精神体(スピリチュア・ボディ)打撃専用・ハリセン――サイコブレイカー君よ。フフフフ」

「「はわぁ!? えぇぇ……」」

「マリラは、仙人になったばかりだからぁ、これを機に精神体を攻撃される感覚を、知った方がいいわよねぇ~」

「え、え、えーとですねぇ。遠慮したいかなぁーと。ごめんなさい、してもいいかしらぁ?」

 

 精神体打撃専用と聞いてマリラはとてつもなくヤバい感覚に襲われ、嫌な汗をダラダラと流しながら謝罪するも、それは無情にも振るわれた。

 

「だ・め。フフッ」

「いやああああああ!」

 

 バアァーンッ!!

 

 凄まじい打撃音を響かせ頭を張り倒されたマリラは、両手を上に上げたまま仰向けに倒れ、目を回し力なく呻いていた。

 

「い、い、いたいで、すぅ~」

 

 その威力に隣で正座するカヤは目を剥き、リムルに心の中で文句をぶつけるのであった。

 

(リムル。あんた、なに怪しげなもん、作ってくれたんやあぁー。これはヤバい、 ちょっと『解析鑑定』してみようっと。どれどれ~。うーーん、はあぁっ!? なんじゃ、こりゃああああああ! 地獄蛾の繭糸に、粘鋼糸……それらを、魔木から作った紙に織り込んで作ってるじゃんよ。あはは、はあぁ……。もう、これ、魔物殺せるよ? 武器じゃん! どこが、お仕置き用なんだよ! モモカに、こんなもん持たせんなよ、リムルーー!)

 

 そんな文句を内でずらずら言ってると、モモカが怒気を垂れ流しながらカヤの前に立ち、カヤの目が凄まじい勢いでぐるぐる回り、猫耳は完全に伏せて、尻尾はピーンと立てたまま毛が盛大に逆立っていて、必死に言い訳を考えていた。 

 

「えーと、お姉ちゃん。そんなに怒気を垂れ流すと、周りが大惨事よ? ダメだよ、少し、落ち着こうね? ね?」

「大丈夫よぉ。あんたらとわたしの周りに結界を張ってるもの。ウフフッ」

「あ、あの金貨はね、一時的に預かったんだけなんだよ? ほら、夜道を金貨の袋を持って歩くなんて、物騒でしょ? ね? 娼館の前の宿屋買い取るのにも、ちゃーんと金貨百枚出したでしょ! だから、無罪だよ? だよ? ね?」

「あらあら。わたしが、金貨七百枚どうしたのって? 聞くまで。あんたの財布に入ってたのは、なんでかなぁ?」

「いや、それはね、わ、忘れてたの。そう忘れてたのよ! すっかりね。アハハ、ハハッ」

「ほおぉ~。あんたねぇ、フォスがわたしに金貨七百枚の事を報告しなかったら、どうしたわけ?」

「えっ? そりゃー やったね! ヘソクリが出来たよ! わーい、だよね? あっ!」

 

(((((((何でそこで、本音を出しますか……)))))))

 

 ベゼット達全員が、ジト目で心の声を発した瞬間、それは来た。

 

「死んで来い!」

 

 バゴオオォォォンッ!!

 

 思い切り力を込めた、渾身の一撃を顔面に叩き込まれ、マリラと同じように両手を上げたまま、目を回し勢いよく仰向けに倒れゆく。

 

「カ、カヤ姉さん~。お間抜けです、のよ~~」

「マリラ~~。おまえも、なぁ~」

 

 二人共目を回しながら、お互いに言い合いの中、モモカが手をパンパンと叩きながら皆に告げる。

 

「さあ、みんな。テンペストに新しくできた居酒屋の大部屋を予約してあるから、そろそろ行きましょうか。今日は新しいネコマンマ商会の門出だから、飲んで食べて遠慮なく騒ぎなさいな。そうだ、先に皆で温泉行きましょう。テンペストの温泉風呂は大きいわよぉ。フフフ」

 

 配下の者全員、温泉、宴会と聞いて、「やったー 酒が飲めるぞー」「うおおおぉ。温泉風呂! 混浴あるのか!?」「居酒屋って、どんな料理が出るんだろう?」「私、温泉って初めて」などワイワイ言い始め、モモカが全員を防護呪符結界で包むと、一気にテンペストへと転移していった……二名だけ放置して。

 

 

「ち、ちょ、っとまて~。あたしを、おいていくなぁ~」

「ひ、ひどい、です~~。あタしもいくです~~」

 

 カヤとマリラ、きっちり一時間は動けない様にダメージを入れられていて、誰もいなくなった地下会議室で空しく呻いていたアホの子二人であった。

 

 

 

 

 一方、リムルの所へギィから急遽ワルプルギス開催の一報が入っていた。

 

「うーーん。カヤとモモカを連れ来いとか、どこでバレたんだ?……ってか、やっぱり、あれだよなあ~。さて、どうやってカヤを連れて行くかなんだが……今回は、モモカも来ない気がするのは、俺だけか?」

 

 ギィから、「お前の所に変な魔物いるだろ? そいつらも連れて来いよ!」と一方的に言われ、モモカはともかく、カヤをどうやってワルプルギスに連れて行くかで、頭を悩ませるリムルであったのだ。

 

 

 

 

 




 五十八話を読んで頂き、ありがとうございます!

 次回の更新もよろしくお願いします!




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