転生したらネコムスメなんだけどの件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました! 六十三話です。

 ☆作中で(なかご)と出てきますけど、これは柄を外した状態の刀身で、柄を嵌める部分の事を指します。

 刀を手入れする時には、柄と鍔を外し刀身だけの状態にします。

 


六十三話 オトワの影

 

 

 テンペストはいつも通りの賑わいを見せ、魔物と人間が混在する中央都市リムル。

 

 

 そんな中、一つの小隊がテンペストを出て、ブルムンド王国へと向かっていた。

 

 ゴブタ率いる影獣調査隊。

 

 リムルが以前、ブルムンド王国に影獣の調査に調査団を派遣すると決めて、様々な検討を重ねた結果。

 

 少数で素早く動けると言う事をコンセプトに、団ではなく隊としてゴブタに調査隊の指揮官を任せ、副官にゴブチを付け、調査分隊七名、護衛分隊七名にモモカが加わり、計十五名の調査小隊を編成しブルムンド王国に入国していた。

 

 モモカはブルムンド王国内での聞き取り調査に残り、ゴブタ達調査小隊は住民達の証言を元に、影獣が目撃された場所へと向かったのである。

 

 ゴブタ率いる調査小隊は影獣が目撃されたとされる、ブルムンド王国の国境に面するジュラの大森林近くを調査していた時。

 

 それは、出現した。

 

 その影獣(えいじゅう)はゴブタ達を見つけると、いきなり襲い掛かり戦闘に突入したのであった。

 

「なんすか、あれ? 黒い霧、影っすか? 四本足の魔獣みたいで、大きいっすねぇ。体長三メートルはって、調査分隊は後方に下がるっすよ!」

 

 その容姿はさながら、猫を大きくしたような姿であり、まるで陽炎の様に体全体が揺らめき、それでいて俊敏で前足から伸びる黒い爪でゴブタ達を攻撃して来る。

 

 ゴブタは、調査分隊を後方に下がらせ、〝狼鬼兵分隊(ゴブリンライダー)〟を率いて〝影獣〟の迎撃にあたっていた。

 

 ランガに(またが)り、影獣を牽制しながら観察していたゴブタは「なんか、魔獣とは明らかにちがうっすね」そう懸念を表していた、その時。

 

 一人が影獣の黒爪を受けてしまう。

 

 副官として付いて来ていたゴブチが、部下の一人であるゴゴゾが黒爪で左腕を斬られたのを見て、すぐに下がらせ、『同一化』を解き腰のポーチから完全回復薬(フルポーション)の瓶を取り出し、左腕の傷口に振り掛けた。

 

「うぁあああ。あいたたたたた!」

 

 完全回復薬(フルポーション)を振り掛けられたゴゴゾが、左腕を押さえ悲鳴をあげた。

 

 四本の爪痕の傷口がバチバチと火花をあげるような音を響かせ、傷口から黒い霧の様な煙を上げ黒い染みがズズズッと広がっていく。

 

「なんでやすか、これは!? 完全回復薬(フルポーション)が効かないなんて、こんな現象、聞いた事も見た事も無いでやすね」

 

 とりあえず包帯を巻き、ゴブタに黒爪の攻撃に注意だと急ぎ伝える。

 

 ゴブチの言葉を聞いたゴブタは、すぐさまランガに呼び掛ける。

 

「マズイすっねー。みんな下がるっす! 出し惜しみは、無しでいくっすよ! ランガさん!!」

「おう!!」

 

 ゴブタの呼び掛けに、意気揚々と答えるランガ。

 

魔狼合一(ヘンシン) ーーーーッ!!」

 

 ゴブタが黒い霧に包まれ、あっという間にゴブタに吸い込まれ掻き消えていく。

 黒い霧が消え去ったそこには、黒い狼の姿を纏ったホブゴブリンの戦士。

 

 雄々しい二本の角を生やした、人型の黒狼が顕現していた。

 

「同じ黒い霧を発生させる〝影獣〟っすけど。あっちのは、めちゃくちゃ邪悪っすねー」

「うむ。ゴブタよ、あ奴は凄まじい負の固まりの様に見えるぞ。油断はするなよ!」

「わかってるっす。いくっすよ、ランガさん!」

 

 バンッと大地を蹴り、一瞬で間合いを詰め右拳で殴りつける。

 

 顔面を殴り付けられた〝影獣〟は、木々をなぎ倒しながら吹っ飛び大木に激突し、揺れた枝達が大量の木の葉をまき散らす。

 

「揺らめく陽炎の様に見えても、殴れるっすね。あの黒爪が当たらなければ、大丈夫そうっすよ」

「うむ。さっさと倒してしまうとしよう、ゴブタ」

 

 しかし、起き上がった〝影獣〟が天を見上げ、呪いにも似た禍々しい唸り声をあげた。

 

 グギャオオオオオオオオオオオンッ!!

 

 それは、大気を震わせる(おぞ)ましき響き。

 そこに居た者全てが、咄嗟に耳を押さえる。 

 

「うわうわっ。なんすかこれは!」

「わからぬ。が、気を付けろゴブタよ!」

「ゴブチ、すぐ皆を引き連れて影移動で退避するっすよ!」

 

 ゴブタの指令に即座に対応し、皆に〝潜影〟を命じるも影移動が出来なかった。

 

「な! 〝潜影〟が出来ない!? 『対魔結界』? じゃないこれは……『界面結界』じゃないでやすかね。マズいですねぇ。この辺り一帯、妙な結界で覆われているみたいでやすよ!」 

 

 

 〝呪狂鳴音(カースハウリング)

 

 影獣の持つ隷族共有ユニークスキルの権能で、自分自身の周りに〝呪狂結界〟を張り巡らせ、あらゆる魔法、空間移動などを封じ、捕らえた得物を逃がさない為の凶悪極まりないスキルであった。

 

 これを破るには旧魔王クラスの力が無ければ破ることは敵わず、ここで力を行使できるのは〝魔狼合一〟をしたゴブタだけであり、結界を破る為には相当の力を使うためゴブチ達を巻き込むこと必至だった。

 

 だが、ゴブタは〝潜影〟出来るのでゴブチ達を連れて逃げる事も出来るのだが、それをしなかった。

 

 影獣の動きは素早く、影に潜る一瞬を突かれゴブチ達がやられる恐れがあったのだ。

 

 防戦一方に追い込まれていくゴブタ達……。

 徐々に旗色が悪くなり、ゴブチ達を守りながら戦うゴブタに焦りの色が見え始めていた。

 

「マズいっす、マズいっすよー!」

 

 黒爪を喰らわない様に戦うゴブタの元に、救いの声が聞こえる。

 

『ゴブタくん。妙な力を察知したのだけど、そちらで何かあったの?』

『モモカさん! よかったっすー。今大変な事になってるっすよー!』

 

 ゴブタの調査小隊と一緒に来ていて、ブルムンドで影獣の噂を住民から聞き取り調査をしていたモモカが〝影獣〟の発した力を察知してゴブタに『思念伝達』を飛ばして来たのだ。

 

 モモカは『思考加速』を使い、手短な状況説明を受けると、すぐさまゴブタ達の元へ転移した。

 

「みんな、すぐにモモカさんが来るっす! もう少し頑張るっすよ!」

 

 一瞬の気の緩み。

 

「!? マズイ、抜かれたっす!」 

 

 モモカが来るという安心感から来る一瞬のスキを突かれ、右脇をすり抜けられ影獣の黒爪がゴブチ達に襲い来る。

 

 間に合わない、皆がそう確信した時。

 

 バキイィーーンッ! けたたましい音と共にゴブチの目の前で、黒爪が弾かれた。

 

 そこには一枚の呪符が仄かに輝きながら漂いゴブチ達を結界で包んでいて、影獣の前にモモカが両指に呪符を挟み立っていた。

 

「間に合ったわね。ごめんなさい、こちらにも気を回すべきだったわね!」

 

 くるっと背を向けた刹那――

 モモカの左裏廻し中段蹴りが影獣の腹部にめり込み、蹴り飛ばす。

 

 大森林に木霊(こだま)する、打撃の轟音。

 

 大地を抉り、土砂を巻き上げ凄まじい勢いで回転しながら大岩に激突し、砕き破片が降り注ぐ中、四枚の呪符が影獣を囲んだ。

 

「〝四星捕縛陣〟縛!」

 

 パンッ! 言霊と短拍手が響く。

 

 影獣を囲んだ四枚の呪符から、黄色に光る雷撃にも似た(いばら)のつるが伸び、影獣を絡め取り締め上げて行った。

 

 捕縛を確認すると、すぐさまゴゴタの傷を『審美眼』で見る。

 

(酷いわね、黒い染みが腕半分を浸食している。何かしら? この傷口から立ち上がる黒い霧みたいな物は。これは……魔素が乱れてる? 違う、何かが反発し合ってるの? 魔力回路の……浸食……違う……もっと、別の何か)

 

 モモカはブツブツと呟きを繰り返す。

 

 袂から一枚の呪符を出すと、ゴゴタの傷口に当て呪符を起動させた。

 

「再生」

 

 言霊と短拍手を打ち、呪符が起動すると……。

 

 ポウッと光り呪符が掻き消えると、黒い染みの浸食が止まり、スーッと波が引くように黒い染みが消えて行き、黒爪で付けられた裂傷もほぼふさがっていた。

 

「ほっ。これでもう大丈夫よ」

「ありがとうございます。モモカ様」

「いやーほんと助かったっすよー。この傷、ほんとわけわかんないっすね」

「そうね。それよりも」

 

 ゴゴタとゴブタの言葉に微笑み返し、影獣へと目を向け近づいていく。

 

「さてと、あんた何者?」 

 

 雁字搦めに光る棘のつるに縛られた影獣の前に来て、モモカが問う。

 

 黒い目の中に光る紫の瞳が、モモカを凝視する。

 

「猫を大きくしたような影獣か。自我は無いのかしらねぇ。とりあえず、捕縛したまま連れ帰りましょう」

 

 そう言葉を言い、影獣に手を伸ばそうとしたら――

 

 ニッと残虐な嗤いを浮かべた影獣の体が、バウンと風船みたく膨らむ。

 

「なっ!?」

 

 それを見たモモカはゴブタ達の所へ一瞬で移動すると、自分の『多次元結界』で皆を包んだ。

 

 と、同時に影獣が眩い光を発し大爆発を起こす。

 

 自爆である。

 

 キノコにも似た爆炎を上げ、白い煙みたいな爆発の衝撃波が円形状に広がっていく。

 

 地鳴りのように大地を振動させ、ブルムンド迄(とどろ)く爆発音に空が震えていた。

 

 直径三百メートルを綺麗に吹き飛ばし、粉々に爆散した燃え盛る木々の残骸の中に『多次元結界』に包まれたモモカ達の姿があった。

 

「モモカさん。な、なんすか……あれ?」

「自爆よ(あの、嗤いから一瞬感じた気配……間違いない、奴だ。とうとう動き出したわね、オトワ)」

 

 ゴブタが今の爆発の事を聞くと、モモカは少し低い声で答え、燃え盛る木の火が大森林に燃え移らないよう氷結の呪符で消化して、それから『防護結界』を張りゴブタ達を連れてテンペストに転移して行った。

 

 この影獣の自爆の三日後にブルムンド王国内で一人の若い男が、自宅の寝室で体がバラバラに破裂したかのような変死体で見つかる事になる。

 

 

 テンペストに帰還したモモカ達は、とりあえず念の為に医務室にゴブチ達を送り届ける。

 

 そして、モモカとゴブタはリムルの執務室へと報告に向かう。

 

 執務室へと着いたモモカとゴブタは事の経緯を、リムルに説明をした。

 

 一通り説明を聞いたリムルは、ゴゴタの傷に付いてモモカに尋ねる。

 

「なあ、モモカ。その黒い傷は本当に腕を浸食していたのか?」

「ええ、間違いなく腕全体に広がっていってたわ」

完全回復薬(フルポーション)が効かなくて、あまつさえ魔素が反発していたと?」

「いえ……反発じゃなく、こう……もっと、別の……何かが混じり合い、それが広がっていくような感覚に、近いかな」

「混ざるねぇ……。うーん。でも、なんでお前の回復呪符は効いたんだろうな」

「それは、わたしにもわからないの。それと、リムル――奴が動き出したわ」

「オトワか! 厄介な奴が動き出したかぁ。何故、わかった?」

「影獣がね……。自爆する前に嗤ったのよ。その嗤いに含まれた気配は忘れもしない、オトワの物だったわ」

 

 オトワの事を口にしたモモカの表情がみるみる内に険しくなり、剥き出しの殺意を露わにしていく。

 

 その殺意に触れたゴブタが「ピギャッ」と変な声を出し飛び上がり、リムルが「漏れてんぞ、モモカ」と注意するとハッと我に返り、すぐに殺意を引っ込めた。

 

「ごめんなさいね、ゴブタくん」

「いやー ちょっとビックリしたっすけど、そのオトワってモモカさんとカヤさんの仇すっよね? なら仕方ないっす」

 

 モモカの謝罪に、ゴブタは笑って「気にしないでいいっす!」と言い、その言葉にモモカは不思議な心地よさを感じる。

 

 ほんと、この国の魔物達は……だからこそ、オトワとジラを絶対に仕留める!

 

 沙羅(かあ)様、那破刀(とう)様、今度こそネコマタを滅してみせます。

 

 ドウザン、あなた達の無念は、必ずわたしとカヤが晴らしてやるわ。

 

 ネコマタが、強大な悪なら――わたし達はそれ以上の悪となって、一片の骨も残さず、喰らってやるわよ。

 

 沙羅、那破刀、ドウザン達から託された思い、それを今一度胸に刻み、右手を胸に当てる。

 

 モモカが目を閉じ胸に手を当ててるのを見てリムルが、心配そうに声を掛けた。

 

「どうした? 大丈夫か、モモカ」

「あっ。何でないわ、リムル。ちょっとね思い出してたの、色々と、ね」

「そうか、ん? ちょっと待ってくれ……」

 

『リムル。ちょっと、モモカに頼んで欲しいことがあるのよさ。モモカの回復呪符を、一枚借りて欲しいワケ』

 

 ラミリスは回復呪符がいる事情を説明し、リムルはそれに了承した。

 

『そうか、わかった。頼んでみるよ』ラミリスからの『思念伝達』に答えて、『思念伝達』を終えるとモモカに尋ねる。

 

「モモカ。ベスターとラミリスがゴゴタの傷痕を調べていて、ほぼ消えかかっていた、黒傷の欠片を見つけたそうだ。それで、お前の回復呪符との因果関係を調べたいから、一枚貸して欲しいそうだが、頼めるか?」

「ええ、もちろん。いいわよ、リムル」

 

 リムルの頼みに快く袂からい一枚の回復呪符を出し、リムルの執務机の上に置く。

 

「悪いな。ゴブタ、これをラミリス達に届けてもらえるか?」

「了解っす!」

 

 リムルから回復呪符を受け取ったゴブタは、一目散にラミリスに研究室を目指し駆けて行った。

 

「リムル、これを。もし、今度影獣が出現したら、絶対に手を出して駄目と警護してる者達に伝えて頂戴。影獣には、わたしとカヤが対処するわ」

 

 回復呪符百枚入りの束を一つ出し、執務机の上に置きリムルに告げる。

 

「ああ、わかった。手出しは厳禁と伝えておこう。で、お前達はどう出る?」

「とりあえず、オトワの出方を見るわ。奴の潜伏先がわからない以上、後手に回るけど、必ず奴の喉笛に喰らいついてやるわよ。それと、いつでも対処出来るように、これからは昼夜問わず動くわ」

「わかった。こちらも、出来る限り協力するけど。ミカエルの事もあるから、あまり協力は出来ない。だからモモカとカヤに、この件は一任する。頼んだぞモモカ」

「ええ、任されたわ。リムル」

 

 リムルが差し出した右手を、モモカも右手でしっかりと握り、モモカは執務室を後にする。

 

 

 家に帰ったモモカは、カヤが帰ってる事に気付き入口の戸を開け中に入っていく。

 

 日が沈み、明かりが蝋燭と囲炉裏の火だけの中にカヤの姿があった。

 

 中に入ると囲炉裏の前でカヤが正座をして、剥き出しになった千鳥の刀身を魔石で出来た砥石で()を砥いでいた。

 

 シィッ、シィッ、シィッと刃を研ぐ音だけが静かに響いていた。

 

 パチャッ、庭の井戸から汲んだ魔素をたっぷり含んだ井戸水を刃に掛け、また砥いでいく。

 

 モモカもカヤの真向かいに正座して座り、その様子を黙って見守る。

 

 刃を研ぐカヤを見てモモカは、乱破ノ里での父、才蔵がよく刀を研いでいた姿を思い出し、血の繋がりはないのに、父才蔵に似ているなと「血は繋がってなくても、やっぱり親子ね」ぽつりと口に出す。

 

 しばらくして、刃を研ぎ終わり、口に二つ折にした魔紙を咥える。

 

 この紙を咥える行為はカヤが人間の頃からしていた行為で、唾が刀身に飛ばない様にする為であったのだが、転生してからはその必要は無いのに往年の癖からそうしていたのであった。

 

 (ぬぐ)い紙で刀身から水気を綺麗にぬぐい取り、眼前に刀身を立てるとゆっくりと刀身を回し、刃文に曇りがないか確かめる。

 

 古い油をぬぐい取って行き、地獄蛾の繭で作った絹に魔砥石の微細粉を包んだ物を、十五センチ位の()の先にピンポン球位の大きさにして取り付けてあった。

 

 それでポンポンと刀身を満遍なく軽く叩いていき、打粉(うちこ)をしていく。

 

 それを何度か繰り返し、今度は刀身を斜め横にしてからゆっくり回して油のくもりが完全に取れたか確認していき、それを終えると拭い紙で丁寧に粉を拭い取る。

 

 次は、魔紙で作った魔油塗紙で、薄くムラなく平らに伸ばし魔油を塗っていき、(なかご)にも薄く魔油を引き、刀身に塗りムラが無いか確かめる。

 

 そして、小さく長方形に切った二つの木片に刀身を乗せ、(つば)を嵌め(なかご)に柄を差し込み、柄の真ん中辺りにある穴に、魔木で作ってある目釘を刺す。

 

 コンコンと木槌で目釘を優しく叩き目釘を刺し終えると、丸桶に汲んでる井戸水を一口だけ口に含み、目釘にプーッと吹きかけ、目釘を締めた。

 

 千鳥の手入れを終え、左手真横に持った鞘に刀身を納めていき、チンッと(つば)が鳴り刀身が鞘に収まる。

 

 正座をしたまま千鳥を自分のすぐ左側に置き、モモカを見てカヤは口を開く。

 

「モモカ。あいつが動いた」

「ええ、やっと動き出したわね」

「今度こそ」

「次こそは」

「「必ず、倒そう!」」

 

 囲炉裏の火が姉妹を映し出し、薪の弾ける音が響き、影がゆらゆらと揺れる。

 

 お互いに見つめ合うその顔は、乱破(らっぱ)ノ者――

 刺客姉妹の顔であった。

 

 

 オトワ……ネコマタ、それは人の怨念と憎悪から生まれた、平安時代の〝(あやかし)〟。

 

 今、静かに牙を剥き始めていく。 

 

 




 六十三話を読んで頂き、ありがとうございます!

 それでは次回の更新も、よろしくお願いします!





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