分割した話も推敲した後すぐに投稿しますので、ご勘弁下さい。
それでは、お待たせしました 七十二話です。
※作中使用している特殊文字フォントは、C6N2様作成のフォントを使用しています。
前線部隊も各部隊長がモモカが現れたのを確認するや、魔法兵に雷光攻撃の指示を出す。
野営地の真ん中に降り立ち不敵に笑うモモカ目掛け、目も眩むほどの稲妻がモモカに降り注ぐ。
耳を裂く雷光撃の音が大気を震わせ、空気の振動が周辺にいる兵士の頬を撫でていく。
「〝
一人の部隊長が高らかに笑い言う。
凄まじい雷光撃の嵐ともいえる魔法攻撃に、モモカの立つ大地の雪は瞬時に蒸発し、あまりの熱量に地面は黒く焦げ、もうもうと上がる煙と水蒸気に真っ白に包まれていた。
どこからか吹く風にさーっと煙と水蒸気が混じった煙が流されて行き、そこに何食わぬ顔で佇むモモカがいた。
「バ、バカな!! 魔素を介さない自然の雷撃なんだぞ、ありえん……」
今までこの雷撃で仕留められなかった魔物は居ないと言う自信が根本から砕け、声を発した部隊長はその場に腰砕けになる。
傷一つ無く、見る者の背筋を凍らすような笑みを湛え、両袂に手を入れ真横に広げると、両袂の袖から
やがてモモカを中心に竜巻の様に、回り始めていく。
その異様な光景に周りに集まった魔法兵が狂ったように魔法を乱射していった。
雷撃、炎撃、氷撃、風撃など様々な属性の魔法がモモカを襲う。
爆炎を上げながら轟音が響き渡り、誰もが今度こそ
辺りに立ち込めた煙が晴れると、モモカを守るように高速回転する呪符の群れは健在だった。
集団魔法すら通じないモモカに兵士達は、各部隊長の号令の元皆が槍を構え、モモカに突撃する。
「
モモカが言霊を発し、短拍手を一つ鳴らす。
モモカを囲む槍兵数百人とその後方にいる魔法兵数百人に、高速回転していた呪符が眼前迄瞬時に飛ぶ。
それは火球を上げ爆発し、槍兵、魔法兵の頭部だけを次々と吹き飛ばしていった。
千以上もの血柱が立ち昇り、雪で真っ白な大地を真っ赤に染め上げていく。
あっという間に数百人以上もの兵が倒され、その場にいた兵達は唖然とその光景を見ていたが、一人が剣を上に掲げ、「我らは魔物に臆さぬ! 魔物を討つのだああああぁっ! うぉおおおおお!」と雄たけびを上げモモカに斬りかかっていくのを見て、皆槍や剣などを持ちそれに続いていった。
「そう。流石は訓練された兵士と言った、ところかしらね」
野営地に居る、三万弱の兵士がたった一人の魔物に襲い掛かる。
「前線部隊五万。その内殲滅部隊に二万割いてたから、ここには三万程の兵士か。後方に五万いるわね……。第一砦には、約二十万で、第二には十万といったとこかしら。計四十万の軍隊か。その内二万は、もういないけどね。ふふふ」
モモカは『万能感知』で、周辺地域を読み取りハルモア王国の軍隊の全体像を掴んだ。
「カヤが面白いことしてたから、わたしも何かやろうかな。雪の大地か……」
モモカは何かをブツブツと呟きながら、宙に右人差し指で古代語を書き綴る。
宙に書かれた古代語の呪文は淡く光りながら、霧散していく
kjiderybfhjgutimazsl
我が身も凍らせる闇の吹雪
glpomcbvzseqreyfihjk
凍てつく吐息は
ndjfhgyturiksnascxij
全てを凍てつかせ無に帰せ
言霊を言いながら両手に扇子を具現化させ広げると、優雅に舞いながら術名を言い、胸の前に交差させた両手に握る扇子を、パチンと閉じた。
「〝
ゴオッと音立て、白い霧の様な風が周りの兵士達目掛け、凄まじい勢いで三万の兵士を覆い尽くす。
絶対零度、マイナス273.15℃の嵐
その白く沸き立つ冷気の風に触れた物は、一瞬で凍結していった。
叫び声を上げる間もなく凍り付き、逃げようとする者、剣や槍を構えたまま凍り付いた者など、三万もの様々な氷の彫像と言える光景が広がっていた。
その光景を冷たく見つめるモモカ。
指をパチンと鳴らすと三万の兵士が一斉に砕け、氷の結晶と化した。
キラキラと輝く氷の結晶が舞う中、モモカは三万もの魂をそっと集めていく。
「はあ~ 美味しい」
カヤと同じくモモカも魂を集める中、集めた魂の摘まみ食いをする。
《こらー! もうあなた達は、二人揃ってつまみ食いは駄目でしょ!》
『あら、半分は悪魔族なのよ。ちゃんと魂を食できるか試しただけよ。フフフ』
《わかってます! 摘まみ食いは厳禁です! 貴重な魂を無駄にしてはいけません! いずれラコル達に使うのですからね!》
『これだけあるのですもの、少し位いいじゃない、ヤエ』
《まったく二人とも、少しだけですからね。ああーカヤも、言ってるそばから食べない!》
『うっ、なぜバレたし……』
『魂の回廊を通じてわかるし、そもそもあんたの中にヤエはいるんだもの、当たり前じゃない』
ヤエが二人に言い聞かせる間も、カヤとモモカは魂を集め続けその作業が終わると、後方部隊に居る前線部隊指揮官のいる野営地に向かった。
夜の闇が濃くなる深夜の後方部隊野営地。
一際大きく立派なテントで眠りに落ちている、前線部隊指揮官ダゴン副団長。
寝息を立てるその前に、スーッと黒い影が並び立つ。
「おい、起きろ、おっさん。おい、起きろって、おっさん」
深い眠りに落ちているダゴン副団長は耳元で囁く声に、微睡みながら薄眼を開け見るも「何だ? 火急の用でなければ、下がれ」と一言言うと、また目を瞑り寝息を立て始めるが、焦れたカヤがダゴンの耳元で声を張り上げる。
「おい! なに呑気に寝てんだよ! 後方部隊は既に殲滅したぞ。残るはあんただけだぞ」
いきなりの大声にダゴンは飛び起き、枕もとに忍ばせていた短剣を抜きベッドから飛び降りた。
すぐに魔法ランプの明灯りを付け、ベッドを挟んで真向かいに居る二つの影に目を向け、短剣を構える。
「誰だお前達……。暗殺者か?」
暗闇から魔法ランプの灯りに照らされ、カヤとモモカの姿が露わらになる。
「暗殺者でもあり、傭兵でもあるかな」
「傭兵? ヴァサルティス国傭兵団の傭兵か?」
「そう。わたしたちは、ヴァサルティス国に雇われた傭兵よ」
「のこのこ、五万の兵がいるこの野営地に来るとは愚か者め! 警備隊並びに護衛の者は直ちに全軍に戦闘指示! 急げ!!」
ダゴンは力の限り声を上げ、目の前の二人に殺意を向けた。
しかし、いかに声を上げようともテントの外にいる護衛や、周りの兵士の気配が感じられず、もう一度声を上げ呼び掛けるも、誰の返事も返って来なかった。
そこへカヤが、めんどくさそうに口を開く。
「あーおっさん。外の兵士は殲滅したって言ったけど、聞いてなかった?」
「おっさんだと!? 誰に向かって口を聞いているのだ! 栄えあるハルモア王国騎士団の、副団長であるダゴン様だぞ! 口を慎め魔物風情が!!」
カヤの無礼な物言いにダゴンは更に声を荒げ言い返すも、モモカが鈍く光る金色の瞳で睨みながらダゴンに言葉を言い放つ。
「はあー だからここに居る兵士はもう皆殺しにしたって、言ってるじゃない。聞いてる?」
モモカの言葉に慌ててテントの外に出て、周りを見渡すもキラキラ輝く氷の結晶が舞ってるだけで、誰一人兵士の姿が見当たらなかった。
「なんだ、これは……」
風に靡くテントの音だけがダゴンの耳に突き刺さり、五万の兵が一人残らず消し去られている現実に、ストンと地面に腰を落とし口だけをパクパクさせていた。
「その舞っている氷の結晶は、兵士達の成れの果てよ。フフッ」
「こ、れが、我が兵士たちの……成れの果て、だと」
完全に戦意を失い首をうな垂れ、「なんで、こんな、こんなことが」と呟きを繰り返す。
「とりあえず、あんたの命は助けてやるから、本隊の指揮官に伝えな。今引くなら、見逃してあげる。でも、侵攻を続けるって言うなら、残る軍も全滅させるよ。このあたし達がね。さっさと本隊に行って伝えてきな。引くなら、明日の正午までに第一砦のヴァサルティス国騎士団に使者を送りな。いいね」
カヤはゆっくりと静かにダゴンに言い、それを首をカクカクと上下に振りながら頷き、ダゴンは立ち上がると、馬車に乗り本隊に急ぎ向かうべく馬に鞭を入れる。
それを見送りながらカヤは、モモカに話し掛ける。
「引くと思う?」
「引かないでしょうね」
「だよね~。そうじゃないと、商談が出来ないからね、ヴァサルティス国と」
「さあ、ヴァサルティス国と商談といきましょうか」
「あいよ」
そう言いながら二人は第三砦に『空間転移』して行く。
第三砦に付いた二人を傭兵仲間が出迎え、お互いに生き残ったことを喜び合う。
二人はその足でパジェロ隊長の所へ行き、状況報告をする。
それを聞いたパジェロは、信じられないと言った顔で固まり掛け、前線部隊がある野営地に斥候を出すよう指示した。
しばらくして斥候が帰って来て報告を受けると、第三砦の騎士団員並びに傭兵達が雄たけびを上げ、しばしの勝利を噛み締める。
「それで、モモカ。団長に話とは?」
「残る敵軍三十万に付いてですわ」
「それを、どうすると言うのだ?」
「それは、団長さんに会ってからでと、いうことでいいかしら?」
「わかった。すぐに手配しよう」
話を終えパジェロはすぐに本隊の団長に連絡用水晶球で連絡を取り、モモカの言葉を伝える。
にわかに信じられない報告に団長は訝しむも、十万の兵を一瞬にして殲滅したカヤとモモカの話を聞きたいと言い、すぐに第一砦に来るようにとパジェロに伝えた。
カヤとモモカはパジェロを連れて第一砦に『空間転移』し、団長が指揮するテントに入っていく。
「よく来た傭兵の亜人よ。私がヴァサルティス国騎士団長を務める、ファバルムだ」
「〝
「同じく〝妖霊獣〟のモモカです」
二人は跪きファバルムに自己紹介をするとファバルムは立つように促し、奥の厳重に結界が張られているパーテーションで仕切られた場所へ案内する。
奥に位置する一際豪華な椅子に座った、恰幅の良い紳士が座っていた。
『モモカあれ』
『ええ、国王だわね』
『いやいや、話がやり易くなるわこれで』
『失礼の無いようにね』
『あいよ』
『思念伝達』でやり取りしながら、再び二人は椅子に座った紳士の前に跪く。
「うむ。よく来てくれた。余はヴァサルティス国国王、レベリ・ミニミ・ヴィッカースである。それと、第三砦にいる敵軍の殲滅、誠に大儀であった。礼を言う、亜人の傭兵よ」
「いえ、勿体ないお言葉です。ヴィッカース陛下。カヤと申します」
「傭兵の本分を果たしたまでです。ヴィッカース陛下。モモカと申します」
「うむ。早速だがこの国の命運が決まる大事な話とは、なんなのだ?」
「はい、恐れながら申します。ヴィッカース陛下」
モモカは、傭兵としてこの国がある大陸に来る前に住んでいた魔国連邦テンペストの話をし、今侵攻して来ているハルモア王国の軍を自分達が殲滅するので、それに見合った報酬と来る未来に魔国連邦テンペストが空路を開設し、空を行き来する乗り物での貿易が始まると伝え、その暁にはヴァサルティス国もぜひ参加してほしい旨を伝える。
その話しに食い入るように耳を傾ける、ヴィッカース王。
「ふむう。にわかに信じがたいが、其方らの言葉には妙な説得感がある。その魔王リムルとやらは、魔物も人類も分け隔てなくやって行きたいと、そう申すのじゃな?」
「はい、ヴィッカース陛下。間違いございません。先程見せた記憶映像も嘘偽りなく、本当の事です。この携帯電話と言う機械も、テンペスト製でございます」
「そうか、素晴らしい技術であるな。それとじゃ、ハルモア王国軍殲滅の報酬は、金鉱石二十キログラムでいいのじゃな?」
「はいヴィッカース陛下。わたしが十、カヤが十の計二十です」
「ふむ、よかろう。見事ハルモア王国軍の殲滅を成し遂げれば、その報酬、余の名において約束しようぞ。其方らの働きに期待するぞ!」
「はい、確かにお引き受けしました。ヴィッカース陛下。それとこれを」
モモカは一つの指輪を出し、それを国王の従者に手渡す。
「その指輪は、テンペスト製の特別品です。ですので、複製は不可能です。わたしの術式も組み込まれていますので。まあ実質、覚醒魔王クラスでないと複製は出来ませんね。いずれ来るテンペストの使者がそれと同じ指輪を持ってきますので、それまで肌身離さず身に付けておいてくださいヴィッカース陛下」
モモカの言葉を聞くと国王は、お付きが止めるのも聞かずに右手中指に指輪を嵌めた。
指輪の説明をしながらモモカは、身に危険が迫ると自動で防御結界が張られると説明する。
それから国王の許しを得て、小さな小石を国王の胸に放ると不可視の壁に弾かれたように小石が砕けた。
それを見た団長や、騎士団の者達は驚きの声を上げ、テンペストの品がとても優秀であると認識をした。
国王との契約も済み、それからモモカとカヤは団長らとこれからの打ち合わせをし、二人は大テントを後にする。
「二人とも、食事はこちらで取らぬのか?」
テント内に騎士団用テーブルに、豪華な食事が用意されていたが、二人はそれを丁重に断った。
「ファバルム団長、お気遣いありがとうございます。しかし、わたしどもは一介の傭兵。あちらで食事は頂きますので、そのお心だけ頂きますわ」
「そのお気遣いだけでも嬉しいです。ファバルム団長」
二人は柔らかく微笑み言い、ファバルムも何と礼儀正しい魔物なのだと感心し、二人がテントを出るのを見送った。
傭兵達が集まる所へ行くと、傭兵団の団長が二人の側に来て話しかけて来る。
身長一メートル八十センチの屈強な肉体に右目には眼帯をした傭兵団団長、虎種獣人のボルフ。
「よう、お前達。第三砦の部下たちが世話になったな、礼を言う。部下達を無駄死にさせなくて済んだ、ありがとう」
「ん? いやいや、大したことしてないよ。あいつら殲滅しただけだし。ニヒヒヒ」
「あれが大したことないか……。お前ら一体何者なんだ?」
「ん~ ちと耳かせ」
カヤはボルフに右人差し指をクイックイッと動かし、ボルフが身を屈めた所に耳元でごしょごしょと何事かを言うと。
「なに! ヴェっ、むぐぐぐぐ」
「声がデカい!」
いきなり声を上げたボルフの口を塞ぎながら、カヤはあんまり大声出すと顎割るぞと言い、ボルフは無言でカクカクと頷く。
「まあ、顔見知りと言うか、そんな感じだ。今言った名前の者は」
「って、お前ら……。えらい大物じゃねえか。なんでこんなところに傭兵で来たんだ?」
「聞きたいか?」
「あーー いや、やめとくわ。そんな話し聞いたら碌なことにならねえ」
「ククク、そうだねえ~あんた賢いわ」
含み笑いで言うカヤを「恐ろしい亜人の女だな」とボルフが苦笑い気味に言い、それからしばらくカヤとモモカを交え今後の話をした。
「そう言う事で、絶対に砦の外には出ないで頂戴ね」
「第二、第三もだな?」
「ええ、そうよ。わたしとカヤの戦闘に巻き込まれたら、骨も残らないわよ。フフフ」
「わかった、傭兵の部隊長にはそう伝えておこう」
「まあ、そう時間掛からなくて終わるから、焚火で暖を取りながら待っててよ。フヒヒ」
「はあ……簡単に言うんだなお前ら。まあ、あの御方達を知ってると言うだけで真実味はあるがな。武運を祈ってるよ」
ボルフはそう言いながら拳を突き出し、カヤとモモカもボルフの突き出した拳に自分達の拳をコツンと合わせる。
傭兵団長ボルフとの打ち合わせも終わり、二人は砦上空に飛んでいき、『万能感知』でハルモア王国軍の動向を探っていく。
ふわりふわりと雪が落ち始め、冷えた冷気が
七十二話を読んで頂きありがとうございます!
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