転生したらネコムスメなんだけどの件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。八十五話です。







八十五話 あなたは、私の敵です(モモカVSジラ 決着

 

 フェイリュアワールドにいた頃から、常に己が優位と信じて疑わなかったジラ。

 

 それが今、崩れようとしていた。

 

 左腕をモモカに向かって伸ばし、右手で左肘の後ろを掴む。

 すると、ガシャガシャッと音を響かせて、左腕が変形し砲身へと変形していった。

 

 砲身と化した左腕に、蛇の様に絡みつく放電現象が起こり、粒子加速器術式により加速された荷電粒子が、砲身内に満たされていく。

 

 荷電粒子は地磁気の影響で容易に偏向(へんこう)する。

 

 それを、ジラの予測演算が荷電粒子の射線を計算し、最適な射線軌道を導き出す。

 

「喰らいなさい! 荷電粒子砲・烈回天(れっかいてん)

 

 臨界に達した荷電粒子がモモカに向かって、撃ち出す。

 凄まじいエネルギーを秘めた光線が、一直線にモモカ目掛け走る。

 膨大な熱量の荷電粒子は大気を裂き、直撃した。 

 

 しかし。

 

 モモカは、すっと右手を前に差し出しただけで止めていた。

 まるで高圧で放水された水が固い壁に当たり、四方に飛び散っていくように見えた。

 

 『多次元結界』に阻まれ、その哀れな荷電粒子は飛沫となって、周囲に飛び散り樹々を燃やし、地面を燃やす。

 

 荷電粒子砲が通用しないとみるや、瞬時に左腕を元に戻し。

 両太腿からマイクロミサイルを撃ち出した。

 200発のマイクロミサイルが、モモカを包み込む様に襲い掛かる、

 

 連続した爆発音が響き、次々とマイクロミサイルが命中していくように見えたが。

 爆発エネルギーも、マインドボムさえも歪曲した空間に曲げられ、あらぬところで爆発していた。

 

 『次元歪曲障壁(ディメンションフィールド)

 

 それを見たジラが、四肢をモモカ目掛けて飛ばす。

 

 『絶対刺突』を付与された四肢は、全方位からモモカ貫こうと迫るも。

 

 歪曲された空間に軌道を捻じ曲げられ、モモカの身体をすり抜けて行った。 

 全能力フルブーストを掛けてるモモカは、ジラを軽く凌駕する程であった。

 

 そこにヤエの完全制御で展開される、『次元歪曲障壁』。

 ジラの勝ち目は、この時点で完全に潰えていた。

 

「ありえない、ありえない、ありえない!」

 

 理解不能の感情に苛まれ、ジラはあらゆる攻撃をモモカに叩き込むが……その全てが空しく、空を切って行った。

 

 狂ったように四肢を操り、モモカを貫こうとするジラ。

 そうしてると、モモカが腰後ろに右手をやり、空間収納から武骨で大きな物を取り出す。

 

 ドッゴォオオオオン!

 

 大気と空間を震わさんばかりの激音が轟き渡る。

 

 金属の砕ける音と共に宙を飛んでいたジラの右腕が、球体関節ごと腕が粉々に砕け散っていた。

 

 究極金属(ヒヒイロカネ)を撃ち砕いたのは、モモカが右手に持つハンドガンと呼ぶには大きすぎる――

 リボルバー式のオートハンドキャノンであった。

 

 不規則軌道で飛行する残る三肢に、ゆっくりと銃口を動かしながら追っていく。

 ジラの予測演算を上回る、モモカの予測演算。

 

 狙いを定め、飛行する左脚の先の軌道に銃弾を撃ち込む。

 轟音が(とどろ)き左脚が粉砕され、発射の反動でシリンダーが回転し、ハンマーが引き起こされる。

 

 この発射機構は、リムルが転生前の世界の技術であり、マテバと言う銃の発射機構をシュナが再現したものである。

 

 本来なら強力な弾を撃つには不向きな機構だが。

 魔鋼製のパーツ一つ一つに強化術式を施し、それを可能にしていた。

 

 シュナが基本設計、監修をし、カイジンとベスターが改良を施した――

 ワンオフモデル。

 

 この銃の全データーは後に、リムルによって完全封印とされるほど、凶悪な代物に出来上がっていたのだ。

 

 〝魔導・オートリボルバー 〝朱式・零号 咢(AGITO〟 である。 

 

 弾頭 15.24mm 魔導複合爆裂徹甲弾芯・究極金属(ヒヒイロカネ)

 

 仕様カートリッジ SS-600極音速・魔導NE(ニトロエクスプレス)弾

 カートリッジ長89mm 弾頭込み107mm 弾頭幅15.24mm

 

 口径 60口径(15.24㎜)

 重量 6.2㎏

 全長 545㎜

 銃身長(バレル)330㎜

 ライフリング 七条右回り

 

 装弾数 5発

 射程距離 3000m

 

 シリンダーは側面が平坦な五角形で銃身は平たい長方形を横にした形で。

 銃口は下側に位置していた。 

 

 これは、往来のリボルバーみたいに銃身を上ではなく、下にしてあり。

 

 凄まじい反動を軽減する目的があった。

 銃の形もリムルが元居た世界の、マテバを参考にしていたのだ。

 

「な……なんなのですか、それは!?」

 

 見た事も無い武骨な銃にジラが声を上げる。

 

「あんたと同じ、科学技術の一つよ」

「では、あなたも旧東の帝国の技術者を捕獲したのですか!?」

「まさか。テンペストにはね、そんな事に長けた者達がいるのよ」

「そ、んな……」

 

 想定外、いや。

 

 カヤとモモカにはこのような技術は知る由も無いと、侮ったジラとネコマタの失態。

 

 このモモカの言葉を聞いても、ネコマタはジラに一言も声を掛けては来なかった。

 

「何故、究極金属(ヒヒイロカネ)を破壊で来たのですか!?」

「この銃の弾頭はね、同じ究極金属(ヒヒイロカネ)製なのよ。それに複合属性を付与した、特製の弾丸。一度に火 風 水 地 闇 光の六属性が襲うのよ。それと友人が魔術で合成した火薬を発射火薬にしてるから、威力はちょっとした大砲くらいあるわよ」

「そんな、馬鹿げた事が……できるのですかぁあああああああああああ!」

 

 完全に優位性を失い、狂ったように叫ぶジラ。

  

 残った左腕と右脚を操り、モモカに仕掛ける。

 

 右脚がモモカを牽制し、左後方斜めに回り込んだ左腕のカバーが三方向に開き。

 仕込み散弾銃の銃身を三つ出し、撃ち放った。

 

 そこへ、二つの銃声が重なる。

 

 ジラの仕込み散弾銃の発射音と、咢(AGITO の発射音だった。

 

 モモカは右手に持った咢(AGITOを左手に投げる様に持ち替え。

 前を向いたまま、銃口だけをジラの左腕に向け、トリガーを引いたのだ 

 

 撃ち出された無数のマイクロフレシェット弾は、咢(AGITO が発射した弾丸の勢いと衝撃波から来る複合属性により、全て蒸発していた。

 

 『絶対刺突』を付与されていたマイクロフレシェット弾とぶつかった事により、弾頭が変形し軌道を変えジラの左腕を掠めていく。

 

 しかし、SS-600極音速・魔導NE弾の秘めた凄まじい運動エネルギーは、掠めただけでジラの左腕を弾き飛ばし、ジラの制御を奪っていた。

 

 制御を失い宙を暴れ回る左腕を、咢(AGITO から発射された弾丸が撃ち砕く。

 

「リロード!」

 

 装填された弾を撃ち尽くし、モモカが声を上げる。

 自動術式で制御された、装填機構が瞬時に反応する。

 

 銃のシリンダーをロックしているラッチが動き、五角形のシリンダーが左側に振りだすように開く。

 

開くと同時に、シリンダー真ん中にあるエジェクションロッドが空になった五発の薬莢を、押し出すように吐き出す。

 

 ガキンガキン 重たい音を立てながら地面で空薬莢は跳ね踊る。

 

 そこへ〝黒呪符〟が表れ霧散すると、五角形に並んだSS-600極音速・魔導NE弾が瞬時に装填された。

 

 チィーーッと軽やかな機械音を鳴らしシリンダーが回転し、ガチャッと本体に戻る。

 

 撃鉄を引き起こし、モモカはすぐさま三連射を放つ。

 

 宙を飛び交う右脚を破壊し、ジラの本体に残る大腿部分を二つとも撃ち抜き破壊した。

 

「私が、私が、私が、私が、私が、私が……私が……負ける」

 

 私は 平安時代に 生まれ ネコマタ様に 仕えて来た なのに

 あの闇夜一族さえも 敵ではなかった それなのに

 なぜだ なぜ なぜに……

 

 ジラは『多次元結界』を張り巡らし、ジグザグに飛びながら口を開け。

 〝極・熱収束砲(ハイパー・ニュークリアカノン)〟を発射した。

 

 その刹那――

 

 ドンッ!と言う重低音が響き、モモカの周りが深さ十センチ、半径百メートルの円形状に陥没した。

 

 モモカに向かって一直線に進むその熱光線は、キュワンッと音を上げて、何かに捻じ曲げられたかの如く大きく湾曲し、モモカの後方に抜けて行った。

 

 光さえも屈折させる超高重力。

 それをモモカは『重力支配』で、発生させていたのだ。

 

 目に焼き付くモモカの鋭い眼光と、氷の微笑。

 

 ジラの感情が少しづつ恐れに――

 変わってゆく。

 

 フェイリュアワールドでさえ 私の 敵は いなかった なのに なぜ

 何千年もの間 ネコマタ様の お側で 仕えて来た この私が…… 

 わからない わからない わからない わからない 

 

 なぜですか モモカが ここまでつよいのは ありえない ありえません

 私は 私は ネコマタ様の眷属 いつから 眷属? 私は ジラ

 私は 私は 私は いったい 誰なのですか?

 

 記憶の混濁。

 心核の内で自問するジラの所へ、ネコマタの声が届く。

 

 ジラよ お主は 平安の世で 命を落とした 名も知れぬ 符術士じゃよ

 死んだ魂を 我が戯れに 使役したのが お主じゃ

 我の右腕を媒介にしてな

 

 生まれたのではなく? 使役する為に 魂を使われたと……?

 

 そうじゃ 元の記憶は とうに消え果てておるでな 

 今では 立派な 我の 手駒じゃ クカカカカカ

 

 私が手駒……ネコマタさまの右腕ではなく 只の 手駒

 

 我の右腕を使っておるから ある意味 右腕ではあるぞ クカカカカ

 

 嗤い声と共にジラの意識から、消え失せるネコマタの声

 

 私が 私が 私が 私が 私が 手駒……只の……手駒

 認めない 認めない 認めない 認めない

 

「認めない!!!」

 

 激昂にも似た感情がジラを支配し、叫ぶように声を張り上げた。

 

 狂ったように 〝極・熱収束砲(ハイパー・ニュークリアカノン)〟を乱射していった。

 

 キュワンッ、キュワンッ、唸りを上げ熱光線が幾条も湾曲し。

 モモカの後方の大地を、空しく焼いていく。

 

 轟音が二つ鳴り響き。

 

 「リロード!」の声と共に空になった薬莢が、宙に舞う。

 

 ジラは残る肘から肩までの両腕が、破壊される。

 破壊された衝撃でバランスを崩し、ふらふらと無防備に揺れ動いていた。

 

 チィーーッ ガシャッ 装填を終えた咢(AGITO を構えるモモカ。

 

「終わりにしましょう……ジラ」

 

 静かにモモカは言い――

 

 引き金を引いた。  

 

 ドッゴォォオオオンンンン

 

 銃声が山々に木霊した。

 

 頭部が、大きな果物の実が破裂するように弾け飛ぶ。

 

 二つ目の銃声が響き、腹と腰のパーツが砕け飛び散っていく。

 

 ばらばらと破壊されたパーツの破片が地面に落ちる中。

 更に三つの銃声が轟き、最後の胸のパーツも完全に破壊される。

 

 器を失い宙に漂うジラの〝魔核〟を、モモカが左手で掴む。

 〝魔核〟を掴んだまま、モモカはジラに問うた。

 

「ジラ。あんたが求めたものは、なんなの?」

 

 モモカはいきなりジラに、あんたが求めるもはなんだと問うた。

 

 何故そのような事を聞いたのか、モモカ自身にも分からなかった。

 ただ、自分を戦いで苦しめてきたジラの、追い求める物が知りたかったかもしれない。

 

 ジラは困惑した感情にも似たものに襲われながらも、答える。

 

 私が……求めたもの……それは……ネコマタ様の力に、なること

 

「違う。わたしが聞きたいのは、あんたが、あんた自身に求めたものよ」

 

 私が、私自身に……求めたもの…………ネコマタさ――

 

「違うでしょ! あんた自身が求めたものよ、答えなさい!」

 

 怒号にも似た声でモモカは、ジラに問い返す。

 

 ジラの求めたもの、ジラ自身の記憶は平安時代にいつの間にかネコマタの側にいて。

 

 ネコマタの求める事にだけ、答えて来たジラ。

 

 転生ではなく、使役する為に魂を使われ。

 その時に心核にある記憶の大部分が失われて、既に思い出すことも不可能に近かった。

 

 だが――

 魂に刻まれていたほんの僅かな記憶の一片が、ジラの記憶として蘇った。

 

 それは……奇跡にも近かった。

 

 一介の符術士であった頃の、僅かな記憶。

 

 大きな屋敷の燃え盛る炎に照らし出され、声高く嗤うネコマタの姿。

 

 ネコマタ討伐の為、集められた符術士の一人であった自分がそこに、いた。 

 

 次々と倒れる仲間たち、そして仲間が「茲良!」と呼ぶ声と同時にネコマタの爪で胸を貫かれる自分の姿。

  

 そこで、記憶の欠片の再生は終わる。

 

 私は……眷属ではなく……平安時代に生きた、符術士……だった 

 私は、ネコマタさまを 討伐する符術士の……一人、だった……

 モモカ 私の求めるものは 何も……何も、ありません

 

 モモカに流れ込んでくる、ジラの哀しみにも似た感情。

 ジラの〝憎念〟がモモカに喰われ、ジラ本来の魂がそこに具現化する。

 

「あんたも、元は……符術士だったのね」

 

 はい 記憶の欠片ですが……ネコマタ様に殺された、私がいました

 

「もう一度だけ、聞くわ。あんたは、何を求めるの?」

 

 私は、私の消滅を願い、求めます 

 二度とネコマタ様に 使役されないよう に……

 

「あんたの魂はもう転生すら出来ない程に、ボロボロだものね。あまりにも長い間、ネコマタの憎しみに晒され続けた、結果ね。使役される分には、何度でも再利用出来るけども……もう、限界ね。ネコマタもそれは分かってるから、捨て駒にされたのよ。あんたは」

 

 私は 後悔はしていませんよ 元あなたと同じ人間で 符術士だと しても

 確かに ネコマタ様が 憎むべき敵だったとしても 

 私は 自らの意思で あなたの一族を 手に入掛けましたからね

 そして……フェイリュアワールドでのことも

 

 その 業は 受けるべきでしょう

 

 おやりなさい モモカ

 

 

 ジラの言葉にはしっかりとした覚悟があり。

 今まで自分がやって来た事を、ネコマタの所為にも。

 誰の所為にもしない、己の意思でやったとモモカに告げる。

 

 モモカはジラの言葉を聞いても、何一つ表情を変えなかった。

 そして、握った左手の平を開けると、言霊を発する。

 

「我が御霊に捧げ給う。我が祈りに答え、荒ぶる力を解放せしめせ――滅せよ! 〝霊子崩壊(ディスインテグレ―ション)〟」

 

 左手の平に小型の積層型魔法陣が表れ、ジラの魔核を拘束する。

 光の粒子が魔核を包み込み、無へと導いていく。 

 

 消えゆく意識の中……ジラは

 

 礼は言いません

 

 〝あなたは、私の敵です〟………………

 

 ジラがモモカに告げた、最後の言葉。

 

 いつもの感情の無い言葉ではなかった。

 

 それは、少しおっとりとして、柔らかい言い様であった。

 

 恐らく、一人の符術士であり、〝茲良〟であった頃の言葉だったのかも、知れない。 

 

 完全に魂が消滅し、手の平に立ち昇っていた光の粒子も消え失せても、モモカは左手をジッと見つめていた。

 

 その目は――

 暗殺者が暗殺対象に向ける目であり、ジラの最後の言葉にすらも心を揺らすことは無かった。

 

 リロードを終え、最後の弾を装填し終えると。

 おもむろに二千メートル上空に飛び。

 

 狙いを定めると一気に五発連射をし、五つの要石を撃ち砕いた。

 

 最後の弾を撃ち終わった咢(AGITO の銃身とシリンダーに亀裂が走る。

 

「流石に複合属性には耐えれなかったか……」

 

 モモカはそう呟くと咢(AGITO を『転移黒呪符』でシュナの工房へと転送する。

 

 要石を破壊され、『位相空間結界』を解除された〝破幻城〟がその姿を曝け出す。

 

 いつの間にかモモカの横に来たカヤが、声を掛ける。

 

「モモカ。ジラを()ったんだね?」

「ええ。きっちり、殺したわ」

「そっか。じゃあ、あれをぶっこわそうか」

「そうね。残る(たま)は、あと一つ」

《いきましよう。モモカ、カヤ》

 

 上空から見下ろす二人をネコマタは、天守閣で不敵な笑みを浮かべて見上げていた。

 

 

 明かりの消えたシュナの工房の一室にある、台座。

 

 そこには、転送されて来た咢(AGITO が横たわるように、乗っていた。

 

 銃身とシリンダーに入った二つの細長い亀裂……。

 

 それはまるで、涙を流せないジラの涙の様にも見えていた。

 

 己がネコマタに殺され、使役されるために魂を使われたと分かったのにも関わらず……。

 

 最後まで、敬称で呼ぶことをやめなかった、ジラ。

 

 ネコマタとの間には、他者には判らない何かがあったのかも知れない。

 

 しかし、それを語る事の出来るジラは、もう……いない。

 

 

 ネコマタの眷属として、闇夜一族を壊滅状態に追いやったジラは、ここに死んだ。

 

 闇夜一族の生き残り、暗殺者モモカの手によって。

 

 

 




 八十五話を読んで頂き、ありがとうございます!

 次回の更新も読んで頂けたら、幸いです。




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