転生したらネコムスメなんだけどの件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。八十六話です。






八十六話 As if the Sky is Falling

 

 空に揺らめきながら二重に映る景色。

 

 片や大地を覆う影獣の群れ。

 

 〝破幻の(ことわり)〟が徐々に、リムル達がいる世界を蝕んでいく。

 

 〝破幻城〟天守閣にいるネコマタは片腕ともいえるジラを失っても、何食わぬ顔で上空にいるカヤとモモカを見上げていた。

 

 カヤとモモカはしばらくネコマタを見下ろし、地上へと降り立った。

 

 そこへ大地を黒々と埋め尽くす影獣の群れが押し寄せるも、モモカの展開した結界に阻まれ。

 

 見えない壁に弾かれ潰れ、霧散していった。

 

 モモカとカヤを中心に半径三キロに及ぶ空間が大地を覗かせ、ぽっかりと空いていた。

 

「よし、やるか!」 

 

 カヤが大きく口を開け、超魔力球を形成、超高圧縮していく。

 

 凄まじい魔力が集中し、カヤがいる空間が捻じ曲がって行った。

 ダシっと地面に両手を付き、四つん這いの構えを取る。

 

 コオォォォ 大気が震え振動し、カヤの尻尾がバタバタと暴れ動く。

 

《カヤ、超魔力球超高圧縮……まだ、いけます。全魔力無制限解放!》 

 

 ヤエの言葉と共に超魔力球が唸りを上げ、口の前に大中小、五枚の魔法陣が表れ回転を始める。

 

 体全体が発光し、次第にその輝きは大きくなっていった。 

 

「カヤ。体内に溜まった高熱の冷却は、任せなさい!」

 

 モモカが〝黒呪符〟の束を、首後ろから背骨に沿って五列並べる様に飛ばした。

 

 にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

 

 低く唸り声を上げるカヤ。

 

 体の発光が最大限になると。

 

 ふっと、その輝きが消えた――

 

 その刹那。

 

 う゛に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああああああああ!!

 

 最大出力〝荒暴砲口(フィアス・ブラスター)

 

 膨大な熱量により大気中の水分が蒸発し、水蒸気の煙を巻き上げる。。

 熱光線の走った後には燃え盛る炎の道が出来ていた。

 

「捻じ曲げよ、全ての物を!〝兇幻鏡(きょうげんきょう)〟」

 

 ネコマタが言霊を紡ぎ、パンッと短拍手を鳴らす。

 

 〝破幻城〟を包む空間が揺らぎ、〝荒暴砲口(フィアス・ブラスター)〟が直撃した。

 

 ギャギャッギャギャー! 耳を裂く程の金切り音を上げ、〝破幻城〟の周りの空間を。

 

 まるで紙にグシャグシャ―っと丸く落書きをしたみたく、熱光線が暴れ回る。

 

 暴れ回った熱光線は、〝破幻城〟真上に突き抜け、空の境界面で反射しブルムンド方面の大地に激突する。

 

 大地が噴火したがの如く爆破炎上し、大地を埋め尽くしていた影獣の群れを巻き上げ燃やし尽くしていった。

 

 ゴゴゴォォッ 大地が吠え地響きを起こし、巨大なキノコ雲が五千メートル上空にまで達していた。

 

「クカカカ。カヤよ、その程度では、我の防壁は貫けぬぞ」

 

 ネコマタが冷ややかに嗤い、言い放つ。

 

 それをテンペストの作戦室で見ていたベニマルが、信じられないと言った声を上げる。

 

「リムル様……あの熱光線は、一体どのくらいの魔力を秘めているのでしょうか?」

「さあな。言える事は、あいつらが現時点で最強と言う事だ……時限付きの、な(カヤ、無茶すんじゃねえぞ。魂の疲弊が速まるぞ)」 

 

 リムルは静かにベニマルに返し、内でカヤが限界を超えていく事に、無理とは分かっていても心情を呟く。

 

 ベニマルも何かを呟くように口を動かし、見ていたモニターに映るカヤに目を戻す。

 

 熱光線を吐き出したカヤの体は凄まじい熱で陽炎が立ち昇り、地面の土が焼け溶けマグマの様にぐつぐつと煮え立っていた。

 

「凍てつく吹雪、舞い狂え! 〝氷零散波(ひょうれいさんぱ)〟」

 

 カヤの背中に並んだ五つの〝黒呪符〟の束が扇状に開き、極低温の嵐でカヤを包む。

 

 バシュッーー 濛々と立つ極低温の白い煙がカヤ周辺に沸き起こる。

 

 シューッと冷気の塊が溶ける音が響き。 

 ババババン! 背中に開いた〝黒呪符〟の束が順番に弾け飛んで行った。

 

 白い煙が晴れた周辺は白く凍って、キラキラと輝いていた。

 

 カヤの体内冷却が瞬時に完了した。

 

「くそー。仕方ない、未完成だけどあれやるか。ヤエ、補助頼むわ」

《未完成? カヤ、お姉ちゃんに任せなさい! 今すぐに完成させて見せます! でも、即席なので一発が限度です!》

「上等! ヤエお姉ちゃん――いくよ!!」

《はい!!》

 

 二人の意思が一つになり、凄まじい速さで術式が構築されていく。

 

 カヤが魔力を集中、更に多次元に働きかける様に魔力を練り込む。

 ヤエは、その制御術式を次々と構築、展開していった。

 

 世界の言葉が響き渡る。

 

《次元歪曲障壁干渉術式を確認……成功しました》

《次元魔力圧縮術式を確認……成功しました》

《空間歪曲補正術式を確認……成功しました》

《次元魔力砲術式を確認……成功しました》

《四つの術式を統合……新たな次元攻撃術式を一度切りの限定で確認……成功しました》

 

 カヤはヴェルドラの所でSFマンガを読み漁り、魔術やスキルで再現できる物を片っ端から試していたのだ。

 

 これもSFマンガにあった架空の次元兵器を、模倣した物であった。

 

 カヤの、恐るべき戦闘センス。

 

 それは人間の頃から他流派の技でも貪欲に取り込み、自分の技に昇華する才能があった。 

 

 この貪欲さが、また新たな技を生み出したのだ。

 

 右手を開いて前に突き出し、その右手に開いた左手を重ねる。

 

 その開いた手の前に直径一メートルの魔法陣が表れ、うねりと共に空間が渦を巻くように回転していく。

 

 右足を前に出し、左足を後ろに引きながら少し腰を落とし、踏ん張るように構えるカヤ。

 

 魔法陣の中心の空間が渦を巻き、周囲の魔素を取り込み、輝きを増していく。

 

《極・超魔力縮退炉術式の全力運転を開始。空間歪曲補正を開始……補正完了。次元魔力圧縮……臨界点突破。重力アンカー展開……完了。カヤ! いつでも撃てますよ!!》

 

「あいよ、ヤエ」

 

 ヤエの呼び掛けに静かに答え、目を閉じる。

 

 閉じた目をカッと見開いた瞬間――。

 周囲の魔素を吸収していた魔法陣が、前方に二十枚現れ、砲身のような形になる。 

 

「いっけええええええええええ!! 〝次元魔導砲〟(ディメンション・ソーサリーカノン)!!」

 

 クワアァっと白色の輝きがカヤを包み、それは撃ち出された。

 

 極太の次元魔導粒子が〝破幻城〟に向かって突き進む。

 

 その光線はカヤの体を覆い隠す程に大きく、膨大なエネルギーと莫大な反動は。

 

 『重力支配』で自身の身体を周囲の空間に固定したにも関わらず、カヤの体はズズズッと後退していき。

 

 踏ん張る両足が地面を浅く削りながら、二本の線を描いていった。

 

「笑止! 抜かせはせぬぞ!」

 

 またネコマタも、全力で『次元歪曲障壁(ディメンションフィールド)』を展開していき、そこに次元魔力粒子光線が直撃、した。

 

 次元魔力粒子光線は周囲の空間を歪めながら、直進しようとけたたましい音を響かせる。 

 

 〝破幻城〟前方に展開された『次元歪曲障壁(ディメンションフィールド)』が、波打つように大きくたわみ始めていくが、次元魔力粒子光線は少しずつ押し返され始めていった。

 

「カヤよ。我の障壁は破れぬぞえ。クカッ」

「ぬかせ、ネコマタ! ヤエェーー リミッターを切れーー! オーバーブーストォオーー!」

《はい、カヤ! 神・狂乱舞のリミッターを解除します! オーバーブースト! リミットは、七秒です!》

 

 神・狂乱舞の制御術式が停止され、一時的に暴走状態を作り出す。

 

 その枷を外された力は、作戦室のEP計測器の針を数秒だけ振り切らせていた。

 

 荒れ狂った魔素粒子がカヤの体から溢れ。

 その暴走した強大なエネルギーは、カヤの身体構成を破壊し始めていく。

 

「つ・ら・ぬ・けぇええええええええ!」

「させぬわぁあああああああああ!!」

 

 互いの次元を操る力がぶつかり合う。

 

「うぅぅぅぅ……がぁあああああああああ!!」

「ぬっ? なにぃ!?」

 

 ぐにゃりと湾曲した空間障壁が、次元魔力粒子光線に貫かれた。

 

 暴走したカヤの力が、ネコマタの『次元歪曲障壁(ディメンションフィールド)』を貫通し、〝破幻城〟の真ん中で停止する――

 

 その停止した荒れ狂う膨大なエネルギーは、巨大な次元魔力粒子球となる。 

 

()ぜろ!!」

 

 重ね合わせた両手の平を、左右に開く。

 

 すると、〝破幻城〟中心にある、次元魔力粒子球が爆散した。

 

 まるで大花火の様に散り、幾筋もの光の軌跡を描きながら散りゆく次元魔力粒子の光り。

 

 そこへ、カヤが左右に広げた両手を、胸の前で叩き合わせる。

 

 パンと短拍手の音と同時に――

 

 言霊を発す。

 

「〝滅星乱華(めっせいらんか)〟!」

 

 散った次元魔力粒子光が〝破幻城〟を流星が降るかの如く包み上げ、破壊してゆく。

 

 空を焦がす程の爆炎の中、〝破幻城〟は真の姿である巨大な勾玉の姿を、露わにした。

 

 やがて、その巨大な勾玉のあちこちに亀裂が走り始め。

 

 積み木が崩れる様に、ガラガラと崩れ始めていった。

 

 ズンと地響きを上げ、崩れた勾玉の破片が大地に次々と突き刺さっていく。

 

 〝破幻城〟があった周辺は、土煙に覆われ薄暗くなっていた。

 

「ヤエ……魂の疲弊はどのくらい、いった?」 

 

 〝破幻城〟を破壊したカヤはその場に片膝を付き、肩で大きく息を吐く仕草をし。

 

 それをモモカが隣に来て、支える様に抱き起す。

 

《……凡そ、二十%くらいですね》

「そっか。じゃあ、まだ許容範囲だな」

《ええ。でも、どのみち死力を尽くさねば、ネコマタは倒せません。カヤ、モモカ。私が全力でサポートします。倒しましょう、ネコマタを!!》

「そだね。第二ラウンドを始めようか!」

「そうね、カヤ、ヤエ。討伐依頼は果たすわよ。乱破ノ者として、闇夜一族の生き残りとして!!」

《いきましょう! カヤ、モモカ!!》

 

 制御術式が再び起動し、カヤが〝次元魔導砲〟で負ったダメージを、神速再生で修復する。

 

「よもや、〝破幻城〟を破壊されるとは思っても、みなかったぞえ。カヤ、モモカよ」

 

 立ち込める土煙の中から優雅に歩き近づいてくるネコマタは、顔色一つ変えず。

 二人に向け、言葉を投げ掛けてきた。

 

 赤い牡丹の柄が入った黒色の着物を着流して、カラカラとぽっくり下駄の音を鳴らし歩き。

 

 腰下まである黒髪が妖しく風に揺れ、その美しい顔に死を呼ぶ笑みを湛えていた。

 

 ピンと立った猫耳に、二つに分かれた尻尾がゆらゆらと左右に揺れ動く。

 

「既に、次の段階には移行したのでな。〝破幻城〟を破棄されても、痛くも痒くもないぞえ。まあ、またあの勾玉を作るには膨大な時間が掛かるがな。それも、お前たちを殺して、この世界の(ことわり)を作り変え。ゆっくりやると、しようぞ。クカカカカ」

 

 右手小指で唇に(べに)をさす仕草をしながら、兇気に(まみ)れた笑みで嗤う。

 

「さてさて 小娘どもよ。我がその魂を、喰ろうてやろうぞ。我の中で、〝憎念〟に喰われ続け、永劫に苛まれるがよいわ!!」 

 

 カララッとぽっくり下駄を脱ぎ捨て、右手に反りの入った野太刀を帯の空間収納から取り出す。

 

 刃長六尺六寸(200cm)の野太刀・夜叉

 夜叉を軽々と右片手で回し、トンと右肩に担ぐ様に構える。

 

 対するカヤも、千鳥の鯉口を切り、角帯から少し前に押し出し構える。

 モモカは腰後ろの鈴蘭の柄に逆手で手を掛け、左手の指に〝黒呪符〟を挟み構える。

 

 

 空一面に映る境界面が揺らぎを増し、リムル達がいる世界を星ごと飲み込もうと、ゆっくり静かに動き出し始めた。

 

 まるで。

 

 空が落ちてくるかの如く(As if the Sky is Falling )

 

 




 八十六話を読んで頂き、本当にありがとうございます!

 次回の更新も読んで頂けたら、幸いです。




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