延期の延期でしたが、内容は……めっちゃ面白かったです!!!
では、お待たせしました。八十八話です。
チリリッ チリッ
〝
バジュッ
肉塊が潰れるような音が鳴り。
カヤとモモカの体が魔素粒子となり、霧散していった。
ネコマタは固く握りしめた手の平を開き。
淡く青白い光を放つ小さな玉を目を細め眺めて、宣う
「クカカッ。お前らがどう足掻こうとも、この世界に満ちる〝憎念〟には――勝てぬぞ」
その光景をモニターで見ていたリムルは、そこから強引にネコマタの所へ『空間転移』しようとする。
だが――
《
『シエルさん。俺は出るぞ!』
《ヤエが言ってます。絶対に出ては駄目だと》
『魂が喰われるぞネコマタに! シエルさん!』
座標を確認し『空間転移』を発動したが、シエルが『空間転移』の発動を止め。
すかさずリムルへ、今から起こる事への説明をする。
《今さっき、ヤエから
『言伝だ、と?』
《はい。最終手段を使うと》
『なんだ、それは?』
《予知夢でみたネコマタへの、対抗手段だと言っていました》
『俺達に言ってない事、なのか?』
《はい。今しがたヤエから聞かされました。ネコマタが神にも等しい力を得て……〝憎念〟の〝
『おい、それって……二度と確定存在には、戻れなくなるよな!?』
《……はい。ヤエからの言伝は、《ごめんなさい。私達は最後の命の炎を使い。ネコマタを倒します》と、疑似魂の回廊を通じて届きました。おそらく、ネコマタの『因果律操作』に対抗する為に、己をどこにでもいる。しかし、どこにもいない、存在にするのでしょう》
それを聞いたリムルはモニターに向かって……。
「ば……っかやろうが!」
と、いきなり声を上げたリムル。
モニターを見ていたベニマル達が驚き、そんなリムルを見る。
ヴェルドラだけは、腕を組んだままモニターから視線を動かさなかった。
ベニマルが何か言おうとリムルを見るが……。
リムルの怒りではない何かに満ちた顔を見て、何も言い出せなかった。
《ヤエ……あなたは、主と共に消える事を良しとするのですか?……私は諦めませんよ。
ヤエに疑似魂の回廊を通じてシエルは、自分の意思を告げるが。
チリッチリッと走るノイズの音しか、返って来なかった。
シエルは疑似魂の回廊を一度解体し、新たに再構築した真・疑似魂の回廊を強引に繋げていく。
それは、リムルのスキル『時空間支配』を用いた、次元を超えて繋がる回廊。
そして凄まじい勢いで深層意識へと至る階層を、防壁を破りながら突き進んでいく。
モモカが魂に掛けた術を解明する、為に。
同時刻。
レオンの居城で、贅沢な飾りで作られた丸いテーブルに着き、中継水晶球の映像を見ている。レオン、ギィ、ディアブロ。
ディアブロはカヤの千鳥とモモカの鈴蘭が折られたのを見ていて……何か意味深な事を事無げに言う。
「ふーむ……おかしいですねぇ。あの千鳥と鈴蘭が折られるなんて。あれは、この世界の魔剣に似た物に、みえましたが。それも、いわくつきの魔剣と酷似する……何か」
「おい、ディアブロ。お前にも、そう見えたのか?」
「ええ、ギィ。あれは妖刀の類ではなく、恐らく魔剣。それも、かなり古い魔剣だと、感じましたね」
「そうだな。ありゃ、太古の魔剣の類だ。それも――ヴェルダが子を成す前の、な」
レオンの配下が入れたお茶を飲みつつギィが、ディアブロに答える。
二人の話の意味が判らないのと、話しに入るタイミングを逃したレオンは静かに二人の話に耳を傾ける。
「……!? ギィ。もしかしてその魔剣は、名も無き魔人が己の魂と引き換えに、打ち鍛えた魔剣では? ある意味呪いとも言える力を有し、持ち主の記憶と技をその刃に刻みし魔剣……でしたか?」
「ああ……その魔剣は、神をも殺すと言われていたな、確か。だが、あの魔剣は作りし者の魂を喰らい、その持ち主と共に、ヴェルダナーヴァに戦いを挑んだ。その中であの魔剣は、持ち主を狂戦士と化し、ヴェルダナーヴァを追い詰めたんだが――」
「結局は、ヴェルダナーヴァに討伐されたと?」
「ああ。最後は、完膚なきまでに叩き潰され、あの魔剣は砕かれたはずだ」
「なるほど。その砕かれた破片が、別の世界に行きつく可能性は――あると思いますか?」
「さあな。オレの聞いた話は、あの魔剣はあまりにも禍々しい力を持っているから、永遠に虚無へと葬り去ったと言ってたな、ヴェルダは」
「なるほど……」
そこまで聞くとディアブロは顎に左手をやり、思案に耽る。
二人は『思考加速』を用いた会話をしており、現実時間の中では、まだ二秒にも満たなかった。
「ところで、ギィ」
「なんだ?」
「その魔剣は、ブロードソードのような剣なのですか?」
「いや、違う。ヴェルダから『思念伝達』で見せてもらった魔剣は……武骨でデカく、両刃で分厚く長い大剣だったな」
「ほほう。ならば、あれは別の剣ですか――」
「ああ、あれはな。剣の姿を、自在に変えられたらしいぜ」
「ふむ。では、もしもですよ。ヴェルダナーヴァが死去した時に、虚無の封印が解けて――カヤたちのいる世界に、時空を渡って辿り着いたとは、考えられませんか?」
「それこそ、ありえないだろうが! いくらあの魔剣が持ち主の魂を喰らうとしても、自我があるわけではないからな。自らの意思で、時空間を渡るなど……など……」
「どうしました? ギィ」
「いや、あれだ。そういや、千鳥と鈴蘭は持ち主の記憶を記録する、だったな?」
「ええ。二人は、そう話していたではないですか」
「いや、あの時は深くは考えていなかったんだがよ。あの刀の放つ
「私は気付いていましたよ。ギィ。ククク」
「チッ」
ディアブロが軽く嗤いながら言ったのに対してギィは小さく舌打ちをするも、話の続きをしていく。
「だがな、一つ疑問点がある。もしもだ――あれが、あの魔剣の成れの果てならば、何故、カヤとモモカの魂を喰わないんだ?」
「何、簡単なことですよ。あの魔剣が真の主として、二人を選んだのでしょう。どう言う経緯であの世界に流れ着いたのかはわかりませんが。ナハトがあの世界にいく前から、いたのでしょう。そして、力ある者が魔剣の破片を見つけ、槍と刀に打ち直したのではと。そう、推測しますけどね」
「そして、それが巡り巡って、闇夜一族の手に渡ったと……いう事か?」
「あれが、その魔剣なら。因果な話ですけど、ね」
「ほんとにな。ヴェルダを苦しめた魔剣が、またこの世界に返って来たんだからな」
「でも、ギィ。あれが、あの魔剣だという確率は、無きにしも非ずですよ? ククッ」
「無きにしも非ず、か……。言い得て妙だな。 ははっ」
二人顔を突き合わせて笑う姿に、レオンは半分理解出来ないものの、カヤともモモカが持つ剣。
元々はこの世界にあった剣だとは、理解出来た。
何故なら、レオンが一度だけカヤと手合わせをした時に感じた。千鳥が放つ妖気が、この世界の妖気と変わりなかったのを感じていたからだ。
(因果は巡るか……)
ポソリ呟くレオンにギィがどうした? 言う様に顔を向けるも、レオンは何でないと言った顔をする。
水晶球の中継映像に目を戻しディアブロとギィは、カヤとモモカの〝魔核〟が砕かれ、今まさにネコマタに喰われようとしてるのを、何食わぬ顔で見ていた。
その
そこへギィが、何かを思い出したようにディアブロに告げた。
「そうそう、ヴェルダが言っていたのを思い出したんだがよ。その魔人は、時空間を渡るユニークスキルを持っていたそうだ。制限付きらしいけどな」
「ほおぉ……」
それを聞き、ディアブロの目が鋭く細くなる。
カヤ モモカ 見せて見なさい 更なる可能性を
我ら悪魔族の魂血を持つ者 カヤ モモカ
私の眷属として 生まれた ナハト の 娘たち
このまま
無様な 姿を 晒すなら この 私が 直々に 殺しに
いきますよ
水晶球に映る映像に向かって、ディアブロが。唇だけを動かし、言う。
その顔は冷淡に満ちていても。
何故か、得も言えぬ顔付であった。
ゆらゆらと揺れ上がるネコマタの、業血の魔素粒子。
赤く血に染まったかのような粒子が舞う。
「さてさて。お前らは、我の糧となれ!!」
そう声を上げると、両手に持った魂を、ゴクリと飲み込んだ。
はあぁっと恍惚の表情を浮かべ、右手の指でスーッと喉を撫でていく。
チリッ
チリリッ
チリリリリリッ
チリリッ チリリ チリッ チリリリリリッ……
ヂリッ!
激しいノイズが空間を掛け走る。
「な、なんじゃ、このノイズは!?」
いきなり頭に響くノイズにネコマタは顔をしかめ、額に手をやる。
急な静けさがネコマタを襲い。
大気に流れていた、風が……
凪いだ。
何かが囁く……二つの声が聞こえてくる。
流れ聞こえる
あたしは どこにでもいる
でも わたしは そこには いない
しかし あたしは わたしは
そこに いる
しかして
あんたは あたし
あなたは わたし
なにものでもない あたし と わたしが
ここに
いる
ギイィッーーーーーーーン!!
空間が弾け、ネコマタが胸を掻きむしる。
「があぁああああああああっ! な、な、何がおこったのじゃぁあああああああ! ぐぉおっ……」
口を大きく開けたまま、空を見上げ。
動きを止めた、ネコマタ。
静寂が周辺を包んでいった――
刹那!
ネコマタの頭が凄まじい破裂音を上げ、弾け飛んだ。
ビクビクと揺れ動く、体。
頭を無くした首の千切れ部分から。
二つの淡く光る小さな小さな玉が、踊り飛びだして来た。
その光る小さな玉はネコマタから少し離れた所で停止し、宙に漂いながら膨大な青白い魔素粒子を吐き出し始めた。
それは……。
星を覆い尽くす程に、広がっていき。
リムルのいる世界、星を瞬く間に覆い尽くした。
ネコマタは体内の魔力回路を、修復不可能な位に引き裂かれていて、『因果律操作』を発動する為に己の〝魔核〟を、握りつぶした。
バッと散るように消え去り――
ネコマタが死を無かったことにし、復活する。
未だ青白い魔素粒子を吐き出し続ける小さく光る二つの玉を、訝し気に見つめ言葉を吐いた。
お前は 誰だ?
その問いに答えるかのように。
二つの光る小さい玉は、まるでメビウスの輪が捻じれるかの如く自身を変化させ。
周辺の時空間を捻じ曲げて行った。
捻じれ 交わる 次元空間。
捻じれ交わる空間が二つに割れ……。
二つの影を、作り出していく。
その玉がある空間だけ、凄まじい時空間の嵐が巻き起こっていて。
あらゆる事象が、次々と起こり、消滅していった。
その二つの影が、次第に人の形を取り始めていく。
黙ったままその光景を見ていたネコマタが。
もう一度。
それに、問うた。
お前は 何者だ?
八十八話を読んで頂き、ありがとうございます!
次回の更新も読んで頂けたら、幸いです。