真理と倫華と絢人と海天   作:豊穣 真倫

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とある少年の絶望

後悔、憤怒、悲哀、嫉妬、憎悪…

そういうドス黒い感情がごちゃ混ぜになって出来た混沌の自己嫌悪は内側から身体を押し潰さんばかりの超重力を持っていて

まるで光すら闇に消えるブラックホールのようなもので

僕にもあるはずの楽しいこと、嬉しいことも無限の闇に呑まれていく

逃げることはできるかもしれないけれど、それは罪のような気がして

さらに闇は広がっていく

悪循環だってことはわかってる…

でも、僕には戻る手立てがない…だから

 

ただ…留まるしか無かったんだ

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

僕は昔から気が弱くて、外ではしゃぐような質ではなかったから

幼い頃は姉に連れて女の子達と一緒に遊んでいた

姉とは誕生日こそ1日ずれているけれど双子で、いつも一緒いた

大きな違いは誕生日と性格と…性別だけだった

好きなアニメも、好きなキャラクターも

好きな食べ物も好きな服も一緒だった

一緒…すぎたんだ

 

小学校に上がる頃母に言われた

「自分を名前で呼ぶのはもう止しなさい。これからは僕って言うの」

それまでの僕は自分のことを名前で呼んでいた

でも、僕は僕というのは嫌だった

周りにそれを使っている子はいなかったし、なんというか、利口さを体現しないといけない気がして嫌だった

だから、僕は聞いた。

周りで一番使われてた名前以外の一人称…「あたしじゃ駄目なの?」と

母は言った「僕にしなさい」

その頃から服も別に用意された

僕は可愛いものがよかったのに全く見ていない流行りの戦隊ものとか乗り物の柄とかを着せられた

 

…そして、姉との違いが増えた

 

小学校に上がってしばらくして、父は言った「男の子の友達はいないのか?」と

僕はその意図がよくわからなかったけど、ただ「いない」と事実を答えた

女の子の友達は沢山とはいかなくともそれなりにいたから、僕は十分だと思っていたし、姉とも一緒だったから問題ないと思っていた

父は言った「女の子と遊ぶより男の子と遊びなさい」と

僕は…それがよく理解出来なかった

だから、その時は空返事を返して終わった

 

なぜならそもそも僕は周りの男子とうまく馴染めていなかったから

その時はさほど気にしてはいなかったが、どうやら僕という一人称は可笑しいようで、嘲笑ばかりしてくる男子連中とは仲良くしようと思えなかった

 

それから一年ほど経った頃だろうか

少し強めに「遊ぶなら男の子にしなさい」と言われた

僕にはそれは命令のように聞こえた

そして、呪いの言葉でもあった

 

僕は男の子達に話かけようとして…遊ぼうとして…

 

でも僕は…男の子とうまく付き合えなかった

 

でも…女の子と遊ぶのは駄目で

 

だから…

誰とも遊べなくなった

 

また…姉との距離が出来た

 

ランドセルもすっかり板についた頃、一番はしゃぐ年代となっても、僕は一人静かに過ごしていた

自然と人と話すこともなくなっていき、休み時間には本を読む

そんな寂しくも平穏な日々が日常と化していた

 

そんな頃、変化は突如としてやってくる

 

「おい、オカマ」

急になんだ?と顔をあげるとクラスの男子が見下ろしている

僕にはその理由が…なんとなくわかってしまった

 

あぁ…そうか…とうとう僕も的か

 

いじめ…別にこの程度ならたいした事じゃない

でも、僕の前にいたのは一人じゃ無かった

四人のグループ…この程度で終わらないのは予想できた

僕は無視を決め込もうと…再び本に目を落とし、やり過ごす事にした

 

…が、今思えばそれが悪手だったのかもしれない

 

図書室から借りた本は数枚のページを無造作に掴まれ、読み進めなくなった

それでも僕は本に視線を落とし続けた

その結果…激情した手によってページは紙くずと成り果てた

流石に僕は慌てて…そして、そのふざけた笑みが頭に来て

相手を突飛ばし、罵倒した

 

しかし、相手は集団で勝ち目などなく

幾度か殴る蹴るされながら押さえられた

そのうち人が集まって来て、先生が来て…

いつの間にか悪者にされていた

 

四人のうち一人は当事者、三人は後から入ってきた仲裁者なのだと

先に暴行を加えたのは僕なのは確かだが

なぜか本を投げつけ、破ったのも僕になってるらしい

そして、意味もわからない謝罪をさせられた

 

その後、親にも連絡がいった

僕は帰ってから泣きそうになりながら事実を釈明した

 

…でも

 

僕は相手の家まで連れていかれまた謝罪させられた

相手の親に釈明しようとしても父に殴られ黙らされた

 

あぁ…そうか…世の中ってこういうものなのかと…僕はその時思ったんだ

 

その後、いじめはエスカレートしていった

なんとなくそうなる気はしていたから意外と覚悟は出来ていた

…いや、諦めていた

 

そうして僕は、他人と距離を置いた

 

中学に上がって頻繁に耳にする

友人、恋人、友人、恋人、恋人…

 

「恋人ができたらお父さんたちに紹介しなさい」と言う

その口で

女子と遊ぶなと言った口で

 

「何かあったら力になるぞ」と肩を叩く

その手で

問答無用に殴った手で

 

その時、何かが僕の中で切れた

 

真顔のまま頬を暖かい涙が伝う

 

(あぁ…なんとも思ってないんだ。覚えてすらいないのかもしれない。僕が忠実に従った言葉を。あの呪いを。大したことないと思っていたんだ。必死にすがった僕の手を。助けを求めた言葉を。)

 

それからしばらくして…僕は人と関わるのをやめ、人を嫌い、人を憎み、人を恐怖し、己を嫌い、己を蔑み、己を悲哀し、そして部屋から出なくなった

 

人生には後悔しかない、元凶には怒りしかない、境遇には悲しみしかない、他人には嫉妬しかない、運命には憎悪しかない…そして、そんな考えを持ってしまう自分自身にはそれらを合わせても全く足りない程に嫌悪しかわかないんだ

 

でも、僕は知らなかった

姉が僕に近づこうとしてくれていたことに

 

離れてしまった距離を

 

隔てた壁を

 

僕以上に傷つきながら

越えようとしてくれていたことに

 

この時の僕はまだ気付けていなかったんだ

 

僕にとって姉が大事だったように

姉も僕のことを思っていてくれたことを

 

誰よりも近くにいたはずの人の思いに




2部か3部構成かのうちの真っ黒黒な前編って感じ?
とはいえ、何度か試し書きしてた時よりはだいぶマイルドになっている…はず(´・ω・`)たぶん
前回の流れに沿わせようとも思っていたのだけど…うまく出来ずに別枠に(。>д<)
というか、こっちは後に持ってくるつもりだったけどごっちゃになりすぎて順番入れ換えたってのが理由(;^∀^)
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