「それで、どういうことか説明しなさい」
お互いに自己紹介を終えたところに、オルガマリーが再び説明を要求してきた。
「その前に移動しませんか。また敵が来ても面倒なので」
「それもそうね。ロマン、案内しなさい」
『案内はいいけど、葵君大丈夫かい?軽くスキャンしたけどバイタルがやばいよ』
「まあ、それはあとで説明するよ」
管制室にいるロマニの言葉に心当たりがある葵はどうにか誤魔化す。
移動しようとすると、ケイローンがある建物を見つめていた。
「どうしたんだ、アーチャー?」
「どうやらもう一騎いたようです。そろそろ出てきたらどうですか?」
大きな声で呼びかけると、フードを被った男が現れた。
「おっと待ちな。こっちには戦う気はねえよ」
「そうですね。貴方からは戦意を感じられませんからね」
フードを被った男は敵ではないと言うが、この状況ではそう簡単には信じられない。
「敵ではないなら貴方は味方なのか?」
葵が訊ねると、男はフードを取り払う。
「ああ。俺はあんたらと契約をしに来た」
フードを取り払った青い髪の男はそう告げてきた。
「契約・・・ね。契約するかは貴方の目的を訊いてからだ。その間は何て呼べば良い?」
「そうだな。真名はまだ言えねえからキャスターと呼んでくれ」
キャスターという名前から、男のクラスはキャスターなのだろう。
「なら今は移動するが、貴方もいいか?」
「構わねえぜ。それにお前何か顔色がやばそうだしな」
キャスターの了承も得て、葵達は安全な場所に移動することになった。
移動中、誰も喋る事なくロマニ指示に従い、一行は無人の校舎に到着した。
校舎に入って近くに教室に入ると、さっそくオルガマリーが葵に近づいてきた。
「それじゃあどうして此処にいて、サーヴァントと契約してるのか教えなさい」
「わかりました。此処にいる理由はそちらの藤丸達と同じですよ」
「同じ?貴方はレイシフトルームのコフィンで準備していたはずよ」
「これを持っていこうと思って自室に戻ってたんです」
そう言って葵はオルガマリーにケースを見せる。
「これのためにわざわざ戻ったの?」
「はい。所長が用意してくれた
その後の話はオルガマリーは分かった様子だ。
「なるほど。貴方が此処に理由は分かったわ。それで何でサーヴァントを召喚して契約しているのかしら?」
「ここにレイシフトした後にスケルトンの集団に襲われたんです」
その言葉にオルガマリーは嫌そうな表情になった。
オルガマリー自身もスケルトンに襲われた事があるからだ。
「流石に集団相手に戦っても勝てませんし、逃げても延々と追いかけてくるんですよ」
葵もその時の事を思い出したのか嫌そうな表情になっていた。
「それで唯一生き残れる可能性がある召喚を行ったんです」
「なるほどね。・・・ん?ねえ、どうやって魔法陣を描いたの?ここにはそんな事が出来る物はないはずよ」
「まあ、それはどうにか・・・」
そこで葵はあからさまに目をそらし、オルガマリーは葵の顔色の悪い様子から何で魔法陣を描いたのか気づいた。
「まさか自分の血で描いたの!馬鹿でしょ!下手すれば出血多量で死ぬわよ!」
大人しく話を聞いていた立香達は驚くと同時に、心配そうな表情で葵を見る。
『だからあんなにバイタルが酷かったんだね。無理しすぎだよ』
「大丈夫なんですか、葵さん?」
「まあ、本当の事を言うならあまり良いとはいえないな。でも、今はこの特異点をどうにかしないと」
心配そうにマシュが訊いてきて、良くないと答える。
「はぁ・・・。確かに今は彼の言うとおり、この特異点を解決することが私達の優先目標よ」
「あの、所長?」
「何かしら、藤丸立香?」
「葵さんにはここで休んで貰うべき方がいいんじゃないでしょうか?」
葵の体調を心配して立香が提案してきた。
「駄目よ」
立香の提案をオルガマリーは一考せずに却下する。
「今此処で休んでいても意味はないわ。この特異点を解決しない限りね」
「でも・・・」
「心配してくれるのはありがたいが、所長の言うとおりこの特異点をどうにかしないと今休んでも意味はない。それに心配してくれるなら速く解決して休ませてくれるかな」
「本当なら休んで貰いたいけど、わかった」
立香は納得していないが、今回は仕方ないと納得した。
「それで、貴方が召喚したサーヴァントのクラスと真名はわかってるわよね?」
真名を訊かれ、葵はケイローンの方を見る。
クラスを話す事に関しては問題ないが、真名を明かすとなると話すべきか迷ってしまう。
ケイローンは頷いて明かしてもいい事を示す。
「彼のクラスはアーチャー。真名はケイローンです」
「け、ケイローンですって!?」
『そ、それは本当かい葵君!」
オルガマリーとロマンは明かされた真名に狼狽えていた。
「ねえマシュ、ケイローンってどんな人なの?」
そんな中、ケイローンを知らない立香はマシュに尋ねる。
「え!?先輩はケイローンを知らないんですか!?」
「あ~うん」
恥ずかしそうに目線をそらし、頬をかきながら立香は頷く。
『いいかい立香ちゃん。ケイローンはゼウスの父クロノスと、島の女神ピリュラーとの間に生まれ、ヘラクレスやアキレウスにアスクレピオスといった大英雄を教え導いた超有名な英雄なんだよ』
「へえ~先生みたいな英雄だね」
ロマニから簡単な説明を受けた立香は最初に思った事を口に出していた。
「先生ですか?確かに彼等は中々手のかかる生徒でしたね」
先生という言葉とヘラクレス達の名前にケイローンは懐かしそうな表情をしていた。
「とはいえ、ケイローン程の英雄が味方とは心強いわね」
ケイローンが召喚された事が嬉しかったのか、オルガマリーは上機嫌だった。
「話は終わったか?」
そこへこれまで黙っていたキャスターが話しかけてきた。
『ええ。それでキャスター、貴方の目的は何ですか?』
ロマニが代表して、キャスターに目的を問う。
「目的はただ一つだ。セイバーを倒すのに手を貸して貰うそれだけだ」
それからキャスターからこの街で起こった事について説明して貰った。
この冬木では七騎の英霊による大聖杯を巡った聖杯戦争が行われていた。
そして、突然一夜で街は炎に覆われ、人間がいなくなってサーヴァントだけが残されるという原因不明の事態が発生した。
そんな中、セイバーだけが聖杯戦争を再開し、アーチャー、ランサー、ライダー、アサシン、バーサーカーを次々と倒した。
倒されたサーヴァント達は黒い泥のような物に汚染されてしまい、街にはスケルトンといった怪物が何処からか湧き出て、この街を跋扈するようになった。
どうにか生き残ったキャスターはセイバーを倒そうと立ち向かった。
だが、結果は大惨敗で逃げ延びる事で精一杯だったようだ。
「キャスターじゃなくてランサーだったら勝てたんだがよ」
本人は自分のクラスに不満を言いながらも説明を続ける。
そうして今まで生き残っていたところに自分達が現われた。
キャスターはセイバーを倒すために共闘を申し込みに来たというわけであった。
「何よただ自分のために私達を利用するだけじゃない」
「でも、悪い事では無いと思いますよ所長」
「そんな事はわかってるわよ」
「ケイローン、貴方の考えはどうなんだ」
こういった事へのサーヴァントの意見は重要だと思い尋ねる。
「ええ。私も彼と手を組む事は賛成です」
ケイローンも手を組む事に賛成し、葵達はキャスターと手を組む事が決定した。
「それで一時だが契約するしてもどっちと契約すれば良いんだ?」
マスターは葵と立香の二人だけなので、どちらかと契約しなければいけない。
「ここはマスターでは無く彼女と契約すべきでしょう」
そこへケイローンが意見を出してきた。
「マシュと言いましたか。貴女はサーヴァントのようですが、戦闘に関してはまだ未熟なところがあります。そのため、貴女がキャスターと契約して補助に回って貰った方が良いでしょう」
『確かに。マシュはサーヴァントに成り立てだから、Mr.キャスターには補助に回って貰った方がいいはずだ』
「そうね。ここは藤丸立香と契約すべきね」
ロマニとオルガマリーはケイローンの意見に賛成し、キャスターは立香と契約する事が決まった。
「契約完了。そんじゃ大聖杯の所に行くか」
『大聖杯?聞いた事無いけど、それは何ですか?』
「この土地の心臓だ。あんたらの言う特異点があるとしたらそこ以外にあり得ない」
「もしかして、セイバーは大聖杯の所にいるのか?」
わざわざそこに向かうなら、キャスターの標的もいるはずだ。
「その通りだ。そこにセイバーの野郎と汚染された残りのサーヴァントがいる」
もしやと思い訊いてみると、案の定そこにセイバーがいるようだ。
「残っているサーヴァントはあとどれくらいなの?」
「残っているのアーチャーにバーサーカーとランサーぐらいだ。アーチャーは俺がどうにかするからいいが、ランサーは何処かに隠れてやがる」
「バーサーカーは?」
「あの野郎は近づいて手を出さなければ襲わねえからあいつは無視だ」
「ランサーの方は?」
「ランサーは今の戦力なら大した敵じゃないから迎え撃つだけだ」
「それじゃあ案内を頼む、キャスター」
「応よ。だが、いつ突入するかはお前等次第だな」
セイバー以外の残ったサーヴァントの対処も決め、葵達カルデア一行は大聖杯を目指し探索を再開するのであった。