悪役令嬢に転生したけれど、ヒロインが全く攻略しない! 作:ステータスを教えてくれる系サポートキャラ
むかしむかし、偉い人は言いました。“己を知り、相手を知れば、百戦危うからず”、と……。
「つまり、「攻略対象」を知らなければ、対象を「攻略」はできない、ということです!」
私の言葉に、優子はきょとんとした顔をした。「そりゃそうだ」「おまえは何を言っているんだ」と言わんばかりの顔だ。
ほほう、いいだろう、大した自信だ。でも果たしてそのアホ面がいつまで持つかな? 吠え面かかせて差し上げますわよ!
「では、姫宮さんが「攻略対象」について知っていることを、言ってみてください。というか、ちゃんと覚えていますか?」
私は問うた。
私は「常に心に余裕と優雅さを」がモットーの悪役令嬢なので、既に、私が思い出せる限りの「攻略対象」に関する情報を、
そんな中でも「攻略対象」に関する情報は、重要も重要な超重要情報なので、念入りに、“ちゃんと覚えていろよ”と言わんばかりに、ねちっこく伝えてある。
「もちろん!」
そう自信満々に胸を叩いて優子は言った。
なんとも頼もしい発言だが、だからといって油断してはならない。何せ相手は史上稀に見るポンコツヒロインだ。「大丈夫!」とか「任せておいてよ!」とか「心配するな!」とか言われても、全然信用ならない。むしろ不安しかない。当然、今回の「もちろん!」とかいう発言も同様だ。期待半分諦め半分でいた方が良いだろう。
優子は指折り数えて言った。
「えっと、イケメンが全部で五人! 赤いイケメンと、青いイケメンと、黄色のイケメンと、黒いイケメンと、白いイケメン! ……以上!」
前言撤回! 半分も期待していた私が馬鹿だった。
私は、「伝わっていなければ、伝えていないと一緒です!」という、前世で散々言われた心ない言葉にうちひしがれた。一体どんだけこの言葉に苦しめられたことか。あまり良いとは言えない思い出が、走馬灯のように蘇ってくる。正直、どうだと言わんばかりにドヤ顔をキメてるヒロインが恨めかしい。その無駄にプニプニなほっぺをつねって、思う存分引き伸ばして、小一時間ほど問い詰めてやりたい。伝わらないのは聞いてない方が悪いんですぅ。泣いたって許してやらないんだからね!
私はクラっと目眩がした。額を抑えてなんとか堪える。神様、ちょっとこれは前途多難過ぎやしませんかね?
「た、確かに、「攻略対象」のイメージカラーを言えば、そうなりますが……」
いやいやしっかりしろ三秀院麗奈。ここはむしろ、「それくらいは覚えていてくれた!」と前向きに喜ぶべきだろう。
紛いなりにも覚えていたということは、多少なりともヤル気はあるということだ。ここで「そんなことしか覚えていないんかい、この駄ヒロインがッ!」と叱っても、ただでさえ低空飛行なヤル気が、墜落という緊急着陸をして、爆発四散するだけだ。それでは恐怖の「BADEND」一直線である。“豚もおだてりゃ木に登る”、ならぬ、“ヒロインもおだてりゃ攻略する作戦”、だ! 私はそういった心持ちで優子と向き合った。
「でも、もう少し詳しく知っておいた方が、攻略する時に有利ですわよ。ほ、ほら、RPGとかでもボス戦に挑む前は情報収集したりするでしょう?」
「そう? 私はどちらかというと、とりあえず一度突っ込んでから考えるタイプかな」
ガッデム! こいつ猪突猛進タイプだったか!
「で、でもこれは乙女ゲームの話だから……ちょうど良い機会だし、復習がてら「攻略対象」について振り返ってみましょう」
私はもう殆ど強引に話を進めた。いつまでもこの猪突ヒロインに付き合っていたら、このさき何百年経っても「攻略」なんて出来やしないからだ。それに言うまでもなく、「タイムリミット」は刻々と迫ってきていた。残された時間は、散々たる現状を鑑みるに、多いようでそう多くはない。
「まずは“赤いイケメン”こと「赤﨑優樹」ですが……」
赤﨑優樹──現在聖凛学園二年生、バスケ部所属。明朗快活な性格で、誰からも好かれるイケメン男子。成績は今ひとつだが運動神経は抜群で、二年生にしてバスケ部のエースとなり、チームメイトからの信頼も厚い。
髪は燃えるような赤毛で、少し鋭い目つき、大柄で筋肉質な体、と見るからに他者に威圧感を与えそうな容姿だが、生来の人当たりの良さのせいかそういった印象はあまり感じず、むしろその人当たりの良さもあってか、どこか子犬のような可愛らしさがある、ともっぱら女子の噂である。まあ、いわゆる「熱血系正統派イケメン」というヤツだ。
生まれは主人公と同じように庶民の出で、一年生の時には必ず同じクラスになる、言わば「初心者キャラ」。大体の大きな少女たちはまず「彼」の攻略を目指し、それを足がかりにして、他の「攻略対象」へと歩みを進めていくことになる。
「それから「彼」には
そう、ここで何よりも着目すべきは「赤﨑優樹」は、「姫宮優子」と「幼馴染」であるということだ。
少年漫画のラブコメや、恋愛アニメなんかじゃ「幼馴染」という属性はただの「負けフラグ」でしかないだろうが、こと乙女ゲームに関してはそうは問屋が卸さない。「幼馴染」という属性は、言わば、何事にも勝る「勝利フラグ」の一種なのだ! もう「幼馴染」ってだけで「
だというのに……。
「なぜ……あなたは赤﨑優樹と……「幼馴染」に……なっていないんですかッ!?」
そう、この世界の「姫宮優子」と「赤﨑優樹」は、幼馴染でもなんでもなかった。
本来であれば、二人は幼い頃、「思い出の公園」という場所で偶然出会い、すったもんだあって仲良くなって、文字通り色々な“思い出”を積み重ねていくのだが、それは優子の「“思い出の公園”って名前、そのまんま過ぎない?」という心ない言葉に一蹴された。うるさい、こういったのは「象徴的な表現」ってヤツなんだよぉ!
なので両者の間には、“小さいころ交わした将来の約束”とか、“むかし困った時に助けてくれた思い出”とか、“お別れの時に流した悲しみの涙”とか、そういった胸キュン不可避な出来事が一切存在してない、全くの赤の他人。これ見よがしに二人とも名前に「優」が入っていて、あからさまにフラグだが、“はじめまして”はクラスの自己紹介が初めての、もう完全なる初対面!
もはや幼馴染属性の奪われた「赤﨑優樹」など、まるでカツ抜きのカツカレー、あるいはライス抜きのカレーライスのようなものだ。つまりはただのカレー。美味しいが、なにか物足りず満足できない、そんなカレー!
「赤なのにカレーとは……これ如何に?」
「ぶっ飛ばしますわよ?」
むしろ2,3発ぶん殴ってやろうか? まかり間違ってまともなヒロインに変貌するかもしれないし、ポンコツを直すには古来よりこの手に限るらしいから、少なくとも今よりは悪くなるまい。よし、そうしよう!
私は優子を頭をポコポコと殴ってみた。だが何も変わらなかった。むしろ殴った私の手の方が痛くなった。なんという理不尽。この子どんだけ石頭なのよ。手を擦りながら、つくづく現実は私に厳しいと、私は泣いた。
「次に、“青いイケメン”こと、「三秀院青也」ですが……」
三秀院青也──名前の通り、
生まれはもともと我が三秀院家の遠い親戚筋であり、両親は幼い頃に交通事故で他界。その後、親族をたらい回しされた挙げ句、最終的には
三秀院家に引き取られた後も彼の不幸は潰えず、世間体のために渋々引き取ったに過ぎない里親──つまり私の両親──には、あからさまに邪険に扱われ、意地悪で我儘な義姉──つまり私──には、体の良い遊び道具にされ、何処にも拠り所のない、氷のように冷たい少年時代を過ごした。
言わば「三秀院青也」という人間は、三秀院家の「奴隷」であった。彼は幼い頃から厳しく躾けられ、教育され、屈服されていた。反抗することは許されず、もししたとしても、二度とそんな気が起きないように徹底的に罰せられた。学業が優秀という設定も、遠因はソコにある。三秀院青也の成績は常にトップであり、それは、家より与えられた「義務」であった。
ところがある日ヒロインによってその「義務」の遂行が危ぶまれ、三秀院青也は姫宮優子を脅威だと認識する。そしてそこから、すったもんだあって二人の甘いラブストーリが始まるのだが……。
因みに、「
「そのフラグは、わたくしが既にバキバキに折ってしまっているのですよね……」
こんなに分かりやすい「
何を隠そう、私が悪役令嬢転生者として真っ先に手を付けたのは、他でもない、「三秀院青也」である。最も
今思えば、「5人も攻略対象がいるんだし、「
だが、あの捨てられた子犬のようにやさグレた「三秀院青也」(少年ver)を見て、庇護欲を唆られない「義姉」がいるだろうか? いや、これもまた、ない(反語)。
「この件に関して、わたくしは一切の弁解を致しませんわ……」
私は潔く言った。
馬鹿だったとは思うが、正直、反省も後悔もしていない。むしろ、どこか達観した、「やり遂げたぞ!」という感覚しかない。きっとこれが、「達成感」というものなのだろう。私は「達成感」に包まれていた。
言うまでもなく、結果として「三秀院青也」は、表面的な性格こそ原作ゲームと似通ってはいるが、中身に関しては全くの別キャラに成長していた。知る人が知れば、「誰だオマエ!?」というレベルの魔改造ぶりだ。原作改変ここに極まれり。ちょいとばかしやり過ぎた感は否めないが、どうして止めることができようか。まさに私の義弟には、転生者としての醍醐味が全てつまっていた。お陰で自分で自分の首を締めることにもなったが……。
「それでも私は反省も後悔もしていないッ!!」
「あ、そう」
私の魂の叫びは、優子のたった三文字の台詞に轟沈された。ミジンコのフン程にも興味がないといった口調だ。同じ立場なら然もありなんとは思うが、それでも私は反省も(ry。
結論を言おう。
三秀院青也は原作では「クール系ツンデレイケメン」だが、
「それから、“黄色いイメケン”こと、「黃ノ瀬コウ」」
これまたヒロインとは同級生のキャラで、一年生の時から聖凛学園生徒会書紀を務める、笑顔がキュートで、クリーム色のふわふわヘヤーが特徴の、ほわほわ系イケメンキャラだ。同じく生徒会会長を務める「黒峯総一郎」とは異
「黃ノ瀬コウ」は前述の「赤﨑優樹」「三秀院青也」と合わせて、「御三家」とか「信号機トリオ」とか言われている。三番目の攻略対象ということで、難易度もそこそこ高い。
母親の不貞によって生まれた黃ノ瀬コウは、母親の愛情を知らずに生き、物心つく前から父親と二人きりで過ごしてきた。愛に生き、愛に溺れた母親を軽蔑し、父を不当に扱った「黒峯家」を、一方的に恨んでいる。聖凛学園に入学し、生徒会役員になったのも、そんな黒峯家に復讐するため。その一見人畜無害そうな容姿と性格により、男女問わず非常にモテるが、内心では彼らのことも馬鹿にしている。「愛」なんて有りもしない不確かなモノにうつつを抜かすなんて、なんて愚かなヤツらなのだろう、と……。
だが、許されざる「愛」によって生まれ、それ故に「愛」を信じれなくなった少年は、
「要するに、可愛い系腹黒イケメンですわね」
「身も蓋もないね」
ついでに「ヤンデレ属性」「ショタ属性」なども兼ね備えているので、そういったものが大好物な大きな少女たちに、絶大な人気を誇っている。
「んで、この子も既に「改変済み」なんでしょう?」
「当たり前ですわ!」
黃ノ瀬コウルートでも、当然、
ここらへんから三秀院麗奈へのヘイトは徐々に高まっていき、最終的には「黒峯総一朗」ルートで爆発! すったもんだあって最終的にはヒロインと悪役令嬢の直接対決にまで発展するのだが、結果は当然の如く悪役令嬢の敗退。その結末はお察しの通り今までの悪事が全てバレ、三秀院麗奈の立場と信頼はどん底まで失墜。時を同じくして、後ろ盾であった「三秀院財閥」も立て続けに不祥事が発覚し、親族まとめて財政会から失脚。最後には路頭に迷い、惨めにもヒロインに物乞いをする姿が描写され、それからどうなるかは具体的な言及は避けられているが、「その後彼女を見た者はいない……」、と締めくくられる。
こうして、これまで散々三秀院麗奈に煮え湯を飲まされてきたプレイヤーたちは、彼女の見事なまでの没落ぶりを見て、溜飲を下げるのだ。
「そんな惨状なのに原作改変しないでおられますか!?」
私は、あからさまな地雷原の上でタップダンスを踊れるほど、マゾではない。目に見えている死亡フラグを放置できるほど、悪役令嬢人生に染まりきっているワケでもない。私はただ、平穏無事に過ごしたいだけの、悪くない悪役令嬢転生者なのだ。
「でも、その結果がコレじゃあ、元も子もなくない?」
優子の言葉は少しだけトゲがあり、私を非難しているようであった。
「し、仕方ありませんじゃないですか! わたくしだって、まさかこんなコトになるとは思ってもいませんでしたのよ!」
ちょっと関係改善をしてあげようと思ったら、あれよあれよという間に軌道修正できぬレベルに。気付けば、もはや原型を留めてはおらず、誰コレ状態。具体的にどうなったかというと……ハイ、どういうワケか「黃ノ瀬コウ」に懐かれました。原作では、散々影で
「普通さ、自分が抱える問題を解決してくれた人には、好意を抱かない?」
だとしても相手は
「それがありえるかも……って、いや、まあ、別にどうでもいいんだけどさ……それで? 次はその兄の「黒イケメン」君でしょう?」
「「黒イケメン」ではなくて「黒峯総一朗」ですわ」
黒峯総一朗──言わずとしれた聖凛学園生徒会長。黒髪黒目、高身長、高学歴──と、「3K」揃った黒峯財閥の御曹司。言うまでもなく、超がつくほどのイケメン。その尊大かつ傲慢な性格は、正に唯我独尊を地で行く「オレ様系孤高イケメン」。黒峯総一朗ルートは、黄ノ瀬コウを友情ENDで終わらせることで開放でき、ルート内容は前述した通り、聖凛学園を裏で支配する、女帝「三秀院麗奈」との対決を描く。
生まれついての天才で、万事が万事、苦もなくこなしてしまう黒峯総一朗は、それ故に他人に興味が持てず、人の心というものが理解できないでいた。無意識で他者を見下し、遠ざけるその態度は、彼をより一層神格化し、崇拝させる。彼にとって自分以外の存在は、歯牙にも掛けない愚者であり、塵にも等しい残りカスのようなものなのだ。そう、今はなき「母」の面影を僅かに持つ、「姫宮優子」を除いては……。
そんな感じで始まる黒峯総一朗ルートは、別名「悪役令嬢討伐ルート」とも呼ばれ、先程も言った通り、姫宮優子と三秀院麗奈の直接対決が描かれる。
それなので……。
「念入りに原作改変しちゃいました」
テヘペロ♡
「テヘペロ♡ って、麗奈……」
あれほど他人を寄せ付けず、突き放していた黒峯総一朗の影は今じゃ何処にもなく、ちょっと口が悪いだけのナイス紳士へと変貌していた。これも、私が幼い頃よりせっせと行ってきた調きょ……もとい、教育の賜物だ。
そう、三秀院麗奈と黒峯総一朗は、「幼馴染」という「設定」なのだ。どこぞのポンコツヒロインと違って、私はこの「幼馴染設定」を大いに利用させてもらった。結果、母親の「死」という悲劇によって捻くれまくった黒峯総一朗の性格は、見事、矯正に成功し、ついでに異父弟「黃ノ瀬コウ」との関係もバッチリ改善! これにて私の悪役令嬢ライフは、順風満帆が約束されたというワケだ。
「お陰で変なとばっちりがコッチに来てるけどね……」
「それは言わないで……」
薄々感づいてはいたけど、私、もしかしてやりすぎちゃいました? いえ、ごめんなさい。正直調子乗りました。こう、思っていたよりもトントン拍子で上手くいくもんだからつい……。
「これぞまさにミイラ取りがミイラになる、ってね」
「なにか言いましたか?」
「いいえ、何にも……」
「そうですか。それで、最後に残った“白いイケメン”こと、「白銀しのぶ」ですが……」
白銀しのぶ──本名「白銀・ジャスティス・アンダー・ザ・こころ」。本人は自分のことを「白銀
その容姿は世の女性が悔し涙を流し、世の男性が前かがみになるほどの可愛らしさであり、本人は大層嫌がっているが、ひと目見ただけではアソコにナニが生えているとは到底思えない美少女ぷり。当然の如く私と総一朗とは幼馴染。というか、総一朗とは永遠の宿敵とも言える間柄。もちろん、そう思っているのは本人だけで、総一朗は無関心だが、何かに付けて「白銀しのぶ」は「黒峯総一朗」に勝負を仕掛けて、その度に返り討ちにあっている。
彼が聖凛学園風紀委員長に就任したのもその為だ。今日も今日とて、白銀しのぶはその「風紀委員長専用」の真っ白な制服を着て、ライバル「黒峯総一朗」に挑戦する。そしてある時、あの傍若無人として知られる「黒峯総一朗」と親しげに話す、謎の「女生徒」を見かけるのだが……。
白銀しのぶは、いわゆる「男の娘キャラ」だ。低身長で、見た目はどう見ても美少女のソレ。性格は勝ち気でいじらしく、まるで男らしさの欠片もない自分の容姿を気にしている。彼にとって男らしさの象徴とは「黒峯総一朗」のことだ。だから白銀しのぶにとって黒峯総一朗は、目指すべき目標であり、倒すべき怨敵なのである。それをヒロインは、影ながら時に励まし、時に叱咤して、打倒「黒峯総一朗」を手助けしていく。そしてその過程で遂に彼は気付く、共に戦うこの女生徒こそが、本当の意味で自分の男らしさを引き出してくれる、「真のパートナー」なのだと……。
「……で、今ではその「真のパートナー」が麗奈だと……」
「……はい、ごめんなさい」
私は目を逸らして謝った。
仕方なかった、仕方なかったんだ!
白銀しのぶは黒峯総一朗と幼馴染だが、さっきも言った通り、三秀院麗奈とも幼馴染なのだ。白銀しのぶは黒峯総一朗を目の敵にしているので、黒峯総一朗と関わろうものなら、嫌でも接触することになる。結果、幼いながらに果敢に黒峯総一朗に挑む白銀しのぶを目の当たりにすることになる……。
「それを……それをどうして、応援せずにいられますか!!」
ヨヨヨ、私は泣き崩れて言った。ただ愚直に、ただひたむきに、精一杯頑張る白銀しのぶが悪いのだ。ただでさえ、その容姿と設定から、腐ったご婦人以外でも同人誌的な意味で大人気なのに、あんな姿を見せられた日にはひとたまりもない。
優子が私の肩に手をかけて言う。「麗奈……」「ひ、姫宮さん!」
同じ転生者だし、私のこの気持ち、分かってくれるよね? ね!?
「自業自得って言葉知ってる?」
ウボァー……私は死んだ(スイーツ)
「……ってボケかましている場合ではないですわ! これらの情報を基に、今後の傾向と対策を考えませんと!」
「いや、なんかもう色々と手遅れじゃない? というかもういっそ、麗奈が「ヒロイン」で良いんじゃないかなぁ……」
「だからそういうワケにはいかないと、これまでも散々言っているでしょう!?」
「いや、私はそんなことないと思うよ? 実際この案、結構いい線いってると思う。何にもしてこなかった私に比べ、麗奈はずっと努力してきたんだし、よっぽどヒロインに相応しくない?」
「いや、だから……そ、んな……こと……」
私の二の句が継げなかった。私がヒロインに? 何を馬鹿な、あり得るはずがない。
その時チャイムが鳴った。
「お、昼休み終了! まあ、そういうことだから、この続きは放課後ということで……とりあえず、今日から「生徒会室」に行けば良いんだよね?」
「え? ええ、まあ、そうですわね……」
私はまだ動揺から戻ってこれずにいた。
それを捨て置いて、去り際に優子がささやく。
「まあ、色々考えることもあるだろうけどさ、あまり深く考えず、成るように成るしかないんじゃない? 人生なんてそんなモンでしょう?」
そんなものなのだろうか? その問いに、答えはなかった……。
結論! 八割方悪役令嬢が悪い。