個性『コイキング』 作:Mr.コイキング
『個性』、かつては希少な超常の力として扱われたその体質は今現在では人口の約8割が有する極々ありふれた存在として認知されている。
そして僕、赤鯉 錦もその八割にしっかり収まっていて、自分の『個性』が分かったのがたしか4歳の誕生日を迎える直前だったと記憶している。
今年の春で小学3年生を迎える年齢になり、さすがに今まであった全ての出来事を鮮明には覚えていない僕ではあるが、それでも自分の個性が判明したあの瞬間の情景は鮮明に思い出すことが出来ていた。
──目の前には白衣に身を包んだお医者さまが診断書を見ながら最後まで首をかしげていて
──僕の両隣には先に結果を聞いたのか何とも言えない表情を浮かべた両親が椅子に座っていて
そうして少しの間目を閉じていたお医者様が「よしっ」と小さくつぶやいた後、少し屈みながら僕に視線を合わせて紡いだその言葉、それが僕の原点でありスタートライン──
「君の個性は──────-」
後から聞いた話によれば僕の個性はかなり特殊な現れ方をしていたためお医者さまを大層悩ませたそうだ。
最初に行われた身体測定等による個性の発現兆候の確認では跳躍力だけが同年代の平均を大きく超えることがあったそうである。
とはいっても大きく平均を超える記録を常に出し続けていたかと言われれば実際にそうではなく大半は極々一般的な記録しか出せていなかったらしく、さらには脚力や全身の筋肉量は極々一般的な値でその跳躍がどんな個性によるものであるかは不明瞭なままだったらしい。
そして次に行われた個性因子の確認ではしっかりと個性因子の存在が確認されたそうだ。
そこで詳しく調べるために今までの患者の個性因子のデータと照合したところ、本来は異形型の個性である『鯉』に極めて近い個性であることが判明したらしい。
極めて近い、というのは他の『鯉』の個性を持つ患者に見られたようなヒゲやひれなどの異形型特有の「鯉っぽい」身体的特徴は一切確認できず、その代わりというべきか父の個性である『変異』の個性因子に見受けられる特徴が僕の個性因子にも幾分か確認されたそうだ。
結果、極めて『鯉』に似た個性因子を持ちながら「鯉っぽい」身体的特徴を持たず、同時に『変異』の個性の特徴を受け継いだ極めて特異な個性が確認されたわけである。
最終的には、悩みに悩んだお医者さまが当時個性研究の権威であったとある博士に相談した結果、その博士の一存で命名が行われたらしい。
────曰く、「鯉に極めて近い個性でありながら、どこまでも成長する可能性を持った全く新しい個性」であり、今後の成長への期待を込め、そうして決められたその個性の名前。
目の前のお医者さまは僕の目を真っ直ぐに見ながらこう言った。
「君の個性は、『コイキング』だ」
こうして僕の物語は始まりを告げた。
赤鯉 錦(現小学二年生のすがた)
個性;コイキング
現段階では人より少し高く跳ねることが出来る個性(?)。現段階で分かっていることは発動型であり頭の中で「はねる」ことを意識することで一応は発動されているらしい(なお1日に「はねる」ことが出来る回数には制限があり現段階では36回、なお最初に個性を発動してから24時間経過でリセットされる模様)。
4歳の誕生日を迎える直前に自身の個性を知る。当初はその名前に影響されてか自身の個性に強い期待を抱いていたが、未だに人より少し高く跳ねることしかできない現状や同年代の生徒への劣等感、さらには無個性の生徒にはどこか壁を作られてしまうことに戸惑いを感じ、現在では自身の個性に嫌悪感を覚え、さらには諦めを感じ始めるまでになっている。