転生マーキュリーのONEPIECE物語   作:永久@

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第14話、悪夢

「エースゥ、今日もあいつらんとこ行くのかー…?」

 

不満そうな顔をしたルフィは、森で採った果物を口いっぱいに頬張りながらエースに問いかけた。夜はだいたい肉ばかりだが、朝食はナキの希望を通して果物やサラダが多いのだ。

 

「文句言うな。仕事請け負ったからにはやるしかねぇだろ」

「でもよー…」

 

ぷくりと頬を膨らませてあからさまに不貞腐れるルフィに、はぁ、とため息をつくエース。

本当はエースだって、ブルージャムの言いなりになるのは嫌だった。けれど、サボがどうなっているかわからない現状では、無闇に敵対するのは得策とは言えない。

貴族に手を出す事は流石にないだろうが、こちらが危害を加えられないという可能性は決してゼロではないのだ。

 

「文句垂れてねェで、さっさと食っちまえ。ナキ、お前も早く食えよ」

「……うん…」

 

頷くものの、ナキの前に並んだ果物は手をつけた形跡がほとんどない。せいぜい小さな木苺が数個なくなっているぐらいだ。

 

「………」

 

あの時。

ブルージャムにジッと見下ろされたあの時、えも言えぬ感覚が背筋を走り抜けたのを、ナキは覚えている。

何かを企む悪意が手に取るようにわかった。自分達に任せられた仕事だって、ただ荷物を運ぶだけの訳がない。それは、きっとエースもわかっているだろう。

 

「……今日、ブルージャムの所には、俺とルフィだけで行く」

「…えっ」

 

驚いてぱっと顔を上げると、真剣な表情をしたエースと目が合った。

何か言いかけたルフィの口を素早く塞ぐと、エースはナキに告げる。

 

「ブルージャムが何考えてるかはわからねぇ。もしヤバい事考えてたら、俺とルフィなら抵抗して逃げられる。…でも、お前を守りながら逃げるのは、流石に無理だ」

「………」

「だからお前は、ここで待ってろ。いいな?」

 

エースの言っている事は、間違いではない。

ナキは弱い。喧嘩なんてした事なくて、いつも3人の後ろに隠れてばかり。ガープが里帰りしてきた時も、ナキだけはいつも鉄拳制裁は喰らわない。食事の時だって、いつもナキの分は最初に取り分けてもらって、争奪戦には加わった事もない。

だからこそ、現役の海賊と戦う事になるかもしれない今回だけは、ナキを連れていくのは危険すぎるのだ。

 

「……うん。わか、った…」

 

そしてその事は、ナキ自身が1番よくわかっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………イカれてる……!!この町の奴ら、全員……!!」

 

整備された高町を、サボは血相を変えて走り回っていた。

通り過ぎる貴族達は何事かとサボを見返す。中にはサボに「何かあったのか」と尋ねてくる者もいた。

しかし、サボからしてみれば、「何もない」と思い込んでいる彼ら貴族に心配された所で、ただ虫唾が走るだけ。

 

昨日の夜、サボがステリーに聞かされた“この国がゴミ山を燃やす”という事実。

たくさんの人が生きている場所が燃え、たくさんの人が“一緒に燃やされる事になる”という事実を知って、サボは居てもたってもいられなかった。

けれど、そんな感情を塵にするように、高町の貴族達は、義憤にかられるサボの心に、冷水のような言葉を突きつける。

 

 

 

 

 

『ゴミ山で今夜火事が?……そんな事知っているが、それがどうしたのかね?』

 

 

 

 

男は、そんな風にサボに問い返した。

穏やかな陽射しを浴びて、悠々と紅茶を片手に、心底不思議そうに首を傾げて。

人が大勢死ぬかもしれない事実を聞いて。

 

 

『そんな事』と、わらうのだ。

 

「…逃げろナキ。エースもルフィも、ゴミ山から今すぐ逃げろ…!」

 

貴族への嫌悪がと共に脳裏に浮かぶのは、苦楽を共にした、心から愛しいきょうだい達の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

ツリーハウスに1人残ったナキは、壁にもたれかかりながら膝を抱えて蹲っていた。

ひとりぼっちがあまりにも心細い。不安と心配が混ざり合った奇妙な感覚に吐き気がしそうだ。

 

サボが実の父に連れ戻されたのは昨日の事なのに、もう何年も前の事のように感じる。けれど同時に、あの時のサボの後ろ姿は、まるでつい先程の事のように鮮明に瞼に焼き付いていた。

抱えた膝に額を埋める。4人分の大きさを考慮して作ったツリーハウスの秘密基地。不格好な天井の頂で揺れる旗は、『ASNL』と綴られている。ナキの字が1番綺麗だからと、3人に言われてナキが書いたのだ。

 

『A』はエース。『S』はサボ。『N』はナキで、『L』がルフィ。

 

これがきょうだいの証だと、最初に言ったのは誰だっただろうか。楽しそうな3人につられて、一緒に笑ったのをナキは今でも覚えている。あの時は、こんな事になるなんて夢にも思っていなかった。

誰だってそうだ。未来なんてわからない。想像した通りの良い方向にだけ向かう事はありえない。

 

「………?」

 

ぎ、と重い音が頭上から聞こえる。埋めていた顔を上げると、微かな暗がりでもわかる、目の前を覆う黒く濃い影。

 

気付いて振り返った頃には、もうとっくに頃には遅かった。

 

いくら見聞色の覇気という力を持っていても、ナキが普通の少女であるという事実は変わらない。

その普通の少女が、不安に溢れたこの現実を前にして、いつもの調子でいられる訳がなかった。

 

 

普段なら気が付いていた筈の、背中に張り付いた“悪意”の気配に、気が付かないぐらいには。

 

 

 

 

 

 

「よう、お嬢ちゃん。ひとりぼっちは寂しいだろう…?───一緒においで、なァ?」

 

 

 

男───ポルシェーミはにたりと不吉な笑みを浮かべると、その大きな腕をナキに伸ばした。




『ASNL』は、ご存知『ASL』にNAKIの頭文字のNを足しました。
ASとLの間に入れたのは、このきょうだいが兄、姉、弟のきょうだい構成だからです。
結構安直です。
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