転生マーキュリーのONEPIECE物語   作:永久@

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第16話、銀の悪魔が生まれた日

ただ、一緒に居たかった。

本当に、それだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「早くしろ!ルフィ!」

「おうっ…!ゲホッゲホッ!」

 

エースとルフィは、燃え盛る炎の中を死に物狂いで走り回っていた。

見渡す限りの赤、赤、赤。時折聞こえる悲鳴に、暑さと混じって寒気も走る。

 

「ゴミ山のおっさん達、うまく逃げたのかな…!」

「人の心配してる場合か!!!…くそ!ここがどこかもわからねェ!!」

 

慣れ親しんだ筈のゴミ山が、今では死と隣り合わせの混沌とした地獄だ。

おまけにこの地獄に図らずとも手を貸してしまった事が、更にエースの頭を苦悩させる。

 

「…ルフィ!次はこっちに行くぞ!」

「お、おう…」

 

 

「誰が逃げていいと言った悪ガキ共がァ!!」

 

突然、背後から聞こえた声に条件反射で振り返ると、ブルージャムが部下達と共にそこに立っていた。ルフィとエースの顔が驚愕で染まる。

 

「ブルージャム!?なんで火事を起こした張本人がこんなとこに…!?」

「とっくに逃げたんじゃ…」

「黙れクソガキ!絶望だよ俺達ァオイ…まさかの大ピンチだ」

 

本来なら門から軍隊によって保護されている筈が、騙されて閉じ込められ。

頼みの綱である自分達の船は燃やされ、海に逃げる事すら不可能。

こちらの計画は何もかもアテが外れたと言うのに、逆にゴア王国側は全てが予定通りに進んでいる。

 

「人間てのァおかしな生き物だな、不幸もどん底までくると笑っちまうよ…」

「そんな事、俺達が知るか…!ルフィ行くぞ、」

 

無視して逃げようとしたが、ブルージャムの部下によってそれを阻止される。

 

「オイオイ寂しいじゃねェか…共に仕事をした仲間じゃねェか俺達は…死ぬ時は一緒に死のうぜ…!」

「はぁ!?そんなもん知るか!」

「そうかまァそれでも良い…だがお前らは一緒に来てもらうぜ。予定は変更したがお前らの価値に変わりはねェ」

「テメェ…!」

 

歯を食いしばってなんとか苛立ちを抑えていたその時、新たな人影がブルージャムやエース達のもとに現れる。

 

「オイオイ…こりゃあどういうこった」

「!?」

 

「……!?ナキ!!!」

 

 

炎の隙間から現れたのは、サーベルを持ったポルシェーミと、ポルシェーミに抱えられて動けなくなっているナキだった。

さぁっと顔色が青ざめていくエースとルフィ。カタカタと震えているナキが二人に気付いて、大きく目を見開いた。

 

「船長、こりゃ一体どうなってんです…?俺達は国の軍隊に保護される手筈じゃあ?」

「チッ…!あいつら俺達を騙しやがったんだよ!門は開かねェ、船も燃やされた!もう俺は逆に笑えてくるぜ!」

「オイ、ナキを離せ!そいつは別に関係ねェだろ!」

「ねーちゃんを返せ!!」

「さっきからうるせェなお前ら…」

 

ブルージャムが目配せすると、暴れる2人を部下達が抑え込む。当然、大人の力に子供が叶う訳もなく、ジタバタ暴れながらあっさりと捕まった。

 

「ねーちゃん!!ねーちゃん!!」

「安心しろ、この嬢ちゃんに傷はつけねェ…ただちょっと“食って欲しいモン”があるだけだ」

 

暴れ回るルフィにそう言ってから「オイ」と呟くと、部下の一人がブルージャムに駆け寄っていく。手には厳重そうな箱を持っていて、ガチャガチャと音を立てて鍵が開く。エースの視線は、その箱の中にある“果実”を確かにとらえた。ブルージャムがそれを手に取り、見せびらかすように掲げてみせる。

見覚えのある渦巻き模様に、ルフィとナキは更に大きく目を見開いた。

 

「あく、まのみ」

 

かつてルフィが口にした、何億という価値を持つ海の秘宝。

特殊な能力を得る代わりに、海に嫌われて二度と泳げなくなる不思議な果実。

 

「知ってるか、クソガキ共。悪魔の実はその実単体だけでも億を容易に超える値段がするが…」

 

淡々とした冷たい声で、ブルージャムは言う。

 

 

「…能力によっては悪魔の実より、“能力者”の方が良く売れる事もあるんだぜ」

 

その言葉が何を意味しているのかは、考えなくてもすぐにわかった。

ガッ!とブルージャムがナキの服を掴みあげる。少女の口からは小さな悲鳴がこぼれ落ち、その兄弟達はこれでもかと言う絶叫を上げた。

 

「食え!!!」

「ひ、っ……!」

 

ボロボロと泣きじゃくるナキの顔に、ブルージャムは無理矢理悪魔の実を押し付ける。恐怖で体が萎縮して、抵抗する事もろくにできない。

 

「早く食いやがれ!!!あの二人がどうなってもいいのか!!?」

「っ…!」

「ナキ、絶対食べるな!!俺達の事は気にしなくていいから!!」

「ねーちゃん食うな!!それすっげーまっじーぞ!!」

「さっさと食え!!!」

「…………!!」

 

絞り出すように喉から溢れるか細い声。それと共に、ガタガタと震えながらナキは口を開く。

 

「ナキ!!」

「ねーちゃんやめろって!!ホントに不味いぞソレ!!どんな能力かもわかんねーぞ!!」

「ガキ共は黙ってやがれ!!!」

 

つんざくような大声が鼓膜に叩きつけられる。炎の中で暑い筈なのに、身体中が凍えているようにガタガタと震えている。

青い渦巻き模様にかぶりつくと、やけに瑞々しい音が耳に響いた。そのままかじって噛み締めると、独特すぎる味が舌に染みる。

 

「ゔ、ぅ…っ!」

 

今まで食べた中で最も不快と言える味に、腹の底から吐き気が襲ってきた。しかし、もしも今ここで吐いて海賊達の機嫌が更に急降下したら、という思考が脳裏を過ぎり、とにかく咀嚼なしに口を抑えて呑み込んだ。

 

「ぅえっ…!っ、ゔゥ…!」

「ナキ!」

「…よし、喉を通ったな」

 

酷い味。率直な感想がまず頭の中を占めて、数秒かけて正気を取り戻しルフィとエースの方を向く。心配そうにこちらを見つめる二人が無事な事に胸を撫で下ろす。ブルージャムが無用になった悪魔の実を早々に炎の中に放り投げる。ぱちぱちと炎が燃やす。既に能力を与えた海の秘宝が、赤い炎で燃え上がる。

 

「おい、誰か海楼石を…」

 

 

 

─────ドクン。

 

 

 

突如、強く心臓が鼓動する。

 

平常の何十倍も強く体が脈打ったその時、銀色が視界を覆って染めた(・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

『そういやぁ、悪魔の実って何がそんなに凶悪なんだ?』

 

 

それは、一年前の事だった。

里帰り早々にルフィ達をコテンパンにしばきあげるガープに、不思議そうな顔をしてサボが問いかけた。

その問いかけに、ガープは拳を振り上げた状態でピタリと固まった。纏う空気が変わった事に気付かないまま、サボは更に言葉を続ける。

 

『ルフィのゴムゴムの実は全然凶悪じゃねーし、いまいち実感湧かねェんだよな』

『まー確かにな。おまけに海も泳げねェんだろ?』

『ウルセーッ!俺が本気出したらめちゃめちゃつえーんだからな!』

『ル、ルフィ…お、落ち、着いて…?』

 

キャンキャン吠えるルフィをナキが苦笑いを浮かべながらなだめていると、ゆらりと揺れたガープが4人をいっぺんに抱き込んだ。

 

『わっ!?』

『ちょっ、何すんだよジジィ!?』

『……ええか、4人共よぉく聞け』

 

突然低くなったガープの声に、ピタリと4人は硬直する。先程までちゃらんぽらんに笑っていた人物と同じだとは到底思えない。

 

『悪魔の実は、本当ならそこにあるだけで人に危害を加える物ばっかりなんじゃ。ルフィみたいな“アタリ”の能力は、確かにそう凶悪ではないがの』

『アタリ?どっちかって言うとハズレなんじゃねェの?こいつの能力』

『いいや、アタリじゃ』

 

孫を抱き締める祖父の腕に、ほんの少し力がこもる。ぎゅうぅ、と目一杯抱き締められ、少し苦しそうに4人が唸る。けれど、ルフィが『爺ちゃん、いてぇ』と唸っても、そのルフィも含めて腕から逃れようとする子は不思議といなかった。

 

 

『…アタリじゃよ。ルフィの力は、そこにあっても誰も傷付けん物じゃからの』

 

 

そう言った祖父の顔は、腕の中に収まったナキ達からは見えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゔぇ、?」

 

ずるりと、這うような音がナキの頭上(・・)で響いた。

同時に、嗚咽のような声もする。それは1秒単位で深くなり、ナキを抱えるポルシェーミの腕も震え始めた。

 

「ひっ…!?」

「ポ、ポルシェーミの野郎が…!?」

 

海賊達が信じられないものを見る目でこちらを凝視する。ぐらぐらと崩れるポルシェーミの腕が力を失い、ナキは地面に転げ落ちた。瞬間、“銀色の輝き”がナキの身を守るようにどこからともなく湧き出した。

 

「…!?な、に、これ…」

「…はは、おいおい…まさか寄りにもよって“アタリ”の能力かよ…」

 

そう言って、ブルージャムが苦笑いでナキから距離をとる。

 

「ロギアか?それともパラミシアか?一体何だ、その銀色のモンは…ポルシェーミに何をした?」

「え…?な、にって、」

「ナキ、後ろは見るな!!やめろ!!」

 

咄嗟にエースが制止するが、それは少し遅かった。

 

 

ナキが振り向いた先にあったのは、どろりとした銀色の液体と、それに飲み込まれていくポルシェーミの姿だった。

まるでゲームのスライムモンスターのようにどろどろと変形しながら、銀色のそれは炎の光を反射する。脚を固め、腕を拘束し、口からずるりとまるで蛇のように体内に侵入しようとしている。その姿で、ナキは先程の這う音が何だったのかを察した。

 

そして、同時に理解する。これが一体なんなのか、どうして突然現れたのか。

 

「……ぁ、ぁ」

 

ポルシェーミがこうなっているのは、自分のせいだという事を、ナキは正しく理解した。

 

 

「ぅ、あ、ぁっ……!ぁ、あぁっ……!!」

 

 

前世の知識が頭をよぎる。教科書の写真に写っていたものと目の前のそれが酷似しているのがわかった。

 

だからこそ、ナキは知っていた。知っているから、絶望した。

 

「ナキ!」

「おいガキ!チッ、誰か早く海楼石を持ってこォい!」

 

大声が、怒声がかんかんと響く中、ナキは踵を返して走った。あぁ、あぁ、前世で教師が言っていた言葉が、前世で手に入れた知識が、やけに鮮明にリフレインする。

 

 

 

 

水銀(マーキュリー)には、毒がある』

 

 

 

 

血走ったポルシェーミの目から光が消え、痙攣していた腕がだらりと脱力した瞬間がナキに見えなかった事は、果たして幸いと言うべきなのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ」

 

ぽつり、声がこぼれ落ちる。

 

ゴミ山の沖にひっそりと停泊した船の上、手すりに座った金髪の男と、その肩にちょこんと乗った小人。双眼鏡を片目ずつ使い、燃え盛る炎の中を真剣に観察していた2人は、その声と共に双眼鏡から顔を離し、ぱちぱちと目を瞬かせて顔を見合わせた。

 

「おい、何かあったのか」

 

白衣にタバコを咥えた男が、そんな2人に問いかける。2人は白衣の男を見てから、もう一度お互いの顔を見て、小さく頷いてまた男の方を見た。

 

「あの子、悪魔の実を食べちゃったよ」

「……は?」

 

ポカン、と目を丸くする白衣の男。周囲のフードを深く被ったマントの人物達も、ポカンと同じように間抜けな顔で2人を見やる。ふら、と顔面のデカいマントの人物が、震え声で小人に問いかける。

 

「……プリティボーイ、それ、一体どんな形の実だったのかしら?」

「青色の、リンゴみたいな形の悪魔の実。でも大きさはメロンぐらいだったかな」

 

それを聞いた瞬間、マントの彼らを押しのけて1人の男が飛び出した。それはもう電光石火の如き超スピードで、突風に煽られた金髪の男が危うく手すりから落ちかけた。白衣の男がギリギリつかみかかるような形でそれを引っ張りあげるが、その間にも当の電光石火男は炎の中に消えていく。

 

「ちょ、戻ってきなさいボーイ!!この炎の中何を、クッソ早いんだよあのボーイ!!ボーーーーイ!!!!!」

「……ありゃもうダメだな、こっちの声なんか聞こえてねェ。諦めろオカマ」

「ヴァナータ達ちょっと諦めるの早すぎんじゃナッシブル!?だいたいその悪魔の実はずっとヴァターシ達が追ってきた代物!!」

 

ダンッ!ダンッ!と力強く足踏みしながら、顔面のデカいその“オカマ”は喚き散らした。

 

「青色のメロンサイズでリンゴの形をした悪魔の実なら!それは超人(パラミシア)系の中でも特に希少で危険な水銀の能力を持つ“マキマキの実”に間違いナッシブルよ!」

 

 

水銀には毒がある。

 

皮膚からはゆっくりと、気化した蒸気はそれより早く。中には1ミリリットルの量でさえ致死量に匹敵する種類の代物まで存在する。ジメチルメチルなど種類は数多あるが、“あれ”は一体どれにあたるのか。いや、そもそも当てはまる物があるのだろうか。

 

「なら余計止めても無駄だ。今回の件はアイツの地雷が絡んでる。余計な事するより好きにさせた方が良い」

「地雷ですってェ??」

 

怪訝な顔でその言葉を反復した“オカマ”に、白衣の男もまた「地雷だ地雷」と繰り返す。

 

 

 

 

「アイツ特攻のとびっきりの爆薬がこもった、“肉親”っていう地雷だよ」




せっかくのタイトル回収回なのに文章クソすぎて死にたくなりますね!HAHAHA!

転生マーキュリー=転生(転生者)+マーキュリー(水銀)です。安直だって?知ってる。
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