転生マーキュリーのONEPIECE物語   作:永久@

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第21話、会うは別れのはじめ

「ナキ〜、今日からここがお前の部屋じゃぞ〜」

 

 ご機嫌そうにニコニコ笑顔を浮かべたガープと共に、ナキはガープの自宅にやって来ていた。

 用意されていた部屋はピンクと白の色合いで統一された、いかにも女の子らしい内装だ。きっとガープが一生懸命、女の子が好きそうな家具を頑張って探したのだろう。いい歳したまだまだ現役のおじいちゃんが、孫の為に。想像すると何か可愛い気がしないでもない。

 

「どうじゃ、気に入ったか?」

「……ん」

「ぶわっはっは!そうかそうか!他に欲しい物があればわしに言うんじゃぞ」

 

 豪快に撫でられて、ナキの頭が思いっきり揺れた。ぐわんぐわんと目眩がするのを耐えながら、白いレースの天蓋を通ってふかふかのベッドの上に腰を下ろす。

 そのまま「じゃあちょっと待っとれ!」とにっこり告げて、バタバタと部屋から出ていくガープ。

 

 

 一人残されたナキはとりあえず部屋の中をぐるりと見渡してみた。

 窓の外には木が生えていて、その向こうには青い海が見える。初めて見る筈の光景だが、不思議とコルボ山の秘密基地に既視感を覚えた。

 近くにあったハートのクッションを引き寄せて、ぎゅっと抱き締めながらピンクの毛布の上にダイブする。ふかふかで柔らかい感触に顔を埋めた。

 

 

『ナキはほんとに泣き虫だなぁ。ほら、もう大丈夫だから泣くなって』

 

 

 泣くな。

 

 もう、泣くな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガープとは似ても似つかぬ孫の存在は、瞬く間に海軍本部に知れ渡った。

 そもそもガープがあっちこっちにナキを連れ回しているので、あっちこっちにいる海兵達は嫌でもそれが目に入るのだ。

 年相応に恥ずかしがって人見知りをする美少女の存在は、日々荒事に身を投じる海兵達の心を癒し、訓練でしごかれる新兵達の目の保養となっていた。

 なお、そんな美少女に手を出そうなんて考える倫理観の欠如したバカは、幸いにも現れる事はなかった。

 ガープに殺されるのがわかっていながら手を出すような猛者は、現在のマリンフォードには存在しないのだ。

 

 

 

 

 その日、ナキはいつものようにガープに連れ回されていた。

 ガープとしては突然慣れない環境にやって来たナキを心配し、早く馴染んで安心するようにという彼なりの気遣いのつもりであったのだが、周りはいつナキが連れ回された疲れで体調を崩さないか心配だった。

 ナキ自身はこれぐらいで体調を崩す事はないと思っているのだが、海軍の常識人筆頭のおつるに「やめなさい」と言われ、従うしかなかった。

 何より自分を連れ回す張本人のガープがおつるに叱られているのを見て、なんとなく気まずい気持ちになっていた。

 

 

「人を寄越すから、ちょっとここで待ってな。あんたのおじいちゃんはちょっとお話があるからね」

 

 にっこり満面の笑みでそう告げたおつるに、ナキは微妙に強ばった顔で頷いた。耳たぶを引っ掴まれてズルズル引きずられている祖父の姿は、なんとも新鮮で衝撃的だった。

 

 呆然としながらもジッと待っていると、一人の海兵が現れてナキの前に膝を着いた。遠目から見てもわかる大きな傷がある。コートを着てはいない所を見ると、まだ将校ではない事はわかった。

 

「やぁ。君がナキちゃんだね?」

「………、」

 

 こくりと頷く。挨拶ぐらいはするべきかもしれないが、何を言えばいいのかわからない。

 軽いパニックに陥りそうになってあわあわとし始めるナキに、海兵は苦笑しながら口を開く。

 

「俺の名前はドレーク…X・ドレークと言うんだ。よろしく頼む」

 

 顎に傷を持つ海兵───ドレークは、柔らかい声でそう言った。

 

 

 

 

 ドレークは、壊れ物を扱うようにそっとナキの手を引いた。

 別に少し強く握っても問題ないのだが、幼女に慣れていないドレークはそうもいかない。

 小枝のような細腕は、鍛えている成人男性として触れるのに少し躊躇ったりもした。

 

(……それにしても)

 

 手のかからない子供とは聞いていたが、ここまで大人しいとは思ってもみなかった。

 ドレークが知る子供と言うのは、好奇心旺盛であったり大人の予想斜め上の行動をしたりするものだった。

 ナキと同じくらいの年齢でここまで静かな子供はそういないだろう。

 

 ふと、ドレークがナキを見下ろすと、手首にアクセサリーのようにつけられた海楼石の腕輪が目に入った。

 

「………そう言えば、君も能力者だったな」

「!」

「あ、違うすまない!怖がらせるつもりはないんだ」

 

 咄嗟に腕輪を隠そうとするナキに慌てて弁解する。

 能力者になったのには海賊が関係している事は聞いていたのに、とドレークは自分の軽率な言葉を悔いながらしゃがみ込み、空いている手をナキの目の前にかざした。

 

 その瞬間、ビキビキとドレークの手が鋭利な爪を持つ爬虫類の手に変形した。

 

「っ!?」

 

 ギョッと目を見開き、後退りするのを耐える為に繋いでいるドレークの手をナキは力いっぱい握り締める。

 

「俺も、君と同じ能力者なんだ」

「…あ、悪魔の、実……?」

「あぁ。実の名前はリュウリュウの実…恐竜の能力だ」

 

 動物の力を得るゾオン系には、“幻獣種”と“古代種”という貴重な2種類が存在する。

 夢物語で語られる存在しない獣が幻獣種であるのに対し、かつて存在していたがはるか昔に絶滅したとされる恐竜が古代種だ。

 

 別名を“男のロマン”、または“子供の夢”。

 

「………」

 

 変形した手をジッと見つめ、硬直したままぴくりとも動かないナキに、段々ドレークの心に一抹の不安がよぎる。

 

(しまった、女の子に恐竜は逆効果だったか……?)

 

 子供の夢とは言っても、その夢を抱く子供のほとんどが男の子である事を、ドレークはすっかり失念していた。

 とりあえず手を元に戻してしまおうと思ったその時、固まっていたナキが「あ、の」と小さな声をこぼした。

 

「…手…さ、触って、も…い、いい、ですか……?」

 

 おずおずと、遠慮気味に呟いたナキにドレークは目を丸くする。

 そして、一拍置いて和やかに微笑むと、「勿論」と言って、手のひらをナキの前にしてみせた。

 

 指先でそっと手のひらに触れると、爬虫類に近い独特のつるりとしたその感覚に「わぁ……」と声が漏れる。

 鋭い爪をつつくとこつんと音が響くのがたいそう気に入ったらしく、繰り返し何度も爪をつついている。

 

「あ、あの…これ、な、何の恐竜、ですか?」

「モデルはアロサウルスだ」

「アロサウルス……!」

 

 モデルの名前を聞いた瞬間、ぱぁっとナキの顔が煌めいた。予想外の表情にドレークはまた目を丸くする。

 

「……恐竜が好きなのか?」

「と、特別では、ないけど……好き」

 

 静かにはしゃぎながら呟いたナキの言葉に、ドレークは少し照れくさそうに苦笑いを浮かべた。

 

 

 

 この後、ドレークの手はナキの気が済むまで恐竜のままになっており、ナキは珍しく初対面相手にはしゃいだ事を恥ずかしがって、部屋のベッドで転がっていた。




途中から悲壮感は旅に出ました
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