原作のセリフを大事にしながら書いてると、凄く文章が拙いようになってる気がします。つらたん。でも書くよ!
——この世界には、悪魔の実と呼ばれる果実が存在している。
それぞれ
別名を“海の秘宝”と言い、その希少価値故に一つ売るだけで1億ベリーはくだらない、まさしく一級品の代物。
ルフィは、奇しくもその悪魔の実シリーズの中で
それも、シャンクス達が敵船から奪った物を勝手にデザートとして食べたから。何て間抜けな理由だろうか、とナキは村長と共に頭を抱えて心底思った。
当の本人は一生泳げなくなった事を嘆くより、殴られ蹴られの打撃攻撃が全く効かなくなった事に大層喜んでいる。
次にガープが帰ってきた時、ゴム人間になった理由を聞いてこれでもかと怒られるという事は、きっとルフィの頭にはこれっぽっちもないのだろう。
その日、家でナキの作った食事をおなかいっぱいに食べたルフィは、おつかいのついでにマキノの酒場に遊びに来ていた。
店は一応昼から開いているが、昼間から酒を飲むような飲んだくれの大人は村にはいない。なので、ルフィを含め村の数少ない子供達は、よくこの酒場に遊びに来る。
「そう言えば、もう船長さん達が航海に出て長いわね。そろそろ寂しくなって来たんじゃない?ルフィ」
「ぜんぜん!俺はまだゆるしてないんだ、山賊の一件!」
マキノに差し出されたジュースを一気に飲み干しながら、ルフィは不貞腐れたようにそう言った。
「俺はシャンクス達をかいかぶってたよ!もっとかっこいい海賊かと思ってたんだ。げんめつしたね!」
「そうかしら?私はあんな事されても、平気で笑ってられる方がかっこいいと思うわ」
「マキノはわかってねェからなー。男にはやらなきゃいけねェ時があるんだ!」
「そう…でもルフィ、ナキはそうは言ってなかったんじゃない?」
ぎく、とルフィの表情が僅かにひきつる。あからさまなその反応に、マキノがくすくすと小さく笑った。
「ナキに何て言われたの?」
「……お世話になってる人を、悪く言っちゃダメだって。あと…」
「あと?」
「売られたケンカを全部買うのが、かっこいい訳じゃないってさ」
いつもなら、姉の言う事を全て素直に受け入れるルフィだが、今回ばかりは納得がいかないようで、ぶすっと頬を膨らませている。
不貞腐れた様子のルフィをなだめようとしたその時、酒場の入口がキィ、と音を立てて開いた。
「!」
「邪魔するぜェ…今日は海賊共がいねェんだな、静かでいい…」
見覚えのある山賊——ヒグマの姿に、マキノとルフィの表情が固まった。
あの時のようにぞろぞろと仲間を引き連れたヒグマは、迷いなくテーブル席の方に腰掛ける。
「何ぼーっとしてやがる。俺達は客だぜ…!」
「!」
「酒だ!!」
地を這うような低い声で、ヒグマは脅すように怒鳴り散らした。
魚屋におつかい。ナキがルフィに頼んだのはそれだけであり、この小さな村の中では、多少寄り道をしてもそう遅くなる事はない。
ナキはそれをよく知っていたし、村の中でも群を抜くわんぱく少年であるルフィは、毎度必ずと言って良い程寄り道をして帰ってくる。
だから今日も、いつものように寄り道をして少し遅くなっているのだと、ナキは疑う事なくそう思っていた。
最初は。
「は、はぁっ、はぁっ…!」
ぞわぞわと鳥肌が立つような悪寒に、息を切らして必死に足を動かす。向かっている先こそが悪寒の原因である事はわかっていたが、行かなければならない気がしてならなかった。
走りに走ってようやく辿り着いたそこに、見つけた数十人の人だかり。ターバンを巻いた見覚えのある集団の中心にいる子供に、ぎゅうっと胸の辺りがキツく締め付けられるように痛んだ。
「ルフィ…!」
——集団の中心にいた子供は、紛れもなくルフィ本人であった。
それも幼いながらの険しい表情で、自分を踏みつける男——ヒグマを、これでもかと睨みつけて叫んでいる。
「ぅおっ」
「ルフィ、ルフィ…!」
「!バカもん、ナキ!」
山賊達を押しのけてルフィのもとに駆け寄り、ヒグマの足を力いっぱい引き剥がそうとする。ギロリとヒグマがナキを見下ろすが、ナキは必死になっていてそれどころではなかった。
「ねーちゃん!」
「姉ちゃん…?ほぉ、お前ら姉弟か。…おい」
「へい」
ヒグマの声に従うように、部下の一人がナキの髪をわし掴んだ。
掴んだ髪を乱暴に引っ張られて、ぐらりとナキの体が半分宙ぶらりんの状態になる。
「ぃっ…!」
「ねーちゃん!」
「ナキ!」
「やめてくれ!」
ルフィとマキノがナキの名を呼び、村長が切羽詰まった声でヒグマに訴える。ヒグマはそのどれもに反応を示さず、宙ぶらりんになったナキの顔を覗き込んだ。
「っ…」
「…似ちゃいねェが、顔は良いな。なかなかの上玉だ」
「山賊!お前、ねーちゃんになんかしたら、絶対ぶっとばすからな!」
「10年も経ちゃ、良い女に育つだろうが…そんなもん待つより、今変態オヤジに売っちまった方が金になるな」
「…!?」
「待ってくれ、頼む!」
ぎしぎしと髪を掴む山賊の手に力がこもる。焦る村長の声と、怒りに満ちたルフィの声がナキの耳にひたすら響く。にやにやと笑っているヒグマ本人に、ナキの視界がじわりと歪み始めた、その時だった。
「……港に誰も迎えがないんで、何事かと思えば…」
「!」
「いつかの山賊じゃないか」
落ち着いた声が、緊迫した空気に静かに通る。
歪んだ視界の端っこに、麦わら帽子が僅かに映り込んだ。
「…ナキ、よく弟を助けに入ったな。お前は勇敢で優しい子だ」
「シャンクス!そんな事言うより早くねーちゃん助けろよ!」
「はは…しかし、ルフィ。お前のパンチはピストルのように強いんじゃなかったのか?」
「…!うるせェ!!」
「……っ」
いつものように軽口を叩くシャンクスだが、纏っている空気はどこか重い。ナキはひしひしと肌にそれを感じながら、ぐいっと髪を引っ張られながら体を僅かに傾けた。
「海賊ゥ…まだ居たのか、この村に。ずっと村の拭き掃除でもしてたのか?何しに来たか知らんがケガせんうちに…」
「悪いが悠長に話すつもりはない」
「…何だと?」
「お前らは、やっちゃならん事をした」
一気に機嫌を急降下させたヒグマを気にする様子もなく、シャンクスは言葉を続ける。
「俺は酒や食い物を頭からぶっかけられようが、つばを吐かれようが、大抵の事は笑って見過ごしてやる…だがな」
刺すようなキツい感覚に、ヒグマとはまた違う悪寒がナキの背筋を駆け抜けた。
「どんな理由があろうと、俺は友達を傷付ける奴は許さない…!!」
それは静かに、けれど確かに重く、のしかかるような威圧感を孕んだ言葉だった。
シャンクス、とルフィが小さく呟く。一瞬威圧感に気圧されたヒグマだったが、すぐに立ち直ってこれでもかと笑い始めた。
「…はっはっはっはっ、許さねェだと!?海にプカプカ浮いてヘラヘラやってる海賊が、山賊様にたてつくとは笑わせる!ブッ殺しちまえ野郎共!!」
「うおおおっ!!」
「っ…!」
雄叫びと共にまた髪を引っ張られ、苦痛でナキの顔が歪む。離す気のないままサーベルを引き抜く山賊の男に、シャンクスの視線が鋭く光った。
「待てお頭、俺がやろう……充分だ」
今にも出そうな自分の船長を片手で制し、ベックマンが前に出る。
咥えていたタバコを一人の顔に押し付ける。じゅうっと熱の音がして、男が呻き声と共に地に伏せる。
その隙間を縫うようにベックマンは動き、握っていた銃を鈍器のように振った。
山賊の攻撃など、傷一つも掠らない。丁寧にいなし、的確に顎やこめかみなどの急所にヒットさせていく。予想外の強さだったのか、山賊達の表情にも焦りが現れ始める。
「く、来るんじゃねェ!このガキぶっ殺すぞ!」
「ぅっ…!」
「ナキ!」
「——」
サーベルが首筋に当たる前に、ベックマンが銃を振るった。
山賊の手からサーベルが飛び、そのまま間髪入れずにこめかみに銃を、そしてナキの髪を掴む手首に膝をヒットさせる。
ぐらりと崩れ落ちる山賊の手からナキを取り戻し、片手でぎゅっと抱きかかえた。
「…怪我はないな?」
「、ぁ…っ…!」
「よしよし、怖かったろう。もう大丈夫だ」
「…うぅぅっ……!」
ボロボロと、とめどなく溢れてくる涙。ぎゅっとベックマンの服を掴み、肩に顔を押し付けるように埋める。
シャツに少しずつ、じわじわと広がっていくシミに苦笑しながら、ベックマンは鈍器にしていた銃を持ち直す。
「…うぬぼれるなよ山賊…!うちとやりたきゃ、軍艦でも引っ張ってくるんだな」
ナキを抱えながら、ベックマンが銃口をヒグマに向ける。
途端に、ヒグマが焦ったように表情を変えた。
「ま…待てよ!仕掛けてきたのはこのガキだぜ!」
「どの道賞金首だろう」
「…!」
有無を言わさぬシャンクスの一言。
シャンクスはヒグマを逃がすつもりはなく、そうなればシャンクスの仲間達もヒグマを逃がすつもりは毛頭ない。たかだか山賊に負ける程弱くもない。
そして、ヒグマもまた、それを察せない程馬鹿ではなかった。
「ちぃっ!」
「うわっ!煙幕だ!」
突然ヒグマの投げた煙幕がシャンクス達の目の前を覆い、視界が奪われる。おまけに煙幕の広がる範囲が予想外に広いせいで、シャンクス達も無闇に動く事ができなかった。
ベックマンの腕の中で押し殺すように嗚咽をこぼしていたナキは、突然目の前を覆った白い煙に呆然としていたが、不意に聞こえたルフィの声に顔色を青くさせた。
やっと煙幕が消えた頃には、ルフィとヒグマの姿が共になく、それが余計にナキの不安を駆り立てる。
「し、し、しまった!油断してた!ルフィが!どうしよう皆!」
「うろたえんじゃねぇお頭この野郎っ!全員で探しゃすぐ見つかる!」
「よりにもよってナキの目の前で不安煽るような言い方すんじゃねーよ!」
「お前も言うんじゃねーよそういう事!」
さっきまでの威圧感はどこへ行ったのやら、ぎゃあぎゃあとそれぞれが喚き始める。
その様子を尻目にしながら、ベックマンは青い顔で静かに慌てているナキに声をかけた。
「ナキ。ルフィがどこに行ったか、お前わからないか?」
「…!?ぇ、ぁ、ぅぁ、」
「あぁ、別に無理して言わなくていい。ただわかるなら教えてくれ。俺達が必ず連れて帰ってくるから」
ぽんぽんとあやすように背を叩いてやりながらそう言うと、きゅっとナキの手のひらに力がこもる。
こくん、と小さく頷いたかと思えば、静かに目を瞑って俯いた。
数えてきっかり二十秒。ふっとナキは目を開くと、震えながら港の方を指さした。
「あ、あ…あっち、に…」
「…そうか」
ぽん、と今度は頭を撫でてやり、シャンクスの方を一瞥する。
騒いでいたのが嘘かのように静かになったシャンクスは、麦わら帽子を深く被り直すと、にっと両側の口角を上げて笑った。
「ナキ、ちょっと待ってろ。今、ルフィを連れて帰ってきてやるからな」
そう言うと、シャンクスが勢いよく走り出す。びゅんっと風を切る音が、その場にいた者達の耳にかすかに聞こえる。
かなりの全力疾走に、ナキは涙目になって潤んだ瞳をぱちくりと丸くさせた。