転生マーキュリーのONEPIECE物語   作:永久@

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第5話、別れと決意

数十分後、ルフィはシャンクスに連れられて、村に戻ってきた。…片腕になったシャンクスと共に。

 

号泣するルフィを同じく号泣するナキが抱き締め、姉弟揃ってわんわん泣く。片腕になったシャンクスはクルー達が出迎え、村長達は頭を地面に擦り付ける勢いでシャンクスに感謝の言葉を伝えた。

 

気にするなとシャンクスは笑ってルフィの頭を優しく撫でたが、それに助けられた当人達はまた泣いた。

今まで二人いっぺんに撫でてくれていた手は、今や一人分しか撫でられないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

それからさらに数日が経ち、ついにシャンクス達がフーシャ村を離れる日がやってきた。

ナキとルフィは、当然だと言わんばかりに彼らの見送りに来た。シャンクスは二人にすぐ気付き、いつもと何も変わらない態度で二人と話す。

 

「この船出で、もうこの村へは帰ってこないって本当!?」

「あぁ。随分長い拠点だった…ついにお別れだな」

 

別れ。その単語に、ルフィの頬が微かに引きつる。

当然の事なのだ。シャンクスは海賊で、海賊は自由気ままに海を旅する。少なくともルフィにとって、海賊とはそういうものだ。

 

「悲しいだろ?」

「…悲しいけど、もう連れてけなんて言わねーよ!自分でなる事にしたんだ、海賊には!」

「ばーか!お前が海賊になんてなれるか!」

「なる!!俺はいつか、この一味にも負けない仲間を集めて、世界一の財宝を見つけて!!海賊王になってやる!!」

 

 

海賊王。

 

 

それは、ほとんどの海賊達が夢見る名前。かつてゴールド・ロジャーという男に与えられた世間の称号であり、この大海賊時代の幕を開けた伝説の海賊。

 

「ほう…!俺達を超えるのか」

 

その言葉に、果たして何を思ったのか。シャンクスはに、と口角を上げて笑った。

そして、自分の被っていた麦わら帽子を片手で取ると、俯くルフィの頭に深く被せた。

 

「この帽子を、お前に預ける」

「……!」

「俺の大切な帽子だ。いつかきっと返しに来い──立派な海賊になってな」

 

最後にぐっと力を込めるように頭を上下に揺らしてやってから手を離すと、今度はその隣にいたナキに手を伸ばした。

ルフィの時ほど乱暴にならないように加減しながら、そっとその頭を撫でてやる。今度はその綺麗な髪が、撫でたおかげで乱れたりしないように。

 

「俺がいなくなったら、ナキも寂しがってくれるか?」

 

笑い混じりの問いかけに、ナキは何も言わず静かに頷いた。

いつもと変わらない控えめな反応に苦笑しつつ、膝をついてしゃがみ込む。

 

「………」

「……?」

 

笑みを浮かべたままシャンクスにジッと見つめられ、ナキが上目遣いにこてりと首を傾げる。そのきょとんとした表情が、シャンクスの記憶には覚えがあった。

 

「…似てるなぁ」

「……?し、シャンクスさん、あの…」

「ん?」

「に、似てるって…だ、誰の、事?」

「…あぁ、こっちの話だ。気にする事はないさ」

 

誤魔化すようにそう言ってから、シャンクスは更に言葉を続けた。

 

「…これは俺の見解なんだが、ナキ。お前はきっと特別だ」

「…え?」

 

その言葉に、ナキは目を丸くしてシャンクスを見上げた。浮かんでいた筈の笑みは消え、真剣な目でシャンクスはナキを見る。

 

「お前自身、自覚はあるだろう?…自分の中に秘めている、その“感じ取る力”」

 

それはまたの名を、“見聞色の覇気”と言う。

 

 

最初にシャンクスがその片鱗を見たのは、山賊が酒場にやってきたあの時だった。

自分達も気付いていなかった山賊達を、酒場に現れる前から気付いていた。

 

次にその片鱗を見たのは、ルフィがヒグマに連れていかれた時。

ベックマンが誘導したという事もあるが、ナキは見事に見聞色の覇気を使い、ヒグマが逃げた方向を当ててみせた。

 

思い返してみればそれだけではない。他人の感情に敏感な所や、話しかけようとすると先に気付く所。

まだ弱く、新世界の猛者達が扱う物に比べればちっぽけな力。しかしそれでも、最弱とされる東の海では充分すぎる程特別な力だ。

 

「……あ、の…」

「何もそう怯えないでくれ。取って食いやしない」

 

ただしたかったのは、“確認”と“警告”の二つ。

 

「見た所、その力は生まれつきだな?」

「…うん」

 

間違ってはいない。

死神(グリム・リーパー)と名乗る謎の不審者(というか本物の死神)から与えられたなんて、口が裂けても言えなかった。

 

「その力はな、海のあちこちにいる色んな実力者達の、更に一部の奴が扱う力だ。だがそんな奴らでも、生まれつき手にしてる奴は滅多にいない。つまり、お前のそれは“特別”だ」

「……特、別…」

「あぁ。普通は数えきれない程の鍛錬や窮地の末に覚醒する力だからな。それが生まれつきとなれば、良からぬ事を考える奴が現れるかもしれない。出来る限り、信用出来ない奴には悟られないようにしろ」

 

いくら最弱であり平和の象徴とも言われる東の海でも、人攫いの存在がゼロである訳ではない。生まれつきの覇気使いなら、大なり小なりそれなりの価値がある。

ましてナキは、“血縁”すらもが特別だ。その事実を本人が知っているのかはわからない。わからないが、共に過ごしてきたこの一年間を思い返すには、きっと何も知らないだろう。

 

数秒の間を空けて、ナキは静かに頷いた。俯いた状態のナキの瞳に不安が映り込んだように見えて、シャンクスはまた苦笑する。怯えるか否かは本人の気の持ちようなのだから、シャンクスにはどうにもできやしないのだ。

髪を崩さないようにナキの頭をひと撫でしてから、シャンクスは立ち上がった。笑顔を浮かべながらじゃあなと呟き踵を返す。小さな声で「あ…ありがとう、ございまし、た」と言ったナキに、またくつくつと笑みをこぼした。

 

 

「…あの二人、将来はデカくなるぞ」

「あぁ。何せルフィは俺のガキの頃にそっくりだし、ナキも生まれついての覇気を有してる金の卵だ。“あの人”の娘なら、ある意味当然の資質かもしれないが…」

 

そう呟いたシャンクスの脳裏に、ある人物の姿が浮かぶ。深く関わっていた訳ではないが、幼い頃は世話になった人物だ。

 

性格は全く違う。しかし、あの純度の高い色の黒髪と黒曜石のような黒目は、間違いなく“あの人”の娘だった。

 

「…ま、俺が気にしすぎる事でもないな!」

 

ルフィのファミリーネームはモンキー。名の通った海賊なら、その名前を知らぬ者はいない。

 

“英雄”モンキー・D・ガープ。

その孫であるルフィと共に暮らしているのだから、ガープはナキを保護し扶養しているという事になる。ならば、ただの海賊であるシャンクスがいちいち気にする必要はない。

 

「──野郎共!錨を上げろ、帆を張れ!──出港するぞォォ!!」

「「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!」」

 

高く、野太い雄叫びが、船と海に大きく轟く。

 

 

──後に世界を揺るがす存在となる一人の少年に夢を与え、男は偉大なる航路(グランドライン)の大海原に繰り出した。

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