俺、江戸川 紗子は編入生として帝丹高校にやってきた。
蘭とは同じクラスだった。
「同じクラスだね、紗子ちゃん」
慣れねえな、この名前。
「それじゃ、江戸川はとりあえずそこに座れ」
教師が示したのは空席になっている俺の定位置。
俺は席に座った。
……。
…………。
………………。
放課後のことだった。
俺と蘭は学校を出て家路に就いた。
「新一、全然連絡よこさないけど、今どこにいるんだろう?」
「蘭は新一のこと好きなの?」
赤面する蘭。
「あ、あんなやつ……」
後で連絡しとくか。
「じゃあ、私こっちだから」
俺は蘭と別れて阿笠邸に向かった。
「どうした? お前の家は隣でここはワシの家じゃぞ」
「博士に頼みがあるんだ」
「頼みじゃと?」
「俺の声が出せる変声機作れないか?」
「そういうだろうと思ってこしらえておったぞ」
博士が蝶ネクタイを渡してくる。
裏にはダイアルが二つ。中央にはマイクがついていた。
「それはどんな声でも出せる高性能な変声機じゃ」
俺はダイアルをいじった。
「あー、あー」
蘭の声が出た。
「俺の声も出せるのか?」
「もちろんじゃとも」
俺はダイアルを回す。
「あー、あー」
俺の声が出た。
「すげえ! ほんとにいいのか、これ?」
「ああ、そのつもりで作ったんじゃからな」
俺は博士から蝶ネクタイ型変声機を受け取って工藤邸に戻る。
固定電話に留守電の記録。
蘭からの留守電だった。
連絡、しとくか。
俺は携帯を取り出し、蘭にかけた。
「新一!? あなたいまどこにいるの!」
「ああ、悪い。あの後、厄介な事件に遭遇しちまってな。今、手が放せなくてしばらく戻れそうもねえや」
「そんな……」
電話の向こうで泣いてる蘭を思い浮かべる。
すまねえ、蘭。
「それより、新一? 今、あなたの家にいとこの紗子ちゃんってのがいるんだけど」
「ああ、紗子か。話は聞いてるぜ」
「そう、なんだ……」
「それだけか?」
「うん。ごめん。忙しそうだから切るね」
電話が切れる。
その時、玄関のドアが開き、母さんがやってくる。
「あら? あなたは?」
俺は母さんに事の顛末を説明した。
「うそ……しんちゃんなんの?」
「ああ。なんなら博士に聞いてくれたっていいぜ」
「きゃあ、可愛い!」
母さんが俺を抱きしめる。
「苦しいよ」
「あ、ごめんね」
「つーか、今日帰ってくるなら連絡しとけよな」
「ごめんごめん」
「で、なんで急に帰ってきたんだよ?」
「ちょっとしんちゃんの頭脳を借りたくてね」
「俺の頭かよ」
「ダメ?」
「どこ行くんだよ?」
「大阪」
「は?」
「今から新幹線で行けば夜には着くわ」
マジか。
てことは帝丹高校は、明日からは行けないってことか。つまりそれは蘭に会えない。
ま、いいか。
俺は母さんに同行して大阪に新幹線で向かうのだった。