自分がツインテールの可愛い女の子だと妄想して日々の出来事を日記に書いていたら、転生して本当にツインテールの可愛い女の子になってしまった件 作:とんこつラーメン
私が専用機…白式を纏うと、全員がこっちに注目してきた。
あんな派手な装着をしたんだから、当然と言えば当然か。
「それが……緒理香の専用機なのか……?」
「白式…って言うらしいよ」
「白…式……」
試しに手を動かしてグーパーをしてみる。
機体は何の違和感もなく動いてくれた。
(やっぱりおかしい……)
幾ら、私のデータが予め束によって入力されていて、私に合わせて製作されたとしても、この白式を装着するのは今日が初めてだ。
大なり小なり違和感ぐらいは感じるのが普通の筈だ。
それなのに、さっきから全くと言っていい程に
まるで、
「見た感じでは高機動型の属する機体のようですけど……」
「背部にある
「そうですね。見た感じでは、機動力に極振りしているような印象を受けます」
「ってことは、装甲は薄いのかな~?」
高機動型……か。
確かに、白式はかなりの機動力と運動性能を誇っている。
何故なら、この機体の武装はそれ程の機体性能がある事が前提となっているのだから。
「緒理香、何も異常などは無いか?」
「今のところは問題ないです」
「こちらでも、莱鞭さんのバイタルは正常を表示してます。勿論、機体の方も問題ないようです」
「そうか……それならばいい」
一瞬だけ、千冬さんの顔が現役時代みたいになった気がする。
やっぱり、ISが関わるとこの人も真剣モードになるんだな。
(そう……何も問題は無い。問題が無いどころか、自分でも驚くぐらいに
こんなにも心が落ち着いていることは今までに一度も無かったかもしれない。
生まれて初めての感覚だ……。
「行けるか?」
「はい」
「よし。では、カタパルトに脚部を固定しろ」
「了解です」
超低空飛行をしてカタパルトまで行き脚を置くと、両脚部が勝手に固定された。
同時に、ステージへの扉が開き、巨大なシールドに包まれたアリーナの上空が見える。
「発進のタイミングは莱鞭さんに任せます。心の準備が出来たらで構いませんよ」
心の準備……ね。
普通の初心者なら、ここで緊張を解す為に手の平に人の字を書いて呑み込んだりとかするんだろうな。
けど、今の私にはそんなのは不要だ。
心の準備なんて、白式を纏うと決めた時から出来ている。
「すぅー……はぁー……」
数回だけ深呼吸をし、息を整えてから前を向く。
「……莱鞭緒理香。白式……行きます」
腰を低くし、カタパルトの衝撃に備えた瞬間、私と白式は初めての空へと飛び立った。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
頭の中でシミュレーターをした時の事を思い出しつつ機体を制御して飛び出すと、いきなり無数の視線が私に襲い掛かった。
「……なんでいるんだよ…」
本来なら誰もいない筈の観客席には、大勢の生徒達でごった返していた。
まるで、後々に開催されるイベントの試合の時のようだ。
「あの~…ピットの皆さん?」
『どうしました?』
私の通信に答えてくれたのは山田先生だった。
「なんで観客席が一杯になってるんですかね?」
『すみません……どうやら、今回の事が新聞部にバレてしまったみたいで……』
「あぁ~……」
それだけで何となく察しはついた。
新聞部と言えば、思いつくのはたった一人。
捏造大好きな黛薫子の仕業だろ?
あの手のキャラは、本当にどこで聞き耳を立てているか分らないからな。
『壁に耳あり、障子に目あり』とはよく言ったもんだ。
『莱鞭さん。織斑先生の提案で、訓練用ドローンを射出しようと思うんですけど、構いませんか?』
「訓練用ドローン?」
『はい。難易度に合わせて動きが機敏になったり、殺傷能力のないレーザー光線で疑似攻撃を仕掛けてきたりするんですけど。今回は初めてってことで攻撃はしないように設定しますけど……』
そうだな……ターゲット設定があると、こっちも色々とやり易いかも知れない。
どうせ、後々には嫌でも本物を相手にするわけだし。
「そうですね、お願いします」
『分りました。では、訓練用ドローンを射出します』
通信の向こうでカタカタと操作するような音が聞こえてすぐに、私の目の前にホログラムで出来たドローンと思わしき物が複数出てきた。
成程、これなら片づける必要とかもないし、経費の削減にも繋がる。
いざって時の危険性も無いしな。
「それじゃ、こっちも武器を出しますかね」
つっても、あるのは一つだけだろうけど。
「えっと……あった。これだ」
モニターを出して武器一覧を表示させると、そこにはポツンと一つだけ。
【雪片弐型】
と、あった。
もうこれで疑いようがないな。
この機体は間違いなく、
「ポチッとな」
名前が書かれた場所をタップすると、私に右手に拡張領域に量子化された状態で格納されていた雪片が姿を現す。
その柄を握りしめた瞬間、私の意識が急にクリアになる。
ドクン……
心臓が大きく鼓動し、途端に周囲の歓声が聞こえなくなっていく。
こっちを牽制するように小刻みに動くドローンの動きがスローに見えて、遂には止まって見えるようになった。
(頭が……澄み切っていく……)
心臓の動きは段々と激しさを増していき、体が熱くなっていく。
無意識のうちに私は雪片弐型を腰に当てて、居合の構えを取っていた。
(私は刃……一振りの剣……!)
そして、私は己の体が赴くままに体を動かした。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「居合の構え……?」
ピットにあるモニターでステージの様子を見ていた全員は、緒理香の動きに驚きを隠せなかった。
「緒理香さんは何か武道を嗜んで……?」
「いや……私の記憶が正しければ、そんな事は無かったと思うが……」
雪片を握りしめた時から急に雰囲気が変わり、モニター越しでも充分に伝わるほどに鋭くなっているのが分った。
そんな中、千冬だけが緒理香の目をじっと見つめていた。
「まさか……
この場で唯一、千冬だけが見えているもの。
緒理香の瞳から迸る紫電のような、火花のようなもの。
「なっ……!?」
「速いっ!?」
刹那、緒理香の姿が消えたと思ったら、一番近くにいたドローンの背後にいた。
既に緒理香は抜刀し終えた後で、右手に持った雪片を斜め上に持っていっている。
ドローンは真ん中から横一文字に切り裂かれ、元の量子になって霧散した。
「い……いつの間に……」
剣を嗜んでいる箒も、暗部として鍛えている楯無でさえ、先程の緒理香の動きを全く捉えられなかった。
千冬だけが辛うじて見ることが出来たが、それでも一瞬だけだった。
そこから始まる、緒理香の剣舞。
次は右にいたドローン目掛けて下段で構え、数歩で攻撃範囲まで移動し、斬り上げるよう一撃。
流れるような動きでそのまま、今度は近くに来ていたもう一体のドローンに刃を振り下ろす。
一連の動作で二体のドローンを破壊してみせた。
「綺麗な動きだわ……全く無駄がない……」
「まるで流水のような動きですね……」
楯無が本気で褒める。
いつもは飄々としていても、本当は自分にも他人にも厳しい彼女がここまで褒めるのは珍しかった。
虚も、緒理香の豹変振りに驚きつつも、その動きに魅了されていた。
『次……』
眼前の目標を撃破した緒理香は、次のターゲットを選定する。
突如、緒理香…というか、白式が急加速して、少し離れた場所にいるドローン目掛けて突撃する。
「あ…あれはっ!?」
「
「う…嘘でしょっ!?」
「代表候補生レベルになって初めて習得可能な高等スキル…!」
「莱鞭さんは、もう既にそこまでの域に達して……!?」
緒理香はドローンの少し斜め上に向かい、その流れで体全体を大きく回転させるように刃を振るい、真っ二つにした。
「お…織斑先生! 緒理香ちゃんのIS適正はどれぐらいなんですかっ!?」
「……緒理香の適性値は……Bだ」
「ビ…B……?」
「Bと言えば……」
「高くもなく、かといって低くもない値……」
とっさに楯無が千冬に緒理香のIS適正について問い質したが、帰ってきた答えは意外過ぎるものだった。
「Bなのに、あんな動きを……?」
「適性値だけで全てが決する程、ISは甘くは無い。それは代表候補生や国家代表であるお前たちが一番よく分っているんじゃないのか?」
「えぇ……」
「そう…ですわね……」
千冬が言い聞かせるようにセシリアや楯無を見据える。
楯無は真っ直ぐに見返し、一方のセシリアは気まずそうに目を逸らす。
「どれだけ適性値が高くても、技量が伴っていなくては宝の持ち腐れになるし、その逆も然りだ。私が知っている操縦者の中には、CランクでもAランク以上の実力を持つ者は多数いた」
「緒理香さんもその類であると……?」
「だろうな。アイツの場合は、技量で全てを補っているのだろう。BランクならばISを十全に動かすことが可能だ。後は己の腕がモノをいう。そのいい例が緒理香だ」
千冬が説明をしている間も、緒理香は次々とドローンを撃墜し続け、後はもう数体だけとなっていた。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
(なんだろう…これ……)
右手で雪片を払いドローンを切り裂く。
(まるで自分の体じゃないように、
そのまま体を回転させ、背後にいたドローンも一緒にぶった斬る。
(
突き攻撃でドローンを粉砕しながら、突撃して向こう側にいたドローンも一緒に貫く。
(すっごい疲れてる筈なのに、
最後の一体に向けて、雪片をぶん投げてぶっ刺した。
(
雪片が量子化し、私の手元に戻ってくる。
それを握りしめて、構えを解いた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
終わったと思った途端に、ドっと疲れが押し寄せてきた……。
早く戻って休みまくりたい……。
フラフラになりながら、私はピットに向かって戻っていった。
(あ……そういや、零落白夜を使い損ねた……)
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
満身創痍といった感じでピットまで戻ってきた緒理香だったが、到着した途端にISよりも先に緒理香自身の方が力尽きたようで、白式が強制解除された。
「あ……」
「緒理香!」
ふらついて倒れそうになった緒理香の体を、千冬が急いで駆け付けてからキャッチした。
緒理香の体は汗だくになっていて、息も絶え絶えになっている。
疲弊しきっていて、今にも意識が途切れそうだ。
「千冬さん……私……」
「よく頑張ったな。最初にしては上出来すぎる動きだったぞ」
「はは……」
「だが、何でお前が『ゾーン』に……って、緒理香?」
「すー…すー…」
精も根も尽き果てたのか、緒理香は千冬の腕の中で眠ってしまった。
いつものような変な笑顔ではなく、まるで
「織斑先生、ゾーンって……」
「超一流のアスリートの、更にその一部にだけ到達出来る究極の領域。精神が極限の超集中状態に入る事を言う。別の言い方をすれば『無我の境地』ってやつだ」
「無我の境地……」
箒も武を志す者として、ゾーンのこと自体は知っていたが、それを実際に見たのは今日が初めてだった。
セシリアと楯無も同様で、現実で見たのはこれが最初だった。
「現役時代は私もゾーンに入れはしたが、今では難しいな……」
「何でですか?」
「ゾーンは一度入ると、その圧倒的な力をもう一度体験したいという欲求が生まれ、それが却って雑念となってゾーンへと到達出来なくなる。雑念はゾーンにとって最も忌むべき存在だからな」
「織斑先生にもそんな事が……」
「私だって人間だ。雑念ぐらい幾らでも生まれるよ。今となっては特にな」
そう呟く千冬の顔には、心なしか寂しさが見えていた。
「なんで、おりりんがゾーンに……」
「それは私にも解らない。ただ……」
「ただ?」
「いや…なんでもない。私は緒理香を保健室に連れて行って休ませる。お前達も早く帰れよ。山田先生、後は頼むぞ」
「はい。任せてください」
千冬は緒理香を抱えたまま、その場を後にした。
この日、少女達の中で緒理香に対する評価が変わった日だった。
小さく幼い少女だと思っていた彼女が、実は自分達と同じぐらいに強い闘志を秘めた存在であったのだと。
この日を境に、今まで以上に緒理香の事を好きになっていくヒロインズだった。
余談だが、千冬は緒理香を保健室に連れて行った時、本気で送り狼になるかどうか迷ったという。
緒理香、実は強かった説。
でもまだ、体力がついていけてません。
だから、チートなのかと問われれば、違うと言えるでしょうね。