自分がツインテールの可愛い女の子だと妄想して日々の出来事を日記に書いていたら、転生して本当にツインテールの可愛い女の子になってしまった件 作:とんこつラーメン
清少納言×2にアタランテ、マリー(二枚目)にナイチンゲールにシバの女王×2にナーサリーライム。
ハッキリ言って……どんだけ~。
「ふみゃ~……」
あ。なんか変な欠伸が出た。
(可愛い)
(可愛過ぎますわ)
(いつか絶対に抱いてやる)
寝不足かな~? 別に徹夜とか夜更かしとかしてないんだけどな~。
最近の自分の生活を振り返りながら、私は皆と一緒に食堂から教室まで移動していた。
朝から妙に熱い視線を送ってくる箒達を無視しながら教室へと辿り着いた途端、いきなりクラスメイトの子に話しかけられた。
「おはよ~。今日も変わらずツインテールしてるね~」
「なにその日本語。初めて聞くんだけど」
ツインテールしてるってなによ。
「それよりも、莱鞭さん達は知ってる?」
「「「「何を?」」」」
「二組にいる友達から聞いたんだけど、その二組に今日、中国から転校生が来るんだって」
「中国からの転校生……」
この時期に来る中国からの転校生といえば、もう『あの子』しか該当しないじゃん。
そっか~。もうそんな時期か~。
原作ではあった筈のイベントを諸々に飛ばしてるせいか、どうも時間の過ぎる感覚が分んなくなっていく。
もう原作知識なんて殆どと言っていい程には役には立たないけど、それでも一応の目安ぐらいにはなるからね。
まだ全ての知識を捨て去るには早すぎる。
「こんな半端な時期に転校生だと?」
「また急な話ですわね。何かあったのかしら? 布仏さんは、生徒会のメンバーとして何か聞いてませんの?」
「ん~ん。私も何も知らないよ~」
本音の場合、仮に知ってても一晩経ったらすぐに忘れる可能性がある。
ま、可愛ければそんなのは全く関係ないんだけどな!
「しかも、噂によるとその子、中国の代表候補生なんだってさ」
「また『代表候補生』か?」
「なんでそこで私を見ますの?」
「いや…だってな。代表候補生と言えば、私でも知っているレベルの存在だぞ? そんな連中が一学年にここまで揃うのは、流石におかしいと思ってな」
「私もその意見には同意しますけど、だからと言って私に意見を求められても困りますわ。私が把握しているのは、あくまで自国の状況だけですから」
「それもそうか」
同じ代表候補生だからって、誰でも彼でも一色単にしちゃダメって事だな。
「けど、その転入生ってどんな子なんだろうね~?」
あ。本音のその発言をした瞬間、何かのフラグが立った気がする。
「それは……こんな子よ!!」
「「「「え?」」」」
いきなり聞こえてきた声。
その方向へと目を向けると、そこには不敵な笑みを浮かべながら教室のドアに寄り掛かっている一人の少女がいた。
忘れもしない、あの黒い髪のツインテールは……。
「鈴!!」
「緒理香!!」
ダダダ~! っと走っていってから、ガシッ! っと手を合わせる。
「久し振りね、緒理香。いつみても見事なツインテールだわ」
「そっちこそ。いつ日本に戻ってきてたのさ。連絡をくれれば出迎えぐらいはしたのに」
「本当に急だったのよ。こっちに着いたのは昨日の夜だったし。でも、その気持ちだけでもすっごく嬉しいわ。ありがと、緒理香♡」
このノリ……あぁ…久し振りだ!
これなんだよな~! 私が求めてるのは!
少なくとも、千冬さんみたいな年がら年中、私限定で発情している人はお断りだ。
「お…緒理香? そいつは一体……」
「どなたなんですの……?」
「あら。あたしとしたことが、自己紹介を忘れてたわね」
コホンとワザとらしく咳払いをしてから、鈴は自己紹介を始めた。
「あたしの名前は『
「お前が……」
「それは分かりましたけど、そのあなたがどうして緒理香さんと仲がいいんですの?」
「そんなの決まってるじゃない」
お? なんか鈴がこっちに近づいてきたぞ?
そ~し~て~……後ろからギュ~っとハグですか。
「あたし達が『こんな事が出来るような仲』だからよ」
「「なっ……!?」」
「いいな~」
こんな事って。
小学生の時から、割と頻繁に同じことをしてなかったか?
私はもう完全に慣れたから何も言わないけど。
「ほ…本当ですのっ!? 緒理香さん!」
「まぁね~。確かに、昔からよく鈴は私に抱き着いてきてたね」
「「そ…そんな……」」
なんでそこで二人して愕然とする?
そんな事になるような要素が今までに一個でもあったか?
「にしても、まさか緒理香がIS学園に入学してるとは思わなかったわ。何があったのよ?」
「まぁ……色々と。とてもじゃないけど、一言じゃ語り尽くせない……」
話そうとすれば、必然的に私の保護者である束の事まで話さないといけなくなるしな。
流石にそれは超絶的に面倒くさいので却下。
「あっそ。ま、私的には緒理香と一緒の学校にまた通えるだけでも十分だけどね」
「それは私もだよ。クラスは違うけど、また鈴と会えて普通に嬉しい」
「緒理香……♡」
やっぱりさ、こう『ノリ』が分る気さくな友達ってのは重要だよな。
こういった子がいるといないとでは、場の空気が段違いだし。
(やっぱり、あたしと緒理香は運命の深紅の糸で結ばれてるんだわ…♡ 日本はまだ同性婚は無理よね? だったら他の国なら……)
けど、もうそろそろ戻った方がいいと思うんだけどな~。
多分だけど、あの人がやってくる時間だと思うから。
「おいこら、そこの転校生」
「うっ……! この声は…まさか……!」
ほら来た~。
鈴が恐る恐る後ろを振り向くと、そこには……。
「私の緒理香に後ろから堂々と抱き着くとは…いい度胸をしているな……!」
「ち…千冬さん……!?」
完全にマジ切れプンプン丸になってる千冬さんと、この状況を理解出来ずオロオロしている山田先生がいました。
山田先生……今にも泣きそうなんですけど。
「もうホームルームの時間だ……! とっとと自分のクラスに戻れ……!」
「りょ…了解……」
お転婆の代表格とも言える鈴でも、この状態の千冬さんには逆らおうとはしないか……無理もない。
なんかもう、千冬さんの体から赤黒いオーラが漂ってるし。
ぶっちゃけ、私もめっちゃ怖いです。ガクブルです。
「それと、私の事はここでは『織斑先生』と呼べ。いいな?」
「は…はい」
そこはちゃんと指摘すんのね。
「そして……」
「まだあるの……?」
「緒理香は私の嫁だ……絶対に誰にも渡さん……!」
まだそれを言ってんのかよっ!?
あんたもいい加減にしつこいなっ!?
「悪いですけど、それは流石に聞き入れられないですね……!」
「ほぅ……? ではどうする?」
「こうします!」
お? おお? さっきまで怖がってた鈴が急に好戦的な雰囲気に?
って、私の顔が掴まれてるんですけど?
「チュッ♡」
「「「「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」」
ちょ……今……何をされた?
もしかして…鈴に頬にキスされた? マジで?
「それじゃーね! またお昼にでも会いましょ!」
「う…うん……」
「「「二度と来るな~!!」」」
り…鈴って、あんなにもアグレッシブな女の子だったっけ……?
あれかな? 中国じゃ、友達同士でキスするとか当たり前な感じなのかな?
だとしたら、何気に中国って未来に生きてるな……。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
授業が始まってもまだ怒っていることが丸分りな千冬さんを横目で見ながら、私は先程までいた鈴とかいう女の事を考えていた。
(なんなんだ奴は!? いきなり緒理香に抱き着いたかと思いきや、去り際にキ…キスをするなんて! 女同士で、しかも頬にとはいえ、キスだぞっ!? そんなの…私だってしたことないのに……)
髪型か? お揃いの髪型だから、あんなにも仲が良かったのかっ!?
いや…流石にそれは無いか。狼狽えすぎて変な方向に思考が向かっているぞ私。
「はぁ……」
私にも、あいつぐらいの積極性があれば…少しは緒理香との仲も進展するのに……。
少なくとも、大衆の面前であんな大胆な事をするなんて、私には絶対に無理だ!
羞恥心が爆発して死ぬ!
かといって、二人きりの時ならば問われれば、答えはNOだ。
それでも恥ずかしすぎて死ぬと思う。
(何か…何か私に…奴にも勝てる武器は無いのかっ!? 考えろ私!)
私の武器…武器…武器……。
(そうだ! 今の私には、他の皆には無い圧倒的なアドバンテージがあるじゃないか!)
私は今、緒理香と同じ部屋に住んでいるんだった!
更に言えば、私は緒理香とよく一緒のベッドで寝ている!
そう…あの、天使と越えて女神の如き寝顔を毎晩のように拝んでいる!
これは間違いなく、私だけの強み!!
しかも、私は緒理香の幼馴染でもある!!
(なんだ……こうして冷静に考えれば、私にだって十分に勝ち目はあるじゃないか……)
勝ち目はある……ある…けど……やっぱり……。
「緒理香と……キス…したいな……」
「ほぅ? 誰とキスをしたいだと?」
……え? いつの間にか目の前に千冬さんが?
かなり小さい声で呟いた筈なのに、どうして聞こえてた?
千冬さんは、その聴力もチートなのか?
「授業中に呆けているとは随分と余裕だな、篠ノ之」
「い…いえ。私は……」
「そんなに余裕ならば、このページにある問題を全て解いて貰おうか」
「は…はい……」
授業は…ちゃんと聞かないとダメだな……反省……。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
(いきなりやって来て……彼女はなんなんですのっ!?)
いつもならば普通に集中出来ている授業に全く集中出来ずに、頭の中がグルグルと回って、緒理香さんと彼女の事で一杯になっていた。
(あの感じ……間違いなく、緒理香さんとは昔からの仲と見ましたわ。けど、幼馴染である箒さんが知らないようでしたし、となると……どうなるんですの?)
今思えば、私は緒理香さんの事も箒さんの事もよく知らない。
分っている事と言えば、箒さんが篠ノ之博士の妹であり、緒理香さんがその篠ノ之博士の推薦でIS学園へと特待生という形で入学してきたこと。
(別に、相手の事を良く知ることが仲良くなる事の必須事項とは言わないけど、それでも……何一つ知らないのは少し寂しいですわね……)
緒理香さんの可愛らしさに見惚れて、私はあの方とお近づきになりました。
けど、今は違う。私は緒理香さんの人となりと、その『強さ』に本気で惚れた。
(これからはもっと、緒理香さんと色んな事を話すべきかもしれませんわね。お互いの事を知るのもまた、私達の為になるでしょうから)
まぁ、それはそれとして。
問題は彼女の持つ、あの積極性だ。
幼き頃から『淑女であれ』と育てられた私には到底、考えられない事だった。
(皆さんの目の前でキ…キスだなんて! 破廉恥ですわ! 破廉恥ですわ!!)
一体何を考えているのやら! あの方には女らしい恥じらいというものが無いのかしらっ!?
そもそも、女性ならばこう…もっと粛々とですわね……。
「私ならば、まずはお茶にお誘いして、それを切っ掛けに徐々に仲良くなって、それから……」
「それから? なんだ?」
「…………え?」
頭上から、非常に聞き覚えのある怒りを含む声が……。
「オルコット……」
「は…はい…ナンデショウカ……」
「そんなにも頑張り屋なお前には、私から特別に課題をくれてやろう。喜べ」
「ハイ……ウレシイデスワー」
今が織斑先生の授業である事を完全に忘れてましたわ……。
オルコット家当主として、恥ずべきことですわ……うぅぅ……。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
箒とセシリアがそれぞれに鈴の事で色々と考えている時、本音はというと……。
(私もおりりんをぎゅ~ってしたいな~。キスされた時の驚いてたおりりん……ちょ~ちょ~可愛かったにゃ~♡)
いつも通りの表情のまま、同じように緒理香の事を考えていた。
あの千冬にすら全く悟らせないとは、流石は暗部の家系と言うべきか。
布仏本音の隠された実力の一面が垣間見えた瞬間だった。
ヒロインズにとっては、本当にいきなりやって来た最強の伏兵。
あの性格は、かなりの脅威でしょうね。