自分がツインテールの可愛い女の子だと妄想して日々の出来事を日記に書いていたら、転生して本当にツインテールの可愛い女の子になってしまった件 作:とんこつラーメン
後はヴァーチェだけですね。
いつになるかは分りませんが、今から楽しみです。
遂に…遂にこの日が来てしまった。
原作でも一番最初の学園のイベントである『クラス対抗戦』。
ここで原作一夏は鈴と試合をして、その後に謎のISと連続で戦う羽目になるんだけど……。
(ここにいるのは一夏じゃなくて私だしなぁ~……)
本来の歴史とは何もかもが違う状況な為、これから先に何が起こるのか全くの予想がつかない。
束の立場も少し違うから、あいつの思惑が全然分からない。
色んな事に不安を感じながら、私は前に白式の試運転をした第3アリーナのピットにて試合の時を待っていた。
「おりりん、だいじょ~ぶ?」
「う…うん。なんとか……」
試合を前にした私の傍には、いつものように箒とセシリアと本音の三人がいた。
簪と鈴は当然だけどここにはいない。
二人は別のクラスの代表だし、鈴に至っては一番最初の対戦相手だしね。
「大丈夫ですわ。緒理香さんならきっと勝てますとも!」
「その通りだ。緒理香が今感じている緊張感は私もこれまでに幾度となく経験したことがあるから、今のお前の気持ちはよく分るぞ」
「そ…そうなんだね……」
そういや、箒は剣道の全国王者だったっけ。
ってことは、それまでに何回も何回も試合を繰り返して来たって事になるのか。
うへぇ~…私には絶対に不可能だわ~…。
箒…マジで尊敬するかも。
「別に緊張をするなとは言わない。程よい緊張感は自分の心を引き締めてくれる。その緊張感を楽しめるようになれれば一人前だ」
「き…緊張を楽しむ……?」
なにそれ。そんな超合金Zみたいな精神力なんて人間に身に付けられるの?
「……あのさ。今ちょっと思ったことがあるんだけど」
「なんですの?」
「私ってさ……これが初めての試合じゃね?」
「「「あ」」」
ここで冷静に考えてみました。
本当ならば原作やよくある二次創作では、この前に一度、セシリアとクラス代表を決める為の試合をしているわけでして。
それである程度の経験を積むのがある種のお約束になってるんだよね。
でも、私の場合は……。
(なんでかセシリアとの試合はお流れになって、しかも当の本人は『代表補佐』なんて隠し玉で見事に逃れた。私がしたことと言えば、白式の起動実験とドローン相手に動いただけ。少なくとも、対人戦は冗談抜きでこれが初めてになるんだよね……)
人生初めての試合が、こんな大衆の面前でする公式戦って、どんな羞恥プレイなんですかっ!?
「ど…どどどどどうすればいいのかにゃ? やっぱ、試合の前には挨拶とかしなきゃダメ的なやつ? 歓声にはちゃんと応えて手とか振らないといけないのかにゃ?」
こんな時の礼儀作法とか全く知らないんですけど~っ!?
え? 割とマジでどうすればいいのっ!?
(にゃって言った)
(にゃって言いましたわね)
(猫耳つけたい。思い切り愛でたい)
うぅ~…なんで肝心な時に千冬さんと山田先生はいないんだよ~!
二人はこのアリーナの管制室に行っていて、ここで行われる試合の様子をチェックする役目があるそうな。
因みに、皆は後で観客席に行って試合を観戦するって言ってた。
先生たちの所に行こうとはしない分、原作よりも常識人にはなっているのかな。
「し…心配はご無用ですわ。特に挨拶とか名乗りとかしなくても大丈夫ですから。緒理香さんは、ステージに出たら試合までの僅かな時間を利用して、対戦相手である鈴さんと軽く言葉を交わして、少しでもリラックスをすればいいのです」
「ホント? 本当にそれだけでいいの?」
「えぇ。ですから、肩の力を抜いてくださいな」
「うん……」
流石は現役の代表候補生。
こんな時にどうすればいいのかを、ちゃんと熟知している。
なんか、少しだけ私の中でセシリアに対する好感度が上がったかも。
ちょっとだけ『緒理香・オルコット』になってもいいかも、なんて思っちゃった。
『第一試合に出場する選手は、ステージに出てください』
あ……とうとう来てしまった。
心臓が凄まじい速度で早鐘を打ってるよ~!
「では、私達はさっき言った通り、観客席で見守っているからな」
「御武運をお祈りしますわ」
「頑張ってね、おりりん!」
「が…がんばりましゅ……」
一番肝心な所で噛んだ。
どうしてこうも私は締まらないんだろう……。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「遂にこの日が来たわね」
「ソ…ソーダネ…」
白式を装備してステージに出ると、其処には既に鈴が自身の専用機『
うん。原作と同じで凄く刺々しいです。
「それが緒理香の専用機?」
「白式だよ」
「名は体を表すね。文字通りの真っ白な機体じゃない」
「まぁね。でも、これはこれでカッコいいと思う」
「それはなんか分かる気がする」
ん? なんか、少しだけ緊張が解れてきた?
セシリアの言ってた通りだ!
でも、これはきっと仲がいい鈴だからこそ効果があったんだろうな。
もしも相手が見知らぬ相手たっだ場合、増々緊張していたに違いない。
よし。今度セシリアのお部屋に遊びに行こう。
勝つにしろ負けるにしろ、頼りになるアドバイスをくれたお礼はちゃんとしないと。
「で、その腰につけているのが……」
「この白式の唯一無二の武装である『雪片弐式』だよ」
「剣一本だけ? 正気?」
「その台詞は開発者に言ってください」
「そ…それもそうね」
私だって、好き好んでこんな浪漫溢れる仕様にしたわけじゃないんですよ。
「でも、それを少しでも改善しようと私なりの努力はしたんだけどね」
「改善?」
「この雪片を収納している『鞘』だよ」
腰のハードポイントから鞘ごと雪片を取って、鈴に見せつける。
「現状、武器が一つしかないのに態々、拡張領域に収納する必要性を感じなくてさ、こうして鞘を作って貰ったんだ」
「成る程。それが前に緒理香が言ってた『プチ・パワーアップ』なのね」
「そのとーり」
ぶっちゃけ、これが有るのと無いのとでは本気で大違いな気がする。
なんつーの? 安心感が段違いだよね。
「鞘があるだけでも、出来る事は多くなるからね」
「そうね。ふふ……柄にもなく、ちょっとだけ緒理香との試合が楽しみになってきたわ」
不敵な笑みを浮かべる鈴。
あんな顔も出来たんだな……。
『では、これよりクラス対抗戦、一年の部の第一試合を始めたいと思います。両者は既定の位置まで移動をしてください』
き…来た!
私と鈴は静かに前方に移動をして、ある程度の距離を取ってから止まった。
(そういえば、鈴の専用機の名前って完全に当て字だよな。だって、どう考えたって『甲龍』と書いて『シェンロン』なんて呼ぶ筈ないもん。つーか、シェンロンって名前なら衝撃砲なんて癖の強い武器じゃなくて、ドラゴンハングとか火炎放射器とか装備しろよな)
なんて、一番緊張するはずの場面で非常にどうでもいい事を考えてしまう私。
きっと、これは誰もが一度は経験したことがあるんじゃなかろうか。
例えるなら、会社やバイトの面接の時とか。
「ISを装備した状態で手の平に『人』って書いて飲み込んでも効果ってあるのかな?」
「さ…さぁ? あんまし意味は無いんじゃない?」
「そっか……」
こんな時に何を言ってんだ私はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?
ほら~! 鈴も本気で困ってるじゃないか~!
『では……試合開始!』
ブ―――――――――ってブザーが鳴りましたよって、少しは空気を読まんかい!!
すっごい変な空気のまま、試合が始まっちゃったよぉぉぉぉぉぉっ!?
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「と…とにかく、行くわよ!」
「よ…よぉ~し!」
鈴がでっかい近接ブレードを二本、両手に装備してから構えた。
それを見て私も、鞘ごと雪片を腰に当ててから左手で持ち、右手は軽く柄に添えて、いつでも攻撃出来るように腰を低くした。
あのブレード、名前なんて言ったっけ?
「「…………」」
動かない。
正確には、動けない。
私も、多分は鈴もだけど、先制攻撃を仕掛ける事の恐ろしさをよく理解している。
昔はよく格ゲーとかで対戦してたからね。
その辺の事はお互いに御見通しなのですよ。
「「はぁぁっ!!」」
このままでは時間だけが無駄に過ぎていく。
ここでもまた私達は意気投合したようで、お互いに真っ直ぐに突っ込んでいった。
「せいっ!」
「はっ!」
従来の雪片よりも、鞘により射程も刃の幅も広くなって威力が増した状態なのに、向こうの大きな刃と互角の鍔迫り合いになっている。
逆を言えば、鞘が無い状態だとパワー&重量不足で普通に弾き飛ばされていたに違いない。
「いい踏み込みをするじゃない…! この甲龍とパワーで渡り合うなんて!」
「いや…白式は普通にパワー負けしてるよ。ギリギリで何とかなってるのは、鞘を付けたお蔭で重量が増した雪片のお蔭だって」
鞘自体を一つの刃とするように注文したのは大正解だった。
これなら、雪片を守りつつも相手と戦うことが出来るし、切り札としての『零落白夜』が使い易くなる。
結果として攻撃力とかも上昇してるしね。
(つーか、前とは違って今回はあの『変な感じ』にはなってないんだな……)
今の私は自分でもハッキリと断言出来るほどに正気を保っている。
そんな状態でも普通に試合が出来ている事に驚きなんだけど。
私って、
今のISはスポーツだって分かってはいるけど、それでも正気の沙汰じゃないよな。
……ヤバい。私も段々と『ISの世界』に毒されていってる気がする。
常識だけは忘れるな…私……!
「ほらほらぁ! ボーっとしてる場合じゃないわよ!」
「くっ…!」
こっちの刃を受け流すようにしてから鍔迫り合いを終わらせ、そこからステージ中央で私と鈴の激しい攻防戦が繰り広げられる。
「せいっ! でりゃぁぁぁっ!!」
「あぐ……!」
二振りの刃から繰り出されるコンビネーションは、着実に私の事を後ずらせた。
こっちと向こうの刃が交わる度に火花が散り、同時に自分が確実に押されている事を自覚する。
(パワーもそうだけど、手数が多いのが普通に厄介なんですけど! 向こうは
雪片の重量の増加に伴って威力が増したのはいいけど、それでもこっちの武器は雪片一つだけ。
空いた場所に他の武装を搭載出来れば一番なんだろうけど、今回はそうはいかなかった。
というのも、実は鞘が完成した時点で既に他の武装の殆どは他の子達が予約してしまっていたのだ。
装備したくても、装備する武器が無いんじゃ話にならない。
結果として、今回は致し方なく鞘だけを追加で装備することになったのです。
「意外と粘るじゃない……それでこそアタシの緒理香ね!」
「それはどう…もっ!」
「っと!」
僅かな隙を狙って横薙ぎに払うが、それを鈴は後ろに下がる事で回避した。
しかも、移動をしながら器用に二本の近接ブレードの柄を連結させて、ツインブレードしてから振り回し始める。
あ。これはマジでヤバいパターンや。
「ちょっと本気で行くわよ~…! どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「ぐあぁぁぁぁぁ…!」
咄嗟に刃でガードをしたけど、その衝撃までは軽減できずに斜め下に吹き飛ばされる。
飛ばされながら必死に目を開けると、甲龍の両肩付近が急に光り始めた。
この光景は知っている。
私の予想が正しければ、冗談抜きでピンチだ。
腹立つレベルで、使うタイミングが最高すぎる。
「これはおまけよ!!」
辛うじて体勢を整える事は出来たけど、上を向いた時には既に『見えない何か』が自分に向かって飛んできているのが分かった。
完全不可視の龍の咆哮。
普通ならばこのまま直撃コース一直線だろうけど、この時の私は不思議と違った。
(あれ? なんか……
時間にして一秒にも満たない刹那。
私は確かな違和感を信じて、反射的にその『歪み』に向かって刃を振り下ろした。
「なっ!?」
「手応えあり……!?」
何も無い筈なのに、確かな斬り応えがあった。
周りからすれば、私が何をしたのか意味が分らないだろう。
でも、私には分かる。自分が何を斬ったのかを。
「嘘…でしょ…!? 初見であたしの『龍砲』を見破ったの……!? どうやって……」
「なんか、妙な歪みが見えたから…思わず斬っただけだよ……」
「は……? 歪み…ですって……?」
本気で脊髄反射で腕が動いたけど、どうやら正解だったみたいだ…!
地味に分の悪い賭けだったけど。
(じょ…冗談でしょ…? 確かに、周囲の空間を圧縮して弾丸として発射している以上、多少の歪みが発生しても不思議じゃないけど、それを観測するにはハイパーセンサーの感度を最大にしておかないと不可能な筈…。少なくとも、一瞬一瞬の判断の間違いが命取りとなる戦闘中にそれをするなんて出来るわけがない…。となると、緒理香はハイパーセンサーとか関係なく、肉眼で歪みを見つけた上で、自分の勘を信じて刃を振るったっていうの……?)
今のは完全にまぐれだったけど、次も同じようにいくとは限らない…!
何回か練習をすればなんとかなりそうだけど、ンな事をさせてくれるわけないし……。
今の攻防で『衝撃砲』を攻略したとはお世辞にも言い難い。
まだまだ油断は禁物だ……!
緒理香、正気の状態で初めての試合。
初戦にしては難易度が高過ぎる気もしますが。