自分がツインテールの可愛い女の子だと妄想して日々の出来事を日記に書いていたら、転生して本当にツインテールの可愛い女の子になってしまった件 作:とんこつラーメン
つっても、別に正月ネタとかしないんですけどね。
えっと……今、この子はなんて言ったんだ?
妖精? 誰が? 要請の間違いじゃないの?
「やっぱりな……」
箒さんや。何が『やっぱり』なんですかね?
その所を詳しく、原稿用紙2枚ぐらいに纏めて教えてくれないかい?
「あっ! 申し訳ございません! 私としたことが、自己紹介も碌にしないで……」
「いや。君の名前ならもう知ってるから。イギリスの代表候補生のセシリア・オルコットさんでしょ?」
「まぁ! もう既に私の事をご存じだったなんて! これは運命なのかしら……」
「さっき普通に自己紹介してたからね?」
あ…あれ~? マジでこの子はどうしたのかな~?
少なくとも、私が知る限りでは登場初期の頃のセシリアは、もうちょっとこう……近寄りがたい空気を出しながらも、意外と真面目な部分もあったりしてたと記憶してるんですけど?
なのに、今の彼女はまるで天然系のお嬢様って感じがする。
「また厄介な奴に絡まれてるな……」
そう思うのなら、少しは助け船ぐらいは出してくれてもいいんじゃないかなっ!?
「あ…あの……莱鞭さん?」
「なにかな?」
「その……えっと……いきなりで失礼だとは存じているのですが、どうしても我慢出来なくて……。その御髪を触らせて貰ってもよろしいでしょうかっ!?」
「おぐし?」
「御髪とは、髪の毛の事だ」
「あぁ~……」
随分と時代がかった言い方をするもんだから、全く分からなかった。
これでも一応、ギリギリ昭和生まれの人間なんだけどな~。
「こんな髪でよかったら、幾らでも触っていいよ」
「あ…ありがとうございます! このお礼はいずれ必ず致しますわ!」
「そこまで大袈裟にしなくていいから……」
なんだろう……このセシリアは、千冬さんとは別の意味で疲れる……。
箒も時々、似たような雰囲気を出す事はあるんだけど、まだまだ十分にマシな部類なんだよな。
だからこそ、私は個人的に箒の事は好きな方だ。
ぶっちゃけ、一夏には勿体ないよ。
「そ…それでは…お触りしますわ……」
お触り言うなし。なんかニュアンスがエロいわ。
「はわぁぁ……なんという触り心地……。まるで最高級の絹糸に触れているようですわ……」
「昔から、特別な事をしていないにも拘らず、不思議とサラサラとしていたからな、緒理香の髪は」
そうなんだよね。普通に市販のコンディショナーを使ってるだけなんだけど。
だから、よく同級生の女子達からはとても羨ましがられてたっけ。
「この髪色も素晴らしいですわ……。このような髪の色のお方が現実にいるなんて……」
「確かに、桃色の髪を持つ人間なんて非常に珍しいだろうな」
「でも、別に私は染めてたりとかしてないよ?」
「それは知っている。姉さんも言っていたが、お前のその髪色は生まれつきの天然らしいからな」
こんなファンタジーな感じのする髪色をしてたもんだから、一時期は虐めの対象になりかけた事もあったんだよな。
でも、地獄のような就職氷河期を経験した私に死角なんてある筈も無く、そんな事をやろうとした連中は全員揃って、金的&ザンギエフ様の必殺技のオンパレードで黙らせた。
「はっ! まさか……莱鞭さんは本当に妖精の生まれ変わりなのでは……」
「「ないない」」
流石にこれにはツッコまずにはいられなかった。
いつからセシリアは厨二病患者に片足を入れたのかな?
「はふぅ……♡ 満足ですわ……♡」
「そーかい」
さっきまで触っていたツインテールから手を放して、頬を赤くしながら深い溜息をついていた。
溜息をつきたいのはこっちなんだがな。
「緒理香さんの残り香……♡」
「ヒィィィッ!?」
頼むから、さっきまで私の髪を触っていた手の匂いを嗅ごうとするのだけはマジで止めて!!
こんな形で第二の千冬さんの誕生を見届けたくない!
しかも、しれっと私の事を名前で呼んでるし!
「本当にありがとうございましたわ……♡ 今度は私の自慢の紅茶を御馳走致しますわ」
「た…楽しみに待ってるよ……」
「はい!」
元気のいい返事と共に、彼女は自分の席へと戻っていった。
多分、もうすぐ休み時間が終わるからだろう。
「世界は広いな……」
箒、なんかその発言が嫌なフラグを建てたような気がするから止めて。
「にしても、あいつ…私の事は全く目に入ってなかったぞ」
「そこまで私に夢中になる要素ってあるとは思えないんだけど」
「いや、ありまくるだろう」
「え~?」
体の発育が超遅れている事を除けば、立場上は皆と同じ華の女子高生なんだぞ?
一体何が珍しいというんだ? 本気で意味が分からん。
「そろそろ私も戻る事にする。また後でな」
「うぃ~」
取り敢えず、学園生活における私の癒しは山田先生と箒になるのかな。
そんな存在がいるだけ、まだマシか……。
一夏の場合はそうもいかなかったみたいだしな。
今はその一番肝心な一夏がいない状況なんだけどさ。
(もう、私の知っている原作知識はあてにしない方が賢明かな……)
下手に頼ろうとすると、後で痛い目にあいそうだ。
ここは状況に応じて臨機応変に対処しよう。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
三時間目は千冬さんの授業。
その内容は『実戦で使用する各種武装の特性について』。
流石に自分が教壇に立っている時は、何もしてこない……と信じたい。
「っと。そうだった。授業に入る前に一つ決めなくてはいけないものがあったな」
「再来週に行われる、クラス対抗戦の代表者、つまりはクラス代表ですね」
「そうだ。本来ならば最初のSHRの時に決めなくてはいけなかったのだが、緒理香の新たな属性に萌えていて決める暇が無かったからな」
おい。今さらっと私のせいにしなかったか?
けど、クラス代表……か。
原作では、ここで一夏が推薦されて、それに檄おこプンプン丸になったセシリアと口喧嘩に発展して、千冬さんの一言でISでの試合になったんだよな。
だがしかし、ここには一夏はいない。
どんな風な展開になるのか全く予想出来ないぞ……。
「織斑先生。クラス代表ってなんですか?」
「要は学級委員のようなものだ。先程言ったクラス対抗戦だけじゃなく、定期的に生徒会が開く会議に出席したりする役目を持つ者の事だ。それと、クラス対抗戦は、現時点での各クラスの実力の推移を測る大会だ。流石に今の段階では殆どの生徒が五十歩百歩だが、誰かと競い合う事はそれだけで向上心を生み出す事に直結する。因みに、一度でもクラス代表が決定したら、余程の例外が無い限りは一年間は変更が無い事を覚えておけ」
お…おぉ~……千冬さんが初めて教師っぽい発言をした……。
コレだよコレ! 私の知っているカッコいい千冬さんは!
一日10秒間だけでいいから、こんな風になってくれれば嬉しいんだがな……。
「自薦他薦は問わないから、誰かいないか?」
ここの場面も、一夏がいたら速攻であいつに決定するんだけどな。
今回の場合は……セシリア辺りが妥当か?
「はいっ! 私は莱鞭さんを推薦します!」
ん~? 私の気のせいかニャ~?
と~っても聞き捨てならない言葉が聞こえたぞ~?
「私も莱鞭さんがいいと思います!」
またかよっ!?
最初の子を切っ掛けにして、次々と私を推薦してくる輩が出てきてるぞ!
これはかなりヤバい……! こうなったら、私も手を上げてセシリアを推薦するしかない!
「ふむ。やっぱり緒理香を推薦してきたか。矢張り、緒理香の可愛さはクラスの顔にするに相応しいと誰にも分かるんだな」
頼むから…手を上げる前にこっちが脱力するような事を言わないで……。
「因みに、私も緒理香を推薦する! というか、緒理香以外に有り得ん!!」
ゴンッ!
余りにもアホな発言に、思わず頭を強く机に打ち付けてしまった。
「た…担任が推薦とかいいんですか……?」
「何を言う。担任教師だって立派なクラスの一員だぞ? 推薦する権利ぐらいはある筈だ」
ここで正論とかズルいよ……シクシク……。
「では、クラス代表は緒理香で決t……」
「ちょっと待ってください!」
セ…セシリア……?
まさか、ここで原作再現発生なのか……?
「なんだオルコット。何か異議でもあるのか?」
「いえ。私も緒理香さんをクラス代表にする事には賛成ですわ」
マジかよっ!?
お前は私の味方だと思ってたのに!
箒はこんな場は苦手だから、頼れるのはお前か山田先生ぐらいしかいないと信じてたのに!
「ですが! 緒理香さんにばかり全てを押し付けるのには反対ですわ!」
「どういう事だ?」
「よく考えてくださいまし! 緒理香さんのような小さく可憐な方が、クラス代表の仕事を全て一人でしているのを、皆さんは黙って見過ごせますのっ!?」
「「「「「!!!」」」」」
どうしてソコで全員の頭上にピッシャーンって雷が落ちるんだよ。
セシリアの言い方にもかなりのツッコみ所があったけど。
「そ…そうだった……! 私としたことが……自分でも無意識の内に緒理香に負担を強いていたのか……!」
今更かよ。とは言うまいよ。
千冬さんの事だから、すぐに自分の言った事を忘れるに違いない。
これまで似たような事に何度、騙されてきた事か……!
「それじゃあ、どうするんですか? オルコットさん」
「決まってますわ、山田先生」
キリっとした顔で皆に言い聞かせるようにセシリアは大声で言った。
「クラス代表とは別に、クラス代表補佐を決めればいいのですわ!」
「「「「その手があったか!!」」」」
ねーよ。
なんだよクラス代表補佐って。
二次創作とかでもよく出てくるけど、実際は何をする役職なんだよ。
少なくとも、私は『補佐』なんて言ってる奴が実際に仕事している光景を一度も目撃した記憶は無い。
「ですので、緒理香さんの事を影に日向に支える役目は、このイギリス代表候補生であるセシリア・オルコットが立派に務めてご覧みせますわ」
成る程。最初からそれが狙いだったか……!
補佐という立場を利用して、私に近づくのが目的だったんだな……!
クソッ……! 悔しいが、学年主席なのは伊達じゃないって事か。
この短時間にそこまで計算して発言するとは……。
「待て」
「あら? 貴女は……」
ここで箒が立ち上がったっ!?
「緒理香を支えるのは『幼馴染』である私の役目だ。勝手に取らないで貰おうか」
ほ…箒ぃ~! お前は……体以外にも立派に成長して……お姉ちゃんは嬉しいですよ!
でも、なんで『幼馴染』の部分を強く強調したの?
「貴女……確か篠ノ之箒さん……でしたわね。それはどういう意味かしら?」
「そのままの意味だが? 私と緒理香は互いに幼い頃から共に育ってきた幼馴染同士なのだ。分かるか? 幾ら優秀とはいえ、ポッと出のお前よりは互いに気心の知れた仲である私の方が遥かに代表補佐になるに相応しいと思うと言っているのだ」
(つーか、いつの間にか私がクラス代表になる事は決定してる感じなの? 私の意思確認とか一切無しで? そんなのってアリ?)
でも、この状況でソレをいう度胸も勇気も私には無い。
今までの人生経験で分かる。ここで下手に言葉を挟めば、更なる被害を被るは必至!
(人生、諦めが肝心です)
なんか私の心の中で見知らぬオッサンがいい笑顔で呟いたんですけどっ!?
アンタはマジで誰っ!?
「言うじゃありませんの……! こうなったら、どちらがより緒理香さんを支えるに相応しいか決める必要がありそうですわね……!」
「望むところだ……! 緒理香の為にも絶対に負けん……!」
ふ…二人の間で火花が散ってるぅぅぅぅぅっ!?
これはもしや、箒とセシリアで試合をする流れかっ!?
流石にそれは拙過ぎやしないか!? だって、今の箒はまだ専用機を所持してない!
訓練機じゃ余りにも分が悪すぎる!
「ちょ…ちょっと! 二人共落ち着いて! 私の為に喧嘩とかしないで!」
「お言葉ですが緒理香さん……例え貴女のお願いとはいえ、これだけは絶対に引けませんわ……!」
「大丈夫だ緒理香。お前の為にも、私は絶対に負けん」
「そうじゃなくて~……」
セシリアはともかく、箒は一体何処から、その自信が沸いてくるんだよ~!?
「修羅場だ……」
「うん。修羅場だね……」
「美幼女を巡って争う二人の美少女……」
「運命の三角関係だね」
言っとる場合かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
誰でもいいから止めようとせんか――――――――い!!!
「だったら、お二人で補佐をすればいいんじゃないんですか?」
「「「……は?」」」
や…山田先生……? いきなり何を言って……?
「クラス代表補佐なんて役職は今までにありませんでしたし、無かったからこそ『補佐は必ず一人でなくてはならない』なんて校則もありません。だったら、今後の事も考えて試験的にお二人で補佐をやってみればいいと思いますよ?」
とんでもない事を言ってる自覚はあります?
二人の喧嘩を止めてくれたのは嬉しいけど、それはそれでまた別の問題が発生しそうな予感が……。
「や…山田先生……貴女は……」
「天才か……!?」
なんでそこで戦慄してるんだよ。
山田先生が凄いのは認めるけど、驚くのはそこじゃないだろ。
「では、クラス代表は緒理香で、クラス代表補佐を篠ノ之箒とセシリア・オルコットに決定する。異論はないな?」
「「「「「はい!」」」」」
無いのかよ。
ほんの少しでも構わないから異論があって欲しかった。
けど、今回は珍しく千冬さんが大人しかったな。
こんな時はいつも、自分から率先して割り込んでいくのに。
「補佐が誰であろうと問題は無い。緒理香がクラス代表で、私がクラスの担任である以上、緒理香と一緒にいられる時間は確実に増えるのだからな……!」
それが本心かよ。
最初の説明をしていた時に感じていた尊敬を返してくれ。
箒とセシリアの勝負が無くなったのは良かったけどさ。
ここの購買部って……胃薬売ってたっけ……?
原作崩壊その1。
セシリアとは勝負しませんでした。
それどころか、最初から思いっきり懐かれました。