今日もいつもと同じように幼馴染と一緒に家へと帰っていた。
「今日も学校楽しかったね!」
「そうだな」
隣にいる少女は結城友奈。家が隣同士で互いの両親の仲も良かったため、小さい頃から現在にかけてずっと一緒にいるためよく二人で行動することも多い。もちろん仲良しであり、俺は"きょうだい"みたいな関係なのかなって思ってる。
学校であった話などを友奈と適当に振り返りながら足を動かす。帰り道の通学路では綺麗な桜が目に入り、すっかり春になったことを実感できる。
今年で4年生になったことだし、何か新しいことでも始めようかなと友奈と一緒に考えたりするも特にこれといった案は何も思いつかなかった。
気づけば家の近くまで来ていたらしい。
友奈の家の前に着き『またね』と別れの挨拶を交わし友奈が帰ったのを確認した後に自分も家に向かう……といってもすぐ近所なのだが。
いつものように自分で鍵を開け、戸締りを確認し家の中に入る。
「ただいまー」
自分の声が家の中に響く。そのままリビングの部屋の床にランドセルを下ろす。置き勉が禁止されているため毎回全教科持ち帰らないといけないため肩が痛い。
肩をグルグルと動かしながら、今日は何をしようかなと考える。
すると少ししてからインターホンの鳴る音が家の中に響いた。
「誰だろ?」
インターホンに返事をしないでもう一度玄関に向かう。大体この時間に家を訪れて来るのは近所の人か友達くらいなためだ。
友奈かなと一瞬思うも、今日は家で押し花をやる予定と言ってたため……誰だろうと思い鍵を開けて外に出る。
「どちらさ───ッ!?」
言葉が詰まってしまった。
俺の目に映ったのは一台の車と、全体的に白い正装のような恰好で身を包み顔を仮面で隠している人物がそこにいた。
「結縁 士朗様でしょうか」
急に自分の名前を呼ばれ驚いてしまった。玄関開けたら目の前に仮面つけた人がいたら普通は驚くか不気味に思うだろう。家間違えてませんかと言おうとしたが、自分の名前を呼ばれたためその可能性はなさそうだった。
「えぇっと、その……どちら様ですか?」
警戒しつつ、目の前にいる人達が誰なのか聞いてみる。この人達の仮面のマークをどこかで見たことがあるような気がするのだが……
「我々は神樹様を祀らせていただいている"大赦"の組織の一員です。今日は神樹様から御神託を授かりこちらに向かわせていただいた次第でございます。突然の訪問による無礼をお許しください」
大赦、神樹。この言葉を知らない人は小学生でもいないだろう。
小さい頃から学校などでも習ってきた。自分達に恵みを与えてくれる神樹様にそれを祀る大赦という組織。 自分達は神樹様への敬意を忘れてはいけないということをたくさんの人から教わってきた。だけど、そんな人達がなんで自分のところに来たのだろうか?
「……俺に何か用事があって来たんですよね?」
「はい。つきましては士朗様とそのご家族……結城家のご両親を交えてお伝えさせていただきたいと」
まだよく状況が飲み込めていないため、知るためにも俺は首を縦に傾げるしかなかった。
ーーーーーーーーー
結城家のインターホンを鳴らすと友奈のお母さんが出てくれた。俺の後ろにいる大赦の人達を見ると一瞬顔が強張ったが、すぐにいつもの優しい雰囲気でこちらを見つめてきた。とりあえず自分が大赦の人達と話すから友奈と一緒に遊んでなさいと言われた。
自分も話に参加すると言ったのだが、「お願い」と優しくこちらを宥めるような声で言われてしまい、言葉は口から発することなく沈んでいき……渋々だがいうことを聞くことにした。
友奈の部屋の前まで行き、二回軽くドアを叩く。
(……バレないようにしないとな。)
人の不安定な感情や空気に敏感な友奈のことだから気づかれたらなにかと必要以上に気を使ってくるだろう。
学校でも一見空気が読めていないような滑る発言をすることがあるが、それは必ず誰かが関わっている時だと俺は知っている。
カチャというドアが開いた音が廊下に響く。
「あれ、士朗君どうしたの?」
少し驚いたような表情を浮かべている。今日は特に遊ぶ約束も家に泊まる予定もなく突然訪問してきたからだろう。
……自分でも大赦の人達が何をしにきたのかは分かっていない。だけど、なんとなく朗報ではないということだけは自分の中で起きてる胸騒ぎが知らせてくれていた。こういうときの俺の予感はなんとなく当たるのだ。
だからこそ友奈には勘付かせてはいけないと思った。
「いや、その……なんか友奈に会いたくなっちゃったというか。……あ、あれ! この間作り途中だった押し花の続きやってもいいかな?」
いつもの自分らしく振る舞うようにする。自分でも大赦の人達が何をしに来たのかは分かっていない。だけど喜ぶようなことではないことだけは何となく雰囲気で察しがついた。
(もう自分のことで友奈に苦労をかけさせる訳にはいかないから……ごめん友奈)
騙すのは嫌いであり気が引けたが、言葉にはできないため心の中で目の前の優しい少女に謝る。
「……うん、ちょっと待っててね。確かこの辺に────」
前に途中で切り上げた押し花のセットを探し始めた友奈。上手く誤魔化せたかは心配だけど、多分気付かれていない……と思う。
そういえば友奈の部屋に来たのは久々……って程でもないか。特に目立った物は置いてないが、やはり男である自分の部屋とは違うように感じる。まあ、俺の部屋なんて机とか本棚とか適当に置いてあるだけだしな。
「あった!これこれ、じゃあ今日もいっぱい作ろう!」
「おー!」
友奈のお母さんに押し花の作り方を一緒に教えてもらったのだが、これが結構楽しい。作っている中で花言葉を覚えていくのも楽しいよと友奈は言っていた。四葉のクローバーとか向日葵くらいしかまだ知らないため作りながら覚えるようにしている。
前に友奈がとうもろこしの押し花を作った時は発想がすごいなと思った。それからも花以外のものも押し花にしてみようと色々試したのだが、自分達で作ったのにも関わらずこれが面白おかしくて二人で笑いあった。
「士朗君、見て見て!」
出来上がったらしい桜の栞を嬉しそうに見せてきた。
「おぉーすごいじゃん友奈! よっ、天才」
「えへへー。そんなことないよ〜」
言葉では否定するも頰も声も緩んでいた。
謙虚なのは美徳?って言うんだっけ。作っていく内にどんどん上手くなっているのが分かる。俺も頑張って上手く作ろうと自分の作っている押し花に向かい合い、気づけば時間を忘れるくらい夢中になっていた。
◇◇◇
結城家で食事をとった後、友奈を除き友奈のお母さんとお父さんの三人で重要な話があると言われ、俺の家のリビングに集まった。理由は勿論、今日訪問してきた大赦の人達についての話だった。
初めに、改めて大赦と神樹様について教えてもらった。
簡単にまとめると、自分達が生まれるよりもずっとずっと前にこの世界は未知のウィルスによって壊滅状態になってしまった。そんな絶望的な状況の中、土地神様達が力を合わせて世界を守る存在になったものが神樹様。
それ以来大赦は神樹様の偉大さをその身で感じ信仰を行ってきた組織である。とここまでは自分も知り得る情報で復習を兼ねて聞いていた。
だが、その先から話された話は全く予想だにつかないことの連続で思わず耳を疑いそうになりそうだった。
まず、俺が神樹様に選ばれた特別な存在だということ。
近い将来、神樹様を壊そうとする敵が現れるらしい。結界を貼り続けていることで今尚世界は神樹様によって守られている。
このままでは神樹様も世界もなくなってしまう危険性が出てくるらしい。だが、土地神様達の集合体である神樹様は植物であり自ら戦うことも、守る
そこで神樹様は自らの力を特定の者達に分け、戦えない自分達の代わりに敵を追い払ってもらいたいと考えたらしい。
俺以外にも選ばれた子はいるらしく、自分と同じ小学生の子供らしい。
なんでも、御役目に選ばれる者達はいずれも純粋無垢な
ならば何故男である自分がこの御役目に選ばれたのか?
疑問に思い二人に聞いてみたものの、それは大赦にも分からないことらしい。歴代で唯一の男の勇者。それも神樹様から直々に出された神託という異例の事態らしい。
ここまでの話だけでも中々難しいものであり、俺は終始頭を抱えていた。しかし、最後に言われた言葉に今までの話が全部どこかへ吹っ飛ぶことになった。
──神樹様に選ばれた特別な御役目を背負う子供達を大赦は
勇者、一度は目や耳にしたことがある言葉だろう。
かく言う俺もアニメやゲームなどで見かけたことが何度かあった。
俺自身アニメやゲームなど楽しいことは好きだ。ヒーローや戦隊モノなど幼い子供が好むような作品を今でもテレビで見ているし、そんな風になりたいと憧れたことが一度も無いと言えば嘘になるだろう。小さい頃はヒーローの真似をして友奈と遊んだことだってある。
勇者という言葉を聞いた時、俺は御役目とかそういうことは関係なしにただ単純にカッコいいなと思ってしまった。
だけどそれと同時に、漠然としない思いが胸の中にできていた。何かが突っかかっているような変な感じ……今までにない違和感が俺の中で確かに存在していた。
ーーーーーーーーー
まず目にしたのは綺麗な星空だった。今まで数えきれないほどの星や空を見てきたがここまで目を奪われる夜空の光景を見たことはなかった。
起き上がろうと手を着くと柔らかい土の感触。少し歩いて周囲を見渡すとそこには沢山の花が咲き乱れており、月と星の光で照らされた花々はとても綺麗だった。
(すごい……友奈にも見せてあげたいなぁ……)
目の前に広がる光景に浸っていると、ふと後ろから足音が聞こえて来た。しかし振り返ってもそこには誰もいなかったため気のせいだろうか?
──こっちだよ──
今度こそ確かに聞こえたことに確信を持てた。
聞こえた方向は前の方からだったため、体を前にむき直そうとした瞬間強い風が吹き荒れ、思わず目を閉じてしまう。
風が止み再び目を開けると周りに咲いていた花は消え、代わりに一人の男がこちらに背を向け立っているのが見えた。ぼんやりとだが微かに確認できたその姿は小学生である士朗から見たら充分大きく見えるが、身長は大体中学生か高校生ほどなので、まだ少年という方が正しいかもしれない。
だけど、その少年には────
不思議な感覚を覚えていた。
そう思った直後、頭に強い痛みが襲ってきた。思わず膝をついて頭を抱えるが目線と意識だけは目の前の少年を捕らえ続けるようにする。
「ッ……!」
こちらに振り返った少年は笑っていた……いや。
笑いながら泣いていた────
『ごめんね』
その悲しい言葉だけが最後に周囲へと響いていた。
久しぶりに小説を見返してみたのですが付け加えたい部分や疑問に思った点がいくつもあったため、一度また書き直して再投稿しようということにしました。
前作から見てくれていて、尚且つまたこの作品を見に来てくれた人には感謝と申し訳ない気持ちでいっぱいです。
また小説投稿を頑張っていこうと思っているのでよろしくお願いします。
これから数話はもしかしたら前作と似たような展開や話になってしまうかもしれないですが、ご了承ください。