少年は勇者の味方である   作:ft.優士

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小学四年生 9話

7月に入り、今日も昨日と変わらず暑い日が続いている。そんな中でも休まずに朝登校をする子供達はとても偉いと思う。

 

「……でもあとちょっとで夏休みだもんな」

 

もどかしく思いつつも実はこの休み前の一週間くらいの期間が好きだったりする。友達と遊ぶ日を決めたり、学校で配られる予定表にこの日は何をして過ごすなどを書いていくのは楽しい。

 

 

「そうだ! 園子と銀にもいつの日が遊べるのか聞いておかないとな。……あ、でも俺って予定入ったりするのかな?」

 

 

ふと思い出したように呟く。

学校にいる時は自分が勇者として選ばれたことを度々忘れそうになってしまうのだが……義父さん達も学校では前と同じように普通に過ごしなさいって言ってたしなぁ。

 

 

極秘事項というやつらしい。なんか極秘とかって聞くと警察とか忍者やってるみたいな響きだ。

 

 

 

まあ予定については訓練とかもあるかもしれないしな、とりあえず夏休みの予定については帰ったら聞いてみる事にしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休み時間に入ると昨日と同じように俺は四年一組の教室に向かう。今日は友達と遊ぶ予定はない、つまり後ろに下がる手段はないため前に進むしか道はない。

 

 

(さあーてと。今日こそ鷲尾さんと仲良くなってみせるぞ!)

 

《作戦はガンガンいこうぜ!》でありそれを実行するために話す内容は昨日の夜事前に考えてきた。抜かりはないぜ。

 

 

いざ、行こう!

 

 

「おっす。鷲尾さん! 高嶋優士が来たぜ!」

 

 

勢いよく扉を開けて入って行く。

 

 

その様子を目撃した須美のクラスメート達はというと。

 

 

『(またお前かよぉぉぉ!?)』

 

『(なんかすごいテンションの男子が鷲尾さんに会いに来たぁぁ!?)』

 

 

二つの意味で困惑していた。

しかし優士はそんな周りの様子はいざ知らず、須美がいることを確認すると真っ先に席へ向かう。

 

 

「………」

 

「どした? ハトが()鉄砲喰らったみたいな顔して」

 

「あ、その……また今度って言ってたし、普通次の日に来るとは思わなかったから」

 

「そうなのか?」

 

 

え、今度って次の日のことを言うんじゃないの? ……マジか、ずっと勘違いしてたわ。

 

こくりと頷き驚いた様子の鷲尾さん。なんか昨日から驚いた顔ばっか見るな。裏ではリアクション芸人でも目指してんのかな?

 

……まあ、それは置いといてと。とりあえず昨日のことを鷲尾さんに謝らないと。

 

気持ちを切り替え、きちんと鷲尾さんの両眼を見る。

 

「鷲尾さん!」

 

「は、はい」

 

「……昨日は話しを最後まで聞かないで勝手に帰っちゃって、ごめん!」

 

頭を下げて謝罪する。もしかしたら鷲尾さんの気を悪くさせてしまったかもしれない。

 

 

「き、気にしてないから! 今すぐ顔を上げて頂戴!」

 

 

優士に悪気はないのだろう、しかし須美からすればこんな人が大勢見ている中で堂々と頭を下げられるのはやめて欲しかった。せめてみんなが帰り始めた放課後とか他のタイミングはなかったのだろうか?

一刻も早く今の状況を抜け出したかった須美は慌ててやめるように言う。

  

 

「怒ってない?」

 

「怒ってませんから!」

 

 

チラッと下から鷲尾さんの顔を見ると確かに怒ってなさそうな感じだった。というか焦ってる感じか?

てっきり怒られるかもしれないかと思っていたのだが案外すぐに許してもらえたことに俺はホッとする。

 

 

「分かった、じゃあこの話はこれでおしまい!」

 

 

優士はパチ、と手を叩き先ほどまでの真剣な表情からいつもの爽やかで男の子らしい表情に戻る。

 

 

「今日はちゃんと鷲尾さんと仲良くなるためにいっぱい話しの話題持ってきたんだぜ」

 

へっへっへ〜と楽しそうに笑う優士を見て、須美は少し不安を覚えていた。

 

 

「今から鷲尾さんに質問をしていきます。聞かれたことには正直に答えてください!」

 

「は、はぁ……?」

 

「じゃあ、一つ目の質問!」

 

ジャジャン!という音を自分で出しながら鷲尾さんに一問目を問う。

 

「鷲尾さんの好きな言葉は?」

 

 

「"富国強兵"」

 

 

質問を聞いた直後、キリッといった様子で反射的に繰り出された答え。須美は「はっ──!?」とやってしまったと後悔していたが。

 

 

 

()()()()()()()?」

 

 

俺の質問を聞くと鷲尾さんは一瞬固まり下を向いた。

つい聞いてしまったその言葉。俺は後で後悔することになる。

 

 

「───フフフ……」

 

「わ、鷲尾さん?」

 

何か不気味に笑いだして怖いんだけど……どうしたんだろうか? 鷲尾さんに妙なスイッチが入った気がする。

 

「いいわ! 詳しく教えてあげる!」

 

「い、いや今日は俺が考えてきた質問を答えてほしいから……また今度ってことに」

 

「駄目よ」

 

ぐぉぉぉー!という勢いで須美はまるでしいたけのようにキラキラとした目を向けてくる。

 

 

やだ良い笑顔、眩しい……じゃなくて!

 

ぜってぇ長ったらしい話しが繰り広げられるに違いない。思わずその場から回れ右をし退散しようとするのだが。

 

 

「どこに行くの?」

 

「い、いやちょっと野暮用を思い出したというか」

 

そのまま流れるように左手を掴まれる。

……怖い、怖いよ!?

 

 

「さっき謝ったのに同じことを繰り返すのは感心しないわよ?」

 

 

……うぐッ。痛いところを突かれる。確かに鷲尾さんの言う通りであり、俺にはもう退路が存在しなかった。

 

 

「……教えてください」

 

「よろしい!」

 

ここは素直に鷲尾さんの話しを聞くことにした。

 

すっげ〜わくわくしてそう。多分頭の中では何から話そうか悩んでいるに違いない。

 

 

俺、勉強は苦手なんだけどな……

 

 

(ま、いっか……)

 

鷲尾さんと交流できる話題が一つでも増えれば仲良くなりやすくなるかもしれないしな。

 

 

優士は「なるべく簡単にお願いしまーす」とせめてもの懇願をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

長かったなぁ……

 

休み時間が終わるまでの15分くらい延々と須美の()()()()語りを聞いたのだが……正直半分くらいしか頭には入ってこなかった。

 

確か……約400年くらい前に日本人が立てたすろーがん?らしい。

……すろーがんって何だろうな? 他にも色々知らない言葉や人名が出てきて正直言うと頭の中がぐるぐるしそうだった。

 

 

でも────

 

 

『──それでね! さっき話した殖産興業による資本主義化が……────』

 

 

得意げに、そして楽しそうに話す鷲尾さんの姿はとても輝いているように見えた。

 

好きな話しをしていた時の須美からはいつもの大人びた雰囲気がなくなり、自分の周りにいる同級生たちと何ら変わりないように優士の目には映った。

 

 

(……今度からは社会の授業ももう少し頑張ってみようかな?)

 

 

今までは授業で教えられても「ふーん」「ヘぇ〜」くらいの感心しかなかったけど、鷲尾さんくらい……は無理だけど。自分の国の歴史についてくらいはもう少し知っておくことにしようと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回も続いて鷲尾さん回でした。
富国強兵、国防仮面、踊り……うっ、頭が。

やっぱりにちじょう回を書くのは楽しいです。
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