「優士ー、ちゃんとついて来てるか?」
「おう〜……」
「おいおい、何か今日はいつもと比べて元気がないな。どうかしたのか?」
「ちょっと昨日はいつもより多めに運動をしたせいで少し筋肉痛でして、あ、そんなに大したことないから平気平気」
銀が確認をとってきたのに対し大丈夫だと返事を返しておく。予想通り筋肉痛が発生したが段々慣れてきた気がするし、別のことに集中したり遊ぶことに夢中になったらそのうち忘れると思う。
今、俺達が訪れている場所は駅前にある巨大なショッピングモール、通称イネス。銀が前に言っていた"とっておきの場所"に連れてきてもらっていた。
「ほぇ〜…」
天井を仰ぎながら自然と圧巻の声が出た。新しく目に映るものには興味をそそられる。イネスの品揃えの数、種類は様々で尚且つ豊富であり大体必要なものは何でも買えると銀から聞いてはいたのだが、あながち嘘でもなさそうだ。今も歩きながら色々なものに目移りしてしまっているため一からじっくり見ていたら今日中には周りきれないだろう。
「イネスってすごいんだなぁ」
「そうだろそうだろ! 何たってイネスだからな!」
お店を通りかかっては銀がいつもより少しテンション高めに紹介していき、気になった場所では少し立ち止まって拝見したりしている。
こういうのを、"うぃんどー"ショッピング?って言うらしい。
まあ、俺達小学生だから家族と来ない限り大きな買い物は普通しないだろう。…今持ってきている
——と、そんな感じで銀の案内の元イネスの中を見て周り現在は本屋に立ち寄っていた。
「お、これって前の学校の友達に借りて読んだ漫画だ」
なんとなく目に入ったため最新巻が置かれている本棚から取り出し近くで表紙を確認する。主人公の武器と仲間のヒロインの武器が交差しており、二人の決闘が始まるといったあらすじが裏表紙に書かれている。
今はそんな展開になってるのかと少し読みたくなってしまうが二巻くらい読んでいなく間が空いてしまっているためそこに至るまでの展開が分からないため、先の展開をネタバレしてしまい少し後悔した。
ちなみに銀も漫画を読むのが好きでこの前学校で好きなキャラクターや技などの言い合いで盛り上がった時は楽しかったな。
「優士はどんな系統をよく読むんだ?」
「う〜んとね、多いのはやっぱバトル系かな」
ドラゴン○ールとか面白いよな。昔家の大掃除をしてる最中にお父さんが引っ越してきた時から開けないでそのままにしていたダンボール箱を見つけて整理していた時にその漫画がダンボールの中に全巻入っていた。
もう読まないと思うからともらったのをきっかけにとりあえず一巻だけ読んでみたら止まらずに朝から夕日が沈むまで時間を忘れて読むのを楽しんだ。
あれからだっけ、漫画を読むことにハマったのは。しかし、他の神世紀の作品を通して思ったのだが…西暦の時代の方が神世紀に書かれた漫画より面白いように感じるんだよなぁ……特撮とかアニメなども。黄金期というやつだったのだろうか。
「俺は界◯拳4倍か○はめ波が一番好き」
「わかる! あそこの全身全霊で迎え撃つ感じ最高だよな!」
「だよなだよな! 正直あの真っ向勝負は作中でも群を抜いて好き!」
そんな風に店内で漫画の内容で盛り上がっていると段々声の大きさが上がっていってしまい、そんな俺達に対して一瞬後ろの方にいた店員さんにわざとらしく咳払いをされ、ごめんなさいと二人で謝った。
か○はめ波、ギ○リック砲、魔○光殺砲といった必殺技に一度は憧れる。それが子供達のさだめというやつでありそういった想像を膨らませるのは仕方のないことだろう。
「銀はどんなの読むんだ? やっぱ女の子だし、少女漫画とかいうやつか?」
「まあ、興味はあるかな。クラスの友達の女子に貸してもらって読むくらい」
隣の戸棚に置いてある先程話題になった少女漫画を手にしていた。それを横から覗き込んで銀と一緒に表紙を見る。
「少女漫画って男が見ても面白いのかな?」
「いや、アタシに聞かれても……その人の捉え方次第じゃないかな?」
恋愛の話だっけか。俺の中では少女漫画って園子みたいな物静かそうな子が読んでそうなイメージがあるけど。
それでいくと鷲尾さんもあてはまるのではと一瞬頭をよぎるも、あの子は辞書とか歴史の本を読んでそうだなと勝手に想像してしまう。眼鏡をかけて『…なるほど!』などと言ってる姿が容易に浮かぶし、とても似合っていた。そういう人を文学少女って言うんだっけ。
それとは真逆のタイプというか、いつも活発で俺たち男子に負けないくらいエネルギッシュな銀からは想像がつかなかった。女の子だからそういうことに興味を持つことは不思議なことじゃないんだろうけど。
「い、いいだろ別に!……アタシだって女だし、そういった…恋愛には少し、あ、憧れるというか……」
「おう?」
銀は何故か少し怒ったようにそう言ってきた。まだ何も言ってなかったが顔に出ていたのだろうか。最後の方はいつもの快活な銀の声とは打って変わり、とても小さい声量のためよく聞き取ることができなかった。
銀は手に持っていた少女漫画を元の場所に戻すと小さなため息を吐いた。
「……ま、こんなこと現実じゃそうそう起きないんだろうけどな。漫画の登場人物みたいにカッコいい転校生の男の子なんて現れなかったしなぁ〜……」
「不満を言いながらこっち見んのやめてクレメンス……」
事実を再確認させるな…させないで。俺がイケメンじゃないのは自覚してるよ。顔面偏差値が10点中6.5点くらいとかいう高くも低くもない微妙な評価をつけられたことがあるからな。磨けば光るかも……?と定番の慰めの言葉が返ってきたくらいだし……やめよう悲しくなって来た。
「まあ、かくいう私も少女漫画の主人公みたいに優しくて可愛い訳じゃないけど」
「そうか? 俺から見れば銀だって優しいし十分可愛いと思うけどなぁ」
銀の顔はかなり整っている方だと思うのだが。多分成長すればもっと綺麗になると思う。中学生とか高校生くらいにはすごい美人になってそうな気がする。てか今だって十分可愛いと思うけどな。
「んな──ッ!?」
「そのくせ、運動やスポーツをしている時はカッコいいとか反則だよな」
可愛さとカッコ良さの二つがあわさって最強に見えるってやつ……主人公かな?
神様は二物を与えないとか言うけど絶対嘘だよな。この世界が平等であったことなどない、もしそうなら俺にも才能を一つぐらい分けて欲しいものだ。…祈ったらくれないかなカッコいいの才能。
「俺も何か才能が……って何してんだよ銀。その場で蹲って……お腹でも痛くなったか?トイレ行く?」
「……っさい、ちょっと静かにしてろ、バカ……」
「えぇ、急に悪口言うじゃん」
暫くして落ち着いたのか銀は立ち上がったのだがその顔は赤く染まっていた。熱中症にでもなったのではないかと心配になって聞いて見ると銀は俺から目線を逸らし、反対方向を向くと何故か小さく深呼吸をした後に大丈夫だと答えてきた。
本人が言うのなら平気だろうとは思うが一応頭の片隅に入れておくことにしつつ、本屋を出て次の場所に向かうことにした。
「じゃ、また案内頼むぜ!」
「ほんと…調子狂うなぁ……」
銀が何かを呟いたように聞こえたのだが、声が小さすぎてよく聞こえなかった。
◇◇◇◇
「うお——どうしたんだよ銀?」
先を歩いていた銀が急に歩く足を止めたため軽くぶつかってしまった。
何かを見入るように目線を飛ばしている銀を横から見て確認し、どうしたんだろうかと思いつつ俺も銀の目線の先と同じ方角を向いてみる。
「あれって……」
そこには一人の少女が両手で顔を隠しながら俯いている姿を発見した。
(あの子、もしかして泣いてるのかな……?)
何があったのだろうと俺が考えて行動しようとした時、素早く銀がその少女の元へと駆け寄って行った。少し遅れながらもその後を追いかけた。
銀は目線が少女と会うように膝を曲げてしゃがみこむと優しく笑顔を浮かべながら声を掛けた。
「キミ、どうしたの?」
小学生の自分達よりも大分小さい身長から見て幼稚園生くらいの年齢の子だと思われる。そんな小さな子が一人でショッピングモールまで買い物に来るとは考えられないし、単純に考えられるのは迷子の可能性だが……いや、ちょっと難しい初めてのおつかいとかの可能性も微レ存?
自分に声を掛けられたことに気づいた少女は両手をゆっくりと下げて銀と俺の顔を交互に見る。
「……おねえちゃん……たち、ひっ……く、だれ……?」
泣いた顔を見せないように腕の隙間から俺達の姿を見ており、恐る恐るといった感じで聞いてくる。
「アタシは三ノ輪銀。こっちにいる変なお兄ちゃんは高嶋優士って言うんだ」
幼稚園の先生が喋りかけるような優しい声で銀が俺達の紹介をする。
「ぎん、おねえちゃん?と……へんな、おにいちゃん?」
「そうだよー」
よしよしと少女の頭を優しく撫でる銀。年下の弟を持つ姉なだけあり年下の相手は得意なようだ。少し安心したのか少女の方も怯えたような表情が柔らかくなっている。
だがしかし————
「ごめん。いい感じの雰囲気を壊すようで悪いんだけどさ、変なお兄ちゃんはちょっとやめてほしいかなぁって……」
普通にお兄ちゃんって呼んでくれよ。
なんかこう、駄目な感じの人みたいじゃんか。
「別にいいでしょ。優士は普通でもましてや優等生って訳でもないんだし」
「俺、普通。シンプルイズベスト!」
片言のように放った俺の言葉を聞くと銀ははぁ〜、と小さく息を吐いた。俺のどこが変わってるって言うんだ!
「下校中に傘でゲームの剣技を再現しようとしたり、梅雨の時には自分の手の平よりデカいカエルを教室に持ってきて軽い騒ぎを起こし掛けた奴は充分変人でしょ」
「いや、普通男子小学生はそんぐらいのことするぞ?」
「する訳ないだろ!」
銀から勢いの良いツッコミが入る。いやいや、するんだって男子は。前の学校の男子達とは落とし穴掘ったりとかしたぞ。あ、別に人に仕掛けるためじゃなくて、ただ作りたいという一心で。ほら、山があったら登りたいみたいな感じよ……いや多分意味違うなこれ。
そんな感じで銀から自分の行動を否定され続けていると。
———ふふっ、という小さい笑い声が聞こえてきた。
「おねえちゃんたち、おもしろいね!」
先程まで不安で泣いていた少女が俺と銀を見ながらクスクスと笑っている。
「そうだろそうだろ。俺がボケで銀がツッコミ、いつかコンビを組んでお笑いグランプリに出る予定だからよろしくー」
「まだそのネタ引きずってるのかよ……あぁ、本気にしないでね? こい……このお兄ちゃんが一人で勝手に言ってるだけだからね?」
「えー、俺結構本気なんだけどな〜。なんなら俺がツッコミで銀がボケでもいいぜ。あ、それか俺と銀でボケをやってもう一人誰かにツッコんでもらうのもいいな!」
目の前の純粋な少女は俺の言葉を聞いて目を輝かせる。
どうやら俺たちがテレビに出るのだと思ったらしく尊敬の眼差しを向けて来ていた。そんな事実は存在しないのだが……そんな事実はない、とハッキリ言ってしまえば、また落ち込んでしまうだろうと思い黙っていることにした。銀も俺と同じなのか否定の言葉を飲み込んでいた。
「コンビの俺達二人をよろしく〜!」
「コンビのふたり〜♪」
「イェイ!」
「いぇーい♪」
「あぁ、もう……まあいいか」
はぁ〜、という今度は長いため息を銀は吐きつつも先程まで泣いていた目の前の少女を笑顔にすることができたため細かいことは別に気にしなくてもいいだろう。
ーーーーーーーーー
「ぎんおねえちゃん、ゆうおにいちゃんバイバーイ!」
「もう迷わないようにね〜!」
「次迷ったら、悪い怪人に連れてかれ……痛い痛い! やめて、ちょっとしたジョークだから!」
あれから俺たちは迷子の少女の親を銀と一緒に探し回った末無事母親を見つけることができた。初めてのおつかいではなかったようである。
案外早く見つけることができたのは俺と銀で「女の子と逸れたお母さんはいませんかー!」って呼びかけ続けたおかげだろう。
「ま、気を取り直してイネス探検再開と行こうぜ…っと思ったが、気づけばもう三時過ぎてんだな」
右手につけた腕時計を見る。今日遊びに行くと義母さんに言ったら門限までに帰って来るようにと借してもらえた(強制的に付けられた)ものである。集合時間自体、昼食を取った後の時間帯だったため無難な時間だと思う。
「この時間ってなんかおやつみたいなの食べたくなるよな」
小腹が空くというか。今に限らず、お昼の時間とかって分かると急にお腹が空く場合があるよな。
「ふっふっふっ」
「なんだよ…?」
「そんなアナタに朗報です! イネスのフードコートといえば……」
「イネスのフードコートといえば?」
「いえば………」
間をしばらく開ける銀。早く言ってくれよ気になるだろー。
「とーっても美味いジェラートがオススメだ!」
「おぉー!」
指をパチンと鳴らしながら得意げに言ってきた。俺もノリに合わせてパチパチと手を叩いた。今は夏であり、基本は熱いものより冷たい物が食べたい時期だろう。
「食べたい! 俺ジェラート食べたいぞ!」
「なら食べようではないか!」
イェーイと銀と手を合わせる。ジェラートを食べたいという気持ちの方が強いのかいつもの銀の調子に戻っていたので良かった。
即座にフードコートに向かいジェラート屋の列に並ぶ。平日のため混んでいるということはなくすぐに順番が回ってきた。
「何味にしよっかなぁ。銀はどうする?」
「アタシはしょうゆ味のジェラート一択よ! コレ、ガチで美味いよ! 」
もうアタシの中では揺らぐことのないナンバーワンよ!と勧めてくる。しょうゆ味か……塩バニラみたいな感じなのかな。確かにちょっと気になるけど銀が頼むなら別にいいや。
「……よし決めた。店員さんラムネ一つください」
先に注文していた銀の後に続いて注文する。銀はがくりと不満そうにしているのだが……違う味を頼んで一緒に分け合って食べた方がいいんじゃなかろうか。それなら俺もしょうゆ味のジェラートが美味いのかどうか分かるし。友奈ともよく違う味のケーキとか半分こして一緒に食べてたし。
「はい。落とさないように気をつけてね」
「「ありがとうございます!」」
お金を払いジェラートをもらう。銀が席に座って食べようと空いているテーブル席を指差す。俺も賛成し落とさないように慎重に移動し向かい合う形で席に座った。
「「いただきます!」」
スプーンで一口すくったアイスを口に入れる。
「——んんッ!」
ひんやりと冷たいアイスが口の中で自然に溶ける。夏といえばラムネだろうという適当な理由で選んだのだが、どうやら当たりだったらしい。
だってすごい美味しいもん。
「あはは、聞かなくても分かるって感じだな」
「?」
俺がアイスを食べているところを見て、くすりと笑う銀。なんか変な顔してたかな?
「何かおかしいとこあったか?」
「いやいや全然、むしろ幸せそうな顔してたよ。給食の時もそうだけど、優士って食べてる時は特に顔に出るよな」
「そうかなぁ?」
「そうだよ。見ていて気持ちいいというか、作った側がすごく嬉しくなるような顔してる」
どんな顔だよ。嬉しかったら笑うように、食べてる時は幸せだから笑顔になる、なってるのかな? 俺、食べるの好きだし。
「あ、そうだ。銀のしょうゆ味のジェラート一口ちょうだい。銀が進めてたこともあってけっこう気になってるんだ。お礼に俺のジェラートも一口あげっからさ」
「えっ?……ああ、そうか。……じゃあ、はい」
一瞬銀が俺のスプーンと自分のジェラートを見て数秒何かを考えるようにそのまま見つめていたが、自分の中で納得したのかこちらにゆっくりとジェラートを差し出してきた。
……いや別に一口だけだぞ? スプーンで多くすくった分を一口なんてする気はないんだけどな。銀から見た俺ってそんな卑しく見えてるのかな……だとしたらちょっと凹むかも。まあ、それはとりあえず置いといて。
「サンキュー! じゃあいただきます」
銀がこちら側に差し出してくれたジェラートをスプーンで一口すくいそのまま自分の口の中へ。
————これは……!
「……どう、美味しい?」
「……うーんちょっと微妙? いや、不味くはないんだよ。ただなんて言うのかな……大人向けの味というかなんというか……」
なんて言えばいいのだろう。ミルクの甘味の中にしょうゆのしょっぱさが合わさってまろやかに?……駄目だ。俺食レポ目指している訳じゃないからなんて表現すればいいかわからない。
「そっかぁ……他のみんなにも不評だったし、アタシの舌が変わってるのかな?」
自分の好みを共有できなかったことがショックだったのガッカリと項垂れる銀。
「あ、あれよ! ほら俺ってみんなからよく馬鹿だとか言われてるから、舌の方もきっとお馬鹿で味を上手く判断できてないんじゃないかな! さっき言ったようにそのジェラート大人向けの味って感じだったし、俺みたいな子供舌の奴には合わないってだけで……あ! 大人になったら舌が変わるって言うし、その時にまた食べてみようかな!?」
焦りながらもなんとか励まそうと頑張って言葉を考えて口にする。
多分あまりフォローになってない気がする……どうしたらいいのかと悩んでいるとそんな俺を見てくすりと銀が笑う。
「──っ、あはは!そんな必死にならなくても大丈夫だよ…っくく」
そんな気にしてないし、こんなことでへこむようなアタシじゃない!と前向きに宣言する。しかし、何だかなあ……わだかまりがあるというかなんかすっきりしない。
————あ、そうだ忘れてた。
「銀、俺のアイスやるよ! 美味いぞコレ」
人間美味しいものを食べれば幸せになれるから、俺のアイスと合わせて二倍幸せになれる筈! それにさっき銀にもらったしこれでおあいこだな。持っているスプーンでアイスをすくって銀の方に向けて差し出す。
「……へっ?」
何かを確認するようにアイスをすくったスプーンと俺の顔を交互に見るのだが……どうしたんだ?
「ほら、早く食べないと溶けちゃうぞ?」
何を躊躇ってるんだろうか別に毒なんて入ってないぞ……っと流石にこれは冗談でも作ってくれた店員さんに失礼だな。ごめんなさいと心の中で謝る。
「え、えっと……」
「………」
伸ばした俺の手がぷるぷると震え出す。そろそろ腕が辛くなってきた(筋肉痛の)ため仕方なく。
「……えい!」
「ん——!?」
あわあわと開いてた口にスプーンを突っ込む。小さいスプーンだったため、銀の小さな口にも収まりきった。
「い、いきなり何すんだよ!」
銀はアイスを飲み込むと開口一番に怒鳴った。
あれー、美味しいって感想が聞きたかったんだけどなぁ。
「銀が早く食べないからいけないんだぞ?」
「だからっていきなり口の中に押し込む奴があるか! しかもこ、これ、かんせつ————ッ!」
「カンセツ? 」
カンセツっていうと……確か骨の名前だよな。 何で急にそんな話題が出てきたんだろ。言い間違いかなと思いつつ再び自分のアイスをすくって口に運ぶ。うん、やっぱり美味い!
「くぅ、鈍感なやつめぇぇ……!」
「ドンカンって何?」
どういう意味だろうと思い聞いてみたのだが、「うるさい!ばーかばーか!」という全く異なった解答が代わりに返ってきたため仕方なく自分で考えることにする……結果は勿論分からなかった。そもそもわからないから聞いた訳だし。
(……乙女心は複雑ってやつかな?)
ていうかそんなはしゃぐとまた体温上がってしまうのではないだろうか? 顔もまた赤くなって来てるし。室内だし冷房効いてて涼しい筈なんだけどな。
この後、身体の熱を下げようとしたのか勢いよく銀がしょうゆジェラートを口に運んでいく様子が見られ、その様子を見て後で頭が痛くなりそうだなと思いつつ俺はしっかりと味わいながらゆっくりジェラートを食べるのだった。
主人公君の距離感がバグっている理由の一つは、とある天然人たらしの幼馴染と小さい頃からずっと一緒にいたおかげ(せい)です。
遅くなりましたが、今日お気に入りの人数を確認したら100人を超えていて驚きました! 凄く嬉しいです!
不定期更新ですがこれからもよろしくお願いします。
できれば感想を書いてもらえると作者のモチベにも繋がるので嬉しいです。