少年は勇者の味方である   作:ft.優士

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本編の始まりです。にちじょう編とは並行して書いていきたいと思います。


鷲尾須美の章
第一話 優しい日常


夢を見た。

 

 

もう一度、外に出て思いっきり走りたい。

 

学校に行ってみたかった。

 

友達が欲しかった。

 

幸せになりたいと願った。

 

 

そんな●●の悲しい人生を。

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

既視感があるような気がしてならなかった。

 

もう少しだけ────

 

 

「いいかげん起きなさい!!」

 

「っ!……はぇ……?」

 

目が覚めた、というより意識が戻った直後に大きな声が頭に響いたため重い瞼を開ける。

 

「全く……6年生にもなって遅刻なんてしたら恥ずかしいぞ?」

 

「……にい、さん?」

 

窓から入ってくる日の光が眩しく、しっかりと目が開かないながらも近くに置いてある目覚ましに手を伸ばす。確かにいつもより30分くらい寝過ごしていた。

 

「……あれ? 目覚ましが止まってる……いつ止めたんだっけ?」

 

自分で止めた自覚がなかったため、ふと疑問に思ってしまう。電池切れなのか、それとも普通に昨日かけて寝るのを忘れたのか。しかし習慣となったことを今更忘れるだろうか?

 

「母さん達がいなくて良かったな」

 

「うん……確実にありがた〜いお言葉が飛んできてたよね……」

 

「まあ、俺が報告しないとは言ってないけどな」

 

「!?」

 

「嫌なら早く着替えて支度しなさい!」

 

「サーイェッサー!」

 

流石に勘弁である。おかげで目覚めていなかった脳が一瞬で目覚めた。

義父さん曰く、小言みたいな感覚らしいけど30分以上にも渡るの絶対違うと断言できる。先に行って待ってると言うと部屋を出ていった……と思ったら帰ってきた。

 

「そういえば……ネクタイはもうちゃんと結べるのか?」

 

「結べるよ! いつの話してるの!」

 

それ言うためだけに一瞬戻ってきたんかい!

確かに、初めて制服を着たときはネクタイを結べなくて固結びをしていたこともあったけど……もうちゃんと覚えたんだから良いだろうに。

少しイラっときてしまったのでつい部屋の外に追い出してしまった。

 

「ちょっとひどかったかな……」

 

千紘も大人であり、義父達と同じく大赦の一員であるため毎日忙しいに違いない。それなのにわざわざ部屋に赴いて起こしに来てくれたのだろう。

 

「後でお礼言わなきゃ……だね」

 

優士は千紘のことが嫌いという訳ではない。むしろ本当の兄のように思っているくらいである。最初は養子である自分は煙たがれてるのではないかなどと思っていた。けれどこうして兄弟で仲良くしていられるのも彼が自分のことを認めてくれたからだろう。兄弟仲が良くて嬉しいと義母も義父も喜んでいた。血は繋がってないし、ただの養子と言われればそれで終わりだけれど、俺がみんなのことを好きなことに変わりはないのだから。

 

いつの間にか俺にとって高嶋家という居場所は大切なものになっていた。

 

待ってくれている人達がいて、支えてくれている人達がいる。だから辛い訓練も頑張って来れたのだ。

机に置いてある()()()を制服のポケットにしまう。

 

(友奈、もう少しだけ待っててね……)

 

あの日彼女とした約束を忘れたことは一度もない。

 

……きっちり御役目を終えて、胸を張って会いにいけるように頑張るから。

 

 

そう強く思いつつ自分の部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

今は春ということもあり過ごしやすい時期である。たまに吹く風が頬にあたるととても心地よくとても気持ちの良い朝と言えるだろう。

しかし、俺は今朝の朝食のことについて考えてしまっていた。もちろん味にケチを付けるとかではない。むしろ毎日美味しいご飯をありがとうございますと感謝したいくらいです。

 

(今になって考えてみれば、今日の朝も養父さんと養母さんに会えなかったんだよな……)

 

ここのところ面と向かっておはようが言えていない気がする。先程はいなくて良かったみたいなことを思ってしまったけど、やはり少し寂しいなと感じてしまった。

二人は仕事で自分が起きる30分くらい前に家を出ているため仕方ない。前からそういうことはたたあったけど、今年に入ってからは結構その頻度が増えた気がする。千紘さんも早い時は早いしな。

昔と比べると家族揃って一緒に食事を取れる機会が減った気がする。

 

きっと大人は大変なんだろうなあと思いはするけど具体的なことは分からないため、そう思うだけでいつも終わってしまう。何かしてあげれることがあるだろうかと悩んでしまっていた。

 

 

「というわけなんだけどさ、()()さんは何かいい案ある?」

 

「……高嶋君は分からないことがあれば全部私に聞けば解決するって思ってるでしょう?」

 

じとーというような目でこちらを見られる。

 

「そ、そんなこと……な…る?」

 

変な答えが出てしまい須美はため息を吐き、軽く頭を抑える。

そんなため息ばっかり吐いてたら幸せ見逃しそ「あなたのせいだからね?」……先読みされてる……だと……?

 

「あなたは顔に出やすいのよ」

 

「えぇー、そうかな?」

 

そんなことない……って昔は思ってたんだけど、でもそれって考え方を変えれば須美が俺のこと理解してくれてるってことだよな?

友達のことは知っていたいと思うものだし、自分のことも知ってもらえたら嬉しいもんな!

 

「うん! じゃあ俺も須美のこともっと知れるように頑張るね!」

 

()()()()()()()()()()という目的を持った仲間だし。もっと仲良くなりたいしな。ていうかそろそろ名前呼びでもいい気がするんだけどな。

基本名前呼びは相手が許してくれたらするようにしてるのだが、彼女の場合は待っていても駄目な気がしたのでこちらから歩み寄るようにしたのだ。

 

しかし、ガードが固い! 固すぎる!

 

……あともう一歩のところくらいまでは来てるような気はするんだけど、やっぱ同性同士の方が呼びやすかったりするのかな?

一応、5年生の時に4人で安芸先生から御役目について本格的な説明をするために呼び出された後、チームワークを意識することを考えて名前呼びを提案したのだが……まあ結果は言わずもがなである。

 

 

「………」

 

「あれ、どったの。顔赤くなってない? 大丈夫?」

 

[原因はお前だよ!!]

 

クラスにいる全員の考えが一瞬だけ一つになる……寝ている少女を除き。

 

「……ほんと、そういうところは少しも変わらないんだから……」

 

「ん? 何が」

 

「何でもない!!」

 

人は変わっていく生き物ですよ(名言)

 

ま、いっか。須美っておこりんぼな感じがするためこういう時は下手に追求しない方が良い。

ふっふっふ、俺だっていつまでも同じ間違いを繰り返す馬鹿ではないのだ!

 

 

とりあえず義父さん達には今度の休みに肩揉みでもしてあげることにしよう。ついでに義兄さんにもしてあげよう。うん! これで解決!

相談に乗ってくれた須美にお礼を伝え、自分の席に戻ろうとしたのだが隣の席で眠っている園子の寝言を聞いてしまう。

 

 

「……むにゃむにゃ……ゆーさん…それたんぽぽだよ〜……」

 

「夢の中の俺は何してるんですかねぇ……?」

 

内容が気になって仕方ない。幸せそうな顔で寝ている園子の頰を突っつくと赤ちゃん並みにぷにぷにとした弾力が癖になり続けて突いているとそれを須美に注意される。

 

「女の子の顔を許可なく何度も触るんじゃありません!!」

 

後頭部に衝撃が走る、どうやらいつも通りの須美に戻ったらしい。ていうか、あなた一年前と比べるとツッコミの勢いが強くなった気がするのだけれど気のせいですか?

 

「あわわ! ゆーさん、それ食べ物じゃないよ!!」

 

そんな事を叫びながら慌てて起きた園子。メルヘンチックな夢でも見てんのかなとか思ってたら180度くらい違ったわ。その本人は「ほえぇ?」とか言ってまだ寝ぼけている。

……俺って園子にどう思われてんのかすげぇ不安になってきたんだけど。

ていうか……

 

「夢の中の俺はたんぽぽ食ってたの!?」

 

俺が園子の夢に対して突っ込みを入れると、クラスがどっと笑いに包まれる。夢の中の俺どんだけ腹減ってんだろうなぁ……

 

「……はれぇ? ゆーさんにすみすけだぁ、おはよ〜」

 

「おはよう園子、楽しい夢が見れたようで何より……」

 

「……ッ────おはようございます乃木さん」

 

あ、この子今少し笑ってましたよ。見てなかったけど声が震えているのが分かったし。須美と目が合うと、こほんと咳払いをして気を沈めていたが……笑いたい時は笑っていいと思うよ?

 

「……で、園子さんや夢の中の俺はたんぽぽをどんな風に食べてた?」

 

「えっとね〜……生えてるのを千切ってはもしゃもしゃ美味しい美味しいって言って食べてたよ〜」

 

ぶふっと再び笑いがクラスで沸いた。俺自身思うところがない訳ではない、いくらチャレンジャーの俺だって拾い食いは駄目だということぐらい分かる。けどまあ、みんなの笑いに繋がるのならネタになるのも悪くはないと思える。

 

ぷるぷると震えている鷲尾さん家の須美さん。笑いそうになっていることが目に見えて分かるため……ここで畳み掛けるとしよう。

 

「たんぽぽおいし〜」

 

「…! っく……っふふ!」

 

須美の耳元でなるべく高い声でそう言ってみるとついに須美が吹き出して笑い出す。

勝った! と俺は誇らしい気持ちになっていた。笑いを我慢する必要なんてないのだ。その調子でお堅い殻を破ってこうぜ。

 

「……って、やめなさいよ!」

 

「へぶっ!」

 

真面目な須美さんはどうやらご立腹らしい。先程よりも強い須美のチョップが頭に炸裂する。普通に痛いです……

 

「すみすけ達は相変わらず仲が良いんだね〜」

 

「おう! なんたって俺が自慢できる友達の一人だぞ」

 

「乃木さん、そのすみすけって言うのはちょっと……」

 

「ええ、駄目かなあ〜……」

 

そんなに落ち込むことはないと思うぞ。違うあだ名の方がいいってことなのではないだろうか。……てか地味に無視された?

 

 

あだ名というのはじっくりと考えたことはないけど、あまりふざけた感じにすると後が怖いため真面目に考える。二人して、ん〜と唸りながら考えを捻り出そうと頑張っていると、園子の方がどうやら先に思いついたらしい。

 

 

「じゃあシオスミはどう〜?」

 

「いや、そういうことではなくて……」

 

「前にゆーさんも言ってたと思うけど、私の事も乃木さんじゃなくて、自由に呼んでいいよ」

 

ねっ、と同意を求める園子に頷いて答える。その意見にはもちろん賛成である。言い出しっぺは俺だしね。

 

「そうだそうだー。いい加減素直になりなさーい!」

 

「……ぜ、善処します……」

 

「前もそんなこと言ってなかったっけ?」

 

次言ったらペナルティでもつけようかな。……逆に俺達のあだ名を考えさせるとか。勿論、須美が苦手とする英文字でな。

くっくっく……と心の中で笑っているといつの間にか二人と距離が空いていた。というか須美が園子を一緒に避難させたみたい。

 

 

「今ゆーさんすごい悪い子な顔してたよ?」

 

「……気をつけなさい乃木さん、多分いつも以上にろくなことじゃないわ!」

 

「いつもで悪かったな!」

 

 

そんな感じで話しをしているうちに担任の先生が教室にやってきた。誰よりも早く俺は安芸先生に挨拶をする。

 

「あ、安芸先生おはよー!」

 

「先生にはきちんと丁寧語を使って挨拶をしなさい」

 

「次から気をつけます!」

 

「その言葉、先生は何十回と聞いた気がしますが?」

 

「気のせいじゃないですかねー?」

 

などと言い訳をしつつ自分の席に座る。ほら、前言われた時は廊下を走った時だったからノーカウントでいいかなって。

挨拶を終えた後、隣の空いてる席に目を向ける。

 

……銀は今日も遅刻か。またトラブルにでも巻き込まれてるのだろうか? あいつが持ってる気質は半端じゃないからな……もう遅刻を援助してあげてもいいんじゃないかと思うレベル。

 

「はざーすっ! 間に合った!」

 

噂をすればなんとやら、話題の当人が登校してきた。

 

「三ノ輪さん、間に合っていません」

 

「あたっ……すいません……次から気をつけます!」

 

「……先生は貴方達の次からが日に日に信用できなくなってきています」

 

「だってさー、銀気をつけなよ?」

 

「高嶋君……貴方のことも言ってるのよ」

 

「え?」

 

コントのようなやりとりにクラスの皆がまたドッと笑った。須美だけは難しそうな顔してるけど……悩み事でもあるのかなと思っていると、銀と一緒に安芸先生から出席簿アタックを頭に打たれた。

昔は体罰とかで問題があったらしいけど、この時代は行き過ぎたもので無ければ許されている。出席簿を使った注意は担任教師の特権みたいになってる。

 

「あ、やばい教科書忘れた」

 

「あはは銀ちゃん何しに学校にきてるの」

 

やれやれと感じつつ、後で見せてやるかと思いつつ次の授業の持ち物を確認する。さっきはとりあえず机の中にしまっただけだったからな。

 

しかしあることに気づく。

 

……やべ、俺もノート無いじゃん。仕方ない、後で先生に言って必要ないプリントの裏にでも書くことにしよう。

これじゃ銀のことを言えないなと思いつつ日直がかけた号令に従いいつものように一連の挨拶をする。

 

 

 

 

 

 

勉強したり、友達と笑いあったり、ちょっとふざけて先生に怒られたりする。楽しい学校が終われば家に帰るといったなんて事ない普通の日常だ。

 

 

 

 

だけど、そんな日々は今日唐突に終わりを迎えることになるのだった。

 

 

 

 




この主人公、果たして成長したのだろうか(汗)
原作と異なっている点は、須美が園子達に対して少しだけ歩み寄れていること。主人公に友達と言われて否定しないくらいには好感を持っていることです。一年間同じクラスで主人公が毎日話しかけた結果です(やったね)
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