少年は勇者の味方である   作:ft.優士

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久しぶりに本編を書こうとしたらめっちゃ時間がかかってしまった……


第三話 初陣

勇者に選ばれた。

 

最初は全然その意味が理解できなかったし、ただなんかすごいことなんだろうなくらいしか当時の自分には分からなかった。

 

高嶋家のみんなや大赦の人達は勇者に選ばれた自分のことを"希望"だと言っていた。

 

 

 

 

————————

 

 

 

 

 

訓練はとても辛かった。挫けそうになることもあった。でも、その度に自分は■■なのだからと必死に自分をはげましてきた。

 

 

神樹様を守るため、期待してくれている人達のため、自分の大切な居場所や大事な人達を守るため。

 

 

 

"守りたいもの"が沢山あったから覚悟を決めて戦おうと思った。

 

 

 

()()()とまた何のしがらみもなく笑い合うために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

 

 

 

 

神樹の力を元にした勇者が持つ共通する特徴の一つとして彼女達の姿はそれぞれ植物を象っている。それぞれが基本十人十色といった種類にばらけるらしい。

 

 

四人の子供達はそれぞれの花を咲かせながら自らの衣装を変化させる。

 

鷲尾須美は白菊、三ノ輪銀は赤い牡丹、乃木園子は紫の薔薇をモチーフとした戦闘用の衣装へと。

 

 

そして、()()も彼女達と同じように自らの衣装を変化させる。

 

 

いつも明るく元気であり周囲を温かくさせるような笑顔を浮かべる彼の人柄をイメージさせるような

橙色のカランコエを咲かせる。

 

 

動きやすさを考慮したものになっているらしく上に着ている橙色の服は肩を隠すくらいまでと短く、そのまま中のインナーが伸びている。ズボンも上の服と同色のものを着ており、へその緒の少し下の位置に紺色の帯が巻かれていて履いていた上履きは黒い靴に変わり動きやすくなっている。

 

 

————そして左右にはどう考えてもミスマッチと言わざるをえない"薄い桜色の紐"が武器である手甲を結んでいた。

 

 

 

変身を終えると同時に自分達の身体の中でとてつもなく大きな力が漲ったのを適当に身体を前や横に動かしながら確認すると同時に神樹様が自分達に力を分け与えてくれているということが証明される訳だ。

 

 

 

「ん〜……」

 

「どした?」

 

 

唸り声のようなものをあげながら自分……というより勇者装束を観察する銀に気づき声をかける優士。ほつれている所でもあるのかなと気になり優士も自分の服装に目を向ける。

 

 

「いや、アタシ達の勇者服とは結構形状が異なってるんだなと思ってさ」

 

 

「そういえば、少し違ってる……のかな?」

 

 

実際三人の勇者服姿と比べてしまうと優士だけデザインが大きく異なっており不思議に思う銀だが、当の本人は服装に興味を示さないため気にしていなかった。

 

 

「そうかしら? 私はその勇者服とても素敵だと思うけれど……?」

 

 

逆に何処が悪いのかしらと疑問に思う須美。和風が好きな須美にとって優士の武器に合わせ動きやすく新たにアレンジされた勇者服は心に刺さるものがあるらしい。見方を変えれば道着のような格好に見えないでもない。しかし少し色合いが洋風か……と気になり出している須美さん。

和風が好きなのは分かるが……そろそろ和洋折衷という言葉を受け入れてみてはどうだろうか。

 

 

「うん。ゆーさんらしいというか個性が出てて良いと思うな〜」

 

「ま、唯一男で選ばれた勇者だしそのくらい目立ってる方がいいかもね」

 

 

一目で優士だと分かる服装で納得している園子。銀もああは言ったもの優士の勇者装束はとある漫画に出てくる主人公(みんなのヒーロー)を彷彿させるため少し羨ましくも思っていた。

 

 

「そ、そうかなぁ〜? やっぱかっこいいよなこの勇者服!」

 

 

へへ、と照れ臭そうにしながら言う優士。三者三様の意見を聞き納得することができたのか嬉しそうである。

 

 

(チョロいな……)

 

(ちょろいわね……)

 

(ゆーさんは相変わらず素直だなぁ〜……)

 

 

勿論先程優士に言った言葉は嘘ではないのだが、こんな風ではいつか誰かに騙される日が来るのではないかと少し不安になる須美と銀だった。素直なのは美徳なのだろうが、彼の場合は純粋すぎると言うべきなのだろう。

 

 

「よし……!」

 

 

話しが少しズレてしまったが、四人共勇者への変身は無事完了したことを確認する。このまま楽しくトークを続けていたい気持ちもあるが、それをグッと押さえ一人が切り上げると他の三人もそれを察して気持ちを切り替えた。

 

 

 

「ま、楽しい話しの続きは後にして————」

 

 

 

 

『行こう』

 

 

 

 

四人は大橋へと足を進めるのだった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

勇者になったことで格段に身体能力が上がったことによって数分ちょっとで大橋へと辿り着いた四人。

自分達の目線の先には、世界を滅ぼそうとする敵の姿が映る。その大きさは全長数十メートルは軽く超えているだろうと思われる。一体だけでもそれは十分人類にとっての脅威になりえる。

 

 

目の前の怪物を倒すのが自分達の任務であり御役目だ。

 

「んじゃ、とりあえず先陣は————」

 

「先手はアタシが頂くぜ!」

 

「ちょっ、待てよ!? 一番槍は男の仕事だ!」

 

「! 二人とも待ちなさい先に牽制を行ってからが……」

 

 

地面を思い切り蹴飛ばしそのまま敵目掛けて素早い動きで突進する銀。出遅れた優士は負けじとそのあとを追いかける。その時、二人を彩る赤色と橙色の花が周囲に舞う。園子は「わぁぁ……!」とその光景に思わず見とれてしまった。

 

 

仕方ないと須美は援護射撃の態勢に入るのだが、それよりも先に銀がバーテックスに対して攻撃を行える範囲にたどり着く。

 

 

「てやあぁぁぁ!!」

 

 

勇ましい声とともに繰り出された銀の一撃がバーテックスを大きく切り裂こうとするが水球が邪魔をしたため本体へのダメージは浅い。

 

 

(────よし、ここ……だッ!)

 

 

すかさず優士が右拳を握り力を入れたパンチをバーテックスへと叩き込む。銀により水球が事前に全て切り裂かれたため、ノーガードとなったバーテックスの身体に大きくめり込むようなパンチを入れることができた。

 

 

「ナイス、優士!」

 

「! へへっ」

 

 

実戦での初撃に成功し、それを銀に褒められて喜ぶ優士。自分達がダメージを与えたという実感と喜びが銀と優士の中には生まれていく。

 

 

「わぁ! すごいよ、ミノさん!ゆーさん!」

 

 

その様子を見た園子は感激しパチパチと拍手をする。二人は返事こそしなかったが、口元はフッと得意げに笑っており完全に自信へと浸っていく。

 

 

「こいつ、水のガードがキツいけど……」

 

 

水球のガードを銀が全て切り裂いていき、その間と隙をついて優士が拳を振っていく。

 

 

「「二人でなら、いける!」」

 

 

 

片方が水球を対処し、もう片方が続けてバーテックスへと攻撃をする。単純な攻撃方法ではあるが、確実にバーテックスに明確なダメージを与えられていた。

 

 

この分なら続けて攻撃を当てればいけるはずだと確信に近いものを持つ銀と優士。だが————

 

 

「二人とも"油断"しないで!!

 

「「────!?」」

 

 

考えが似ている二人だからこそ慢心しきっており、他者に言われるまで頭の中からその二文字が抜け出ていた。

須美の忠告を耳にした直後、それが正解だというようにバーテックスの身体が一瞬歪む。

その歪みとともにバーテックスのキズが完全に元通りになり、それを見た二人は顔をしかめた。

 

 

「回復……いや再生したのか!?」

 

「くっそー! そんなのずるいぞ反則だ!」

 

 

目の前で起こった出来事に優士と銀は驚きを隠せずにいた。優位な状況が逆転すると同時に不安と焦りが襲ってくる。そして畳みかけるようにバーテックスの水球からゴポゴポという泡が発生しだす。  

 

 

(アレは……何……?)

 

何を仕掛けてくるのかと須美はバーテックスの次の動きに警戒しつつ、握っていた弓を更に力強く握り矢を構える。

銀と優士も気持ちを切り替え、もう一度攻撃をしようとした時だった。

 

 

————一瞬で戦況が変わったのは。

 

 

 

 

「二人共、早く逃げて!!」

 

 

 

いつもののほほんとした園子からは考えられないような張り上げた声が周囲に響き渡る。今まで銀と優士が特攻してる中、少し離れた場所からいつでも駆けつけられるようにバーテックスの様子を探っていたのだが、どうやらそれは正解だったらしい。不規則なバーテックスの行動から攻撃を仕掛けて来るのを感じとれた。その声を聞いた優士は大きく後ろに後方回転をし、間合いを取って大きく後退をする。

 

 

しかし反応が一瞬、それこそ数秒というレベルだったが先に走る態勢に入っていた銀は切り返しに時間がかかってしまう。加えて両斧という武器を持つ銀は優士と違って即座に切り替えて動き出すことができないためだった。それを逃がさないというように左右にある二つの巨大な水球から一回り小さいが凄まじい速度の水塊が発射された。

 

 

「────!?」

 

「銀!!」

 

 

狙ってきた水球に銀は即座に反応することができず銀は思わず目を瞑ってしまった。しかし、いつまで経っても痛いという感覚も何かがぶつかって来たような感触もない。

 

 

「んんーっ!!」

 

「そ、園子!?」

 

 

しかし、間一髪といったタイミングで園子が自分の持っていた槍を傘のような形状へ変化させ、今なお連続で飛ばされてくる水の塊から銀を守っていた。助かったと安緒する銀だったが────

 

 

「ごめんミノさん、ちょっと持たない……!!」

 

「えっ」

 

 

いくら勇者の力を身に宿らせているとはいえ、園子の華奢な身体では敵から放たれ続ける攻撃から踏ん張るのが精一杯であり連続で飛ばされる水塊の衝撃に耐えきれずそのまま後ろに銀もろとも吹っ飛ばされた。

 

「「三ノ輪さん(銀)!! 乃木さん(園子)!!」」

 

優士と須美が二人の名前を叫ぶ。

 

 

(まさか、直撃!?)

 

 

二人が吹き飛ばされたことに動揺する須美と優士。考えている暇などないというように血相を変え、気づけば優士は二人の元へと足を動かしていた。

 

バーテックスはターゲットを即座に移動を始めた優士へと変更し攻撃を再開する。

 

 

「ッ、やべ!?」

 

 

自分が狙われていることを理解すると、園子と銀がいる近くの樹海の根から離れた根へすぐに移動する。水塊を右、左とジグザグに駆けながら狙いを定めさせないように避け続ける。バシッ、ドゴッと言うような明らかに当たったら只では済まなさそうな攻撃。

 

(明らかに水が出していい攻撃力じゃね———ッあぶな!?)

 

そもそもアレが本当に水と呼べるモノなのかも分からないのだが。自身の中で不満を愚痴りながらも、そんな攻撃が当たった二人は大丈夫なのかと更に不安が重なってしまう。

 

何とか水球を避け続けるもマシンガンのような攻撃が止む気配はなく、ジャンプから着地をしようとした瞬間を狙われ、ついに一発右足に水球を喰らってしまった。身体のバランスを崩すが、反射的に右手を樹海の大きな根へと押しつけることで転ぶのを回避する。

 

(何だ、コレ?)

 

「——まさか、拘束……? 」

 

 

自分の右足へと目を向けると、そこには水球がくっ付いておりまるで重りをつけてるように上手く動かせなかった。攻撃を使い分けることもできるのかと須美は恐ろしく感じてしまう。知性があるというのは聞かされていたが、あんな怪物が頭を使って自分達を倒しに……いや、"殺しにくる"のかと。

 

 

(……くそ、これじゃ二人のところに行けないし、どうすれば!?)

 

 

「ッ——高嶋君!!」

 

 

須美の心配するような声が聞こえるが返事をしている余裕などなく、須美は優士を助けるために弓矢を放とうとするがバーテックスは水の塊を自分の前へ壁のように展開しているためジャンプして対空時間中に真上から攻撃するくらいしか当てることはできないだろう。

 

 

しかしそれを決行してしまえば移動中に優士がやられてしまう。

しかし、考えてる暇はなくせめて気を引くことができれば────あるいはと薄い希望にかける。

 

 

「ッ、やっぱり……」

 

 

どうやら今回の相手は自分、いや自分達にとって最悪の相手だったらしい。敵はそれを予測していたと言わんばかりに水の壁から須美の弓矢の威力を殺すのと同時に優士への攻撃を仕掛ける。

 

動きを封じた優士に数発の水塊が放たれる。こうなりゃヤケだと優士は左拳を握り迎え打とうとするのだが。

 

 

「くそ! 数が、多すぎ……!?」

 

 

一塊も大きい水球が優士へと放たれる。先程食らった粘着性のある水球とは違った岩石を大砲で放り投げて来たような衝撃が自分の身体を襲う。

 

「ぎぎぎぎッ!!」

 

後ろへと吹き飛ばされそうになるのを思い切り足を踏みしめて止まるも、右足を上手く使うことが出来ない状況であり、実質左足だけの踏ん張りでは耐え凌ぐことが出来ず、水球が弾け飛ぶのと同時に優士が後ろの樹海の根まで銀達同様に吹っ飛ばされた。

 

 

「高嶋——ッ!?」

 

 

吹き飛ばされた優士の様子を見ていた須美は反射的に声を上げようとした時、自分に殺意が向けられてることに気づきバーテックスの方へと向き直った。

 

 

 

「……ッ!!」

 

キッと鋭い目つきで目の前にいる敵を睨みつける。

 

(私が、倒すんだ!)

 

弓を持つ手が震える。

もう自分しか残っていないのだ。

 

ここで臆している場合か?

何の為に鍛錬を重ねてきた?

 

 

そんなの————決まっている。

 

 

「御役目を果たすために!」

 

 

狙いは定まっていた。覚悟だってとっくに完了していた。

けれど、現実は創作の世界のように甘くはなかったらしい。

 

 

「……っ」

 

"やはり"全て防がれてしまった————

 

 

自分の攻撃が2度も相手に通用しなかった……どうしたらと考えようとした時、バーテックスが進んできた後ろの樹海が枯れていっていることに気がついた。

 

(! 侵食がーーッ!?)

 

バーテックスからの反撃で水球が須美の近くで被弾し、足元がぐらついてしまいつい膝をついてしまった。

 

 

────すぐに立ち上がらなければ!

 

 

自分は絶対に諦めない!とバーテックスへ睨み付けるような目線を送った次の瞬間、敵の攻撃が須美の右頰を掠り、後ろの髪を結んでいた装飾品の一部がパリン、と砕け散った。ぼろぼろと原型を崩した欠片が次々に落ちて行く。

 

 

(ーーーーあ………)

 

 

自分の攻撃は敵に通用せず一度も本体に当てることさえできない。先程銀と優士が与えたダメージも時間が経ち完全修復されている。更には敵の水球爆弾とでも言えるような連続攻撃。あんな攻撃をまともにくらってしまえば……いや、普通に数発くらっただけでも致命傷になってしまうだろう。

 

 

自分達が諦めてしまえば世界は終わってしまう。それは人類の滅亡を意味する。そんなことは分かっている。

 

 

立ち上がれ、立ち上がれ! 立ち上がれ!!

何度も自分の中で復唱する。

 

 

(私が頑張る! 私が守る!)

 

 

そう決めていた自分の思いはどこへ行ったのか。須美の膝はがくりと地に伏せてしまった。須美の身体は硬直したように全然動かすことができなくなった。

 

そして、先程よりも増した敵から感じ取れる明確な殺意に物怖じする。

そんな放心状態の須美へと敵の無慈悲な攻撃が発射される。

 

 

 

もう駄目かと須美が目を瞑り、諦めかけた時だった。

 

 

 

「須美ぃぃぃ!!」

 

 

 

 

自分の名前を呼ぶそれは、耳をつんざくようなとても大きな声だった。それと同時に優士が滑り込むようにして須美を狙ったバーテックスの水球にタイミングよくパンチングを当てた。

吹っ飛ばした直後その場でクルッと一回転し、武器である手甲を爪のように引っ掛けながらブレーキをかける。「セーフ……!」と着地が成功したことに安心すると一度息を吐き、そのまま振り返ることなく須美の前に立つ。

 

「大丈夫!? 須美!」

 

まだ放心状態が後退りしていた須美の元へ銀と園子が駆けつけ声を掛ける。

 

「ごめんねわっしー。待たせちゃったね」

 

一度須美に申し訳なさそうに目を向けながらも、間に合って良かったと微笑み優士の横へと同じように須美を守るようにバーテックスへと立ち塞がる。

 

 

「みんな……! 無事だったのね!」

 

「ま、ちょっと身体は痛いけど。勇者はその程度じゃへこたれない、ってね!」

 

 

カッコつけるように須美に答える優士。

 

 

「俺達が、いる、以上────!」

 

「もう、わっしーをいじめさせない!」

 

 

放たれた水球を後ろ以外の方向へと弾いたり吹き飛ばしたりして軌道を変え続ける優士。反応しきれなかった水球への対処をする園子。

先程とは異なって守りに専念する二人。理由はただ一つ、大切な仲間を守るためだ。

 

 

「ったくよ! 女の子(須美)を泣かすとか最低だよ、な!」

 

「ほんとだよ、ねっ!」

 

「な、泣いてはいません!?」

 

大罪ものだぞと怒りを向ける優士と園子。しかしそれを否定する須美を見て、こんな状況なのに吹き出しそうになる銀。もちろん須美を守る手は緩めていない。

 

 

優士も意識はちゃんと敵の攻撃へと向けて集中している。今も手のリーチで届かないと分かり足で水球を蹴り飛ばした辺り集中している証拠だろう。

 

 

「ほら、立って須美」

 

攻撃が来ないのを確認した銀は優しい声色で話しかけ須美に向けて手を伸ばす。須美は一瞬戸惑いつつもその手をしっかりと握って立ち上がる?

 

 

「……!! ゆーさん準備できたよ!」

 

「待ってました! やっちゃってくだせい!」

 

(──えっ、何をするつもりなの?)

 

合図と共に前衛で凌いでいた優士が後退するのと同時に園子が前に突撃し始めたため須美は驚く。

 

園子は自分の持っている槍を頭上で高速回転させ水球にぶつけていた。水球は風に巻き上げられて行く。しかし園子の作戦はそれにとどまらず、そのまま回転を利用して竜巻を作るという神業に近いことを実行していた。

神の力を宿した勇者の状態だからこそできる芸当。

 

 

「……すごい!」

 

 

今須美が園子に向けて伝えられる言葉はそれだけだった。須美が園子の活躍に驚いた瞬間、バーテックスは大きく後ろへと吹き飛んでいた。

 

 

「すっげえぇー!! 園子、やっぱお前最高だわ!」

 

「えへへ〜、そんなことないよ〜」

 

 

満面の笑みを浮かべながらわしわしと園子の髪を撫でる優士。園子も言葉では否定しているが優士に褒められて満更ではなさそうだった。

そんな二人を後ろから見守っていた銀は須美の肩を軽く叩くと「お先!」と告げ二人の場所に駆け寄って行った。その行動の意味は聞かずとも分かった。

 

 

 

「わっしー、ミノさん。 大丈夫だった?」

 

「須美、銀! さっきの園子のやつ見てたか? すっごかったよなぁ!」

 

「ああ、作戦成功だな!」

 

にっしっし、と悪巧みが成功した子供のように笑う三人の姿が須美の目に映る。危なげなその姿を見て、感心する日が来るとは思わなかった。

 

 

(私も————)

 

 

「私も、一緒に戦うわ!」

 

「よっし! 行こうぜ!」

 

 

いつもの調子が戻ってきた須美を見てへへっと笑う優士。そんな優士の様子を見て「また油断してるわよ」と注意する須美。

 

銀と須美が互いに優士と園子の隣に立つ。三人が横に揃ったことを確認すると優士はにやりと笑う。

 

 

「そろそろ決着つけますかね!」

 

「休んだ分体力は有り余ってるゾ!」

 

「いつでもオーケーだよ!」

 

「私も……三人の援護くらいはこなしてみせるわ!」

 

 

期待してるぜ! と優士が須美に向けてグッドマークを送り、それに頷く須美。

 

 

(いつか、私も三人の仲間()に入れるのかな?)

 

 

並んだ三人の横顔を見てみると、そんならしくもない考えが無意識に自分の中で強く生まれていたことに須美はまだ気づけなかった。

 

 

 

 

 

 




設定とかは頭の中にあるのにいざ文章にしようとするとね……言い訳ですね。投稿頻度が下がっている時点で停滞しているのは皆さんも目に見えて分かっていると思いますが、お気に入りや評価、感想をくれた人達のためにも頑張って最後まで書いていきたいと思っています。
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