少年は勇者の味方である   作:ft.優士

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第九話 合宿

高嶋優士の日記────

 

1+1+1+1を4ではなく10にする。

一人じゃ無理な事でも、仲間となら乗りこえる事ができる。

 

俺たち四人の力を合わせることができたのなら、その強さは10なんかで留まらずに100にも1000にだってすることができる筈だよね。

 

この合宿でそれを証明できるようにする事が俺達の目標だ。

 

 

 

 

・次のページへ続く────

 

 

 

 


 

 

 

 

俺たちがやってきたのは讃州サンビーチ。本来なら海水浴場としてみんなが利用するべき場所なのだが、今回は勇者達の合宿の訓練場として使うためにわざわざ貸し切ったとのことだ。大赦という組織のすごさを改めて実感してしまう。

 

「お役目が本格的に始まった事により、大赦は全面的に貴方達勇者をバックアップします。家庭の事や学校の事は心配せず頑張って!」

 

『はい!』

 

今の俺たちに足りないのは連携とチームワーク。

これからもバーテックスとの戦いが続いていく中、今までのように行き当たりばったりな行動を取っていては危険なことは目に見えて分かった。精神的にも技術的にも自分達はまだまだであることは自覚できており、これまでは運良く何とかなってきたがここから先も同じように事が運ぶとは限らない。

 

この合宿で、俺たちの動きをどこまで合わせることができるかで今後の命運が大きく変わって来るのは確かだろう。

 

(俺も副隊長として何をすれば良いのか、何をするべきなのかを見極めなくちゃいけない。これまで以上に沢山頑張らないと、だよな……!)

 

安芸先生からの訓練の内容と指示を聞いた俺たちは現在、各自指定された地点で待機をしている。

 

「準備はいい?この訓練のルールはシンプル、あのバスに三ノ輪さんを無事到着させる事。お互いの役割を忘れないで!」

 

自分達の進行方向に設置されている沢山の機械に視線を傾ける。用意された機械からは俺たちを狙ってボールが射出されるようになっているのでメインアタッカーである銀に被弾させないように援護するのが俺たちの役割だ。俺もアタッカーではあるのだが、"基礎の状態での攻撃スペック"はどうやら銀に劣ってしまっているため様子を見ながら前線に出る、ということにした。

 

うん、なんか頭使って考えてるって感じ。副隊長っぽいかも…!

 

「ゆーさん、今回"楯"は使わないの?」

 

少し得意げに物思いに耽っていると園子が声を掛けてきた。

園子が言う楯とは前回の戦いで突如出現したアレのことを差しているのだろう。確かにあの楯があれば今回行う訓練の内容にも向いており有利に進める事ができるのだが……

 

「今はあの楯"使えない"みたいなんだ。他の武器みたいに具現化させることすらできないし、手甲を出した時みたくやってみたんだけど駄目みたいでさ……」

 

あの時は何で使えたんだっけ。確か、バーテックスからみんなを守らなきゃと強く思ったら……なんかこう、自分の"身体の中に何かが流れ込んでくる"ような不思議な感覚を覚えて……気が付いたらあの楯が自分の左手にあった────気がする。

 

「そっか〜、もし使えたら私とゆーさんでミノさんを十全に守れるかなと思ったんだけど」

 

そもそもあの武器の本来の使い方は楯ではないような気がするんだけど……

 

「ごめん、期待に応えられなくて」

 

「なーに気にすんなって! 使えないならこれから使えるようになればいいんだよ。その為の合宿だろ?」

 

近くで聞き耳を立てていたらしい銀が割り込むようにしてフォローを入れてきた。

 

「そうだよゆーさん。一緒に頑張る、でしょ?」

 

「……そうだな。今できることをできる範囲で精一杯やるしかないよな」

 

銀と園子に感謝を伝えつつ、気持ちを切り替える。後方に視線を向けるとそれに気付いた須美が静かに首を縦に振った。多分俺たちの会話は聞こえていなかったと思うから準備完了って意思表示をしてくれたのだろう。

なんか須美のキリッとした顔みたら少し落ち着いてきた気がする。

 

よし、行こう────!

 

 

「それじゃ、スタート!」

 

安芸先生の合図と共に、設置された機械が動き始める。

 

「よ〜し。いっくよ〜!」

 

園子が槍を何度か見てきた傘の形状へと変化させ、前から飛んでくるボールから銀を守りつつ進んでいく。攻撃はもちろん、防御にも対応できるというのはシンプルだが、それだけで大きなアドバンテージとなり得る。

 

俺は二人より少しだけ離れた位置をキープしつつ銀の視界を遮らないように気を配りながら飛んで来るボールを腕と足をぶつけて撃ち落としていく。それ以外の身体の部位にボールが当たればアウトとのことだ。避ける行為も禁止とのことであり反射神経、というよりは避ける事に関してはこれまで単独で行って来た訓練でも散々鍛えられたので自信があったのでそれが活かせないのはかなり不利である。

 

……楯を使えるようになった時に備えて、避けるだけでなく攻撃を受け止めることも視野に入れておけということなのだろうか。

 

後方にいる須美はその場から動く事を制限されているため必然的に援護に回っている。俺達ではまだ対処できない遠い位置にあるボールを弓で射抜き園子が受け止めるボールの数を減らして負担を減らしてくれていたり、俺たちの死角から飛んでくるボールを撃ち落としてくれている。落ち着いて対処している時の須美は頼もしい限りだ。

 

「なんか、結構いい感じじゃないか?」

 

「うん。みんなで協力できてるって気がする、よっと!」

 

ボールを右足で蹴り飛ばしていなしつつ銀に返事をする。とにかく、二人の邪魔にならないように細心の注意を払いつつ足を前へと進めていく。足場が砂ということもありいつもより動きにくさは多少感じるが、勇者状態ということもあり予想してたよりもスムーズに足を砂に取られることなく動けているし、案外このまま上手く行くかもしれない。

 

「よっし、次──」

 

そう思っていた矢先、少し気持ちが昂っていた。

同じように飛んできたボールに対し右手で払い除けるように殴りつけたその直後だった。

 

「ぶッ──!!」

 

対処したボールのすぐ後ろには次のボールが自分へと迫ってきていた。どうやら前のボールに重なって飛んできていたらしく、気づいた時にはもう手遅れであり勢いをつけたボールはそのまま俺の顔面へとヒットした。しかも運悪く鼻を中心に。以前サッカーでキーパーを任された時に顔面を使ってシュートを止めた事があったが、それよりもかなり痛かった。思わず歩みを止めてその場で膝を折りつつも、痛む顔を左手で抑えつつ目線だけは直ぐに銀達の方へと向けるようにした。それとほぼ同時に、俺と同じように銀の頭にボールが当たった。

 

「おい大丈夫……あがッ──!!」

 

「あ、ご、ごめんなさい三ノ輪さん!?」

 

「アウト!」

 

俺がボールに被弾したことにより動揺してしまったためか、須美の放った矢が遠方のボールに当たらず、加えて銀の方も視線を俺の方に向けていたためか、目の前まで迫ってきていたボールへの反応が遅れてしまったらしい。

 

まあ、最初に俺がボールに被弾した時点で特訓は失敗だったのだが。

 

やっちまったぁ……と心の中でぼやきつつその場で胡座をかき、両手で顔を抑える。

 

「大丈夫か優士? もろに顔面中央に食らってたけど……」

 

「ストラーイク、って感じだったね〜」

 

「大丈夫、へっちゃらへっちゃら。てか銀もボール当たってたけど平気だったか?」

 

「アタシはおでこ付近だったからセーフ」

 

親指で自分のおでこを指しながら笑う銀。銀もこの調子じゃ大丈夫そうだなと、とりあえずひと安心する。

 

「当たった箇所ちょっと赤くなってるね……痛む?」

 

「まぁ、ちょっとだけ。時間経ったら自然と引いて行くから平気平気」

 

だからね園子さん。痛いの痛いの飛んでけ〜、はいらないです。

気持ちだけで十分だから……銀、お前も便乗してやらなくていいからね。これ以上俺に情けない姿を晒させないでくれたまえ……

そんな風に二人から揶揄われていると、須美がこちらに近づいてきていた。

 

「三ノ輪さんごめんなさい! 私……」

 

「アタシはこの通りピンピンしてるから気にすんなって!アタシも一瞬ボールから注意を逸らしちゃったのが悪いしな」

 

「どんまいだよ〜、わっしー!」

 

俺たちの方まで駆け寄ってきた須美が先程の自分の失敗を銀に謝るが、気にしすぎないように銀と園子が須美を励ましていた。

 

「呼び方も相変わらず固いんだよ。銀でいーぞ、銀で」

 

「私のことはそのっちで! ほらほら呼んでみて〜」

 

「えっ……? ええと……」

 

園子が須美の手を取って自分のあだ名を呼ぶようにお願いする。そんな園子の対応にどうするべきなのかと須美は視線を向けてきたが、これに関しては俺からアドバイスすること特にないため、本人の自由にすれば良いことのためとりあえず頑張れとサムズアップだけしておいた。

 

須美から視線を外し、次からはもう同じ失敗を繰り返さないようにしなければと自分に注意を促していると、安芸先生の手を叩く音が2回耳に入ってきたと共に次の指示が出された。

 

「休んでないでもう一回よ!失敗しても直ぐに切り替えなさい!」

 

『は、はい!』

 

安芸先生曰く、ゴール出来るようになるまで毎日やるとのことらしい。

先が思いやられるな、と感じつつも俺たちは先生の指示に従いスタート地点に戻るのだった。

 

 

◇◇◇

 

 

「あぁ〜……いい湯だなぁ……」

 

五臓六腑に染み渡るというやつだろうか。訓練を終えて、疲れ切った身体に温泉の湯が物凄く効いているのが分かり反射的に声が出てしまう。

 

今日の訓練を終えて、旅館へと戻ってきた俺たちにやってきた自由時間。夜までしっかり鍛錬をしてくたくたになった俺たちはひとまず温泉に浸かることにしようと満場一致で決定した。

 

それにしても、初日から大変だったな……明日もこんな感じかと思うと少し憂鬱な気分になりそうになったので、温泉の湯を頭にバシャりと勢いよくかけた。折角温泉に来て、リラックスしているのにこれでは台無しだ。

 

「1+1+1+1を4ではなく10にする、かぁ……」

 

そう思いつつも、やはり不安が残っているのか頭に浮かんでくるのは先のことについて。先程、自由時間に入る前に安芸先生から伝えられた言葉を思い出す。

 

『この合宿中は基本、四人で一緒に行動を共にすること』

 

そのため、おはようからおやすみまでの全ての行動を共にするということであり、一つの旅館の部屋を四人で使うこととなっていた。温泉は流石に男女で分かれていたが……まあ当たり前なんだけどね。

こんな大きな温泉に一人だけというのは特別感があって悪くないけれど、やはり一人ぽつんと広い空間にいるのは少し寂しいものがあった。

 

(須美達は三人で一緒に入れていいよなー……俺も友達と大きな温泉に入って一緒に泳いだり、水の中で何秒息を止めていられるかの競争とかしてみたかったなぁ……)

 

まあ、あっちには須美がいるからそんなことさせてくれないだろうけど。マナー違反とか規則にはうるさいから仕方ない。

 

「そろそろ上がろうかな」

 

のぼせる前に温泉から出るようにする。女の子のお風呂は長いらしいため、先に部屋に行って待っているのが賢明だろう。ついでにみんなで遊ぶ道具の用意でもしとくか。

 

合宿には訓練のために来たことは十分承知しているが、やはり友達と一緒というのは自然とテンションが上がってくるものだ。

 

基本友達というのは夜の時間帯に会う機会はそうそうないし、小学生ならば尚更である。

 

お泊まり会といったイベントを友達とはやった事がなかったため、少しワクワクして来ている。早く寝ようとか真面目なキャラが必ずいうんだけど、結局誰かが話を始めて夜はこれからだー!ってなってそのまま夜更かししたりしちゃったりするんだよな。漫画で見たことあるから俺は知っている。引率の先生が見回りにくるからその時は布団を被って寝たふりをしてその場を過ごすんだよな。

 

訓練の方はまだ上手くいってないからこんなに気楽でいていいのかなとは思うけど……まだ初日だし、今日の失敗は明日からの鍛錬に繋げていけば良いだろう。気を張りすぎていても疲れるだけだ。折角の自由時間なのだからちょっと羽を伸ばして気分転換をしても罰は当たらないだろう。

 

「そうだ、その前に日記も書いとかないとな」

 

勇者御記の方と並行しているためついついもう書いたように勘違いしてしまい忘れてしまうことが度々ある。

 

毎日恒例で寝る前にいつも書くようにしているのだが、この合宿中はみんなが部屋に戻ってくるまでの時間を使ってぱぱっと書いとくようにしておこう。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

夜も更けて、就寝時間となった。

 

「お前ら、合宿初日の夜に簡単に寝られると思ってる?」

 

「自分の枕を持って来てるから簡単に寝られるよ〜」

 

「それ名前タコスだっけ?」

 

「サンチョだよ〜、よしよし〜」

 

「……で、園子さんその服は?」

 

「鳥さーん!私焼き鳥好きなんよ〜!」

 

「うん。美味いよね……」

 

銀の質問に、鶏さんの服を来た園子が袖についている羽の部分をバサバサとさせながら応える。それにしても園子は服のセンスがいいな……俺もああいう動物がかたどられたようなデザインの服、ちょっと欲しいかも。

 

「駄目よ。夜更かしなんて、明日に響くわ」

 

「テンプレいただきましたぁー!」

 

「マイペースだなぁ須美……優士は何でそんなに嬉しそうなんだ?」

 

「言うことを聞かない子は……夜中迎えにくるよ……!」

 

「む、迎えに来る!?」

 

うらめしやー、とでも言いたげに両手を下に曲げ幽霊を彷彿させるような仕草をしながら須美が恐ろしそうな雰囲気を醸し出すが、あまり怖くはなかった。園子には何故か効いているようだけれど……

 

「……何をにやついているの?」

 

「いや、何でもないから気にしないで……」

 

「…そう(何かおかしいことでもあったのかしら? それとも思い出し笑いでもしているとか、そんな感じかしらね……)」

 

どうやら顔に出てしまっていたらしく、そんな俺を見て須美が怪訝な表情を浮かべている。

 

今みたいに須美がたまにだけど、ちょっとふざけたりするの俺は結構好きなんだよな。ギャップってやつ? 多分本人は至って真面目なんだろうけど、ウケ狙ってやってるようにしか俺には見えない。難しい顔ばかりしてないでいつもこんな感じで少し余裕を持っていてくれれば良いんだろうけど……まあ、そんな真面目な部分も鷲尾須美という女の子が持つ魅力の一つなのだと今では理解している。

 

ふざけまくりで、まるで芸人寄りな須美、というのも見てみたくはあるけれど……そんなことはきっと世界が滅んだりでもしない限りありえなさそうであるけれど。

 

「そんなホラーはやめてさ、好きな人の言い合いっこしようよ!」

 

「す、好きな人って……三ノ輪さんはどうなの?」

 

「えぇ、あ、アタシッ……!?」

 

まあ、こういうのは言い出しっぺの人からって決まってるらしいからな。それにしても銀のこの反応……もしかするのか?だとしたらはてさてそれは一体誰なのか、クラスの子かな。田中、それとも鈴木かな……いや待てよ佐藤の可能性もあるかもしれない。

 

「そ、そうだな。敢えていうなら……お、弟とか……?」

 

「ああ、確かに。金太郎は言わずもがな、鉄男君も人懐っこくてかわいいもんな。でも何で疑問系なん───ぐふッ!?」

 

「!?」

 

何の前触れもなく園子から突然肘打ちを喰らわされた。何で笑顔なのにそんな圧をかけられるの?別に何か悪いことをした訳でもないのにこの仕打ちはあんまりでは無いだろうか。須美は一連の動きに驚くも少し何かを考え込んだあとに園子の考えてることを何となく察したらしく、呆れた顔を俺に向けて来た。あれ、須美のヤツ自然と園子と意思疎通できるくらい仲良くなれてるじゃん。

 

……やっぱ友達同士が仲良くしていると嬉しいな、と共感を求めるように銀の方へ顔を向けたのだが……あ、顔を合わせたらプイッとされた。もしかして、俺みんなから嫌われてたりするの?

 

……あ、今日俺が訓練で最初に失敗したから実はみんな腹を立ててるとか……!? 副隊長のくせにだらしがないとか思われてたりする……?

 

「……私もいないからおあいこね。乃木さんは?」

 

……なんか怖いからもう寝ようかな。よく分からないが俺にはコイバナというものは向いてないようなので、後は女の子たちに任せてガールズトークに花を咲かせてもらうことにしよう。今日は寝不足だったこともあって正直もう眠いし────

 

「ふっふっふ。私はいるよ〜」

 

「だ、誰なの!?クラスの人!?」

 

ガバっと俺は身体に掛けていた布団を振り払った。前言撤回だ、眠れなくなった。

 

「何ィ!? 誰だ、ウチの園子をたらばかした奴は!?」

 

「たぶらかした、よ!よく知ってたわねそんな言葉……」

 

「優士は園子の何なんだよ……てか、寝ようとしてたんじゃないのかよ?」

 

バッカやろ、銀お前。妹のように大切に育てて来た園子が(※育てていません)……あんな小さくて俺の後ろを歩いていた園子が(※現在身長を抜かされています)……自分の意見を素直に出すことに戸惑いを感じていたあの園子がこんなにも心身ともに成長したと思うと……怒りの感情よりも先に涙が出て来そうである。嬉しい反面悲しくもあるという複雑な心境だ。まあ、それは置いとくとしてだ。

 

「で、園子そのお相手は?」

 

「それはね〜……わっしーとミノさんとゆーさん!」

 

「何だ、俺たちか良かった……」

 

「まあ……そんなことだと思ったわ」

 

園子らしい答えに安心感を覚えた俺は振り払った掛け布団を回収して、今度こそ寝ようとしていたのだが、それを銀に阻まれる。

 

「……って、いやいや!? 優士お前は女の子から好きって言われてるんだから。ちょっとはこう戸惑ったりとか……そういうのはない訳?」

 

「んー、だって須美と銀と同列だし。園子にとって俺は兄みたいな感じの存在じゃん?」

 

そもそも俺みたいなバカで欠点だらけな男のことを好きになってくれる物好きがいるとは思えないしな。女の子ってのはイケメンで優しくて頭が良くて気配りができてスポーツも抜群な男が好きだってどこかで聞いたことがある。

 

「……そうなのか園子?」

 

「うーん、普段はあまり頼りないからお兄さんぽく感じたことはないけど〜……でもゆーさんの認識も間違ってないかもしれないね〜」

 

「そうね。高嶋君、身長小さいものね……」

 

「ほっとけ!? これから大きくなるから良いんだよ!!」

 

可哀想なものを見る感じでこちらを見てくる須美。確かに、俺の身長は現在四人の中では銀の次に小さいけれど、中学、高校と時期が来ればその内自然と大きくなる筈だ。お父さんは確か183センチくらいでお母さんも身長は同年代の女子の中でも高い方だったらしいし。遺伝的にも希望はまだある筈だ……あるよな?

 

俺が熟考していると、銀が小さいため息を吐いた。

 

「……はぁ、これでいいのかねぇ?」

 

「まあいいんじゃね? 俺も恋愛とか良くわかんないし。小学生にはまだ早いってことで……ふぁ〜」

 

「大きな欠伸……そういえば昨日は夜更かししたって言っていたわね」

 

「合宿が楽しみで寝れなくてな〜」

 

「子供だなぁ……」

 

「……るせ〜、子供だからいいの」

 

あぁ、これもうすぐ寝れるわ。お布団の寝心地も悪くない……さっきまで夜更かしだなんだと考えていたが、身体は正直らしい。明日も朝早いし、疲れを残さないようにしっかり休息を取っておくのが理想的だろう。そうでなくても寝不足で今日はこれ以上起きてるのがキツイ。

 

「そういえば優士は寝るの早いんだっけ?」

 

「何も無い時は九時前にはいつも寝てるよ〜……毎日九時間くらいは寝ないとおめめぱっちりしないからね」

 

「健康的ね。私たちも高嶋君に倣って早く寝ましょう。明日も早いのだから」

 

俺たちが布団に入ったのを確認した須美は部屋の電気を消した。

 

「ゆーさん、同じ部屋だからって寝てる私達に"イタズラ"とかしたらダメだからね〜?」

 

「「(園子、(乃木さん))!?」」

 

「……ん〜、べつに俺寝てるみんなの顔に落書きとかしたりしないけど?」

 

「そっかぁ〜……なら安心だね?」

 

「そ、そうね」

 

「そ、そうだな」

 

質問の意図がよく分からなかったけれど納得してくれたのだろうか。半分意識落ちかけてるから上手く返せたのか分からないけれど。

 

 

────少なくとも綺麗な女の子の顔を汚そうとは思わない。

 

 

そんなことを最後頭に浮かべつつ目を閉じた。それを機に三人は何も言葉を発さずに静かになっていたためそのまま俺はそのまま眠りに入るのだった。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

──高嶋優士の日記

 

須美や安芸先生には怒られるかもしれないけど、友達と一日中という長い時間を一緒に過ごした事って無かったから新鮮で何だか楽しかったし、朝ご飯や夕ご飯をみんなで一緒に食べたり、寝る時も少しの時間だったけど四人でわいわいと楽しくおしゃべりできて嬉しかった。

 

御役目関係なく、須美達ともっと仲良くできたらいいな……

 

今日の訓練では良い結果を残す事ができなかったけど……まだ初日。今日の失敗をカテにして明日の訓練へとつなげていきたい。

 

 

298年 6月20日




※主人公は恋愛事情について、別段鈍感という訳ではありません。
ただ自分への好意に関しては全て友愛であると思っているだけなので、他者や友達同士の恋愛感情などについては何となくですが「ああ、この人ってあの人の事が好きなのかな?」程度に察することはできます。

では主人公が何故そう思うようになったかの理由などについては彼の幼少期が関係しています。それも後に過去回にて明かそうと思っています……そういえばこの作品の主人公についてはまだ明かしていないことの方が多かったりしますかね?

まあ、主人公に関しては年相応などこにでもいる真っ直ぐで人並みの正義感を持っている普通の小学生男子という認識を持ってくれていれば大丈夫です。

主人公に関する幼少期の過去回に関しては鷲尾須美の章時点で掘り下げをする予定です。
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