少年は勇者の味方である   作:ft.優士

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今年最後の投稿になります。


新たな約束と始まり

──夢を見ていた気がする。

 

 

たくさんの花と星、それを照らす月の光が差す場所に()()()()()

 

 

上手く思い出せないけれど……

 

 

ただ、その場所で────

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

次の日の夕暮れ、俺は友奈のお母さんと真剣な表情で向かいあっている。結城家では友奈に聞かれてしまう可能性があるので、俺の家で話すことに。内密な話をするには丁度良い場所だろう。

 

 

期限は1週間あると言われていたけど自分の答えが鈍る前に伝えた方が良い気がした。

 

 

「ん……」

 

 

緊張しているため言葉が口ごもる。軽く深呼吸をする。吸って吐いてを2・3回繰り返し気を沈める。

 

 

「俺の話、聞いてくれる?」

 

もう答えは決まったの?という問いかけに首を縦に振る。

思えば簡単な話だった。

 

 

「俺、勇者になるよ。 勇者になって友奈やみんなを守る!!」

 

 

そう強く宣言する。こんな自分でも誰かの、世界の役に立てる。そんな誇らしいことはきっと他にないしこれほど名誉なことはない。きっとお父さんも喜んでくれてる筈だ。

 

 

 

──だから、何でそんな()()()()()()()()を浮かべているのか俺には分からなかった。

 

 

「大丈夫だよ。勇者として沢山頑張らないといけない事もあるかもしれないけどさ……」

 

 

安心させるための具体的な理由や理屈も、ただの小学生であり頭の悪い自分には思いつかない。だから正直に今思っていることを伝えようと思う。

 

 

「沢山努力もするし最後まで諦めずに頑張るから……大丈夫だよ、俺やる時はやる男だから……知ってるでしょ?」

 

 

新しい家族に新しい環境、そして勇者としての御役目。不安が全くないといったら嘘になるだろう。どんなことがこの先待っているのかわからない。

……その分だけ今のこの暮らしがとても幸せで大切だと感じてしまう。

 

 

(……あの日決めただろ?)

 

 

"一度自分で決めたことは最後まで諦めない"って。

 

 

途中で弱音なんか吐いたらきっとお父さんに怒られてしまうだろう。

 

 

「だから安心して友奈と一緒に待っててよ。必ず帰ってくるから」

 

 

士朗はそう言いながら笑顔を向けていた。

 

 

「…ッ……!」

 

 

今まで我慢していた涙が彼女の双眸から溢れ出す。「…ごめんね」と何度も謝りながら士朗を力一杯抱きしめる。

 

 

「…大丈夫大丈夫、しっかり御役目を果たして……笑顔でみんなのところに帰ってくるから」

 

 

最初は上手くいかないかもしれないけど、新しい家族とも自分なりにしっかり向き合う。みんなに助けられなくても……俺はもう()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

だから、泣かないで欲しい。

 

 

「……ありがとう」

 

 

気にかけてくれたこと、見守ってくれたこと、そばにいてくれたこと。今まで恥ずかしくて口に出したことはなかったけれど、心の中ではいつも感謝していた。

 

 

血は繋がってないし、二人の本当の子供じゃないけど。今感じているこの温もりはきっと、偽物ではないのだから。

 

 

「俺の"()()()()()()()()()"本当にありがとう」

 

 

今まで恥ずかしくて言えなかった心からの感謝の気持ち。

 

お父さんが"()()()()()()()()()()"あの日から、おじさんとおばさんは俺にとっての親代わりだった。いつも心身共に気遣ってくれた、支えてくれた、応援してくれた。

 

 

優しくてあたたかい…ずっと一緒にいたい大切な人達に、大事な居場所。

 

 

……それが無くなるなんて嫌だから。

 

 

 

だから────今度は俺が頑張る番、だよね。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

その後、友奈と帰ってきたおじさんにも一通りの説明をした。勿論御役目に関する内容は禁止事項であり話すことができないため、神樹様から御役目に選ばれたこととそのために少し遠い場所に引っ越すことになりしばらく会うことはできないだろうという最小限の情報だけを伝えた。

 

 

 

話を聞き終わると友奈は自分の部屋に走っていってしまった。すれ違った際に一瞬だけ見えたその瞳には涙が溜まっていたように見えた。

 

 

 

友奈のお父さんとお母さんには俺が行くからと伝え、すぐさま友奈の後を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

 

「友奈、入っていい?」

 

「……ゃ」

 

部屋の中からは友奈が啜り泣いている音だけがわずかに聞こえてきた。

 

 

「お願い、まだ伝えてないこともあるんだ」

 

 

「嫌っ!!」

 

 

帰ってきたのは怒鳴るように繰り出された否定の言葉だった。

 

 

 

「……一人にしないって言ったのに……ずっと一緒にいるって約束してくれたのに!」

 

 

……そうだね無理させないって、自分が友奈を助けるんだって、あの日友奈と自分に誓った。

 

 

(ごめん友奈……)

 

 

友奈の部屋の扉をゆっくりと開ける。このままじゃきっと上手く伝わらないだろうと思った。気軽に開け閉めを繰り返してきた扉の筈なのに、今だけはすごく重たく感じる。

 

 

「……うん、友奈と約束したよね」

 

「……だったら、行かないでよ、ずっと私の側にいてよぉ……一緒じゃないと私、寂しいよ……」

 

 

小さい頃からずっと一緒だったもんね。遊ぶ時や学校に行く時、帰る時も一緒に手を繋いで帰るくらい仲良しだった。

毎日、いつも一緒で……

 

 

 

「俺も友奈と離れたくないし、友奈に会えなくなるのはとっても寂しい……」

 

 

……友奈と会えなくなることが辛くないわけがない。

友奈は俺にとって、特別で大切な存在だから。

 

 

「……でもさ、これでもう一生会えなくなるわけじゃないだろ?」

 

ベッドに寄りかかって体育座りをしている友奈に近づき、正面に立つと両足を曲げ、友奈と同じ目線になる。

 

「約束を破ることになっちゃって、一緒にいるって言ったのに、助けるって言ったのに…本当にごめん……」  

 

 

男が約束を破るのは駄目だってお父さんも言っていた。御役目のため仕方ない、というのはきっとただの言い訳なのだろう。

 

 

「…友奈がもしこんな身勝手で最低な俺のことを許してくれるなら、もう一度、約束をさせてくれないか? 」

 

「…何を……?」

 

 

友奈は少し顔を上げながら聞いてきた。

きっと勝手な話だと思う。一度した約束を守れず、それを償いの形で新たな約束をしようなど最低だと自分でも思う。けど、今の俺にはこれしか思いつけなかった。

 

 

「御役目が終わったら、必ず一番最初に友奈に会いにくる。そして今度こそ友奈との約束を必ず果たすよ」

 

 

こんな方法しか取れない自分が情けなかった。一度ぶん殴られても文句は言えないだろう。それも承知の上で、覚悟しつつ友奈から目を離さずに向き合う。

 

 

「本当に?」

 

「本当に」

 

「ほんとのほんとに?」

 

「ほんとのほんとに」

 

「ほんとのほんとのほんとに?」

 

「ほんとのほんとのほんとに!」

 

「ほんとほんとの──「長いよ!?」」

 

 

あまりの繰り返しに思わずツッコんでしまう。

 

 

 

────しかしその直後───

 

 

 

「「……ぷっ…」」

 

 

 

二人同時に吹き出す。おかしいなぁと思いつつ、二人で笑い合う。

 

「……今度破ったら許さないからね?」

 

「大丈夫、もう絶対友奈との約束を破ったりしない」

 

もう一度自分にも誓う。友奈を悲しませることは絶対にしないと。

 

俺と友奈は小指同士を握り、おまじないの言葉を一緒に口にする。

 

 

「「指切り拳万、嘘ついたら、針千本飲ーます、指切った!」」

 

 

 

「約束だからね?」

 

 

「うん、約束だ」

 

 

 

 

あの日と同じようにどちらからともなく、俺たちは笑顔を浮かべていた。 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

一週間後ーーー

 

 

大赦の人が迎えに来るまで後1時間ちょっとくらいある。

俺はこの日のために用意していたあるものを友奈に渡す。

 

「友奈!」

 

「どうしたの士朗君?」

 

俺は右手に持っているものを友奈に見せた。

 

「本当はもっと早くに渡せればよかったんだけど……ギリギリまで決まらなくてさ」

 

「これって……桜の花びらの髪飾り?」

 

「正解! 見た時ピーンと来てさ」

 

見つけた時、ついこれだ!って感じたんだよね。あれが直感ってやつかな?

 

「………」

 

友奈は髪飾りをずっと見つめていた。

 

「友奈?」

 

……もしかして、気に入らなかったのだろうか?

そう思ったが、次の瞬間友奈は「ふふ」っと笑顔を作っていた。

 

「……一緒だなって思って、私からも渡しとくね」

 

「え、これって……」

 

こんなことってあるんだなとつい驚く。友奈から渡されたものは()()()だった。形や物は違えど、元は同じ桜を題材にしたもの。

つい友奈と栞を交互に見返す俺を見て、友奈は微笑ましそうに笑う。

 

 

「素敵な偶然だね」

 

「そう、だな…」

 

 

面白い偶然もあるんだなと思うのと同時に少し安心した気持ちになっていた。

 

 

「ねえ、士朗君……」

 

「ん?」

 

 

少しそわそわしだし、目線を合わせたり外したりする友奈。

落ちつかないのかな……それとも何か俺に遠慮していることがあるとか?

 

「どうした、なんかあるのか?」

 

しばらく会えないし、聞けるお願いなら叶えるつもりだけど。

 

「じゃあさ、この髪飾りを────────なぁ…………」

 

後半、声が小さくて聞き取れなかったんだが……髪飾りを?

 

「ごめん、もう一回お願い」

 

次は聞き逃さないようにと集中する。

 

「この……髪飾り、つけて欲しいかなぁ……なんて」

 

友奈は照れ隠しのためか誤魔化すように「あはは」と笑う。

しかし今度は聞き逃さないように、きちんと友奈の声に耳を傾けていたのでそのお願いに応える。

 

「なんだ、そんなことか」

 

ほら、と右手を前に出す。

 

「へ?」

 

いや、何で自分から言ったのに驚いてるんだよ…これってあれか、天然ってやつ?

 

 

「髪飾り、貸してみて」

 

「う、うん」

 

 

髪飾りを友奈から受け取る。しかし頭のどこにつければ良いかと思い、近づき顔を見る。やっぱり前髪か横髪だよな? 髪飾りを付けようと思ったのだが、ふと一瞬見た時の友奈の表情が気になった。

 

…あの友奈さん? そんな目瞑って顔赤くしなくても大丈夫だよ? 別に痛くしたりとかしないからそんな痛みを我慢するために力入れなくても平気なんだが。

 

 

「よし。付けれたよ」

 

ゆっくりと目を開けた友奈は右側に付けてあげた髪飾りにそっと触れる。

 

 

「……どう、かな?」

 

 

少し照れ臭そうに感想を聞いてくる友奈。

 

 

「────うん。やっぱり友奈に似合ってた」

 

 

その言葉を聞いた友奈は嬉しそうに「ありがとう」と言葉を返した。

 

 

「私、絶対大切にするから…」

 

「そっか…そう思ってくれたのなら嬉しいな」

 

 

選んだ甲斐があったというものだ。そう言った友奈の顔は笑顔だったのだが、両目からは涙が溢れてしまっていた。それは髪飾りをくれた嬉しさから来るものか、それとも別れを惜しむ涙か……そのくらいの区別は俺にも分かる。

 

 

 

止まらなく溢れて来る友奈の涙を優しく拭い、小さい子をあやすようにしばらく友奈の頭を優しく撫で続けた。

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

「…うっ……う……」

 

 

「……あっちでもしっかり元気でな……」

 

 

「うん、ありがとう。行ってきます!」

 

 

泣いている友奈のお母さんを後ろから右手で支えながら友奈のお父さんは励ましの言葉をかけてくれた。二人に感謝を伝え元気に旅立ちの挨拶をする。

 

 

そして最後に友奈の名前を呼ぶ。「うん!」と元気に返事をするいつもの彼女の姿を確認すると────

 

 

 

「「()()()!」」

 

 

 

同時にその言葉を言い合う。きっとまた会えるのだから。最後に笑顔で笑い合い大赦が迎えに来てくれた車に乗る。

 

 

車が走り出し、ふと後ろを振り返ると友奈が大きく手を振っていたので俺も友奈の姿が見えなくなるまで振り返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『今日からは一緒じゃないけど、その栞がきっと士朗君のことを守ってくれると思う。だから、忘れないでね……私のこと』

 

 

友奈が栞を渡してくれた後に言っていた言葉を思い出していた。

 

 

(あれ……?)

 

 

ぽたぽたと水滴が自分のズボンに落ち始める。

 

何故だろう、今になって涙が流れてくる。何度拭ってもそれは止まらず、思い出されるのは今までの様々な楽しい記憶ばかり。

それらが自分の心に突き刺さっていくような感じがした。

 

勇者になる男がこんな泣き虫じゃ駄目だろう。

 

 

……だから────

 

 

 

(……神樹様、これで泣くのは最後にします。どんなに辛いことがあっても、決してもう泣きませんから……)

 

 

 

 

だから、今だけは泣いてしまう弱虫な自分を許してください。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

車の運転手さんにお礼を伝え、降りてみるとそこにはとても大きな家が建っていた。

 

俺の家何個分のでかさだろうか?

興味津々に高嶋家を見ていると一人の男性が玄関と思われる場所で待ってくれていた。前に来ていた使者の人とは違い仮面は付けておらず、服装も装束?のようなものではなかった。

 

正直それはすごい良かった。……こう言っちゃ失礼だと思うけど、仮面越しって不気味に感じてしまう。

 

「はじめまして。結縁士朗君、だね?」

 

「は、はいこちらこそ、は、はじめまして」

 

「そんなに緊張しないでいいよ。これから()()になるんだから」

 

 

最初、彼に抱いたイメージは優しそうな雰囲気のお兄さんだった。

 

「僕の名前は高嶋千紘(たかしまちひろ)、君の兄に当たる人物だ」

 

よろしく、と簡単に自己紹介をしてくれた。

 

兄、か……俺には兄弟がいなかったから、なんか不思議な感じがする。

 

「君は今日から高嶋家の養子となります。名前は高嶋(たかしま) 優士(ゆうじ)とこれから名乗ること」

 

俺の新しい名前……そっか、しばらくは結縁士朗って名乗れないのか。

そのことに少し寂しくなった。しかしいつまでもうじうじしている訳にもいかないことは分かっている。

 

「たかしま、ゆうじ……」

 

……よし!

 

気持ちの切り替えも兼ねて一度両手で顔を叩いた。急な俺の行動に一瞬だったが千紘さんは驚いていた。

 

 

「高嶋、優士です。これからよろしくお願いします!」

 

 

顔に笑顔を浮かべ、"自分の新たな名"を堂々と名乗る。

 

 

この日から高嶋優士としての新しい生活が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




それでは皆様良いお年を。
来年も小説投稿を続けて頑張りたいと思っているのでよろしくお願いします!
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