少年は勇者の味方である   作:ft.優士

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乃木さん家の園子さん、初登場です。


普通の女の子

乃木園子と高嶋優士が初めて会ったのは父親が乃木家に用があったらしく、養子に入った自分の紹介も兼ねて向かうことになった日だった。

 

 

◇◇◇

 

 

乃木家と高嶋家は昔からの付き合いなだけあり、乃木家に向かう前に何度も失礼のないようにと注意をされた。

そんなに念を入れなくてもいいのに、別に失礼なことなんてしないぞ?

 

 

 

家から車でしばらく走り、乃木家に到着した……のだが。

 

 

「────でっ、」

 

 

でかすぎんだろ!

 

 

最初に出た感想がそれだった。お屋敷? いやそれにしたって大きい、大きすぎる」。

思わず乃木さん家すげぇー!と言わなかった自分を褒めたいくらいだ。

この先の人生でこれ以上大きな家を目にすることはなさそういやないだろうと断言できる。

 

 

(中で迷ったら出られなさそう……)

 

「……ぼーっとしてないで行くぞ」

 

「あ、はい。……お、お邪魔します?」

 

 

考え事をして立ち止まっていたら義父に注意されてしまった……なんか気まずいな。沈黙の空気に浸るのは嫌なため現実逃避という名の考え事にしばらく意識を移すことにした。

 

 

今訪問している乃木家は大赦の中でも強い発言力を持つ家らしい。聞いた話では300年前に四国を救った英雄の家系の一つ……だっけ。家がすごいのもそれだけ長く継がれてきたのが関係しているのだろう。

高嶋家も高い発言力を持っているらしいが、それでも現状のトップは乃木家と上里家という家系らしい。他には白鳥、赤嶺、鷲尾、そして三ノ輪。

三ノ輪って初めて聞いた時は驚いたっけ。まあ子供の俺からしたら、家がすごいとか言われてもよくわかんないし、特に何も言われてないから気にしようがないのだが。

 

 

また乃木と上里の両家と長く関わりがあるらしいのが、伊予島家と土井家。

 

そして自分たち高嶋家と()家となっている。

 

 

最初に間違えてこおりをぐんと読んでしまっていたことは内緒である。

せめて名前だけでも覚えておきなさいと言われた。

……覚えたのは本当に家の名前だけで、その家柄とかについてはあまりよく知らないんだけど。今度機会があったら聞いてみようかな。

 

 

 

玄関を通り、数歩進むと中には庭園があり、よく手入れされているのが分かる。毎日見てるのかな……?だとしたらすごい。

 

本館に着くと乃木家に使える使用人の一人が迎えに来てくれた。

案内をしてもらっている途中に家の中を見れたのだが、

 

あの後、乃木家の当主さんがいる部屋に着いた。

やっぱ貫禄?みたいなものを感じる。しっかりした人というイメージだ。

 

「こ、こんにちは。高嶋優士です!」

 

俺が自己紹介をするとあちらも友好的な雰囲気で話しをしてくれた。紳士的な対応というものなのかな。かっこいい大人って感じがする。

元気が良くて明るい子だねと優しい笑みを浮かべながら言われたため少し照れ臭く感じてしまっていた。

 

そのあとに乃木さんは新しい学校についてどうかという質問をしてきた。

 

「楽しいです! クラスのみんなは優しいし、友達もできたのですごく!」

 

緊張しているためか変な日本語になってしまったような気がするが通じただろう……通じたよね?

俺の話を聞いた乃木さんは充実した学校生活が送れそうで良かったねと肯定してくれた。

乃木さんにも一人の娘さんがいるらしく自分と同じ神樹館に通っているらしいのだが少し他の子と感性が違っているらしく、ぼ〜っとしていることが好きなのだとか。そんな性格が仇となっているためか親しい級友がいないとのこと。話を聞いている限りでは、俺も少し変わった子なんだなぁと思った。

 

しかし、乃木さんを見ている限りでは誠実で謙虚な大人に見えるため、そんな親の子供なら悪い子ではないのだろうと思う。

それに、普通より少し変わっているくらいが面白くていいと思う。

 

もし、良かったら仲良くしてくれると嬉しいよと笑った。しかしその笑顔は先ほどとは打って変わってどこか寂し気な表情に見えた。

 

 

娘は部屋にいると思うから、場所を案内してあげてと使用人に伝えると父と一緒に奥の部屋へと向かっていった。

そういえば乃木さんに用があってきたんだっけなと今になって思い出した。

使用人さんに案内しますと言われたのでお願いしますと伝え、後をついていくことにした。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

使用人さんは案内を終えると、まだ仕事が残っているため失礼しますと頭を下げられたので、俺も案内してくれたお礼を言い一度頭を下げた。もう一度軽く頭を下げると速足で持ち場に戻っていった。

 

扉の前に向き直り、コンコンと二回ノックをする。

 

「は〜い、どうぞ〜」

 

中から聞こえてきたのはのほほんとした声だった。

なるほどマイペースというのは本当らしい。

一つの確認を終え、ドアノブをゆっくり回した。

 

「あなたは誰〜?」

 

中にいたのは本物のお嬢様と俺でも一目で分かった。そういったオーラ?というより雰囲気があった。

 

「───」

 

「ん〜? お〜い」

 

つい夢中で彼女を見てしまっていた。

なんか眠気を誘われるような優しい声だな……じゃなくて!!

いかんいかん、この子のペースに惑わされてた。マイペースだけに……つまんないですね、はい。

 

「……んん。えー、高嶋優士です。今日は君と…そう、お話しをしに来たんだ」

 

何もしないでまじまじと見るのも悪いと思い意を決して話しかける。最初の一声はいつになっても難しいのだ。

いつものように気さくにいけず言葉がところどころでつまる。

 

「あなたが今日お家に来るって言ってた高嶋さんかぁ〜…私は乃木さん家の園子で〜す。私とお話ししてくれるの?」

 

不思議そうに聞いてくる。俺、別に変なこと言ってないよな?

 

「うん、お話しじゃなくてもゲームでもいいし、何でもいいよ」

 

「わ〜い!楽しみ〜」

 

そういった彼女はとてもにこやかに笑った。

 

 

 

 

──────

 

 

 

 

それから園子とは先ほど言ったようにお話ししたりゲームしたりと色々やって楽しんでいる。

 

ただ、トランプをしてて思ったのが運良すぎ問題。勝負したんだけどスピード以外勝てなかった……なんでフラッシュを連続で出せるんだよ。20戦くらいして、俺にもフルハウスが来てくれてようやく勝ったわと舞い上がってたら、「あれ〜、すごいストレートフラッシュだあ〜」とカードを見せられた時は自分でも不思議な声が出た。

ちなみに言っておくが不正はない、カード切ったのは俺だし。俺はしてないというか仕方が分からないし、ズルして勝っても面白くないもんな。

でも少し悔しかったりもしたので、俺が一番得意なスピードで連勝しました。ふははは!大人気ないって?そんなことないだろう。これで園子とは五分五分よ。

 

ちなみに名前呼びなのは本人たっての希望だ。

 

 

「園子さん園子さん、ずっと気になってたんだけどその手に持っているものは何なんだい?」

 

猫……なのかな?かわいい。

 

「この子はね、サンチョっていうんだよ。いつも私と一緒にいるんよ〜」

 

ね〜と言いながらサンチョを抱きしめる園子。

なるほど、マイ枕?というやつか。

 

「サンチョかぁー、いいね、なんか見てるとかわいくて愛着が湧いてくる気がする」

 

サンチョにつんつんと触りながら俺が感想を述べると──

 

「そうでしょ〜!よかったねサンチョ、ゆーさん気に入ってくれたって」

 

園子がサンチョを抱きしめる。

そのため、こちらを向いているサンチョの顔が歪んでいく。

サンチョ、少しの間我慢するんだ……君のご主人様は今嬉しくて君を抱きしめているんだ。悪気はないんだ許してあげてね。

まあ、それは置いといて。

 

「ゆーさん?」

 

先程園子が言っていた言葉を繰り返す。

 

「うん。優士だからゆーさん、いいニックネームでしょ〜?」

 

微笑みながら俺に向かって言ってきた。なるほど……

 

「……もしかして気に入らなかった?」

 

愛称などで呼ばれたことがなく、新鮮な気持ちになっていたため園子に対する反応が遅れてしまっていた。

 

「ううん。そんなことないよ、今まであだ名で呼ばれたことがなかったけど……園子が呼びやすいようにしていいよ」

 

別に嫌だとかそんなことない。むしろ親しい友達同士という感じがして嬉しくなった。

 

「わーい! それじゃあこれからはゆーさんって呼ぶね」

 

園子は嬉しそうに笑っていた。うん、そんなに喜んでもらえるのならよかったよかった。

 

「はい。ゆーさん、サンチョ触らせてあげるよ〜」

 

「おっまじ? サンキュー」

 

園子からサンチョを手渡され、優しく抱いてみる。すごいやらかい触り心地で病みつきになりそうである。それに――

 

「なんかいい匂いする」

 

「匂い?」

 

二人ですんすんとサンチョを嗅ぐ。石鹸とかの匂いかな?

 

「あ〜、これ私が使っているシャンプーの匂いだぁ〜」

 

なるほど、園子の髪からサンチョに匂いが移ったってことか。

 

「なんか、サンチョ持ってると眠くなってくるなぁ……」

 

いい匂いも合わさって尚更眠くなる。

 

「そうなんよぉ〜、私も眠くなってきたかも〜……」

 

園子も眠そうだし、俺も欠伸がでてきて段々と睡魔が襲ってくる。……昨日遅くまでゲームしてたからかな。

 

枕もといサンチョが心地よいというのもあるかもしれないが、園子と一緒にいると、こう……安心するような心地よさを感じていた。

 

強い眠気が襲ってくるのがわかった。昨日寝不足なのもあり段々と眠気に抵抗するのを止めていた。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「……あれ、俺寝ちゃってた?」

 

サンチョを完全に潰して寝てしまっていた。

ふぎゅーと言う音が聞こえてきそう。

……ごめんサンチョ、悪気はないんだ。君の枕としての性能が良すぎるのが悪いんだ。言うなれば人を駄目にする枕だ。(言いません)

 

園子も机に手を伏せて眠っている。眠っている園子を見ていると、不思議とその頭を撫でたくなった。

そして気づけば自然と手を伸ばして目の前にある小さな頭を撫でていた。女の子の髪の毛って、男と違ってさらさらしてるよな……

 

すると後ろのドアからノック音と共に女性の声が聞こえてきた。

 

「園子ー入るわよ?高嶋さんがもうすぐ帰るから優士君を……」

 

ただただタイミングが悪かった。後5分、10分起きるのが早ければ園子を起こすことができたかもしれないが、気持ちよさそうに眠っている少女を誰が無理矢理起こすことができるだろうか。 

 

「ごめんなさい……出直すわね」

 

静かにドアを閉め出て行く女性。

 

「いや、あの……ってもう聞こえないよな」  

 

半ば諦めながら、園子に目を向ける。

 

「気持ちよさそうに寝てるなぁ……」

 

彼女の寝顔を見ていると、まあいいかと思ってしまう自分に苦笑してしまう。

優しく園子の頭をもう一度だけそっと撫でる。

これが保護欲って奴か……あれ庇護だっけ?

 

 

「ゆーさん」

 

 

声が聞こえた方向に目を向ける。

先程まで閉じていた園子の両目がしょぼしょぼと開いている。

 

「ん、おはよう園子。よく眠れた?」

 

俺はぐっすり寝てしまった……正直まだ少し眠い。

 

「うん」

 

俺はサンチョを貸してくれたことのお礼を伝える。使ってみて分かったがほんと、安眠効果ありそうこの枕。

 

「ねぇ、ゆーさん」

 

「なに?」

 

真っ直ぐ俺の目を見つめるも直ぐに目線を外す園子。

 

「私ってね他の子と少し違って変らしいんだぁ〜」

 

えへへと笑いながら話している。しかしその声は少し弱々しく感じる。

 

「マイペースだし、乃木家の子供ってわかるとみんな気を使って離れて行っちゃうから、こんな風に色々一緒にできたことなかったんよ……」

 

今までの自分のことを話し始めた園子からは先程までの緩い感じと違い、悲しみや辛い感情といった悲愴感が伝わってきていた。

 

「だから今日ゆーさんが一緒にいてくれて嬉しかったんだ」

 

自分と()()に接してくれる人が、乃木家の子供としてではなく、ただの()()として見てくれる友達が。

 

「ねぇゆーさん、ゆーさんはこれからも私と遊んだり、お話ししたりしてくれますか?」

 

勇気を振り絞り、俺の目をもう一度見つめる。その眼には否定されたらという不安が宿っているようにも見える。

 

園子が勇気を振り絞り言葉にして伝えてくれたのだ。ならば自分も正直な思いを彼女に答えるべきだと思った。

 

「勿論だよ」

 

何言ってるんだよと園子に伝えるときょとんとした顔になった。

 

「だって俺も今日園子と一緒にいて、すごく楽しかったもん!」

 

最初に乃木さん、園子のお父さんの話しを聞いて、少し変わった子なのかなって思ってたのは本当だ。けど、一緒にいてその考えは間違っていると思った。園子はちっともおかしくなんてない。どこにでもいる友達を大切にしようとすることができる()()()()()()なのだ。

 

……自分の目で見て、確かめて判断しなきゃダメだよな。そのことに改めて気づくことができた。

 

それに、一緒にゲームしたり、お話ししたり笑いあったり、それってもう友達ってことだよな? あれ、そう思ってたのって俺だけ?

 

「じゃあ俺の方からもお願いしていいかな?」

 

園子の前に右手を差し出し言葉を紡ぐ。

 

「乃木園子さん、俺と()()になってくれませんか?」

 

少し勢いに乗って変な感じに言ってしまったが、言いたいことは間違っていないからいいか。

その言葉を聞いた園子は俺の手を握り──

 

「うん!よろしくね。ゆーさん!」

 

今日見てきた中で一番嬉しそうな笑顔でそう答えた。

 

こちらこそ、よろしくね園子。

 

 

 

◇◇◇

 

 

帰る時間というものをすっかり忘れていた。携帯電話を見てみると父からメールがきており、『玄関で先に待っている』と1時間前にきていた。そういえば、さっきも女の人が呼びに来てたもんな。

 

園子に説明をすると私が案内するよと言ってくれたため、案内をお願いすることにした。

途中、「手を握ってもいい?」と聞かれたので、いいよと園子に伝えると喜ばれた。

 

初めて友達ができて嬉しいんだろうなぁ……俺も神樹館に来て銀が友達になってくれた時はすごい嬉しかったもんなぁと当時の心境を思い出していた。

ちなみにたどり着くまでに5、6回迷いました。

家の人でも間違えるって……どんだけ広いんだろうかこの家は。

 

 

──────

 

玄関に着くと、父と園子のお父さんと先程の女性が待っていた。

 

「お父さん〜、お母さん〜」

 

二人に繋いでいない手を振る園子。

やっぱりお母さんなんですね、はい。

なんでだろ、俺の知り合いの親は皆すごく若く見えるんだが。

少なくとも三十代後半は行ってると見越しても普通に二十代後半に見えるのだが……。

 

園子の声を聞き三人がこちらに振り返り自分達を見ると園子のお父さんとお母さんはすごく驚いた顔をしていた。おっ、養父さんも驚いている。

 

 

「私、お友達ができたよ! ねっ、ゆーさん」

 

「どうも、園子の友達一号です」

 

そう伝えると優士と園子の二人は互いの顔を見て笑った。

 

 

園子の父親と母親は驚きつつも状況を理解すると、優しい瞳で二人を見つめ、心の底から娘に友達ができたことを喜んでいた。

 

 

帰り際、園子は少し寂しそうな顔で俺を見ていた。

 

「大丈夫だよ園子。また学校で、ね」

 

その言葉を聞き、園子は安心したのか「うん!」とうなずき手を振って来たので手を振り返し、さようならと別れの挨拶を伝えると父の運転する車に乗った。

 

 

 

帰った後、夕食の時間に養父さんから話しを聞いたのか養母さんと千紘さんからも園子と何があったのかと興味あり気に聞かれたので、俺は今日あったことを話してあげることにした。

 

 

 




園子は可愛い。常識ですね、はい。
でも、サンチョもかわいくないですか? cv?知りませんねぇ。

結構すごいことをしていることに気づかない優士君……純粋って怖いですね。
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