いつの間にか女サイヤ人になっていますた   作:無名戦士

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第十話

 今まであたしは、何をしていたんだ?確か、滅茶苦茶強いリコ星人と戦ってて・・・あぁ、そうか。

 あたしは、死んだのか。死因はあの時に首を掴まれて、窒息死といったところだろうか。だけど、首を掴まれていた時、何か見たような気がしたが・・・思い出せない。

 なんだか、気持ちがいい。なんというか丁度いい湯船に、全身をつからせている様な感覚だ・・・。

 

「・・・・・・──────・・・───?」

 

「───・・・・・・───・・・」

 

 話し声が聞こえる。

 内容は聞き取れないけど、近くに誰かが居る様だ。地獄の鬼だろうか?

 

「───・・・やられたみたいだな。意識レベルも順調に回復している」

 

 ハッキリとしない意識の中、あたしはゆっくりと目を開いた。薄緑色の液体、そしてガラス窓の向こう側から差し込む光を見て、ここがあの世では無いと理解するのにさほど時間は掛からなかった。

 

 死んで、いないのかあたしは・・・。

 

 何故自分が未だに生きているのか疑問に思うが、それ以上にギネの安否が心配だった。あの時キューカはできるだけギネから離れて戦う事を心がけていたが、リコ星人の相手でそれどころではなかった。

 彼女は思い出す、あのリコ星人との戦いを鮮明に思い浮かべ奥歯を噛み鳴らす。悔しかった、己の全てをぶつけても尚、奴には到底届かなかった事に・・・。

 それと同時に、キューカは嬉しかった。いくら強くなろうとも、上には上が居るという事実を初めて実感することが出来た事に、彼女は喜んでいたのだ。

 

 もう一度、あいつと戦いたい。

 

 そんな事を考えながら、キューカは思考を巡らせる。奴ならどんな動きをするのか、奴ならどんな技を使うかなど脳内シミュレートしながら口元に笑みを浮かべた。

 

「うん、これで全ての傷は治ったな。よし、マシンのシステムを落とせ」

 

 彼女の思考を遮る形で外から声が聞えた。

 それと同時に興奮していたキューカの感情は、一気に冷めていった。折角人が気分を良くしていたのにと思いながら、小さな溜め息を吐く。

 治療の完了を知らせるブザー鳴り、メディカルマシーン内の液体が排出される。

 

「機嫌は如何かな?キューカ殿」

 

 軽いストレッチをやりながら、話しかけてた異星人を見る。大して特筆すべき事がない、ただの医者だ。出来るだけ関わりを持ちたいとは思わないが、ここは何処かくらいは聞いておかないと。

 

「此処は何処だ?」

 

「惑星ベジータのBH-6地区であります」

 

「そうか」

 

 惑星ベジータとリコ星はアタックボールで片道二週間、最低でも二週間は気を失っていた事になるのか。身体が鈍っていなければ良いが、その時は鍛え直すしかないか。

 

「それにしても、あのキューカ殿が大猿に変身しなければならない程の敵が居たとは信じられませんな」

 

「大猿・・・?」

 

 相手に聞き取れない程の小さな声で呟く。あたしは大猿に変身した覚えがない、気を失う直前はあのリコ星人に止めを刺される直前だった筈・・・あの時、何かの光を見たような覚えが・・・。

 

 ここでキューカは漸く思い出した。自分が大猿へと変身し、制御し切れない己の体を制御すべく奮闘していた事を思い出した。

 そして、大猿によって変身したキューカによってあのリコ星人が死んだ事も、思い出したのだ。

 

「キューカ殿?」

 

「着替えは何処だ」

 

「あそこに置いてありますが」

 

「そうか。もう十分だ、この部屋から出ていってくれ」

 

「ハァ、では失礼しました」

 

 戸惑いの色を見せながらもすぐさま退出した異星人を見た後、キューカは大きな溜め息を吐いた。今までに無い深い深い溜め息、その顔は落胆のそれ以外にはない。

 

「これは、戦いに勝ったとは言えんなぁ・・・」

 

 何となくではあるが、自爆を試みたセルが理解できた気がする。それほどまでに悔しかった。

 運も実力の内だと言うが、満月の光が目に入らなかったらあたしは確実に死んでいた。偶然が重なり、偶々大猿に変身しただけだ。それも、碌な制御もできないまま奴を殺した・・・。

 決してこれは勝ったとは言えない。あたしは奇跡的に生きながらえただけに過ぎない。

 

「大猿の制御、もしかしたら出来るかも・・・」

 

 記憶をたどれば微かながらも意識を保ち、かつ多少の制御ができていたと思う。孫悟空の様に、記憶が失われるような事は起きて欲しくはない。

 

「そういえば、あたしの戦闘力ってどれくらいなんだ?」

 

 サイヤ人は瀕死の状態から復活すると、戦闘力が急激に上昇することがある。その上昇率は不明なれど、リコ星での戦いで瀕死の重傷を負ったあたしの戦闘力もかなり上がっているだろう。

 現にあたしは上手くパワーのコントロールが出来ていないのだ。マシンから出てくる際に掴んだ所を見ると、ひびが入っているのが見えた。

 

「戦闘力5200、かなり増えてんじゃんあたし・・・」

 

 精々、大きくて1000前後だと思っていたが、これは嬉しい誤算だ。あのリコ星人には一歩及ばない戦闘力だが、それでも十分な値なのは間違いないだろう。

 

「ハハッ」

 

 乾いた笑いが口から漏れる。

 まだ、あたしにも成長の余地があることを改めて再確認することが出来たのだ。戦闘力や技術の向上だけではない、あたしには改善すべきことがまだまだある。

 楽しみで楽しみで仕方がなかった。自分が何処まで成長するのか、この世界に何処まで通用するのか楽しみだ。

 

「クシュン・・・その前に、着替えないとな」

 

 思い出したがあたしは裸のままで突っ立っている状態だ。いくらサイヤ人の身体は強靭でも、風邪は引くときは引くものだ。

 ・・・寒い、いくら何でも考え事に時間を掛けすぎたか。

 

 

 

「キューカッ!!」

 

 着替えていた時、扉が開くと同時にあたしの名を呼ぶ声が聞えた。

 何事かと思い、視線を向けてみればギネが必死の表情で立っていた。

 

「・・・・・・」

 

 いきなりの事だったので、キューカは固まった状態でギネを見ていた。ギネがやって来たタイミングはキューカが下を履いている最中の出来事である為、二人の間に微妙な雰囲気が漂う。

 

「ギネ」

 

「な、なに?」

 

「早く閉めてくんない?」

 

「ごめん・・・」

 

 お前はどこのラノベ主人公だと内心突っ込みながら、キューカは思う。前世の記憶を覚えていないのに対し、何故こうも無駄な知識が残っているのだと疑問に感じた。

 本来ならばここは互いの無事を喜び合う場面だが、タイミングが悪かったが故に気まずい空気が流れる。

 

「その、怪我は大丈夫だったか?」

 

「うん・・・、あたしはかすり傷だけだったから大丈夫」

 

「そうか」

 

「・・・・・・」

 

 再び沈黙が訪れる。

 先ほどとは違って空気は重く、ギネは心底申し訳なさそうな顔をしながらキューカを見つめる。キューカはギネが何か言いたそうにしている事に気が付く。しかし、ギネは言い出さなかった。まるで言いたくても言えない、そんな感じがした。

 

「えっと・・・」

 

「どうした?」

 

「あの時は、ごめん」

 

 目尻に涙を溜めながらギネは話す。

 あの時、自分は何もできずただ気絶だけしていた事。キューカが戦っているとき、自分は何もやらなかった事。まるで全て吐き出すかのように、ギネは喋った。

 

「なんだ、その事か」

 

「?」

 

 やれやれと言った表情で言うキューカに、ギネは顔を傾げる。

 

「別に気にしてはいないよあたしは」

 

「だけど・・・」

 

「だけどじゃないさ、言い方は酷くなるけど戦いにおいて最初から期待していなかったよ」

 

 キューカの言う通り、ギネの戦闘力は1000にも満たない。最初からキューカは彼女が加わってから、精々仕事の効率が良くなった程度としか考えていなかった。

 

「もしあんたも一緒に戦っていたら、確実に死んでいたよ。戦ったリコ星人はあたしよりも強かったし」

 

「うん・・・」

 

「ギネ、結果論になるけどあんたが気絶していた事が一番良い状況だ。もし何かが間違っていたら、今頃あたしかギネのどちらかがこの場に居なかったと思う。だから、そう気を病むな」

 

 慰めるようにギネの肩に手を置く。彼女の身長はあたしより低い、それ故に俯くギネの表情を確認する事はできないが、どんな顔をしているのかなんと無く分かる。

 ギネは、泣いていた。ぽたぽたと涙が床へ溢れ落ち、涙の跡が床に残る。

 

「ああ、泣くな。他のサイヤ人に見られたら笑い者だ」

 

 顔を拭えそうなタオルを見繕い、それを渡す。

 ギネはあたしが見てきたサイヤ人の中で、変な奴だと思う。会ったばかりのあたしを心配し、尚且つ容易く涙を流すサイヤ人は見た事もない。だが、悪い気はしなかった。

 




本当は後半にフリーザを出したかった・・・。しかしどう考えても表現が上手くいかず、諦めた次第であります。
さっさと惑星ベジータ破壊まで進めて地球での話を書きたいです・・・。

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