時が進むのは案外速いもので、あたしの年齢は11になった。だからと言って生活が変わったという訳ではなく、相変わらず惑星の住民を皆殺しにする仕事を続けている。
身長もかなり伸び、背だけで言えば男と同じだ。あたしの両親の身長がどれくらいなのか知らないが、低身長ではなくて本当に良かったと思う。しかし戦闘力の面でそこまで伸びておらず、戦闘力数は5500が限界だ。
恐らくこれが、今のあたしの限界なのだろう。あくまでこれは自論ではあるが、何かしらのキッカケが必要なのかもしれない。
「戦闘力のコントロールが出来れば、強くなれるかもと思ったのだけど・・・」
ここ半年、暇を見つければZ戦士達のように気のコントロールを会得しようと試行錯誤を繰り返しているものの、その道はまだ遠い。数年前に戦ったあの異星人は戦闘力のコントロールができていたが、あたしには真似出来なかった。ベジータは地球で戦った時に覚える事が出来たのだから才能の差を感じる。
「やっぱ、この手の技術は地球でなければ無理なのか?」
原作に関わる気が無いあたしからしてみれば、地球に行けないのは痛い事実であった。戦闘力のコントロール技術を体系化している星は今のところ地球しか知らない。戦闘力のコントロールが可能な人間は何らかの突然変異なのでは、という説があり、後天的に会得出来るものではないと聞く。
改めて地球はこの宇宙に於いて特異な存在なのかもしれない。ドラゴンボールのストーリーを思い出す度に感じるが、魔封波然り舞空術然り独自で編み出したあの星の人間は技術に凄まじいものがある。
「原作には影響がない程度にこっそり会得するのも有りか・・・?」
しかしそれだとリスクが大き過ぎる。キューカという存在は、この世界にとってイレギュラーな存在でしかない。いつになるか判らないが、今後この宇宙は何度も滅亡の危機を迎えるのだ。あたしが下手に地球に行けば、それこそ宇宙滅亡の原因になる可能性が十分にあった。
セルや魔人ブウと是非とも戦ってみたいものだが、あたしが原因で最悪な結末にはさせたくはない。
「やっぱ、独学でやるしかないかぁ」
溜め息混じりに呟き、天井を仰いだ。目標までの道のりは果てしなく、遠い。まるで雲を掴むような試み、独学でなんとかなるとは到底思えなかった。
しかしそれでも尚、やらなければならない。己を強くする為、更に上を目指す上でこの技術は必須とも言える。
「一からやり直すか」
アニメで見た断片的な情報を頼りに、キューカは心を無にした。己の膨大な力を感じるべく、意識を集中させた。
部屋の外から聞こえる音が煩く感じ、雑念が入る。侵略先の星で暇な時を見つけては心を無にし、修行に励んでいる。人気が無いお陰でだいぶ捗るが、成果は一向に感じられなかった。故に時折、キューカは疑問に感じるのだ。
自分には才能が無いのかと───
最近の戦闘力の伸びにしても、この修行にしても成果を感じる事が出来ない事にキューカは不安に感じ始めた。完全な独学故に、己の才能を見極める事が出来ない。
もしかしたら自分はここまでしか強くなれないのか・・・と不安で頭が一杯になり、修行どころではなくなる事が多々あった。出来る事なら今すぐ地球へ赴き、優秀な師の下で力を得たいのが彼女の本音だ。
しかし、それは出来ない。前述した通り、自身が地球に行くことによって本来の歴史が変わってしまう事を恐れたからだ。
「はぁ、別の方面で考えるしかないか・・・」
この修行に費やしていた期間、技の開発やトレーニングに使っていたのならどれ程強くなっていたのだろうか。もしかすると再び戦闘力が上がる可能性だってあったかもしれない。
キューカの苛立ちは、時間に経つにつれて募るばかりだった。今更後悔しても仕方がない、そう感じたキューカは数回の深呼吸で気分を落ち着かせた。
なにも強くなる手段は他にもある。別にZ戦士達と同じ技術に拘らなければ良い、ギニュー特戦隊でさえ戦闘力のコントロールができないのだ。
キューカは一つ吐息し、軽く伸びをした。背骨が小さな音を立て、若干体が凝っている事が分かる。
なんせ数時間の間、ずっと同じ姿勢を保っていたのだから当然だろう。幾らサイヤ人と言えども、凝るものは凝るのだ。
キューカは壁に掛けてあった時計をチラリと見た。丁度昼時の時間帯、今から飯処へ向かったとしても、混んでて時間がかかるだろう。
「なんか、作るかぁ」
元々キューカは、個人的な趣味として料理を嗜んでおり、よく自分で調理して済ませる事がある。元々ギネが作る料理に影響されて始めたものだが、彼女はかなり気に入っていた。
普段取り組むトレーニングとは違い、前世食していた食べ物を再現するのが思いの外楽しかったからだ。
飯処で出される料理は単調で、お世辞にもあまり美味いとは言えない。自分で作った方が手軽な上、美味しいという理由も相まってここ暫くは飯処には通っていない。
「さて、なにがあるかな・・・」
冷蔵庫を物色しながら、彼女は思案する。冷蔵庫には何も入っておらず、唯一残っているのが先日買ってそのままにしておいた飲み物のみ。
仕事柄買溜めをする意味は無いが、彼女からしてみれば死活問題もいいところだった。昨日の内に買い出しへ行かなかった自分を悔やんだ。
これでは調理する以前の問題だ。買い出ししようにも時間がかかり、それこそ飯処に行った方が時間的にも余裕ができる。
別に自炊だけに拘る必要はなく、帰りに夕飯の食材を買って行けばいい。
冷蔵庫の扉を閉め、キューカは小さな溜め息を吐いた。
またあの騒がしい場所に行かなければならないかと思い、機嫌が悪くなるのを自覚する。飯処に行けば奇異な目で見られるからだ。
彼女にとってそのような目で見られるのはあまりいい気がせず、何より面倒くさい事が稀に起きるからだ。自身の力に酔い痴れ、己より目立つキューカの働きが気に食わないサイヤ人が、彼女に挑む事があった。
「・・・?」
玄関をノックする音が聞こえた。
眉間に皺を寄せ、心底面倒くさいと思いながら一言どうぞと言う。
この家に滅多に来客は来ない。だが全く来ないという訳ではなく、来るのは新たな仕事を伝えに来たフリーザ軍兵士やギネくらいだ。
ギネは最近忙しいと聞く。主な仕事は反乱惑星の鎮圧や地上軍と合同の作戦に駆り出されるのが多いらしい。
「また仕事か・・・本当に人使いが荒いよまったく・・・」
そう言いながら、ガチャリと音が鳴りながら開く玄関の扉を見る。
今度はどれくらいで帰ってこれるのだろうか。キューカは再び小さな溜め息を吐いた。どれ程早く終わらせても、移動だけで一週間や一か月かかることは普通だ。アタックボールには睡眠補助機能がある為、到着までの間は寝続ける事が出来るが、どうしても暇になるときはある。
その移動の際にある時間が、どうにも好きにはなれないのだ。
「キューカっ、久しぶり!」
彼女の心情とは裏腹に明るく、数か月に聞く声が耳に入った。
思いにもよらぬ来訪者に、キューカは驚きのあまりフリーズする。やがて再起動を果たした彼女は、ギネに対し久しぶりと返した。
「どうしたんだいきなり・・・それは?」
視線を下に向けると、何やら大き目の袋があった。袋の口がギネの方向を向いている為、中身を見ることはできないが、一瞬だけ食材が見えたような気がした。
彼女の問いかけに、ギネは笑顔で答える。
「ん?これ?キューカが帰って来ているって聞いたから行くついでに買って来たんだ。今日は混んでいるって聞いたし、久し振りにあんたと作りたいからね」
「助かるよギネ、丁度冷蔵庫が空で困っていたんだ」
久しく見るギネの顔は、どこか見た事がある顔だと感じた。だが、今のキューカにとってどうでもよかった。
今や、キューカにとって彼女は親友に等しい存在だった。その事実は、変わらない。
十日ぶりの投稿、どうもここ最近モチベーションが下がり気味です。
考えた結果、しばらくの間は投稿を控えるかもしれません。所詮、休載というやつです。次回の投稿はいつになるか分かりませんが、もしかしたら数か月後になるかもしれません。
理由はモチベ低下に伴う新たな作品の投稿を検討しているのが原因です。誠に勝手ながら申し訳ありません。