キューカがこの惑星に降り立ってから早くも半年という時間が過ぎ去った。その間、キューカは幾多もの都市や村を襲撃しながら自らの力をコントロールする修行を続けていた。
半年の間で彼女は力の制御が可能となったものの、戦闘力の向上は産まれてから僅か百程度と言ったものだった。
「幾ら何でも張り合いがなさ過ぎるんだよなあ・・・」
確かに初めての惑星侵攻にうってつけの星なんだろうけど、思った以上に敵が弱過ぎる。数だけが取り柄で鬱陶しいだけだから、修行相手としてみれば満足できないよ。
しかもあの弱さを補うかのように、影からネチネチと攻撃して来るから余計にたちが悪いったらありゃしない。
そこら辺から持って来た椅子に座りながらキューカは溜息を吐いた。力のコントロールという目的が達成された今、この惑星にこれ以上留まる理由は無い。
勿論、現地住民の絶滅という本来の目的は忘れていない。しかしこのまま放って置いても絶滅は時間の問題だろう。
「真正面から戦っても良いんだけど、ちょっとした運動にしかならないから無意味なんだよなあ」
面倒くさいから工場地帯やインフラ、農場を破壊して回ってたら、急に大人しくなったか拍子抜けしてしまった。いや、まあ、当然と言っちゃ当然なんだろうけどこの世界の地球の様にズバ抜けて強い奴がいないから退屈だよまったく・・・。原住民の位置を探っても全員、地下に潜って一向に出て来る気配はないから暇だ。
食料が尽きた順に生き残った集落が消滅するので、このままのんびりしていても問題無い。原住民は圧倒的強さを持つキューカに対し、核兵器や生物兵器を使った惑星規模の焦土作戦を展開したが、それも一週間程度でそんなやり方が見られなくなってしまったのだ。
力のコントロールが可能になったのは2ヶ月前の事で、今はより繊細に制御する方法を模索している状態が続いているだけだ。偶に都市の再建を図る動きを見せたが、彼女はそれを徹底的に阻止し続け、今は虫の息だ。
「あー、最後の集落の生体反応が減り始めたな」
数の減り具合から見て差し詰め、食糧の奪い合いが起きたんだろうな。最後は自分達で争い合って滅亡するとか・・・前世の地球でも有り得そうだから笑えなさ過ぎるんだけど。
「そろそろ止めを刺しに行こうかなっ、と・・・」
キューカとしてはこのまま放って置いても構わなかったが、万が一という可能性がある。初仕事で失敗してしまった場合、彼女に良い仕事が回される可能性が低くなるかもしれないのだ。
それだけは何としてでも回避しなければならない、食って生きる為にもこの仕事はかなり重要だ。ここで失敗してしまえば、彼女が惑星になるべくダメージを与えないで侵略した努力が水の泡になってしまう。
手に持っていた缶ジュースを投げ捨てると、キューカは生き残りがいる場所へ向けて飛んで行った。
「うわぁ、これは酷い」
止めに刺しに来たは良いけど、ここまで酷いとは思わなかったな。こいつら、あたしが来たことに全然気付いていない様子だし共食いまで始めていやがる。更に壁に飛び散る紫色の血が、ある種のホラー映画を連想させるから余計に酷いぞ。
「ギギー!」
「ギギ、ギギギギギ!」
「うん、日本語でおk」
ここに来て半年経つけど、相変わらず原住民の言葉が分からない。絶滅寸前だから覚えなくても大丈夫だろうけど流石に他人とコミュニケーションをとりたい。でも同年代のサイヤ人って結構、気性が荒かったしあまり話しかけたくないなあ。
うーん、前々から思ってたけどあたしってボッチになるかもしれない。
原住民の争いを前に、キューカは自分の将来に僅かながら寒気を覚えた。自分の性格はサイヤ人と気が合わないと解っていても、流石に友人の一人や二人を欲しがるのが普通だろう。
「戻ったら誰かに話しかけよう、そうしよう」
友達になってくれそうなサイヤ人って居なそうだよなぁ。出発前にちょっと話したけど、あいつら原住民をどう痛めつけるか考えた上に良い女が居たら孕ませて殺してやると豪語してる奴も居るし、無理かもしれない。
子供だからもっと可愛らしい考えを持ってくんない?お願いだから。
ん・・・、後ろに一匹だけ原住民が居るね。あの様子じゃ、あたしが来ることにいち早く気付いていたみたいだ。
「ギギー!」
「背後から攻撃とは状況から見て大したものだけど、相手が悪かったね」
この手の攻撃は結構あるからいい加減慣れて来た。最初はモロに受けてしまったけど、サイヤ人特有の頑丈な身体のお陰で無傷で済んだけど。
とはいえ、戦闘力の差が絶望的なのに戦いに挑んで来る度胸は尊敬できるな。あたしもいつか、この原住民みたいに力量差がかけ離れている敵と戦うかもしれない。
今考えても仕方がないか、その時はその時に考えるとしよう。
「さて、ここは一気に殺った方が良いよな。せめて痛みを感じさせない様に殺さないと」
初めて来た時と状況は似ているけど、今回はあたしの存在に気付いていない様子だ。溜め撃ちの力加減は、全力の十分の一位にしてっと・・・。
「さようなら」
極太のレーザーが原住民たちを飲み込み、彼らを細胞一つ残らず消し去った。スカウターにある反応はあたし一人のみ、ようやくこの惑星の侵略が終わらせることができた。
しかし、力の加減が出来る様になったとはいえ意識しないと調整出来ないから改善しないと。戦闘中にこんな事してしまえば隙だらけだろうし、早めに改善したい。
「んー、ふぅ。やっと帰れるよ。今から戻っても早すぎて驚かれるだろうし・・・。ま、いっか」
聞いた話だと初出撃の下級戦士は基本的にニ、三年程征服に時間がかかるって聞いた事ある。あたしの戦闘力もあるけど半年は流石にやり過ぎたかも、でも戦闘の基本は出来ているから大丈夫かなぁ。
惑星ベジータに到着する前に技でも考えて置こうかな。イメージは、そうだなぁ・・・グレネードランチャー見たいに気弾が着弾と同時に爆発する奴にしておこうかな。
「戻ったら技の開発をやろっと」
あー、マジで楽しみ。思い立ったが吉日、早速帰ろうか!
◾️
キューカが惑星ベジータへの帰路に就いている頃、彼女の報告を受けた一人のサイヤ人は困惑を隠せなかった。
理由は勿論、キューカが惑星を制圧する速さだろう。なんせ、僅か半年という短い時間で原住民の抹殺を成し遂げたのだ。それが大人のサイヤ人なら話は解るが、キューカはまだ子供、しかもこれが初めての出撃なのだから困惑するのも無理はない。
「しっかし、どう上に報告しようか。これじゃ信用なんてしてくれないぞ・・・」
かの惑星の文明はそこまで大した規模ではないが、幾ら何でも速すぎた。更に報告によれば惑星そのものに対するダメージは必要最低限に抑えられており、誰もこの戦果がキューカだと信用しないだろう。仮に彼が報告を受ける立場だったのなら、信用せず虚偽の報告として受け取るだろう。そこまで彼女が挙げた戦果はとんでもないものなのだ。
キューカの出自が気になったサイヤ人は、彼女に関する情報を軽く調べる事にした。
「あのガキ、エリート戦士の両親を持っていたのか。そりゃあ、あの惑星を短時間で征服できるわな」
キューカの戦闘力は両親の遺伝子を上手く引き継いだようでかなり高めだった。それならあの時間で征服できるのは納得できた。惑星に対するダメージは偶然が重なり合った結果だろう。
「にしても何でエリート戦士のガキをわざわざ下級戦士にしたんだ?将来有望そうなのに意味が分からん」
これ以上、不要な詮索をやって下手な不信感を持たれる可能性もあるのでこれ以上な事はしないつもりだが、やはり疑問に思う所はあった。
大方育児が面倒臭いという下らない理由だろう。
「勿体無い事してんな、あのガキの親は」
キューカの戦果次第で出世するかもしれないのに、二度とないチャンスを自らの手で手放すのは頭が可笑しいのではないかと彼は疑ってしまった。
「早く報告書に纏めねーと。はぁ、めんどくせえな」
そう一人ごちりながら彼は報告書の作成に取り掛かった。ついでにキューカが挙げた戦果の確証を得る為に、付近のサイヤ人に確認させる等の要請を出しながら自分の上司をどう納得させるか頭を回転させるのであった。
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