七歳になった。
この歳になるまで十回以上の出撃を経験し、戦闘技術は相応程度には成長したとあたしは思う。格上との戦闘は片手で数える程度しか戦っていないが、死にかける事はあれどやはり強い奴と戦うのは楽しかった。
逆に力の無い人間を殺すのは以前と変わりなく、好きでは無い。だから仕事を早く終わらせる為に作業感覚でこなしていたら、フリーザ軍の連中はあたしの事を殺戮マシンと揶揄してきた。あんたらと違って、あたしは殺しを楽しんでないってのに酷い言いようだ。
今の戦闘力は3400程度、身長も150cmと両方とも成長している。ナッパの戦闘力まであと一歩、と言った所だろうか?
「さて、仕事に取り掛かるかな」
今回の仕事は普段と違い、やや特殊だ。いつもならあたし一人で侵略するのだが、今回はチームを組んでの仕事だ。なんでもこの惑星をフリーザが欲しがったのだとかで、あたし以外のサイヤ人の下級戦士が大量にこの星に来ているのだ。
なんせこの惑星は広い、とことん広い。サイヤ人一人では荷が重すぎるって言うのが、上の判断らしい。まあ、あたしはチームで連携する気なんて無いが。
「隠れているつもりだろうけど、スカウターで丸見えだ」
小さく呟き、彼女の視線の先には原住民が隠れている岩があった。油断しているキューカを奇襲で仕留めようと考えているだろうが、無謀な行為でしかない。隠れている原住民の数は三体、何れも戦闘力が1000行くか行かないか程度だ。当然ながら、彼女の敵ではない。
彼女は次の敵をスカウターで探しながら、人差し指を向けた。指の先からレーザーが撃ち出され、三つに分裂した。その後、レーザーは三体の原住民の脳天を岩ごと貫いた。
この技は彼女が「バーストレーザー」と呼んでおり、主に原住民の処理を素早く行うために作った技である。
「ふうむ、ここから10キロ先にリコ星人の集落があるようだ・・・まずはそこからやるか」
チラリと殺したばかりのリコ星人の死体を見たあと、彼女は集落がある方向へ飛んで行った。
この惑星はどうやら自然が豊からしく、木々が生い茂り森が地平線の彼方まで続いている。更に事前情報によれば地下資源が豊富で大量の希少鉱物を埋蔵しているらしい。あたしから見ればどうでもいい情報であるが、フリーザ軍に売ればかなり高く売れるだろう。しかし、注意すべきなのは戦闘力が数千を超えるリコ星人が確認されていることだ。
「彼処か」
集落の建造物は全て木造、住民の戦闘力も大きくて3程度と低い。アンテナが屋根にあるから文明レベルはそこそこと言った所か。
数は14体、気弾一発で十分だろう。
「───これで良し。さて次は・・・警戒信号、戦闘力2300の奴が近付いてきている」
彼女はここで少し思案する。今この場所に近づいて来ているリコ星人をどう対処しようかと悩んだ。
いつも通りエネルギー波で処理するという手もあるが、やはり戦いたい気持ちもあった。しかし戦闘力にものを言わせて戦う奴が多く、技術も高い敵は少ないと言うのがキューカの経験だった。故に無駄な体力を使いたく無い彼女にとって悩む所なのだ。
「爆破が聞こえたと思えば・・・集落を襲ったのはお前か!!」
飛んで来たリコ星人の男の問いに無言で彼女は頷き、それを見た男は怒りの表情で殴りかかる。
男の攻撃を躱しながら彼女は溜め息を吐いた。
「皆の敵だ!このっ、このっ!!」
所詮、この程度か。この手の台詞は始めの頃、心に来たが今ではもう聴き慣れてしまった。殺すのは今も好きじゃ無いが、それ以上に退屈してしまう。せめて、苦しまず殺してやろう。
「ぐあっ!?は、離せ!!」
「すまないな、これも仕事なんだ」
そう告げた直後、男の首を刎ねた。刎ねた男の目は、あたしを酷く憎んでいる目をしていた。
やめてくれ、そんな目であたしを見ないでくれ。あたしだってこの仕事を好きでやっていないんだ、生きる為にやっている仕事なんだ。
「はあ・・・次に行くか」
早くこの仕事を終わらせたい、と思いながら彼女はこの場から飛び去って行った。
◾️
十を超える都市と集落を壊滅させた頃、日が沈みかかっていた。
そよ風があたしの頬を撫でる。風に乗った血の匂いが好きではないが、この風は好きだ。不快になった気分を落ち着かせてくれる。
もしあたしに理解者が居てくれたのなら、どれ程いいものか・・・。しかしサイヤ人にはそんな奴は居ない、期待しても無駄なのだ。
「飯にでもするかな」
既に集めておいた薪に火を付け、風の音や火の音、自然の音をBGMに目を瞑った。静かで、心が安らぐ音。あたしが一日の中で一番の楽しみとしているのがこれだ。
そろそろ携帯食を食べようと思いながらも、意識が深淵の奥深くまで沈んで行く。
その時だった。
ピピッ
警戒信号ではなく聞き慣れない音が鳴った。反射的に起き上がったキューカは不審に感じながら、記憶を探る。
味方接近信号、何度かチームを組んで出現した事があるが、今までこんな事は一度たりとも無かった。一体何の為に?
「折角人が良い気分だったのに、迷惑な奴が来たね」
任務を無視してあたしと戦いに来た馬鹿か、それとも他の連中のどちらか・・・何にしても面倒臭い状況になる事は確かだろう。通り過ぎて欲しいと願うばかりだが、そう簡単に事が上手くいかないのは確実だ。
このまま無視しておいた方が無難か。
近付いてくるサイヤ人を記憶の片隅に置き、携帯食料をひと齧りし思案する。実の所キューカは今回の侵略を楽な勤務だと見縊っていた。理由は簡単、通常の任務とは異なり大人数を動員した作戦故に1日程度で終わるのだと予想していたのだ。しかし蓋を開けてみれば一日目は未だ半分程度しか侵略が済んでおらず、彼女が殲滅した都市はそのごく一部だ。この調子でいけば任務が終わるのは数日後の話になるだろう。
「面倒だが、強敵と当たる可能性がまだあるからいいか・・・」
小さく呟きながら視線を向ける。その視線の先には一人の女サイヤ人の姿が、こちらを見ていた。
髪がラディッツの様に長く、背はキューカより頭一つ分低い彼女はスタスタと近付いて来た。その目に敵意は感じられないが、何か怒っている様子にも見えた。
女サイヤ人を見た時、彼女は不思議に思いながらも妙な既視感に襲われた。何処かで見た目、髪、雰囲気・・・その全てが誰かに似ていたのだ。
───サイヤ人に知り合いは居ないはずなのに、変な気分だ。
そんな風に思いながら、彼女は携帯食料をもう一度齧った。
「やっと追いついた」
「・・・何?」
追いついたと妙な事を言う彼女をよく観察すると、僅かに肩で息をしているようにも見えた。この女サイヤ人の様子を見るに、急いで此処に来たのかも知れない。
「何って、あんたはあたしのパートナーでしょ、一緒に行動するのが当然でしょ?」
「パートナー?」
「え゛、あんた話聞いてなかった訳?!」
こいつの言う通り、確かにそんな話を聞いた様な気がする。チームを幾つかに分けてやろうって話だ。
確かチームメイトのサイヤ人の戦闘力は2000を超えている大人が多かった筈、つまり戦闘力が低いコイツをあたしに押し付けたと言うことになる。
「確かにそんな事言ってたね、あたしの邪魔をしなければ自由にして良いよ」
軽く手を振ったあと、キューカは最後となる携帯食料の入った袋を取り出した。
「そ、そっか。よろしくね!」
彼女が初めに抱いた印象は気が弱そうといったものだった。見るからに温厚な雰囲気はサイヤ人らしからぬものであり、何よりキューカが今まで過ごしてきた中で初めて見るタイプのサイヤ人だった。この時、彼女はこの世界に生まれて初めて他人に興味持つことになる。
「何故そこに突っ立ったままなんだ?そこに座りな」
「え?あ、うん。分かった」
言われるがままに座る女サイヤ人、それを見た彼女はますますサイヤ人なのかと疑いを持った。女の腰に視線を向けると尻尾が巻かれており、キューカがこれを現実だと認めた。
それと同時に、女サイヤ人の方向からキューといった可愛らしい音が聞こえた。ふと目を向けると、女サイヤ人は顔を茹でだこの様に顔を赤くさせ、腹を抑えていたのだ。
「携帯食料は持ってきていないのか?」
「うん」
「何故?」
「わ、忘れた」
「動物でも狩ればよかったに何故やらなかった?」
「あんたを追うのに必死で・・・」
それを聞いた彼女は手に持っていた最後の携帯食料を投げて渡した。投げ渡された女サイヤ人はいきなりの事で驚いたのか、慌ててそれをキャッチする。しかし携帯食料は手にはじかれ宙を舞い、必死に落とすまいと奮闘する女サイヤ人を見ながらキューカは僅かに笑みを漏らした。
何とか落とさず無事にキャッチする事が出来た女サイヤ人は戸惑いの目を彼女に向け、携帯食料とキューカを交互に見る。
「それでも食って待ってな」
「うん、ありがと・・・」
女サイヤ人は一言礼をを言い、食べ始める。
携帯食料一つでもサイヤ人である彼女には足りないだろう感じたキューカは近くの森へと出向き、手頃な大きさの魚を獲ってきた。
この行為にキューカは特に悪くないと感じ、魚を焼いて見せた。焼いた魚をがつがつと食べる女サイヤ人に尋ねた。
「あんた、名前は?」
「あたしの名前はギネ、さっきはありがとう」
「キューカだ、さっきはすまなかったな」
ギネという名前にあたしは違和感を感じた。昔どこかで聞いたことがある様な名前、しかしどうやっても思い出せない。あと少しで思い出せるのだが、思い出せない自分に思わず歯噛みする。
ギネはサイヤ人にしては珍しく、好戦的な人間でないと言うことは何となく判る。
「通信で聞いたけどキューカが一番仕事してるんだってね」
「そうか?」
「知らなかったのかい?他のサイヤ人はあんたと違って原住民を一人づつ殺してるんだ、キューカは一気に殺しているんだから仕事が速いのは当然だろう?」
「自分より弱い奴をいたぶって何が楽しいんだか」
何気なく、空を仰いだ。
やはり、あたしはこの仕事が嫌いだ。生きる為とはいえ、虐殺した後の虚無感は言葉で表現できない。ただただ虚しいだけで何の魅力も感じられないのだ。既に慣れたとはいえ、好きな仕事ではない。
「あたしも同じだよキューカ・・・」
「なら、早く仕事終わらせないとな」
キューカの呟きにギネは小さく頷いた。
それを見た彼女は笑みを浮かべ手を差し出し、ギネはその手を握った。この時、自分に初めて気が許せる相手が出来たと感じたのだった。
やっとギネを登場させることが出来ました。ですが今回の話も前回ほどではないものの、微妙な出来だったと思います。因みにギネとは同い年の設定です。
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