いつの間にか女サイヤ人になっていますた   作:無名戦士

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先週の土曜日にランキング入りしていた・・・
ウレシィ・・・ウレシィ・・・


第九話

 首を握る力が、徐々に強くなるのを感じた。奴は、ここであたしに止めを刺すつもりだろう。

 意識が朦朧とし、死が近付いてくるのが分かる。いつか死ぬだろうと思っていたが、今その時が来ている。奴からしたら身勝手極まりないだろうが、どれだけ覚悟していようともあたしだって死にたくはない。

 

「止めだ」

 

 漸く奴が口を開いた時、あたしの命は尽きようとしていた。意識が徐々に薄れ、ただ死を待つだけしかあたしにできる事は無い。

 抵抗しようにも力が残っておらず、目を微かに開く力だけで精一杯だった。

 

「あっ・・・がっ・・・」

 

 我ながら、身勝手な望みだというのは理解している。できる事ならもう一度、ギネと喋りたかった。

 短い期間だが、戦闘以外初めて楽しいと思える時間を過ごしたのだ。まだ、死にたくはない。

 

 その時だった。微かに開くキューカの目に、柔らかい光が差し込んだのだ。

 太陽光では無い光、人工的に発せられた光では無く自然由来の光・・・。丸い月が彼女の視界に入ったのだ。

 

「・・・ッ!!!」

 

 刹那、キューカの身体全体が脈打った。まるで身体そのものが心臓になったかの様に脈打ち始め、それを見たリコ星人は思わず首を絞める力を緩めさせ、やがてその手を首から離した。

 この時、キューカは薄れ行く意識の中で混乱していた。既に底をついていた力が、急激に湧き出てきたのだ。それと同時に強烈な破壊衝動も湧き出し、彼女を混乱させるのに十分だった。

 

───あぁ、大猿になるのか。

 

 彼女はここでやっとサイヤ人の特性を思い出した。満月の光を見た時、その光に含まれる1700万ゼノを超えるブルーツ波が己の目を通して尻尾に反応し、サイヤ人を変身させる能力がある事をキューカは思い出した。サイヤ人が大猿に変身した際の戦闘力は、通常の10倍も膨れ上がるのだ。

 

───まず、いな・・・。

 

 このまま変身してしまえば、己の理性を失ってしまう。もしそうなれば、あのリコ星人を無視して周囲を手当たり次第に破壊するだろう。今いる場所からそう遠くない場所に、ギネが気絶しているのだ。彼女を巻き込んでしまえば、重症どころの話ではなくなる。

 キューカは最後の気力を振り絞り、大猿のコントロールに力を入れた。だがその努力は虚しくも、叶う事ができず彼女の理性は破壊衝動に呑まれていった。

 

 そこからは、キューカの意識は朧げだった。まるで己の身体が別人格に乗っ取られたかの様に身体が動き出し、暴れ始める。

 勿論理性を取り戻そうとしたが、結果は変わらなかった。意識は完全に失わず、朧げな状態で大猿に変身した自分が暴れている映像を見せられている様な感覚だった。

 ただ見せつけられている状況の中、彼女は己の未熟さを恨んだ。今まで自分を散々痛め付けた相手に目も向けず、ただ暴れているだけの大猿を制御できない己を恨んだ。

 

 しかし、ただ暴れるだけでは無かった。その標的をすぐ近くに浮かんでいたリコ星人へと変わり、右の拳で奴を殴り飛ばしたのだ。殴り飛ばされたリコ星人は、幾つもの高層ビルを貫通しながら超スピードで飛ばされた。

 地面を強く蹴り、追撃する。進路上の構造物を薙ぎ倒しながら高スピードで進む大猿の姿は正しく圧巻の光景だろう。

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」

 

 咆哮を上げ、奴を地面へ殴りつける。

 地面に叩きつけられたリコ星人に対し、大猿は巨大な拳を振り落とす。そこからは大猿の一方的な攻撃が続いた。

 ほぼ瀕死の状態になったリコ星人に対し、大猿は凄まじいスピードで殴り続けたのだ。大猿の両腕はブレ、上手く見る事は出来ない。

 まるで念入りに、確実に奴の息の根を止めるかの如く過剰な攻撃を大猿は続ける。その姿はまるで、キューカの意志を反映している様にも見えた。

 

 大猿が攻撃の手を止めた頃、かつてリコ星人だったものがそこにあった。既に身体の原型を留めておらず、ぺしゃんこになるまで打撃を加えた続けた事になる。

 大猿の勝利の咆哮が、遥か遠くまで鳴り響いた。

 

◾️

 

 身体に乗り掛かった瓦礫を押し除け、ギネはその小さな身体を起き上がらせた。

 後頭部に痛みが走る。この時、ギネは漸く自分が今まで気を失っていた事に気がついた。日の光がある事から一晩中気を失っていたのだろう、と推測を立てながら辺りを見渡す。

 一面の廃墟と化した都市と戦闘が発生した痕跡、ここでギネは気を失った原因が敵の襲撃による物と理解した。

 

「キューカ応答して!!キューカッ!!」

 

 スカウターに先日知り合ったばかりの少女の名を叫ぶ。しかし、返事は来なかった。再びキューカとの通信を試みるも、結果は変わらず返事は来ない。

 

「まさか・・・」

 

 あり得ない・・・と思いつつも、ギネは最悪の事態を思い浮かべる。キューカの戦闘力は同年代の下級戦士の中で突出しており、技術もかなりあるという事も聞いている。故に彼女が負けた事が信じられなかった。

 

「戦闘でスカウターが壊れたのかも」

 

 何故そんな簡単な事に気がつかなかったのだろう、と思いながらスカウターでキューカの戦闘力を探す。

 しかし、反応は無い。彼女にセットしてあった反応も途切れていたのだ。何かの間違いだと思い、何度か同じ事をするも結果は変わらなかった。

 

「嘘・・・」

 

 彼女が死んだとは考え難い、しかしそれでもキューカが負けたかもしれないのだ。あのキューカが、戦いでは既にベテランの域に達している彼女が負ける姿は想像できない。だから、まだ生きているだろう。ギネはあるのかも判らない希望に縋りながら、キューカの捜索に入った。

 数々の戦闘の痕跡がその戦いを物語る。どんな敵なのか分からないが、何よりキューカの安全が一番大事だった。

 

「お願い、無事でいてキューカ・・・」

 

 ギネにとって、キューカは初めて出来た友人だった。彼女はサイヤ人の中で珍しく穏やかな性格を持ち、戦闘力は低い。それ故によく他のサイヤ人からは下に見られることが多々あった。そこへ更にギネが殺しを嫌う事で拍車がかかる。

 時には堂々と皮肉を言われ、役立たずと言われる事もあった。しかし、キューカは違った。

 初めてキューカを見たとき、彼女はとても冷たい目をしていたのが印象に残った。まるで何もかも興味がないその目と仕草は、サイヤ人の中でも異質そのものだった。

 だが、実際に話してみればギネが抱いていたイメージとは逆に性格は明るく、そして話しやすかった事に驚いた。なによりも驚いたのが、キューカはサイヤ人特有の好戦的な性格であるにも関わらず、格下を無暗に痛めつける行為を好いていないことだった。

 強さだけを求め、必要以上の殺傷を好まないキューカこそがサイヤ人の本当の在り方なのかもしれない。それが、キューカに対するギネの評価であった。

 

 

 

 

 

 キューカの捜索に乗り出してから約数十分、戦闘の痕跡を辿って彼女を探している内にギネはあることに気が付いた。ある地点から、戦闘の痕跡の規模がやけに大きくなっているのだ。

 しかし、それは戦闘の痕跡というより暴れた痕跡と表現をした方が正しいのかも知れない。それほどまでに、建物の瓦礫の量が増えていたのだ。

 ギネは疑問に思いながらも、その痕跡を辿って行った。痕跡は都市の郊外まで続いており、まるで誘導していたと思える程の綺麗な痕跡の直線があった。

 

「・・・ッ、キューカ!!」

 

 ここに来て、ようやくスカウターでキューカの反応をとらえる事に成功した。しかしキューカの戦闘力値は余りにも低い、スカウターに表示されている数値は10にも満たない。

 ギネは倒れているキューカを見つけると、急いで駆け寄って彼女の容態を確認する。

 

「酷い怪我だ・・・」

 

 キューカの怪我はあまりにも酷かった。傷が彼女の至る所にあり、傷がない所を探す方が難しい。その上、外傷だけではなく体内の方も酷く傷付いているのがすぐに分かる。

 すぐさま彼女をメディカルマシンへ入れなければ命に関わるほどだった。

 

「アタックボールの制御コントローラは───」

 

 手慣れた仕草で戦闘ジャケットのポケットを弄る。ギネは戦闘は苦手だが、救命活動はそれなりに得意な方だと自負しており、他のサイヤ人が致命傷を負った際、積極的に取り組んでいたのだ。

 

「───あった!!」

 

 キューカのダメージを考えれば、制御コントローラも壊れていても可笑しくはなかった。しかし奇跡的にコントローラは壊れておらず、ギネは早速アタックボールを呼び出すコマンドを送信する。

 これで一先ずは大丈夫だろう。心配ではあるがサイヤ人の生命力は宇宙でもトップクラス、戦闘力が一桁有ればまだ余裕はある筈だ。

 

「ふぅ、それにしてもキューカが戦った敵ってどんな奴だったんだろう?」

 

 幾ら戦闘が苦手なギネでも彼女もサイヤ人、少なからずどんな敵だったのか程度には興味が湧いた。実際に戦うかは別として、他のサイヤ人達からは鉄仮面と揶揄された者がこんな状態になるまで追い詰められたのだ。これで気にならなくては可笑しいだろう。

 

「・・・ん?」

 

 気絶しているキューカを見ていた時、彼女はある違和感に気が付いた。

 

「キューカの戦闘ジャケットのサイズが合ってない?」

 

 サイズが合っていないのだ。本来、戦闘員に支給される戦闘ジャケットは本人に合ったサイズが支給され、あそこまでブカブカになるサイズは支給されない決まりだ。

 いきなりサイズが変わる事なんてあり得ないが、巨大化して元に戻ったりしな、い、と・・・。

 

「キューカ、大猿になったのかぁ・・・」

 

 ギネはここでやっと納得がついた。ここに来るまであった破壊痕、それが大猿が原因だったのなら納得がいく。

 ギネ自身は大猿に変身した事は無いが、大猿になった時の戦闘力は10倍以上になると聞いている。それで彼女は敵を倒す事が出来たのでだろう。

 だが、キューカと初めて会った日の夜、彼女は強い敵と戦うのが好きだと聞いていたので彼女はあまり勝った気になれないのかもしれない。そう考えながら、ギネは空を仰いだ。




自分で書いた感想ですが、考えていたものよりだいぶ違かったので不完全燃焼気味です。それ以上にかなり書き直しをやったので、自分で見てもこれで良いのかすら分からなくなってしまいました。
個人的には読めなくは無いと思いますが、皆さんはどうでしょうか?

感想、評価をよろしくお願いします!
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