アズールレーンPhilein   作:瀧本さん

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ジョジョ見ながら書いてたらすごい引っ張られた


3話「言葉は力となる。」

それは意外にも、あっさりとした目覚めだった。

清々しい、とは違うのだろう。何だか空気がもっさりしている、というのか。

左手で、目を擦りそうになって、寸前で気がついた。

...機械質な左の義手を見つめながら、改めて右手で目をこする。

靄のかかっていた意識が晴れていく。

「何やってんだ、ワタシ。」

不定の狂気か何かか。セイレーンとしてありえない行動を取っていた。

KAN-SEN仕様の身体とは...ここまで厄介か。何か、こう...KAN-SENの身体には、人間と親しく接するような仕組みでもあるのだろうか。

いや、ないだろうが。

ともかく、人間に関わり過ぎたようだ。

隣には、れんが寝ている。...こいつはワタシを膝まくらさせたまま、器用に寝ていたようだ。

...こいつを始末して、いや、始末しなくても、このまま静かに出ていけば、きっとそれで、こいつもワタシも元通りだろう。

...この、コタツからは、どうもで難い。しかし、そうこうしていたら、レンが目を覚ましてしまう。

早く、立ち去らないと。

意を決して、レンを起こさないように膝から下ろして立ち上がろうとした瞬間__

「....ん、起きたか。どうだ体調は。」

「...ああ、最高。」

「そうか。コタツ入ってろ。...インスタントだが、みそ汁がある。」

そう言って、彼は立ち上がり、ワタシの肩を叩いてふらふらと、台所へ向かった。

ワタシは、言われるままに座るしかない。

アイツは、そそくさと、慣れた手つきでエプロンを着て、やかんに水を入れる。

「なぁ、レン。」

コタツからその後ろ姿に声をかける。

「...ん、どうした。」

少し遅れて、振り返らずに声だけで返事が返ってきた。

反応も鈍い。少し覇気も足りないように思える。

「.......。」

ワタシは心配になって、台所のレンのとこまで行き、肩を叩く。

「ん?」

こちらへ見せた顔が赤い。もしかして。

「...風邪引いてるんじゃあないか?」

「あ....?確かに、意識がはっきりしない...が、」

 

ぐらり、と体重を放り、崩れる蓮。それをどうにかピュリファイアーが支えた。

 

「....ぁあ、すまん。」

ピュリファイアーが、蓮を引きずってコタツまで運ぶ。

「インスタントの味噌汁くらい作る体力はあると思ってたんだがな、それすら...なかったとは...」

「風邪って大変だな。ワタシ治ってよかったわ。」

そう言って彼女は蓮からエプロンを剥ぎ取る。

「...付け方、こうか?」

「なんで付けるんだ、」

うーん、こうか?と苦戦しながらピュリファイアーはどうにかしてエプロンを着けた。

「台所にいる時はコレつけてなきゃいけないんだろ?」

「そういう...訳じゃあないんだけどな。」

頭痛が辛いのか、それとも二日酔いの倦怠感に苛まれたのか、そのままこたつに入って寝込んでしまう。

「...お湯を沸かして、そこに放ってあるインスタントの味噌汁を入れるんだ。」

「コレね。」

エプロンを付けた彼女は、蓮の指示を受けて水の入ったヤカンを火にかける。

しばらくして、しゅんしゅん、とお湯の沸いた音がする。

インスタントの封を切って、それをお椀に入れ、お湯を注ぎ、味噌汁の完成だ。

そのお椀を2つ持って、ピュリファイアーが戻ってきた。

「お前...昨日と別人じゃァないか?」

「...まぁ。」

ことり、ことり、と2つをこたつの机の上に置く。

「あ、ハシが無いね。」

「...本っ当に別人じゃねぇか。」

台所へ行って箸を2人分引っ掴んで戻ってくる。

「接続したんだ。上と。これくらいのことならデータを引っ張ってこれば出来るね。」

「接続...?上...?何だ、それ。」

いただきます、と手を合わせてから、蓮はそれについて聞く。

同じく、イタダキマス、とピュリファイアーも手を合わせてから、それに答えた。

「セイレーンのデータベースに接続したってことね。この地球上のあらゆるデータがそこにある。お湯を沸かすのくらいわけないね。」

「昨日は、接続してなかったのか?」

「...風邪引いてたから。モヤがかかってて、そんな感じ。接続出来なかったんだ。多分。思考も変だったし。」

そう答えて、味噌汁をすする。

(...嘘ついてるようには見えねぇな。昨日は本当に風邪引いてて調子が悪かったんだろうな。)

俺も風邪引いててちゃ世話ないが、と心に付け加える蓮。

「おいしいね、この味噌汁っての。」

「ちょっと、悔しいな。...はぁ、お前にインスタントの味噌汁で『おいしい』って言わせちまうのが...」

実に悔しそうに言ってやる蓮だが、やはり、酒と風邪疲れがかなりきているのか、今はコタツから出ることができないようだ。

「昼まで休めば....まぁ、夕飯は作れるかもな。」

「そうか。寝ててくれよな夕飯作るな。」

それ以外、特に何を言うでもなく、味噌汁を飲み終え、ことり、とお椀を置き、手を合わせる。

そんなピュリファイアーに、また蓮は尋ねる。

「なぁ...、お前、今こんなことしてていいのかよ?仮にもお前はセイレーンだろう?...俺を、殺す予定があるから、セイレーンの、上に接続した、とか、そういう情報を吐いたのか?」

蓮は、今度はいたって真面目だ。真剣にピュリファイアーに問いかける。

「俺を...殺すんじゃあないのか?俺はそう覚悟してた。」

この質問、質問をしたことによって殺される、ということもある。

賢いタイミングでの質問ではなかった。

が、しかし。ピュリファイアーが彼に敵意を向けることは無かった。

「...なんでだ。俺より、早く起きてたろ。殺せたんじゃあないのか。」

「出ていこうとしたさ、でも...」

「でも?」

「なんか、放っておけなかったんだ。」

 

「は?」

「いや、...忘れてくれよ。」

言っておいて、恥ずかしい。

だって、まるで「コイツ」みたいな理由じゃあないか。

 

 

 

 

 

「指揮官、休んでるのです?」

「綾波か。おかえり。私は大丈夫。それより、綾波こそだよ。」

「綾波は大丈夫なのです。」

椅子に腰かけ、ぱらり、ぱらり、と書類をめくっているのはツバメ指揮官だ。

「そうか...でも、休んでいてね?また、夜中にはピュリファイアー追撃戦を再開する。...すまないね。大きな仕事の前なのに。」

「いえ、ピュリファイアーを逃がしたのは綾波だし、その大きな仕事も、あと15日間猶予があるのです。」

「...そう?ならいいんだけれど。」

そう言って、手にしていた書類を、机の上へ置く。

執務室は和よりも、一昔前に重桜の国へ入ってきた洋をイメージして設計されている。ただ、所々に残された和が洋との微妙なハーモニーを奏でている。

重要なのは、「微妙な」ってところだ。決して綺麗な調和ではない。

お互いがお互い、主張しすぎている。

窓の外には、雨に打たれる大樹と港町が見える。霞っぽく、視界は良くない。

そんな景色を一旦目にした後、ツバメは、また綾波を、その緑色の目で観察する。

「ん...綾波、そんなに濡れてないね。雨が降ってたと思うのだけれど。」

「それは、帰る途中で、蓮技師に雨合羽を貰ったのです。お陰で雨に濡れずに済んだのです。」

蓮技師が、風邪を引いてないといいですけど、という付け加える綾波だった。

「そうか...、蓮技師、と言うと神奈 蓮の事だね〜...彼は今確か、休暇を取ってたんだっけ...?」

「ん?なにかあったのです?」

「いや、何でもない。...うん。報告ご苦労さま。戻って休んでて。」

「では、失礼します、なのです。」

ぺこり、とお辞儀をして、執務室を出てゆく綾波。

 

ばたん、と扉が閉まった。

 

 

再び、机の上の書類に目を落とすツバメ。

〔報告書〕

隅には「あと青葉の気になった報告付き」と書き足されている。

 

「___今ので、はっきりしたね?青葉。」

「そうだね〜、綾波の"報告"でね。」

がちゃり、と、閉じたはずの扉が開いた。

外に居たのは、重桜の重巡戦艦、青葉だ。

「今日、明石から『試作義手が1本なくなったニャ、あとみかんの差し入れがたくさんあったニャ。青葉も食べるニャ?』ってのもある。普通、開発部の場所には開発部の人間しか入れないし、ましてや、試作段階の義手を持ち出す、なんてことはできる人間が限られるね。だいぶ人物像が絞れるね。こっちは。それに、町中の人達にも、ピュリファイアー...に似た姿の少女の目撃は無い。つまり、海に『逃げてもいない』って事だね。ただ、街に隠れてたんじゃあいつかは街の人にも、もちろん、私の目も含めてね。」

そう、追撃はしない。市民に恐怖を与えてはならない。基本的に武器を市民の前で出してはならない。

ただ、"探す"ことはできる。探すだけなら、ただ人を探すだけなら、まして「街の新聞記者」としての顔がある青葉が探せば、何も、市民が恐怖を抱くことは無い。

「つまり、誰かが、かくまっている。で、市民がかくまっているのかもしれないけけど...」

「その義手は、"左手"だったかな?」

「うん、アタリだよツバメ。」

「...考えたくないね。でも当たってみる価値はあるね。」

そう、神奈 蓮が、敵であるピュリファイアーをかくまっている。という可能性。

「...綾波を向かわせるの?」

「いや、神奈 蓮とは仲が良いからね。綾波は。きっと対峙したら斬れないよ。彼女は...別のところを探索させる。」

そう言って、ツバメは、壁に立てかけてあった、刀を手に取った。

「もし、そうだったとしたら。上司として、責任を持って、消す。」

 

 

 

そして、夕刻になったころ。

雨は一時の間止み、見事な夕日が街を照らしていた。

「おおー、雨やんだねー。」

「そうだな。」

「...って、何立ち上がって晩御飯作ろうとしてんのさ!?風邪は!?熱あったよね!?」

蓮は、しれっと立ち上がり、台所に立っていた。

「あ〜...まぁ、半日寝てればな。すまんがピュリファイアー、洗濯物、部屋干ししてあるからそれ取ってたたんでくれねェか?」

「これか。」

ピュリファイアーは、部屋の隅にかけられているハンガー群を見やる。

そこには、もちろんピュリファイアーが元着ていた、セーラー服もある。

彼女はそのセーラー服をひっつかみ、しばらくそれを見つめる。

「ぅうおい!!いきなり脱ぐな!!」

「私の服じゃんか、何も文句ないだろ?」

一瞬、背中を晒し、そのセーラー服に着替えた。

そうしてから、また、エプロンをつけ直して、台所にかけて行った。

「レンは、休んでて。料理は私がやろう。」

「いや、俺がやる。今日1日くたばってたろ、ずっとやらせる訳にいくかよ。」

「くたばってて困ったことなかったろ?」

「うるさいなァとにかく俺がやるんだって............

 

こうして結局、台所に2人が立ったまま今日の夕飯が出来上がった。

一汁三菜、という、なんとも重桜らしい簡素な夕飯になった。

「いただきます」の声と同時に2人は手を合わせる。

「これが本当の味噌汁かぁ〜」

「そうだ、違うだろう?なんなら味噌にもざっくり3種類ある。」

「これは...何味噌?」

「白味噌。」

「ふーん。」

「白味噌のが味が柔らかいんだ。ここの地域では...そんなに使う味噌の偏りはないだろう。だが、少し北の方へゆくと、赤味噌を使ってるところもある。」

「...ワタシ、赤味噌も食べてみたいな。」

「データベースに味が載ってるんじゃねぇのか?」

「データは味しないだろう。...レン、いつか食べられないかな、白味噌。」

「いつかな。...いや、お前はいつまでココにいるつもりなんだ。」

 

 

ごちそうさまでした、と2人分の声がした。

蓮の様子を見る限り、すっかり、熱は引いたようだ。

もういきなりふらついて倒れるようなことは無いだろう。

「...ねぇ、重桜の雨ってこんなに長く続くの?」

「ああ。この時期はな。特に。」

そう言って、街のそんなに灯っていない明かりを見つめる。

もう夜だ。遅いわけではないが、早ければ寝る人もいる時間だろう。

「先に、シャワー使ってろ。俺は後でいい。」

「あれ?重桜の国はみんな風呂や温泉に入ってるって聞いてるけど?」

「...そのデータベースあてにならんな。全員が全員、毎日風呂に入る訳じゃあねェよ。ほら、先に入った入った。」

「...」

「...なんだよ。そんな嫌かよ。てかどこに嫌な要素があるんd「静かに。」

急にピュリファイアーが、人差し指を立てて、蓮を黙らせる。

「ワタシとしてた事が、レーダーを起動するの忘れてたよ。たった今起動した。」

「じゃあなんで俺に静かにするように言うんだ。レーダーあるなら...」

「よく耳を澄ませろ、レン。」

 

「動くのを探知するんだったら、レーダーより音の方が早いよ。」

 

バガンッ!という音がして、乱雑にドアが開いた。

と、認識したと同時に黒い何かが、高速で寄ってきた。

完全に斬られる、と思った蓮。

何故、相手の得物が「刀」とわかったかがわからないままだが、とにかく、「斬られる」と認識したのだ。

が、実際に斬られることは無かった。

代わりに、鉄と鉄が削り合うような音がこだまする。

「まさか私より先にレンとはね〜.........ッと!!」

今度は空を斬る音がして、その黒い衣を纏った何者かは、飛んでピュリファイアーの斬撃を回避した。

「どう?重桜の国の伝統的な武器、カタナをナノマシンで再現してみたんだよ。切れ味はどうかな〜?」

ピュリファイアーは、迎撃を果たした相手に向けて喋りかける。

「...セイレーン風情が、図に乗るな。」

「お、おい、その声はッ.....!!!アンタは...!」

 

「しかし、本当にセイレーン如きを匿っているとは信じたくなかったよ、神奈 蓮、」

「あ、アンタはツバメ指揮官!?」

黒い衣に身を包んでいた、顔を見れば、頭部には、龍の角がはっきりと見える。見間違えようがない。

「あー、重桜の指揮官かァ〜。まさか直々に出向くとはね、これは中々。」

「黙れ、セイレーン。私は、貴様と、この裏切り者を殺しに来たんだ。」

指揮官は、女性とは思えないほどドスの効かせた声を発する。

「ツバメ指揮官!!止めろ!!攻撃を止めるんだ!!コイツは悪いやつなんかじゃあ」

「黙れ、裏切り者!!貴様も、このセイレーンを斬った後に貴様も地獄に送ってやる!!」

そう言って、刀を持ってツバメは高速でピュリファイアーへ突撃する。

刀が、狭い部屋を舞い、お互いの剣戟を音と火花へ変換させてゆく。

ツバメの右の上段を、今度は受けずに、紙一重で躱す。彼女もお反撃の突きを、ツバメは軽く首を捻るだけで躱す。

躱したときの重心移動を使いツバメは回し蹴りを放つ、応じて、ピュリファイアーも回し蹴りを放つが...

「ちィっ!!」

ピュリファイアーの蹴りは、いとも簡単にパワー負けして、その身体を勢いよく食器棚にぶつける。

ピュリファイアーは、すぐに体勢を建て直し、飛びながら、横一線に薙ぎ払おうとする。が、

「何ィ!?」

「せぇいッ!!」

その斬撃を彼女は刀で受け止め、それを力のまま元の食器棚にはじき返す。

「...」

その眼光は、龍の如く、黄色く輝く。

「つ、強くなったないきなり....?!」

「セイ、レーン....!!!」

背からは、龍の翼が現れ、角は、先よりも伸びている。

ピュリファイアーは、衝撃が身体に回っているのか、まだ、体制を崩したままだった。

そこに、1歩1歩、ジリジリと歩み寄ってゆくツバメ。

(こいつ、悪夢で見た黒いのとそっくりじゃん...?)

悪夢がフラッシュバックして、目の前のツバメと、黒き者がタブる。

「...!!」

「そこを退け、神奈 蓮!!!」

蓮は、指揮官との間に割って入る。

なんの武装も無い蓮が、ツバメの前に出て、どうにかなるものでは無い。

だが、両手を広げて、蓮は、依然、ツバメの前に立ち塞がる。

「退け...!退かねば斬る....!!」

「断る!!」

「貴様....!!!それでも重桜の人間か!それは、それは...!!」

「セイレーンだろ!!わかってる!!」

目の前の異形のようなツバメに、蓮は怒鳴る。

しかし、目の前のツバメも退かない。

「そいつはセイレーンだ!!人の命を脅かすような、いいや、違う!!そいつは"事実"として、人間を殺している!!ここで斬り捨てるべきだ!」

「....」

そう言って、刀を突きつけるツバメ。

だが、その突きつけられた刀を、蓮は右手でゆっくりそれを押さえる。

「...テメェ、誰だ?」

「何を言っているんだ?」

「誰だってんだよ、お前はよ。一人称は同じ、刀も、同じだ。」

 

「だがな...俺の知ってるアンタは、そんな焦って敵を殺すような奴じゃあ無いだろ。ちゃんと調査をして、綿密に計画を立てて、それで、実行だ。」

 

「今のアンタみてぇに、"力"任せに刀を振るうような人物じゃあない。人によってその性格を変えるような人では無かった。」

もう一度、だが、確信を持って尋ねる。

「アンタは、誰だ?」

 

「...そいつは、」

ぼそり、と呟く。小さく、聞き取れない程に。

だが...その感情は、爆発する。

「そいつは、人間じゃあないんだ!!!私の、母さんと、父さんを殺した、そいつは....!!コイツはセイレーンだ!!人じゃない!!!私は、そいつを殺さなくては」

「こいつは、「人」なんだよ!!俺よりも、お前よりも!!よっぽど!「人」なんだよ!!」

そうだ。昨日と、今日と、たった2日。たった2日しか過ごしていないけれど、コイツはタダの好奇心旺盛のバカな少女にしか、見えない。

KAN-SEN達と変わらない。人と変わらない。

 

こいつはたくさんの人を殺めてきただろう。

だが、重桜のKAN-SEN達だって、人を殺めるだろう。

 

 

じゃあ、こいつらは、何も変わらない。

KAN-SEN達と、何も変わらない。

 

だが、その言葉がトリガーとなった。

目の前のツバメは、たった今、蓮を斬り殺さんと大きく刀を振りかぶった。

 

万事休すか、と思われた。

 

 

「アツいじゃん。」

 

「ワタシのこと、そんな風に言ってくれるなんてさ。」

 

「これが、感情ね。"アツい"って気持ちかァ!!!」

 

そう。トリガーとなった。

ツバメと同時に。

ピュリファイアーの。

鉄と鉄の叩き合う音。

「き...さ、ま.....!!!」

「ピュリファイアー!?」

彼女は、ツバメからの一太刀を完全に受け止めた。

「お返しッ!!」

ピュリファイアーは、その刀を弾き、右の拳でツバメを殴りつける。

ツバメの身体は、いとも簡単に後方へ吹っ飛ぶ。そのまま向こう側の壁へ身を叩きつける。

「行け、レン!!」

「そんな、お前、自分を犠牲に...」

「違うっ!あるだろ!!ワタシとレンで、2人で逃げられる"方法"を、レンは持ってるでしょ!?」

「....っ!!」

蓮は、ピュリファイアーの言葉に、あることに気付かされ、慌ただしくドアの方へ駆けて行った。

「...蓮を...逃がしたのか....?、セイレーンである貴様が....!?」

「違うね、マヌケ。さ、第2ラウンドだ。」

「黙れ、稚魚がッ!!」

ツバメは、そのパワーを持ってまた突貫攻撃を行う。

ピュリファイアーは、それに合わせ、剣を空に放った。彼女自身は地面を転がり、斬撃を回避する。

斬撃が空を斬る間に、中に放った剣はバラバラになって、塵の塊のようになってピュリファイアーに戻ってゆく。

そして、それは形を変え、だんだんと拳銃を型どってゆく。

「ナノマシンによる作成の光弾拳銃ってとこかな?まぁ、普通の艤装と何も変わらないね。コンパクトだけど。」

「ちっ!!」

ツバメは、後ろに回避したピュリファイアーに追撃を放つべく振り返るが、ピュリファイアーは慌てなかった。ただ、冷静に、右手で、銃を4発打ち込んだ。この至近距離からの4発のカウンター。常人なら躱すこともできまい。まさに必殺の一手だろう。

だが、まさに、ツバメは常人ではなかった。

放たれた4発の光弾を全て、その刀で打ち払ってみせたのだ。

このカウンターは、ツバメを殺すに至らなかった。

「カウンター読みカウンターは、もうお腹いっぱいなんだよッ!!」

「!?」

右の拳銃。ナノマシンで象られた刀が、たかが、小さい拳銃1本だけに変わるだろうか。いや、違う。左手には短刀が握られている。

拳銃と短刀を同時に作り、それを左手に隠し持っていたのだ。

刀の間合いは確かに広い。より範囲の狭いナイフは不利だろう。だが、ある一定の条件下で、ナイフが優位に立つ瞬間がある。

それは、相手が、次の行動を起こそうとした瞬間だ。

ピュリファイアーは、ツバメとの間合いを詰め、それをゼロにする。

「もらった!!」

そして、ナイフを突き立てた。

 

 

「.......」

「ぁ....??」

しかし、ツバメは倒れなかった。正しくは『この一撃では、このナイフでは、ツバメを殺すに至らなかった』だ。

確かにナイフはツバメの胸元に突き刺さっていた。だが、それはあまりにも浅かった。龍の鱗を発現させたツバメの胸を突き刺すにはあまりにも、浅かったのだ。

ツバメは、そのまま、左の殴打で、ピュリファイアーを殴り飛ばす。

彼女はそのままガラスを突き破り、身をバルコニーへ投げ出した。

 

 

 

(ピュリファイアーは知ってたのか!?いや、もしかしたら、俺が帰ってきたときにエンジン音を聞いていたのかもしれない!!だが!!)

「良いアイデアだぜ!!」

蓮は、ピュリファイアーの作った隙に、玄関から飛び出し、ヘルメットをひっつかみながら、駐車場に置いてあるバイクの元へ走っていた。

「大丈夫だ!!ガソリンもしばらくもつ!!」

燃料の残量を確認し、バイクへ跨る。

「どこに逃げるか、まだわかるもんじゃあないが...」

雨ざらしの、夜中に、バイクなんて乗るもんじゃあない。

だが、乗らねば、ピュリファイアーが死ぬ。

「行くしかねェ!!」

 

 

「はは...まさか、ねぇ。」

ピュリファイアーは、遠隔操作で、ツバメの胸元に突き刺さったままのナイフを、バラバラに分解して、ナノマシンとして回収した。

「無駄だ。奇襲には驚かされたが、次は無い。」

ゆっくりと、刀を持って歩み寄るツバメ。

なんとか立ち上がり、構えるピュリファイアー。

「残念だけど、死ぬわけにはいかないんだよね。」

「ほう、スペアボディのあるセイレーンが、よく言う。」

「いやぁ...色々事情が違うからね。」

じり、とピュリファイアーは少し後ずさる。

「逃がさんッ!!」

と、上からの振り下ろしを室内から振るうツバメ。これでは跳躍回避は出来ないだろう。

「だが、下ならどうかな!?」

「何!?」

ナノマシンは、今、姿を変え、剣となり、足場のバルコニーを砕いた。

届くはずだった斬撃は躱され、ピュリファイアーの身体は、1階に落下してゆく。

「そして、ワタシの予想が正しければ....!!」

近づいてくるエンジン音、間違いは無い。

「うぉおおおおああああ!!乗れクソッタレぇぇえええ!!!」

蓮だ。バイクに乗り、ブレーキ等知らぬスピードで突っ込んでくる。

「最っ高!!」

ピュリファイアーは、それに飛び乗る。

「ぃぃぃぃいいいいいやっっほおおおおおう!!!」

「ちゃんと掴まれ!!お前のヘルメットねェんだから!!」

「飛ばせ飛ばせ〜!!捕まるぞ〜!!」

 

 

 

「逃がし...た、逃がしたのか....この...私、が....」

暗い部屋で、刀を手放す龍。崩れ落ちる。

「あ〜...まぁ、随分派手にやったね。」

しかし、その龍の眼光は霞んでいる。朦朧とした視界に捉えたその者の名前を口にする。

「青葉、か...?」

「うん、上手くやるよ。情報関係は私の仕事だからね。とりあえず、戻ろうか、ツバメ...じゃあなかった。」

「ツバキ指揮官。」

 

 

 

 

「雨かぁ....」

エンジン音が、ずっと鳴り響く。もう、見慣れた街は遠い。

「だから、掴まってろよ。」

「いや、そんなんじゃ落ちないって」

「寒いだろ。風邪引く。くっついてろ。」

「...ちっ。」

ヘルメットのくぐもった返答に、ピュリファイアーは従い、ゆっくり腕を回して、蓮に掴まる。

ほのかな暖かさが、2人の間で共有される。

(...ひとまず、しばらくこのままで)

だんだん、安心して思考回路が鈍くなる。

(このまま...少し寝ても)

「寝るなおい、落ちるぞ。」

「なんでバレたんだ!?」

 

 

 

雨はまだ降っている。降り続いている。まだしばらくは止まないだろう。




ピュリファイアー:ナノマシンを自在に操り、戦う女の子。可愛いですね(?)ナノマシンにかかればどんな武器もお手の物だが、綾波に斬られているので、およそ6割程度の出力と機能しか持たない。殴ったり殴られたりしてますが、完全にジョルノ・ジョバァーナが悪い。
神奈蓮:こいつ風邪引きすぎじゃないか?バイクに雨ざらしの状態で乗るなよ。ちなみに戦闘能力は持たない。なんたって梟の目しか持ってないから。
ツバメ指揮官:頭が回ります。ちゃんと計画も立てるし、それから実行する。戦闘能力も高いが...
ツバキ指揮官:名前だけ出ましたね。切り替わる条件は「セイレーンを憎むこと」変わると龍としての能力が強くなります。怖いね(?)殴ったり殴られたりしてますが、完全にジョルノ・ジョバァーナが悪い(2回目)
綾波:今回、出番がそんなになかった。大きな仕事を任されているようですね。どんな任務だろうか
青葉:情報班ですね。あらゆる重桜の情報に精通している。操作も可能。いったい指揮官のどこまでを知っているのでしょう...
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