コウライとウーリが退却したのには理由がある。
当初の予定では、いざとなったら大猿化。だったはず
大猿化する事によって著しい体力の消耗と、極度の空腹に襲われ
酷い場合、変身が解けた時に動けないというリスクもある。
ほとんどのサダラ人は、理性を保つ事が出来ない為に
極力大猿化するのを避けている。
しかし、2人は目の前の戦闘よりも
ベジータへの興味の方が勝った。
しばらく追跡した後、2人は立ち止まった。
まだ幼い体のベジータには、大猿の体のまま長時間動き回るのにはかなりの負荷がかかる
息を切らして座り込んでいる。
コウライ「おいガキ!お前どうやって理性を保ってやがる!」
2人の追跡者がいる事に気が付いていなかったベジータは、一瞬驚いた顔をしたが無視を決め込んだ。
ウーリ「黙ってねぇでよ、何とか言ったらどうだ?」
ベジータ「…。オ、マエ、タチ、ナニ、シニ、キタ…。」
コウライ「何しに来たって、さっきも言っただろ?どうやって理性を保ってんだって聞いてんだ。お前そのまま大猿の姿のまま一夜を明かす気か?ガキの体じゃ朝まで持たねぇぞ?変身解いてやるから背中向けろ。」
ベジータ「ヘッ?…トケル、ノカ?」
ベジータは知らなかった。
サダラ人の子供の体は、大猿の姿を維持する為に必要な体力を持ち合わせていない為に
命を落とすケースがあり、
満月の日は親が子を外に出さないように管理する必要がある。
万が一大猿化してしまった場合、親は子の尻尾を数十秒の間掴み
弱体化させる、弱体化する事によって変身は解かれ
元の姿に戻る。
ウーリ「どうやらジベの野朗は教えてやってなかったんだな、親のクセに。」
元の姿に戻ったベジータはキョトンとした顔で2人を見ていた。
コウライ「お前、何つー名前だ?」
ベジータ「…ベジータだ。」
ウーリ「たいそうな名前だな、ベジータ。はっはっはっ」
ムッとした顔をしたベジータだが、自分が置かれた状況を思い出し
ハッと我に返った。
ベジータ「…父さん。」
コウライ「あぁ、…ジベの野朗は死んだ。俺達が見つけた時にはもう死んでいた。」
唇を噛んだベジータだが、その目は父の死を悲しんだ目では無く
何かを見据えた目だった。
ベジータ「…俺はもっと強くなってやる。父さんは弱かったんだ。それだけだ。」
ウーリ「おっ!良く言ったな。それでこそ我ら戦闘民族の子だ。」
コウライ「ちっ、うちのガキにも見習って欲しいぜ。ところでベジータ、お前これからどうするんだ?身寄りもねぇんだろ?良かったら俺が鍛えてやんぜ、うちのガキのいい刺激にもなるしな。」
コウライは将来ベジータが立派な戦士となり、己といつか戦いたいという欲望から
突拍子も無い提案をした。
ウーリと、ベジータは目を丸くしてコウライを見たが
本気の目をしている。
そして、自分が強くなれるなら、とベジータも快諾した。
ウーリ「やっぱりお前は変わってるよ、変わり者のサダラ人って奴だな!」
この日からベジータ少年の人生は大きく変わって行く事になる。
その頃イカパス人達の拠点では。
クラァ「皆の者聞いてくれ、我々のこの慣れ親しんだ洞窟とは今日でおさらばだ。あの猿どもにこの場所が見つかってしまった。皆急いで身支度を済ませ、新たなる"家"を探しに行こう。」
クラァはそう言い残し自室へと戻った。
クラァ「クックック、今に見ておれ、サダラの猿どもよ。兵士を育て上げ、兵力の底上げをしたあかつきには、貴様ら猿どもを根絶やしにしてやる。俺がこの星を支配してやる。」
ケーン「…アニキ。俺を忘れてねぇか…。」
ケーンの虚しい呟きは誰の耳にも届かず、また気を失った。
すんごい今更ですが
この頃まだ、サダラ人(サイヤ人)や、イカパス人は空も飛べませんし
気弾も撃てません。
大猿の時に口からビームが精一杯という設定です。