あらっ?
初めまして、えっと…お名前は?
赤ん坊を抱いて部屋から出てきた女性のサダラ人に一瞬戸惑ったベジータ。
ベジータ「…べ、ベジータ、だ。」
コウライ「なんだお前、赤い顔しやがって。照れてんのか?」
ベジータ「ち、違う!ちょっと…熱い、だけだ。」
コウライ「ふん、まぁいい。こいつは俺のヨメさんのビスナだ。で、そのちっこいガキがサイヤだ。見ての通りビスナは何つーか、おしとやかな奴でよ、戦うのが嫌いみてーなんだ。」
コウライ曰く、サイヤはとても大人しい性格で
産まれた時も産声を上げる事はなかったらしい。
母親に似過ぎたせいか、穏やかすぎる性格に頭を抱えていると言っていた。
コウライ「つー訳でよ、サイヤを立派な戦士にする為にも、お前を連れて帰って来たって訳だ!」
ビスナ「そーなの?危なっかしい事ばっかりしないでね?ベジータちゃんも気をつけるのよ?」
ベジータ「ベ、ベジータ、ちゃん!?」
コウライ「いいじゃねぇーか、ベジータちゃん!今日はもうゆっくり休めよベジータちゃん。」
その後舌打ちしてふてくされたベジータだったが、
あまりの疲労と、眠気で黙って従う事にした。
ちなみにその時、
変な髪型と、尻を突き出した変なポーズをしたマッチョな男に
ベジータちゃん呼ばわりされ、コテンパンにされた夢を見た事は誰にも言えなかった。
コウライの元に来てから数日が過ぎたある日。
いつまでたっても鍛えてくれないコウライに少し苛立っていたベジータ。
ベジータ「いつになったら俺を鍛えてくれるんだよ、毎日サイヤの子守ばっかりさせやがって。」
コウライ「いつになったらって、昨日も狩りに行ってデケェクマしとめたじゃねぇか、お前。立派なもんだぜ、俺がガキの頃はクマどころか、イノシシすら倒せなかったぜ?」
ベジータ「あんなもん鍛えたうちに入るかよ。俺は強くなりてぇんだ。それにあのウチュウって奴らもどーなったんだよ。」
コウライ「あぁ、奴らか。お前を連れて帰った次の日、ウーリと見に行ったんだが、もぬけの殻だったぜ。」
ベジータ「な!何で教えてくれなかったんだ!」
コウライ「ギャーギャーうるせぇガキだな。教えてやろうと思ったけどよ、ずっと寝てて起こそうにも起きねぇんだからしょうがねぇだろ。」
あまりにもベジータがグズグズ言うので、面倒くさくなったコウライは
『クラナの谷』の話を持ち出した。
クラナの谷は、とてつもない高さの谷で
谷底には奇妙な生物や、恐ろしい生物がワンサカいる場所。
サダラ人の成人の儀式として谷に突き落とされ、這い上がって来なければ死を意味する。
ベジータ「クラナの谷って…俺はまだ5歳だぞ!」
コウライ「なんだ?びびってんのか?ベジータちゃん、これで生きて帰って来れなきゃお前はその程度の男。だが、帰ってこれた時は今より格段に強くなってるだろうな。」
ベジータは一瞬黙ったが、強さへの執着と、コウライに煽られた事に少しムキになって
意を決した。
コウライ「よし、なら早速行こうぜ。ここからだと結構歩くからな。」
すぐに家を出たが、クラナの谷に辿り着いた頃には
もう辺りは闇に包まれていた。
コウライ「久しぶりに来たな。ちなみに俺は這い上がって来るまで2か月かかった。ウーリは3か月だ。ガキのお前はそうだな、1年ってとこか?」
ベジータ「い、1年!?…クソったれ!やってやる!」
ベジータの生唾を飲み込む音は中々の音量で
とてつもない緊張がうかがえる。
コウライは何かを思い出したかのように、ベジータに後ろを向かせた。
ベジータ「うぎっ!!!いっっっってぇぇぇぇぇ!!!」
コウライ「一応念のためにこいつはチギッておく。心配すんなまたしばらくしたら生えてくる。」
コウライはベジータの尻尾を引きちぎって、谷底に放り投げた。
ベジータ「いきなり引きちぎりやがって!いってぇ…。あぁ…俺の尻尾が…。」
谷底に消えていく尻尾を見てえらく落胆していたベジータだったが、
コウライは大笑いしながら
何の前触れも無くベジータの尻を蹴った。
ベジータ「え……?
うわああああああ!
ああああ…
あああ…
あぁ…
コウライ「言い忘れたけどよー!あ、もう見えねぇ、ま、いっか。」
こうしてベジータの地獄めぐりが始まる。
サイヤ人の名前が浮かばねー