そして現在。
ここはコウライ達の故郷、【ノーエン村】
から北へ歩きで2日程かかる場所にある【タハタ村】
コウライ「2日もかかってやっと着いたぜ。」
ウーリ「あぁ、早速奴を探そう。小さな村だからすぐに見つかるだろう。」
ここに来る途中で捕まえた牛を食べながら練り歩く2人は
1人の女サダラ人に声をかけられた。
「ねぇあんた達、見ない顔だね。どこから来たのさ。」
ウーリ「ん、ノーエン村から来たんだ。ところでお前ホレソって知ってるか?」
「ホレソ?ハッタリのホレソかい?奴ならさっきヤモシの野朗と川で何か食ってたよ。」
そう言うと女は、あっちの方向だ。と指を刺して教えてくれた。
「あんまりあんな奴らと関わらない方がいいよ。ま、アタシには関係ないけど。」
戦闘に飢えたコウライとウーリは
あの強かったウチュウの情報が少しでも欲しい為、変な奴だろうが、そんな事はどうでもいい。
お互い目を合わせ、やっと見つけたぜ!と笑顔の2人は急いで川に向かった。
川はすぐに見つかり、例の2人もそこにいた。
バリバリと音を立て骨ごと何かの生物を食べているヤモシと、
ネズミを尻尾から指でつまんでぶらぶらさせてヘラヘラしているホレソ。
ホレソ「ん〜?なんだぁ?お前ら、見ねぇ顔だな。ここは俺達のシマだぜ?シッシッ、あっちへ行きな。」
ヤモシ「………。」
ウーリ「な、なんだぁ?あの野朗ぉ…嫌な奴だぜ…。」
コウライ「わ、わりぃ。おめぇ達のシマを荒らしに来た訳じゃねんだ。ちょっと聞きたい事があってよ、ホレソ‥ってのはどっちだ?」
コウライが聞くと、
ホレソが怪しみながら俺だ。と答えた。
人から嫌われ、避けられているホレソは他人に声をかけられる事が滅多に無い。
声をかけられる時は大抵何か面倒ごとだ。
ホレソ「…。なんだよ、俺に何の用だ。さっき家畜が襲われたって村の連中が騒いでたが俺じゃねぇぞ?俺は人に飼われた動物は食わねぇんだ、クセェからな。野生の臭いがしねぇ、キレイな臭いが嫌いだからだ。」
コウライ「いや、違うんだ。聞きたい事ってのはウチュウって奴らの事なんだ。ウチュウ…えっと、なんつったかな…イカ‥イカ‥」
ウーリ「イカパスだ。」
ホレソ「イカパス…?……。ん?あ、あいつらの事か?初めて見た奴らだったな。そいつらがどうしたんだ?」
コウライ「知ってるんだな!?そいつら今どこにいるかわかるか?つえぇ奴と闘いたくてよぉ。闘ったのか?そいつらと!」
1人興奮気味に食いついたコウライに若干驚いた様子だったが、持っていたネズミを生きたまま貪りだし、
もう1人の大男を指差しながら、あいつが全部やっちまったよ。と言った。
ウーリ「な、なんだと?1人でか?あの男1人でやっちまったのか?」
コウライ「おいおい冗談よせよ、つえぇ奴もいただろ?そいつらも皆やっちまったってのか?」
ホレソ「あぁ、だからそうだって言ってるだろ。つえぇ奴と闘いてぇならそこのヤモシと闘ってみたらどうだ?全滅させたってのは納得出来ると思うぜ?同時にいかに自分がちっぽけな存在かって事も受け入れないといけねぇ事になるがな〜。」
軽く笑いながらそこで食事中の大男との闘いを勧められた。
さすがに1人でやったってのは信じ難いコウライとウーリは、戦闘民族らしくやはり闘って確認する方が手っ取り早い事は理解している。
ホレソ「なぁおい、ヤモシ。この客人と軽く手合わせしてやれよ。殺さねぇようにちゃんと手加減してな?なんなら2人同時でもいいんじゃねぇか?へっへ」
ウーリ「な!?なんだと?それはいくらなんでも舐めすぎじゃねぇか?逆に死んじまっても恨みっこなしだぞ?」
何も言わないヤモシがチラッと2人を見てゆっくりと立ち上がった。
想像以上の大きさに一瞬萎縮したウーリだったが、コウライの目は輝いている。
コウライ「おいお前、ヤモシっつーのか?座ってると気付かなかったが、めちゃくちゃ強そうだな!無駄が無く、締まったいい体してやがる!」
ホレソには2人同時を勧められたが、コウライはまず俺1人でやらせてくれ、とウーリに頼んだ。
ウーリは割とすんなり受け入れたが、サダラ人お決まりの『どっちが先かジャンケン』したら良かったな。とも思った。
コウライはゆっくりと構えを取り、ヤモシと向かい合ったが
ヤモシは棒立ちのまま見下ろしている。
先に動いたコウライの拳はヤモシの脇腹に入った。
そのまま立て続けに
左、右、左、右と連続して殴るがヤモシは表情ひとつ変えない。
止まる事無くコウライは飛び上がり、今度は顔面に蹴りを放つ。
これでもかという程の打撃を与え続けたコウライだが、それでもヤモシは全く効いた様子がない。
コウライ「はぁ…はぁ…。なんだこいつ…全くダメだ…なんでこんなに頑丈なんだよ…。
ヤモシ「…。もう…動いていいか…?」
そう一言だけ発すると、その場に居た3人の目には捉える事が出来ない速さの拳がコウライの腹にメリ込む。
コウライ「うがあぁぁぁぁぁっっっ…!!」
コウライの悲鳴に近いうめき声が辺りの鳥達を飛び立たせた。
ウーリ「な、な、なんて野朗だ…。全く見えなかった…。し、信じられねぇ…こんな奴がいたなんて…!」
コウライはたったの一撃で沈み、ウーリも心配する程のゲロを撒き散らし、鼻水と涙を流した。しばらくしたら土下座のような姿勢のまま白目を向いて気を失った。
ホレソ「お、おい。こいつ大丈夫か…?おい、お前生きてんの?まともにヤモシに殴られた奴初めて見たけど、人ってこんなにゲロ吐くんだな…。」
さすがのホレソもドン引いているレベルでダウンしたコウライ。
ヤモシは手加減したんだけどなぁ。の表情をしたままぽりぽり頭をかいている。
ウーリ「とりあえず…、お前の実力はわかった…。悪いんだが、こいつ休ませるとこ連れてってくれねぇか?」
ウーリがコウライを肩に担ぎ上げてホレソに聞いた。
ホレソは付いてきな、と言い2人を先導して歩いた。
ヤモシ「…。お前は…いいのか?…しなくて?」
ウーリ「ばっ!バカっ!お、俺はコイツを休ませないといけねぇだろ?ざ、残念だなぁ〜、やりたかったんだけどなぁ‥。ま、まぁ…また頼むわっ。」
ヤモシ「ふーん‥。そうか。」
ウーリは脇汗が今までで1番凄かったのと、尻尾がちょっとキュッとなった事は誰にも言えなかった。