エイジ・オブ・サイヤン   作:イナゴライター

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フルムーン

ケーン「へっ!弱っちぃ奴だったなアニキ!俺達が出る事なかったんじゃねぇのか?」

 

 

闘争本能剥き出しでいきなり遅いかかってきたサダラ人を

まるで赤子の手をヒネるように捻じ伏せてみせたケーン。

 

クラァ「やれやれ…。お前という奴は本当に我慢が出来ない男なのだな。勢い余って殺したりしてないだろうな?」

 

ケーン「さぁどーだろうな、グッタリしてやがるぜ。ホレっ!」

 

ケーンはサダラ人の尻尾を掴み持ち上げた。

まるで雑巾か何かを掴んでいるかのようにダラんとしている。

 

クラァ「このままここに放置しておくわけにもいかまい。一応手足を縛って船に連れて帰れ。」

 

ケーン「ちっ、めんどくせぇなぁ。」

 

 

 

 

クラァ「コミュニケーションを取る事は難しいと思われます。そしてこのダメな弟が殺してしまいました。」

 

宇宙船の片隅にゴミのように置かれたサダラ人を

皆興味津々で眺めていた。

 

イカパスC「ふむ。実に興味深い生き物じゃな。ちょいとワシの研究室でイジってみてもええかの?」

 

イカパスB「ええ、構いませんよ。サンプル等は取っておいて下さい。この星の生物の詳しい情報がわかるかもしれません。」

 

 

 

診察台の上に置かれたサダラ人に研究者達が特殊な器具を取り付けていた。

彼らの技術は一切メス等を使わない切らない解剖。

 

イカパスC「よし、このまま一晩放っておこう。夜が明ける頃にはデータも取れておるじゃろ。」

 

 

長旅の疲れもあってか、研究者達は皆足早に各自室へと戻って行った。

 

日も沈みかけてきた頃

診察台に1人ポツンと横たわったサダラ人の目がかすかに開いた。

ここは研究室とは言え、宇宙船の中

サダラ人の頭上近くには大きな窓がある。

 

少し頭を動かすと外の景色が良く見える。

 

今宵は月に1度、月が真円を描く時。

 

 

ドクン

 

ドクン

 

 

ドクン、ドクン、ドクン。

 

 

この時のサダラ人の鼓動は体外に響いてわかる程の大きさ。

人型に姿を変えられ、体毛等は頭髪以外ほとんど失っていた体から

どんどん毛が生えて体全体を覆った。

 

それと比例するかのように

筋肉質だった肉体も更に肥大化していき

顔面までもが原型を失う程に変化した。

 

サダラ人は、遥か昔の祖先の姿へと変貌を遂げた。

 

 

ガクンッ!

 

大猿の姿になったサダラ人の体重を支えるには華奢過ぎる宇宙船が一瞬沈んだ。

それと同時に研究室の天井を突き破り上半身を乗り出した。

 

 

イカパス人A「なっ!!なんだこの音はっ!!」

 

宇宙船の警告音がけたたましく艦内に響き渡る。

 

ビー!ビー!ビー!

非常事態発生。

Dフロア損壊、Dフロア損壊。

 

警告のアナウンスも流れているが、イカパス人達の悲鳴に打ち消される。

 

 

ウガァァァァァァァァァアア…!!!

 

大猿は雄叫びを上げながら、両腕を振り回し宇宙船を破壊している。

 

イカパス人達は死に物狂いで宇宙船からの脱出を試みるが

もうすでに出口に向かうまでもない程に破壊され

艦内が露出している。

 

家族と逸れた子、怪我をして1人で動けない者、命を落とした者。

絶望に直面していた。

 

大猿はそんな事お構いなしで宇宙船の上に乗り上げ、

地面が揺れていると錯覚するほどの音でドラミングをしている。

 

ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!

 

 

イカパス人B「なんて事だ…。我々はとんでもない星にやってきてしまった…。終わりだ…、今度こそ我々は絶滅してしまう…。」

 

 


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