悪夢のような日から数ヶ月余りがたった。
イカパス人達はこの星の環境に順応して来ていたが、やはりあの日の恐怖が記憶から消える事は無く
皆怯えて隠れながら生きていた。
しかしやはり収穫はあり、大猿、サダラ人の謎が解明されつつあった。
サダラ人という人種は変身タイプの宇宙人であり、満月がその引き金になるという事は皆に知れ渡っていた。
クラァ「A殿、ちょっとした提案なのですが。我々の生活にも少しばかり平穏が訪れつつあります。しかし、いつまでもこのような影の中の生活にも限界がございます。若者の中には、満月の時だけ外にいなければいい。と思っている者もおります。」
そう切り出したクラァが提案したのは、
イカパス人達の抑止力となる、戦闘タイプのイカパス人の育成。
イカパスA「しかし、我々は元々戦闘タイプはなかなか産まれにくい種族。エギーラ星人に侵略されてから、戦闘タイプのイカパス人はお前達2人しか生き残っていないんだぞ?」
クラァ「ええ、ですがお忘れでしょうか?我々イカパス人は成人するまでタイプはわかりません。なので若いうちから鍛え上げておけば、戦闘タイプでなくても戦力にはなります。」
しばらくやり取りは続いたが
皆の意見を聞いてみるという話に至った。
イカパスA「…きっと、誰も賛成はしないぞ?」
しかしAの予想は外れる事になる。
イカパスの人々は、いままでに数々の実績を残して来たクラァへの信頼と、
彼の人情的な人柄から
自ら志願する若者や、我が子を鍛えてくれ、と言う親達が後をたたなかった。
こうしてイカパス人の戦闘タイプの育成が始まる事となった。
類稀なる才能を発揮する者や、離脱者等、様々な者達がいたが
3か月も経つと
しっかりと精鋭部隊として形になりつつあった。
イカパスA「素晴らしい成果だな、クラァ。これで皆も少し安心できるだろう。」
クラァ「いえ、確かに大幅な戦力向上にはなりましたが、まだまだ皆を守れる程の集団とは言えません。」
ケーンが若者達を鍛えているのを離れて見ていたクラァにAが話しかけた。
イカパスA「ところでなんだが、お前はみんなからの信頼も厚い。今となってはツーボ星の王もいないし、どうだ?お前がこのイカパスの王となってみる、というのは?」
予想外の提案に少し驚いた顔を見せたクラァだが、イカパスの人々にも指導者のような存在は必要と考えていた為、その提案を受け入れた。
クラァ「しかし、我々だけで決めるというのも。皆の意見を聞いてから決定したいと思います。」
全てのイカパス人が集められ、事の経緯を話したが
否定する者等誰1人としておらず、満場一致であった。
簡単過ぎる王の誕生だが、彼らにとってのクラァは正に英雄と言える程の存在で
今の自分達があるのはクラァのおかげ。と誰もが思っていた。
イカパスA「ここに我らの新たな王が誕生した!皆、クラァ王に忠誠を!」
新たな王の誕生に皆が喜び、ひとときの平穏と和やかな雰囲気に包まれ
イカパスの人々は希望の光を見出そうとしていた。
そして、その一部始終を遠くから見ていたサダラ人がいた。
?「なんだあの生き物は、見た事が無いな。どうする、コウライ。一匹捕まえてみるか?」
コウライ「…。あぁ、そうだな。」