すみません、一味ありませんか?   作:アナタ

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真白ちゃんはチョロインだと思う。
間違いなくあおかなの童貞殺し枠。

あ、今回うどん食べてないです。


三食目

3食目

 

 

 

 

 

 

「はぁ」

 

思わずため息が出てしまった。

陽もだいぶ落ちてしまってそろそろ暗くなり始める時間帯の帰り道、私は今日の部活での出来事を思い出して少し憂鬱な気分になる。

そう最近私は部活に入った。

 

フライングサーカス部 通称FC

 

グラシュ、正式名称アンチグラビトンシューズを履いて行うスポーツだ。

グラシュは履くことによって全身に反重力場を纏うことが出来、自由に空を飛ぶことが出来る靴の事。

それを使い空を飛び各ポイントに配置されているブイか対戦相手の背中をタッチする事でポイントを稼ぎ制限時間までにポイントが多かった方が勝ち、という全く新しい新感覚のスポーツ。

そこにみさき先輩が入ると言うから私も、と入ってみたのは言いものの何もかもが上手くいかない。

部員である部長はもちろんみさき先輩、全くの初心者である明日香先輩にですら私より上手く飛ぶ。

元々私は何をするにしても不器用で容量が悪く才能といったものとは無縁の人間だ。

 

だからこうなるというのは薄々分かっていた。

みさき先輩は経験者でなおかつ運動神経は抜群。

明日香先輩はまだぎこちないけどそれでも時折垣間見るセンスが凄まじく将来有望だ。

部長もスピード一筋だけど私なんかよりもちろん上手い。

 

自分が部の中で1番弱い。

 

そんなの分かりきっていた事だ。

だと言うのになんだろう。

 

「はぁ」

 

この胸のモヤモヤというか歯に魚の骨が挟まった感じというか。

なんとももどかしくてそれがため息として形に出てくる。

 

やっぱりみさき先輩が入ったからって安易に入部するんじゃなかったかなぁ。

でもでもみさき先輩と合法的に一緒に居れるし.......

 

「はぁ」

 

思考がだいぶ駄目な方向へ傾いてしまっている。

今もこうして一般用のグラシュを使って空を飛んでいるけどみさき先輩や明日香先輩と私は何が違うんだろう。

 

「あ、なんでこんな所に.......」

 

ふと下へと視線を向けると見覚えのある人が見えて私は興味から無意識にその人の方へ降りて行った。

それに今はこの気持ちを整理するのには丁度いいと思うから。

 

「おっとっと.......」

 

ぎこちなく砂浜に降り立った。

結構近くに降りたのにこちらに全く気が付いた様子はなく、砂浜に座り込みながらぼーっと空を見上げている。

 

そういえば教室でもずっとこんな感じで窓の外を見てたっけ。

 

私が見ている時だけかも知れないけれど、私の家であるましろうどんに彼が来てから良く彼に目線が行くようになった。

他意なんてなくてただ知り合いになったから目に止まるようになっただけだけど決まって彼は窓の外、正確には空を見上げている。

その姿と今の姿が重なって見える。

 

一体彼には何が見えているんだろう。

 

「何か見えますか?」

 

自然と私は彼、唐津くんに話し掛けていた。

話し掛けようとは思ってはいたけど余りにも自然に声が出てしまっていて、何も悪くないのに妙にやってしまったと感じてあたふたとしてしまう。

 

いきなり声をかけちゃ迷惑じゃなかったかな?

 

顔を伏せがちになりながら伺うように顔を動かして唐津くんを見る。

でも唐津くんは未だに背中を向けたままで無反応だ。

 

あれ、もしかして気がついてない?

 

もう一度声を掛けようかなと思った時だった。

 

「君には何が見える?」

 

落ち着いた声でそう唐津くんは問い掛けてきた。

ほらこっち、と言ってるかのようにぽんぽんと横のスペースを叩いているのはそこに座れと言う事なのだろうか。

近すぎたら恥ずかしいしだからと言って離れ過ぎたら私が意識してるみたいに思われてしまうのは嫌なので近過ぎず遠過ぎず、そんな微妙な距離を開けて私は座り込み空を見上げた。

 

もう殆ど陽が落ちて暗くなった空。

そこに海に煌めく光のように輝いている星々。

 

素直に綺麗だなって思う。

けど此処に住む人達ならばそれなりに見慣れている筈で特別その風景に何かを思う事はない。

なので私は素直に思った事を口にした。

 

「星が輝いてますね」

「確かにそうだね。他には?」

「いえ、特に何も見えませんけど.......他に何か見えるんですか?」

「いや星もそうだけど空しか見えないよ」

「でもずっと見てるじゃないですか」

「綺麗だなって。空、見てたんだ。きっと他の場所でも色々な人がこの空を見ていてそこでも空は綺麗なんだろうね」

 

横を見れば唐津くんの瞳を通して空の星々が輝いているのが見えて、まるで小さな子供が空を見上げて目を輝かしているように見えてきてそれが可笑しくってクスッと笑い声が漏れてしまう。

 

何だか子供っぽくて可愛いな。

 

「うん、そっちの方が綺麗だ」

「えっ?」

 

横を向く。

気が付くと唐津くんの顔が目の前にあって、真っ黒なのに光が反射して輝いて見える目が真っ直ぐ私を見詰めている。

口で息を吐けば当たってしまうような距離で、近くで見るとまつ毛ながいなぁと何処か見当違いな思考が流れている。

 

..............。

 

ていうか近過ぎだよっ!?

顔がどんどん赤くなっていっているのが自分でも分かる。

きっとこうやって砂浜に座り込んでなければすっ飛んでいただろう。

けど余りに突然で頭が回ってなかったのと、足場の悪い砂浜だったからか私は今この現状を把握してただ羞恥に顔を赤くしただけで1歩も動けない。

煩いぐらいに心臓が脈打っている。

かつてない恥ずかしさに頭がどうにかなってしまいそうだ。

 

「僕は君じゃないから良く分からないけど、偶にはこうして空を見上げて休憩すればいいと思うよ。少なくとも顔を顰めて色々考えるより、頭もスッキリするだろうしね」

 

そうやって笑う唐津くんの言葉。

あぁそうか、唐津くんには私が何かを悩んでいるように見えたんだ。

こう見えて私は細かい気を使う事が得意でそういうのを隠すのはそれなりに上手いと思っていたのに。

私の事、良く見てくれてるんだなぁ。

 

そう思うとどうも急に恥ずかしさがぶり返してきて、顔を直視出来なくてぷいっと顔を背けてすすっと少し距離をとる。

 

は、恥ずかしい.......

あんな近くで話してたなんて、顔なんてそれこそき、キス出来てしまうぐらい近くて。

っ!?

 

声にならない悲鳴を上げながら今更かよ、と思うかも知れないけどその事を自覚して膝を抱えて丸くなる。

 

変に思われてないかな?

もしかして変な匂いとかしてたとか.......うぅ部活終わりに消臭スプレーを使ったけどもっと使ってれば良かったかも。

 

 

「あ、何処かで見た事あるなって思ってたけど小さな定員さんじゃないですか」

「ってそこからなのっ!?私の感動返してよっ!」

 

あと小さいって言うなっ!

気が付けばもう胸のモヤモヤは晴れていた。

 

 




オリ主
珍しくうどん食べてない。
日頃からぼーっとしてる、特になにも考えてない。

有坂真白
周りが割と化け物なので自分はこれっぽっちも才能がないと思っている。
成功経験が少ないのも拍車をかけて自分に自信が無い。
故にチョロイン。
ずば抜けて才能があるわけじゃないが優等生の枠組みに入れる程度には才能はある。
きっとあの後邪神ちゃんとの語らいがあってお母さん乱入からの「ぎにゃー」があったに違いない。
詳しくはあおかなの真白ルートをプレイしてみよう。

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