「おい、マスター。こんなのでホントに良いのかよ?」
「まぁ、待て。もう少し辛抱すれば奴らを出し抜けるからな。」
藤丸は暴れたがっているサーヴァントを静止して、機を待った。
暫くすると、白と黒の服の女将がやってきた。
「では、この船を分析させてもらいますっ!」
「…来たな、閉じろ!!」
「なっ!?」
秦良玉が入ったボーダーへの入り口は閉ざされ、けいかは秦の一瞬の隙を捉えて不意討ちの手刀をお見舞いした。
「おっと危ない。」
藤丸は空かさず落ちてくる瓶薬をキャッチした。
「所長!飲んでください!!」
「ゴクゴク……ふぅ…。」
「うん、バイタルが安定した。」
藤丸は始皇帝の要求に応じたフリをして、薬を得たのだ。
「聖人みたいな良い人を騙すのは気が引けたが…これぐらいしか思い付かなかった。…そして、やはり動いたか」
「よし、俺の出番だなっ!?」
「ようやく、本当の反逆の時かっ!」
藤丸が近づく影を感知すると、赤い鎧の騎士と強靭な肉体を持つ大男がはしゃぎ出した。
外に出ると、無数の機械兵…いや、傀儡兵がシャドーボーダーと村をを囲むように押し寄せていた。
「さて、色々好き勝手させてもらった分お返しさせてやらないとな。…行くぞ、皆っ!!」
「「おおっ!!」」
藤丸は二人の英雄と共に、大軍へ突っ込む。
そして、もう一人の白い衣の暗殺者は傀儡兵の目を欺きながら、獲物の息の根を止める。
赤い剣が豪快な一振りで多くの動く瓦を二つに割る。
巨体は打たれる度に肥大化していき、肥大化した体で敵を包容する。
包容された敵はプレス機に入れられた後の金属片となっていった。
「皆、強いな。負けてられないっ!」
青年は手に握られた剣で襲ってきた敵を斬りながら軽口を開く。
「マスター、俺たちも本気出すぞっ!!」
「おう、アークさん。俺の魔道に付き合えよっ!!」
藤丸は首にぶら下げている書物に声をかけたあとで、使役している青白い竜型のロボットを呼びだしそれを腰に付けた。
「暴食『グラ』のアーカイブに接続。テーマを実行するっ!!」
どうして、彼らは始皇帝との約束を破ったのか。
それは始皇帝の考えとカルデアとでは考えが似て非なるからだ。
カルデアの目的は飽くまでも、「異聞帯消滅」による「人理の救済」である。
始皇帝は違った。彼は部下たちとともに、「この地球に自分達のとは違った『世界』があること」を知った。そして、その『世界』を救いたいと思っている。
同じように人類史を救いたい―その思いは確かだ。
だが、それを感じ取った藤丸たちは始皇帝との条約と言っても過言ではない約束を破ることを決意したのだ。
「魔力を絶てば動けまいっ!!」
藤丸は白い剣『シルバームーン』で傀儡たちの電源とも言える魔力の流れを止めさせた。
しかし、藤丸は気付いた。
「敵サーヴァントは何処だ……?」
「!マスター、上を見ろ!」
「なんだ…アレは!?」
始皇帝の間では。
「やはり、裏切ったかカルデア。……そして、コレは『当て付け』だ。」
藤丸たちの頭上の空からは隕石が落ちてきていた。
「あぁ!皇帝様のお怒りだっ!!」
村人たちは異変に気付き外に出たとき言った台詞だ。
そして、その様子を見計らった傀儡の軍隊は一斉に退いた。
「おい、逃げんじゃねぇっ!!」
「モードレッド、上を見ろ!!」
けいかに呼び止められ、上を見上げたモードレッド。
彼女はあまりとの隕石のでかさに唖然とした。
すると、彼女たちの脳内にマスターである藤丸の声が響いた。
「モードレッド、けいかそしてスパルタクス!村人たちを宥めて近くの防空壕みたいになっている洞窟を探すんだっ!」
「なるほど、マスターが言っていたアレか。」
「いや、待て。あの隕石はどうすんだ!?」
サーヴァントの抗議にマスターは暫く沈黙する。
「……私が食い止める。」
「お前!正気かっ!?」
「あぁ、普通じゃないさっ!けどな…どうにかしてあげたくなっちまったんだよ。あんな純粋な村人たちを見てたら……始皇帝に一矢報いてやるって!それに……」
藤丸が何か言おうとすると、寝耳に水な連絡が来た。
「先輩、そちらに一人の男の子がっ!」
「なん…だと…」
藤丸には心当たりがあった。そう、魔物の住みかを教えてくれたあの少年である。
「今人々を誘導しているが、もたもたしているうちに隕石が来てしまうぞっ!!」
「おい、マスターっ!!樹を切り落とすために生きるか、隕石を叩き斬るかを早く決めろっ!!」
藤丸は使命と善心の間に挟まれ、頭を抱えた。
「どうすれば良いんだっ!?」
そうしていると、一人の男が藤丸に話しかけた。
「……では、我があの隕石を止めよう。」
その声は、スパルタクスのだった。
彼はそれだけを藤丸に言うと彼の前に立ち、言葉ではなく背中で主に語る。
「…………………そうか。分かった………。」
そして、そんな青年の背中と大きな男の背中を一人の少年が見ている。
青年が右手を空に突き出す。
そして、青年は赤く重い引き金を引いた。
「令呪を以て命ずる……」
青年の口からも右手の引き金同様赤い糸が垂れ、赤い雫が暗闇を照らした
「跳べ、スパルタクスっ!!」
「滾るっ!滾るぞっ!!これが我と我がマスターの力っ!!」
その頃、人々は赤い小さな光が巨大な岩に立ち向かっていくのを見た。
「と、飛びやがったッ!でも、あんなことしたら霊基はっ!」
「あぁ…スパルタクスはそのことを承知でマスターに言ったんだ。『任せろ』…とな。」
「空を圧政の星が覆うならっ、我は!我こそはっ!『反逆の暁星』であるっ!!!」
その暁星は、圧政の星だけでなく地球の引力にも『反逆』した。さらに、この暁星は星との衝突による速効的な崩壊にも耐える。
「極大逆境・疵獣咆吼(ウォークライ・オーバーロード)!!!」
―圧政の星は跡形もなく消え去った。
空から落ちるのはただ一人の男の体だけ。
そして、それを赤い騎士・モードレッドが受け止めた。
「重っ!!」
「スパルタクスっ!!」
少年は堪らず、憧れの存在の元へ走った。
「ぬぅぅ………。」
スパルタクスは天に腕を伸ばし、最後の力を振り絞って言葉を発した。
「我が反逆に…一片の悔いなしっ!!」
少年は涙を堪えながら、誰よりも伸ばした背筋で反逆の英雄を讃える『歌』を歌った。
To be continued
次回Fate/Grand Orderは!
「スパルタクスは……『英雄』だっ!」
「コヤンスカヤが脱走したっ!!」