「皆、虞美人を抑えろ。俺は……項羽から倒すっ!!」
「了解っ!!」
一人の青年は巨大なる馬へ、複数のサーヴァントたちは黒い衣の仙女へ立ち向かった。
一方で、シャドーボーダーでは。青年の仲間たちがその闘いを見守っていた。
「俺たちはこうして見るしか無いのか?」
「………彼らが危なくなったら回収する。それが彼の考えた作戦だよ。」
ダヴィンチは続ける。
「私も最初はその提案を床に叩き付けたさ。でも彼は『項羽に勝てる算段は立てています』と言って聞かなかった。……アレは覚悟を決めた顔そのものだ。」
そこで、ホームズが割って入る。
「それは、それを実行した後何が起こるか想定した物なのかね?」
「私からはハッキリとは言えない…。だけどね、彼は『自分の感情を最後まで隠そう』としているんだ。」
「そうか……。これはあくまで私の推理だがね……」
ホームズはパルプを取り出しながら告げた。
「彼の心はもう――『壊れている』。恐らく、様々なサーヴァントや人間たちの『死』を見た時から……ね。」
そのような二人の会話を、一人の少女は聞いてしまった。
「セン―パイ―」
「せぁっ!!」
「―」
巨大な剣が大地に振るわれ、大地が煙を挙げた。
「!?何処へ行った?」
項羽は後ろに気配を感じた。そこには赤い剣を携えた青年がいた。
「コイツは血を吸うのに特化している―そう思ってたんだがね。」
青年は敵の話など聞かぬと言わんばかりに腕を振るう人馬に話しかけるように続けた。
「大体なんでも斬れちゃうみたいなんだよね。」
「なっ!!?」
計四本あった腕のうち二つが切り落とされた。項羽がそう思った途端、頭部にも皹が入った。
そこから電流が流れ出したのだ。
「一度だけでなく、二度も闘った…。貴様の構造など、判別出来るようになった。作戦通りだ。……虞美人は、サーヴァントたちに夢中か。じゃあ、倒れて貰おうか。」
藤丸は、そう言い放つと白い剣に雷を発生させた。
「……まだだっ!!」
項羽はそう言って、残った身体全体に力を入れるが石で敷き詰められたみたいに動かない。
「なんだ?気付かなかったのか?鎖を用意しておいたのさ。」
それを見た女狐は震えた。
「くっ、あの鎖は。忌々しいっ!!」
「まっ、そんなわけで。……じゃあな。」
藤丸は雷を纏った白き剣を項羽の心臓部と言える動力源に直撃させた。
「ぐっっっ!!!!!!」
それを見たのは―
「項羽様ぁぁ!!!!」
数分後ー
「……おっと、遅かったな。カルデアのマスターよ。」
そこには、黒い髪に白い天の使いのように白い衣を着た皇帝がいた。
「お前が始皇帝か。始皇帝様。樹ごとその命頂戴するぜ」
藤丸がそう叫ぶと、始皇帝は真顔で藤丸の後ろを見て忠告をする。
「朕より先に片付けておくべきことがあるのではないか?」
「……!!!」
黒い衣を着た仙女が、人間に番を殺され怒り狂った狼のように藤丸に飛び掛かったのだ。
「よくも項羽様をぉお!!!」
藤丸は頬にかすり傷をつくる程度に損傷を抑えるように移動し、狼を蹴った。
「~~っ!!」
声にならない怒声が虞美人の口で蠢いた。
「……その目だ。『怒りの目』だ。もっと俺にソレをぶつけろ。俺も……てめぇらクリプターに―」
炎を纏った二本の剣が顔めがけて飛んできたにも関わらず、藤丸は瞬き一つしないでそれを弾き落とした。そして、口を動かし続けた。
「『借り』があるっ!!!!」
その時、青年は殺された仲間たちを思い出しながら唇を噛みながら答えた。
「マスター!」
「お前たちは、俺に構わず樹を狙えっ!!!」
体を赤く染めながら藤丸は叫ぶ。
「ほう。では、お前たちを試そう。」
始皇帝がカルデアのサーヴァントたちに殺気を向けた。
しかし、藤丸は冷静に提案する。
「待て。お前も虞美人も俺が片付けてやる。」
「では、皆さん樹に向かいましょう。直ぐそこですので。」
藤丸の顔付きが徐々に険しくなった。
そして、皆は藤丸がこうなると中々折れないことを知っている。
「その減らず口……叩き斬るっ!!!」
虞美人はそう言うと、赤い火柱を自分の周りに張った。
「この魔力量…宝具か。しかも、自爆技の。」
藤丸は膨大な程の魔力の増幅を感知し、ある術式を唱える。
「滅びを知る者…いずれ安らぎを得る果報者たちよ。我が羨望!我が憎悪!死の痛みを以って知るがいい!」
虞美人が呪いの歌『宝具』を詠唱する。
すると、血の雨が敵に降り注いだ。それに貫かれるように青年の身体は震え倒れた
「で、どんな夢を見たんだ?」
「………!」
虞美人は敵が後方にいることに気付いた…が。
「解き放たれよ、白き大蛇よ――雷龍の牙!!」
せめての償いと言わんばかりに、白い龍騎士は怒り狂った仙女の番と同じ倒しかたで葬ったのだ。
「次はお前だ、始皇帝。」
「なるほど。朕を倒そうという算段か。ここは一つ、交渉せぬか?」
「『交渉』……ねぇ。事に寄って決裂したらどうするつもりだ?」
「その時は敵対する他無かろう。」
「俺の仲間が樹を倒せばこの世界が滅びるというのに、随分余裕綽々じゃないか。」
藤丸は違和感を感じた。始皇帝が何を考えているか、一瞬読むことが出来なかったのだ。
しかし、敵に焦りを見せるのは禁止事項だ。そこで息を整え、もう一度思考を読み取った。
「………そうか。そういうことか。」
藤丸は思考を読み取ると、身体の中にいる獣「邪龍」に話しかける。
「アワリティア……ほんの少し力を貸してくれ…。」
そう言うと藤丸の身体は炎に包まれ、目付きは肉食獣のようになった。
「朕の思考を読み込んだのであれば、何をするべきか分かるな?……では始めるぞ!未来のための『闘い』を!!」
空想樹の前でも、カルデアは止まらなかった。
「これを落とせば未来を取り返せるっ!」
「行きましょう、モードレッドさんっ!!」
作戦の最終局面を知らせる法螺貝が鳴った。
次回、Fate/Grand Order The Third Lost 最終回!!
「ふぅ……勝ったぞ。そちらはどうだ?」
「私は―お前を…っ!!許さないっ!!!!」
「大変だ、マスター君!空想樹と芥ヒナコの融合指数がっ!!」
「なら、斬らせて頂くっ!!!」