「…畑だな。」
「あぁ、今までに比べると不気味なぐらいに普通だ。」
「ここは汎人類史に置き換えれば、十堰市のど真ん中に当たるんだけど…。」
十堰市とは、本来の歴史における中国においては大都市の一つとして数えられるものの一つだ。しかし、ロストベルトはこれとは全く異なる進歩を遂げてしまった。そのために、藤丸たちの目の前に広がるのは「大都会」でも「ただのカカシ」でもなく、「ただの広い畑」なのだ。
「縦穴式の住居…これじゃ、まるで石器時代だ。」
ダヴィンチがそうぼやいていると、藤丸たちを見て慌てふためく影が。
彼らはこのロストベルトなので住民だろう。
言語は漢時代中期の物なので翻訳機が作動したが…彼らは警戒心を弱めはしなかった!
「ガイジンだ!」
「駐在さん!!あいつら、いきなり畑の真ん中から!!」
「何!?確かに、箱と武器みたいなものを…!追い出すぞ!!」
「まずい、彼らを刺激しちまった!」
「待ってくれ!私たちは怪しいものじゃないっ!」
藤丸は交渉を試みるが、彼らは聞く耳を持たない。
「攻撃体制に入りました!」
藤丸たちの中で、唯一戦えるのはマシュと藤丸の二人のみ。
しかし、藤丸は一般人には力を振るいたくないため一人のサーヴァントを召喚した。
「来てくれ、哪吒!」
藤丸が叫ぶと、それに呼応するかのように赤い槍を持った少女が現れた。
彼女はカルデア側に属するランサーのサーヴァント・哪吒だ。
「状況把握。マスター、無効化か倒すか選択を」
「あくまで無効化で頼むっ!」
「了解」
マシュとナタはマスターの指示に従い、攻撃的な姿勢を持った民を地に伏させながらも双方の血を流すことなくこの騒動を納めた。
マシュとナタが民たちを押している中、一人の男が藤丸の背後を取った。
「隙アリッ!」
「先輩!」
次の瞬間起きた音は、頭が割れたものでも赤い噴水が吹き出る音でもなかった。
カランっと「人体ではない何か」が転がり落ちた音だ。
「……なっ!?」
そして、悲鳴を挙げたのは藤丸を攻撃した男の方だった。
彼は確かに、藤丸の頭を鈍器で撃ったのだ。だが敵に怪我を負ったような様子は無く、逆に金槌の金属部分に罅が入り、砕けたのだ。
「……ねぇ。なんかした?」
藤丸は何事も無かったかのように、しかし重みを含んだ言い方で全ての民を大人しくさせた。
「ひ…ヒィィィっ!」
「ええい!今すぐ、あの野蛮人どもを洗脳できるキャスターを召喚しろぉ!」
シャドーボーダーの中で、抗議するゴルドルフ。彼は毒で蝕められている体で焦っていた。
藤丸はこれに対して
「確かに、彼らが襲ってきたのは事実…だが断わらせていただこう、新所長。」
と反論した。
「今回は時間が無いのだっ!早急に!事を進めるべきだ!」
「…それなら、あの女狐に文句垂れてこい。奴はこのロストベルトに解毒剤があるとしか話さん輩でな。」
「それに、彼の魔力を以てしても召喚とは時間がかかるものだよ。ミスターゴルドルフ。」
サーヴァント召喚には時間がかかることをホームズの説明から知ると、ゴルドルフは夜の町のように静かになった。
「よし、藤丸は召喚に専念してくれたまえ。後は私たちに任せて。」
「ダヴィンチちゃん、恩に着るよ。」
藤丸は召喚室に籠り、召喚のための詠唱を奏でることにした。
そして、現れたのは三人のサーヴァントだった。
銀色を基とし、赤い線がところどころに浮かび上がる鎧の騎士
全身に銀の拘束具を身につけた闘士
そして、全身を白い袴で包んだ暗殺者の三人だ。
「始皇帝に反逆するために召喚した結果が……こうなるとはな」
「先輩。こちらは、このロストベルトとの住民たちとの和解に成功しました。そちらは?」
後輩からの通信に答えるように、藤丸は英霊召喚完了の知らせを送った。
次回のFate/Grand Orderは!
「あの天体は!?」
「はい。この秦の永久楽土を乱す狼藉者どもを、排除に取りかかります。」
「なるほど、お前がセイバーのサーヴァント・欄陵王か…」
「ここは俺に任な、マスター!」