「今日、会合を開いたのは他でもない。芥ヒナコについてだ。」
小柄な少女ダヴィンチが、ミートルーム内で会合の開始を宣言する。
「マスターくんは直接話したから分かるとは思うが、データ通り彼女は潔癖症だ。」
「えぇ、潔癖症は本当のようですね。しかし、ダヴィンチちゃん。引っ掛かることがある。」
藤丸は敢えて席を立ちながら、発言する。
「潔癖症はデータ通りで、召喚されたクラスは予定のライダーではなくセイバー。恐らくは、こっちの気を惑わせようという作戦なのだろう。ですが、ご心配なく。あのセイバー対策はこちらのモードレッドが済ましている。」
「でかしたっ!ゲホっ!」
「無茶するなってオッサン。」
朗報に毒で蝕められた身体を忘れて、声を挙げたゴルドルフに落ち着くように諭すムニエル。
藤丸は自分からの報告を終えることを告げると席に着いた。
すると、次に手を挙げたのはマシュであった。
「あの、ダヴィンチちゃん。よろしいでしょうか?」
「良いよ、何?」
マシュはカルデアが壊滅されるよりも、人理の崩壊が発生するよりも前のAチームの話をした。
芥ヒナコは相手と触れ合わず、悪印象を抱かれない距離をAチームとの間に置いていた。
「周りからはよく本を読む女」と思われた。そこで、Aチームの仲間のうち一人だったマシュはヒナコに対してある違和感を覚えていた。マシュは、偶々グラスに映りこんだ彼女を見ていると「よく本読む女」というイメージとは違う顔を見せていた。女は手元の本で顔を隠しながら、目線だけはずっと他人を見つめていた。用心深く、何かに怯えるように。しばらくすると、また女は本を読み始めた。
「なるほど。察するに彼女は…人間に怯えていたのだろうね……」
「そうか……そういうことか……!」
マシュとダヴィンチの言葉で、藤丸はヒナコの隠していることにピンと来た。
「先輩?」
マシュが怪訝な顔で藤丸を見つめていると、藤丸は落ち着いた顔でマシュに告げた。
「マシュ。ある一つの仮定にたどり着いた…けどこれは飽くまでも仮説だ。鵜呑みにはしないでくれ。」
藤丸は推理で得た仮定を会合の場で告げようとした。
すると、警告を告げる音がシャドーボーダーに鳴り響いた。
「この感じ…またかっ!」
藤丸はモードレッドを連れ、芥ヒナコと前回戦闘を行った座標に急行した。
「ちょっと!増援の可能性考えた!?」
「増援など、サーヴァントと一緒に蹴散らしますっ!!」
藤丸は首にぶら下がった魔道書にも声をかける。
「アークさん!行くぞ!!」
「OK!マスター!Start your メイガス!!」
二人は息を合わせて、闘いの狼煙文句を詠唱する。
「「暴食<グラ>の書庫<アーカイブ>に接続!テーマを実行するっ!!」」
アークミネルバことアークさんは、小型のドラゴンメカへ変化し藤丸の腰に巻き付いた。
すると、藤丸の体を青と白を基本色とした鎧が包む。その鎧にも龍の意匠が施される。
「気を付けろ、セイバー。あのマスター、データ通りに武装したぞ。」
魔術礼装の一つである、オートマタを引き連れたセイバー・欄陵王とそのマスターである芥ヒナコが藤丸たちの前に立ちはだかる。
「そうか…アイツも王様って訳か。…上等だ。」
モードレッドが武者身震いをしていると、大きな巨体がモードレッドの隣に並び立つ。
「行くぞ!我ら『反逆三銃士』がー」
「盛り上がってるところ悪いんだけど、荊軻さんにそれを名乗らせないでくれって言われてるんだよね。」
「うっ」
巨体を持つ戦士・スパルタクスは余程、『反逆三銃士』の語呂を気に入っていたようだ。
「ふん、流血に興じ戦で戯れる類いの英霊か。あぁいう手合いは、虫唾が走る。」
そんなスパルタクスに、ヒナコが冷酷な眼を向ける。
「ほう…では、アンタの隣にいるセイバーはなんだね?……まさか、血を流さずにこちらを下す切り札とでも思っているのか?」
藤丸とヒナコの間に火花が散った。
ここで、先手を撃ったのはヒナコのほうだ。
「我が令呪を以て命ずる!宝具を展開しなさい!セイバー!!」
「……!」
「わが貌をそれほど望むか。──ならば見せよう、呪われし貌を! 儚く散るまで、唄い続けるために!」
欄陵王は、そのマスクを取るとそマスクに隠された美しい顔をまるで太陽の光を浴びた月のように輝かせる。
すると、オートマタたちは指揮が上がったかのようにあっという間に藤丸たちを囲み四方八方から攻撃を仕掛ける。
「よし、弱ってるフリもここまでだっ!散れっ!!」
飛びかかる無数の人形を粉々に粉砕する二つの影が、太陽を背景に飛び立った。
「なにっ!?」
藤丸は、欄陵王の宝具を受ける際に瞬時にモードレッドに兜を被るようにそしてスパルタクスは藤丸の魔術支援を受けるように指示した。
藤丸は薄い魔術遮断壁を作り、欄陵王の宝具を遮断した。
そして、ある程度弱ったフリをすればオートマタが一ヶ所に集中するのを見計らっていた。
「やぁぁぁ!」
「フンっっ!!」
「うぉぉぉ!!」
三人の戦士が、数多の軍と敵将に対して雄叫びを挙げる。
欄陵王のところへはモードレッドが猪突猛進に突っ込み、藤丸とスパルタクスが数多のオートマタを粉砕あるいは切断していく。そして、その戦士の死角をカバーするかのように牙を尖らせた白い暗殺者もオートマタを切り裂く。
作戦の失敗を見届けた芥ヒナコとそのサーヴァントは撤退を選択し、彼女らは主とも言える始皇帝に状況を報告する。
「…闘いは十分見させてもらった。そなたのサーヴァント単騎だけでは、勝ちに至らぬ。そうだな?」
始皇帝の尋問にヒナコはただ、申し訳無さそうに「はっ」とだけ返事をした。
「ならば、増援を遣わそう。とはいえ、雑兵を並べたところで埒が明かぬ…。今こそ、『項羽』を遣わすつもりだ。」
『項羽』、その名をヒナコは耳にすると慌てた様子で叫ぶ
「ちょっと待ってください!それは!!」
「あれは本来、未知なる脅威に対して出す手駒。今この状況において、咸陽で腐らせておくのも惜しい。では!項羽ゥ!起動ォォ!!」
そんなことなど知らんと言わんばかりに、始皇帝は『項羽』をヒナコの元へ合流するように仕向けた。
次回のFate/Grand Orderは!
「そう言えば、先輩。先程の仮説とは?」
「……芥ヒナコはな……文字通り人間じゃないかもしれない。」
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