でもよろしければ見てください!
「ちょっとそこのお二人さん!」
僕たちが戦闘に行こうとしていると、一人の男性プレイヤーが声をかけてきた。
「ねえキリト、これってもしかして………ナンパ?」
「いやいや男同士だしそんなことはない………あれ?本当に男かは分からないのか?悪いシキト、自信なくなって来た。」
「おいおい!初対面なのに随分な言い草だなあ!……まあいいや。あ、んでこのゲームの経験者っぽいお二人さんに頼みがあるんだけどよ………」
ん?なんだろ、経験者っぽいって言ってることだし多分あの事だと思うけど………
「ちょっとオレに戦闘をレクチャーしてくれ!」
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「ぬおっ……とりゃ………うひええっ!」
さっき僕たちに教えを請うてきた男性プレイヤー(クラインというらしい)が奇妙な声を上げながら振り回された剣は、すかすかっと空気だけを切った。
「ははは……、そうじゃないよ。重要なのは初動のモーションだ、クライン」
キリトがクラインに戦闘のコツを教えていると、そのクラインは立ち上がってこっちを向いて、情けない声を返してきた。
「ンなこと言ったってよぉ、キリト……あいつ動きやがるしよぉ」
「動くのは当たり前だ。………そうだ、シキトからもなにか言ってやってくれよ」
「えっ」
えっどうしよう、急に話を振られてもなー。……うーん、さっきから見ていてクラインの動きはあそこがおかしいんだよなぁ。言ったら直るかな?
「クライン、ここは、こうして……………そしてこうなるから……………こうできるわけ!………分かった?」
クラインは僕が言ったアドバイスに納得がいったようで、
「おう!サンキューな!今のでもう一回やってみるわ!」
と言ってくれた。
そしてクラインはすー、ふー、と深呼吸してから、剣を持ち上げて斬りかかると、今度こそ規定のモーションが認識されたみたいで、ゆらりと弧を描いた刃がオレンジ色に変わった。
「りゃあっ!」
その掛け声と同時に、さっきとは打って変わった滑らかな動きで、これまで闘っていた、青イノシシのHPを吹き飛ばした。(ちなみに今の技は《リーバー》というらしい)
「うおっしゃあああ!」
「やったねクライン!」
派手なガッツポーズを決めたクラインに僕が駆け寄り、賞賛の声を浴びせる。
そして二人でキリトも一緒にハイタッチしようと駆け寄ると、
どよーーん
こんな感じにキリトは落ち込んでいた(OTLって頭に浮かんだ僕は悪くないはず)。
「キ、キリトどうしたの?なにかあったの?」
「いや………シキトがアドバイスを言った瞬間にクラインが良くなっただろ?………よく考えると俺いらなかったんじゃないか?って思って」
「いやいや!今のはキリトが基本的なことを始めに教えてたからできたんだって!ね?クライン」
「おおう、そうだぜ!オレができたのはぜってぇキリトのおかげだって!」
僕とクラインでキリトを慰めていると、キリトは元気を取り戻したようで、「そ、そうだよな!」と叫んでいた。
そこから僕たちは雑談をしながら時間を過ごしていると、クラインが、「ピザの宅配が来るから一度落ちるわ!」と言ってログアウトしようとすると、クラインがこの世界を揺るがすような重大な事に気がついてしまった。
ログアウトボタンがないというクラインの言葉に僕たちは(なにをそんなバカな)と思いつつも一応確認してみると、僕たちのところにもなかった。
困惑を隠せないクラインにキリトがこれからどうなるか、と話していると、
リンゴーン、リンゴーン
僕はこの音を(なんとなく嫌な音だなあ)と感じていた。
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さっきのサウンドの後、《転移》によってログインしている全プレイヤーが《はじまりの街》に集められていた。
その多くの人が僕たちと同じようにログアウトボタンがないことに気付いているみたいで、苛立っていて、口々に不満を嘆いていた。
そして「あっ……上を見ろ!」って言うクラインの声につられて、僕も上を見ると、身長20メートルはありそうな真紅のフード付きのローブをまとった巨人が出現した。
その巨人は自分をこの世界を造った茅場晶彦だと名乗った上で、今起きていることの説明と、この世界のルールを説明してくれた。
曰く、ログアウトボタンがないのは仕様で、《ソードアートオンライン》本来の仕様であること。
曰く、今後、この城を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることはできないこと。
曰く、外部の人の手によって、ナーヴギアの停止または解除が試みられた場合、ナーヴギアから発する高出力マイクロウェーブが僕たちの脳を焼き、生命活動を停止させること。(キリトが言うには原理的には可能らしい)
曰く、プレイヤーの家族友人などが警告を無視してナーヴギアの強制解除を試みた例があり、その結果二百十三名が亡くなっている、ということ。
曰く、このゲームにおいてあらゆる蘇生手段は機能しなく、このゲームでヒットポイントがゼロになった瞬間、僕たちのアバターは永久に消滅し、同時に脳もナーヴギアによって破壊される、ということ。
曰く、僕たちがこの世界から解放されるには、この城の第百層まで辿り着いて、そこにいる最終ボスを倒さないといけないこと。その瞬間、生き残ったプレイヤー全員が安定にログアウトされる。
そして、この世界が唯一の現実である証拠を見せると言って、手鏡というアイテムを渡された。
(なんだこれ?)と思いつつ、その鏡を見ると、僕やキリトやクラインの周りを白い光に包まれて、僕の視界がホワイトアウトした。
そして、二、三秒して目を開けると、目の前には知らない男の人が二人立っていた。
「お前……誰?」
「おい………誰だよおめぇ」
その瞬間、僕はこのアイテムの意味を悟った。おそらくこのアイテムは強制的に現実の顔に戻すアイテムなんだろう。(ちなみに僕は現実の顔とほぼ一緒に作ったのであんまり関係ない)
その後キリトも分かったようで、冷静にこれからのことを僕たちに話してくれた。
これから生き残るためには、ひたすら自分を強化しなくてはならないこと。
そして、金とアイテムと経験値をより多く得ようとする人達によって、この《はじまりの街》周辺のフィールドは枯渇するだろうと。
だから、今のうちに次の村を拠点にした方がいいということ。
だから一緒に来い、とのこと。
しかし、クラインは他のゲームで友達だった人を置いてはいけないのでキリトとは一緒には行けない、と言った。
だから僕たちは気にせず次の村に行ってくれ、と言ってくれた。
「なら、ここで一度別れよう。………何かあったらメッセージ飛ばしてくれ」
とキリトは浮かない表情を浮かべて言った。
そしてクラインとの別れを済ませてこっちに向き直ると、
「シキト、俺と一緒に来てくれ、俺はお前一人なら安全に次の村まで守れる」
と言った。
僕はここでキリトに着いていけば安全に行けるのだろう。………でも
「………ごめん」
「……っ!なんでっ!」
「守るって言ったのは僕を対等と見てない証拠だよ。……僕は、守られるだけじゃなくて、君と対等な関係でいたいんだ!」
ここだけは譲れないんだ。………ごめんね、キリト。
「………そっか、じゃあ俺は、先に次の村へ行くよ」
キリトは僕に背を向けて歩き出そうとしている。僕はその背中に声をかけた。
「じゃあね、キリト。次はボス戦で会おう!」
「………ああ!待ってるからな!絶対に来いよ!」
「それとキリト、今の君には嫌な予感がする。くれぐれも気をつけてね」
「分かった、それじゃあな!」
こうして僕もキリトと別れた。少し名残惜しいけどこれで良かったんだ。
「さあ行くか」
こうして僕の冒険が始まった