ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 ~紋章のマレビト~   作:早起き三文

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第1話「光のお姫様」

  

「どうですか、シーザ殿?」

「だめだ、グランベルの城の中には見当たらない」

 

 シーザと呼ばれた若い男は、そう言いながら軽くその首を振る。

 

「もうすでに、城の外に出ているんじゃないのか?」

「そうかもしれません……」

「だとしたら、俺達の出る幕はないな、騎士リデール」

 

 両肩を竦めながらそう言い放つシーザ、彼に一つ恨めしげな視線を向けた後、リデールと呼ばれた騎士は自身の髪を軽く掻きながら。

 

「こうなれば、君達に新たなる命を与える必要があるかもしれんな」

 

 その言葉、それに対して今度はシーザの方がしかめ面をする。

 

「契約の範囲外だぞ、姫様のお守りは」

「だからといって、タダ飯をいつまでも食わす訳にはいかない」

「俺達だって、好きでここにいるわけでは……」

 

 

 

――――――

 

 

 

「ねえ、ラディ?」

「は、はい何ですかエリア様?」

「この地図」

 

 そう言いながら、エリアと呼ばれた少女、艶めく金の髪をその頭にと戴く娘は、懐から一枚の地図を取り出す。

 

「このまま南に行けば、本当にミレトスまで行けるのかしら?」

「さあ……」

「何よ、頼りないわね」

「大体、今ここがどこかすら……」

「ちょっと……!!」

 

 その確かに「頼りない」言葉に、少女は自身の左手に持っていたカンテラを少年へと強引に手渡しながら。

 

「しっかりしなさいよ!!」

「ご、ごめんなさい……」

「全く……」

 

 その間に器用にも取り出した杖でラディ少年の頭をコツンと叩きながら、再び地図にとその目を落とす。

 

「ほら、火を近づけて」

「は、はい」

「えーと、このまま進むとドズルの領地に入るから……」

 

 カラッ……

 

 夜の街道、宿場街に近いこの街道ではこの時刻であるというのに人通りが多い、エリア達のすぐ近くを一台の馬車が通りすぎた。その姿から遠くの国「イザーク」の者であると窺える。

 

「こっちね、今日はあそこに見える宿に」

「目が良いですねぇ、エリア様……」

「泊まりましょう、ラディ」

 

 そう言いながらラディ少年のその手を引くエリア、だがその時。

 

「へっ、へへ……」

 

 何か、人相が悪そうな男数人がエリア達を取り囲む。

 

「嬢ちゃん達、少しお小遣いをくれねぇか?」

「な、何ですの?」

「お小遣いだよ、お小遣い」

 

 その手をエリアのその細い肩に乗せようとした男、その男とエリアとの間に。

 

「何だよぅ?」

「どけよ、オッサン」

「お前でもいいぜ、小僧……?」

 

 細身の剣をスラリと抜いた、ラディ少年の姿が立ち塞がる。

 

「へっ、小僧がよ……」

「……」

 

 その男も剣を引き抜こうとしたらしいが、その剣が鞘から抜かれる前に。

 

 スゥ……

 

「て、てめえ……!!」

「消えな、あんたら」

 

 ラディの剣が男の喉にと、髪一つ分の隙間を残したまま突き付けられる。

 

「なめやがってよ!!」

 

 そのラディの剣の技にただならぬものを感じたのか、他の男達も懐から各々の得物を取り出す。

 

「エリア様……」

「はい」

 

 ラディの問いかけるような声にエリアは軽く頷きその手に持った杖、先端に白い宝玉を携えたその杖を低く構える。

 

「あん、どこかのシスターか?」

 

 髭面であるその男の声には答えず、エリアはその杖から。

 

 サァ……!!

 

「う、うわ!?」

 

 一本の抜き身の刃を放ち、その刀身でもって傍らにいた一人の男が手に構えていた短剣を叩き落とした。

 

「こ、こいつら!!」

「まだやる気かい、オッサン?」

「なめるな、小僧!!」

 

 にわかに強い殺気を放ち始めた男達、彼らがその得物をラディ達にと向ける、その直後に。

 

 キィン……!!

 

 斧を構えた男、彼の斧がその木製の根元からラディの剣によって一刀に両断される。

 

「引きな、オッサン達」

「ち、ちくしょう……!!」

 

 そのエリア、ラディの剣技に恐れをなしたのであろう、彼らを囲んでいた男達は恨めしげにエリア達を睨み付けながらも、一目散にその場から立ち去る。

 

「ハァ……」

「大丈夫ですか、エリア様?」

「こ、怖かった……」

「そりゃ、そうでしょう……」

 

 ラディにはその場で尻餅をついている彼女「エリア」がどういう経緯で剣を学んだのかは知らないが、一目見ただけでも「綺麗すぎる」剣技であることは解る。宮廷の剣なのだ。

 

「それでも、あれだけ出来れば上出来だよな……」

「起こしなさい、ラディ」

「は、はい……」

 

 その宮廷人の声、それにラディはまさしく脊髄反射で従ってしまう。もともとラディには彼女のようなタイプの人間が苦手という事もあるが。

 

「あの子に似ているからな……」

 

 それは、彼ラディが「元の世界」にいた頃に恋をした人の事である。

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