ファイアーエムブレム 聖戦の系譜 ~紋章のマレビト~ 作:早起き三文
グランベルの王都「バーハラ」を出発し、その南に位置するドズル領内を通過したエリア達はさらに南。
「明け方とはいえ、危ないですって……」
「うるさい、荷物をしっかりもって、ラディ」
「は、はい……」
シアルフィ公国を目指し、朝の街道を往く。
「あの、エリア様」
「何、ラディ?」
「イード砂漠って、一体何ですか?」
「あれ?」
その言葉を聞いたエリアは、背のリュックサックに掛けてある仕込み杖へとその手をやりながら、やや曇っている朝の空へと視線をやる。
「リデール辺りから聞いてなかったかしら?」
「聞いてません、何故俺達があそこ」
そこまで言い、ラディはその「砂漠」がある方向にと指を指したまま、その首を傾げる。
「ヴェルトマーでしたっけ、あの辺りにいつの間にかいたのかを」
「それは私にも解らない」
「俺達を見つけたアルヴィスという方は、すまない事をしたと言ってましたがね?」
「さあ……」
エリアにしてみても何故彼ら、シーザとラディの二人がこの世界へとやってきたのかは解らない。だがこの二人の現実味を帯びた「元の世界」の話から想像しても、彼らが嘘やでまかせを言っているとは思えない。
「まあ、考えても仕方がないのではなくて?」
「俺達には、待っている人が……」
そこまで言ったラディは、ふとそこで言葉を切り。
「誰だ、出てこい!!」
「へっ……!!」
シャ……
その腰の剣を引き抜きながら、前の岩の影から出てきた男達に向かって、威嚇の声を上げる。
「なかなか勘がするどいじゃねえかよ、小僧……」
「お前達は、確か昨日の……」
「あたぼうよ!!」
そう、薄汚い身なりをした男が地面にと唾を吐いたと同時に、ラディ達の背後からも、ろくに手入れもされていないような革鎧に身を包んだ者たちが、各々得物を構えながら、エリアとラディに迫る。
「こうやってみると、なかなかのべっぴんだな、嬢ちゃん」
「き、汚い目で私を見ないで!!」
「言ってくれるね、全く」
ラディの目の前の男、彼のその下卑た声に合わせるかのように野盗、そう野盗と思われる者達が一斉にからかいの声を上げる。
「売るところに持っていけば、それなりの値段になりそうだぜぇ?」
「こ、このケダモノ!!」
嫌悪感に満ちた表情を浮かべているエリア王女を尻目に、ラディは無言で「敵」の状態を確認する。
「前に三人、後ろにも三人……」
数が多い、いかにラディがまもなく「ソードマスター」になれそうな程のユニティを持とうとも、エリアを護っては上手く戦えるかどうかは解らない。
「ならば!!」
ザァ!!
その一刀で相手を切り伏せようとするラディの行動は、彼の直情的な部分でもあり、長所にも短所にもなりうる。
「甘ぇんだよ、小僧が!!」
「くっ!!」
だが、今回のそのラディの行動は裏目に出てしまったようだ。連続攻撃として出された二撃目もその大剣をもった男には防がれ。
「喰らえ!!」
「くそ!!」
反撃にと繰り出された、大剣の風圧を肌で感じながら、ラディ少年は上手く後ろへステップバックする。
キィン!!
そのラディの後ろではエリア王女が仕込み杖、レイピアをもってして短剣で襲いかかってきた男の一撃を防ぎつつ返す刃で二撃、追撃の剣を浴びせている光景が見えたが。
「おらぁ!!」
再びラディにと襲いかかる剣、今度は賊の二人からの同時攻撃だ。それもラディは巧く剣で捌いたはいいのだが、反撃の糸口が見つからない。
「ぐぅあ!!」
「次の無礼者、来なさい!!」
「ちぃ!!」
正直、今の状態ではエリア王女の方が良く奮戦している。
「ちょこまかと!!」
だが、相手の強さで言えばそのエリア王女よりもラディが相手をしている大剣使いの方が手強い様子だ。エリアがレイピアで自分の身を守っている、出来ている最中でどうにかしてラディは今の自分の相手達を倒そうとしているが。
「く、くそ!!」
一人の斧使いをその剣で仕留めたはいいが、やはり大剣使いが振るう残撃が手ごわい、迂闊に細身の剣で受けるとそのラディの得物が折れるかもしれない。その時。
「ラ、ラディ!!」
「おーと、兄ちゃん……」
いつの間にか剣を落とされたのであろう、無手のエリア王女をその背から羽交い締めにしている男が、エリアにと顔を向けたラディに剣を捨てるように言い放つ。
「……ふん!!」
だが、ラディはその剣を捨てずに構え。
「おい、この女の命が惜しくないのか!?」
「大丈夫さ……」
ビュウ……!!
何処ともなく飛来する短槍、それがエリアを羽交い締めにしていた男の肩を貫き。
「がぁ!?」
「今だ、行けラディ!!」
それと同時に投げ付けられた短剣が、先程までラディが対峙していた大剣使いを襲う。
「く、くそ!!」
その大剣使いの呻き声をよそに、エリア達の背後から猛烈な勢いで迫るシーザと騎士リデール、彼らの剣が瞬く間に野盗二人を切り捨てる。
「これで!!」
「ぐほぅ!!」
その「仲間」が一瞬のうちにいなくなった残りの野盗、その内の大剣使いがあわてふためいた隙に、ラディはその剣を男の胸にと突き立てた。
――――――
「解りました、エリア王女」
結局日が高くなるまでリデールはエリアを説得しようとしたが、どうやら途中で根尽きたらしい。
「しかし、これより私が供をすることは許してください」
「わかったわよ、リデール……」
わかった、と言っているわりにはエリア王女の表情は不機嫌そのものであり。
「結局俺も行くのか、騎士リデール?」
「当たり前だ、シーザ殿」
先程この場所を通りすがった巡察騎兵と野盗の後始末について話し合っていた、シーザの顔も険しい。
「ラディ殿はそれなりの腕であるが、彼一人に王女を任せられる訳がない」
そのハッキリとしたリデールの口調、それに対してはラディは苦笑いをするしかない。
「まずは、シアルフィです」
「シグルド公子に会うのですね、リデール?」
「パイロン卿、シグルド殿の御父上への挨拶が先ですよ?」
「解っていますよ、はいはい……」
シーザとラディが聴いた話によると、グランベル傘下のシアルフィ公国当主であるパイロン卿と、彼の息子シグルド公子はグランベル王国全体でも五指に数えられる程の腕前らしい。リデールはその彼らの力を借りようとしているのだ。
「シグルド公子、早く御会いしたいわ」
「ふん……」
「何よ、ラディ?」
「別に、何でも無いです……」
だが、ラディにしてみれば好きな女性と良く似ているエリア王女が、その頬を赤らめる程のシグルド公子とやらに何か敵愾心を感じてしまう。
「まだ、会った事もないのにな……」
それが彼、ラディ少年の若い所であろう。
――――――
「マリクル王子」
「どうした、クリス?」
「カタリナが」
風を切るように鋭い、鋭利な刃を振るっていたマリクル王子は、そのクリスと呼ばれた青年の言葉に剣を振るう手を止め。
「何か、このイザークで怪しい動きがあると」
「そういう事が解るのか、そのカタリナとやらは?」
「ええ」
クリスは頷きつつ、その自身の青色の髪へとその手を撫で付け。
「彼女は、この手の事に詳しいので……」
「そうか」
「少し、仲間の元へと行ってきます」
「ああ……」
少し早足でその場を立ち去る。残されたイザーク王国王子は。
「剣の力で、全てを解決出来れば良いのだがな……」
自嘲ぎみにそう呟いた後、剣の国の王子のみが扱う事が出来る宝剣「バルムンク」による素振りを再開する。
――――――
[キャラクター・データ]
エリア/プリンセス
Lv/5
HP/27
力/6
魔力/5
技/12
素早さ/7
運/4
守備/6
魔法防御/6
[武器レベル]
剣/B
杖/B
[神族の血]
ナーガ/傍系
ブラギ/傍系
[スキル]
追撃
祈り
カリスマ
[装備]
レイピア
ライブの杖