GGOにおける戦闘がリアルになった場合について 作:@Finn
腹に響く轟音が拡散する。
「右に1ミル、上に2ミルだ。風向、東から秒速13m。敵は静止。」
「了解。」
「調節完了。10カウント後に攻撃する。」
「了解。」
ドゥウウンン
肩を叩く反動。数秒でターゲットに着弾し脚が千切れる。
「タンゴダウン。」
「こちらでも確認した。任務完了。帰投する。」
「了解。」
ここは中東戦線の砂漠だ。
しかしまさかゲームをするために勉強するなど考えていなかった。
スナイパーライフルには演算機能などを搭載する予定だったらしいのだがマップデータがリアルすぎて搭載するとなると容量が足りなくなることが判明。代わりに弾道計算アプリを搭載した情報端末が配布された。
しかしこのアプリ、米軍採用モデルをそのまま搭載しているので全文英語で翻訳ソフトはない。
更に、特殊武器(対空機関砲など)や車両のマニュアルも英語なのでそれらを理解できなければ使いこなすことなど不可能である。
多国籍の人間がごちゃまぜなゲームの仕様上英語は必須。日本製品とは思えない劣悪なサービスである。
開発企業の言い訳を代弁しておくと
「我々は世界各地に展開する国際企業です。社内では英語が公用語となっておりゲームも基本言語が英語となっています。また、ゲームそのものに時間と予算を費やしすぎたので翻訳はチュートリアルとごく一部のサービスのみとなってしまいました。現在パッチを開発中です。」
GGOをプレイできるのはちゃんと英語を勉強していて基本的な数学ができる人間のみとなってしまったのだ。
デスゲームになった時点でいっぱいいっぱいなのに鬼畜すぎである。
リスポーンできるのにデスゲームとはおかしいと思っただろう。私もそう思っていた。しかし体験していてわかった。
痛みがないとはいえ凄惨な死を繰り返して正常な精神状態を保てるわけがない。精神が耐えきれなくなったとき、私達は死ぬのだろう。
この前リスポーン地点でみた人々の姿が目の裏に焼き付いている。
光を失った瞳、ピクリとも動かない身体。
あれが私達の「死」なのだと思い知った。
ああなるのを防ぐためには死なないことが最も単純にして効果的だ。
プレイヤーはその思考に行き着いた。
そうなるとゲーム特有の無謀な突撃といった行動は一気に減った。ひたすら遠距離から撃ちまくり砲弾を浴びせる。
ヨーロッパでは第一次世界大戦と同様の事態に陥った。しかし兵器は現在と同様である。
70年以上進んだテクノロジーの塊、戦車を使った電撃戦が実施され何らかの条件を達成したのかロシア帝国では革命が起こり西部前線はドイツの勝利となった。
だが中東では違う。
広大な乾燥地域で互いの補給を賭けて資源を奪い合う熾烈にして苛烈な戦いが繰り広げられている。
終わりの見えない戦車での殴り合い。レオパルド2とルクレールの殴り合いだ。ソ連製兵器も入り混じり忠実同様、紛争地域と化している。正規軍とテロリストやゲリラのNPC。なぜか始まった戦争ビジネス。
アラビア半島全域が激戦区だ。あらゆる場所で砲弾が飛び交い戦車が駆け回る。襲いかかる対戦車ミサイル。牙を向くIED、流出する武器。激増するテロリストNPC。
宗教まで絡むはてなき戦い。もはや我慢比べである。