雪風の少女と北の島国   作:志真 文

4 / 5
久々の投稿のわりに、短いです。

タイトルは仮のものです。
いいのが思いついたら変更します。


第3話 静かな決意と、爆発と。

 とりあえず移動しましょ、というキュルケの言葉に従い、三人と一匹は歩き出した。

 

 向かう先は、あの大きな建物だ。

 どうやらあそこが『トリステイン魔法学院』とやららしい。

 

「『フライ』で飛んで行った方が早いけど、私のサラマンダーとアイス君も一緒だものね。さすがに抱えて飛べないわ」

 

 いつの間にやら、キュルケはアイスランドを愛称で呼んでいた。

 それは別に構わないのだが。

 

「飛ぶ…って、空を? さっき飛んで行った子みたいに?」

 

 先程、猫を抱えて飛んで行った少年を思い出す。

 あれは『フライ』と呼ぶ魔法(?)らしい。

 そのことを、自分の知識の中に書き足しておく。

 

「そりゃあ、メイジは飛ぶものだもの」

 

 ごく当然のことのように、キュルケは言う。

 どうやら、メイジとはここでは当たり前で、重要なものらしい。

 

「メイジ、って何」

 

 気になる単語が出てきたので、アイスランドは尋ねてみた。

 語感から、なんとなく魔法使いのようなものなのだろうと推測は出来るが、自分の持つイメージと『メイジ』が、同じものであるかは分からない。

 だからこその質問だったのだが、キュルケはもちろん、今まで表情を動かさなかったタバサまでもが、驚いた顔でアイスランドを凝視した。

 

 

「メイジを、知らない?」

 

「ちょっとアイスくん、あなた何処から来たの?」

 

 

 二人の反応は、アイスランドにとっては久々のことだった。

 

 少し身体が成長して、兄に連れられ大陸へと足を向けるようになった頃に、向けられた周囲からの反応。

 みんな知っていて当然のことを知らない、世間知らずを見る目。

 

「何? そんなにいっぱいいるの?」

 

 アイスランドにとっての『魔法使い』のイメージとは、数が少なく表舞台には出ない魔法を使える人間、というものだが、ここでは違うのだろうか?

 しかし返ってきた答えは、彼の予想の斜め上を行っていた。

 

「いっぱいも何も…。メイジは貴族と同義よ。王族だってもちろんメイジ、平民だって貴族の魔法の恩恵を受けているのよ。それなのに知らないなんて…。あなた、辺境の山奥にでも住んでいたの?」

 

「貴族…」

 

 生まれてから今まで、貴族という社会階級が存在しなかったアイスランドには、いまいちピンとこなかったが、この世界において『魔法』というものが、社会的強者の重要なステータスとなっていることは理解できた。

 

「自分のことは後で話す。……僕も、君たちに聞きたいことが沢山あるし」

 

 

 この世界のこと。

 この国のこと。

 メイジのこと。

 タバサとキュルケのこと。

 この場所のこと。

 

 

 ――そして何より、帰る方法。

 

 

 アイスランドは、国だ。

 国としては若輩者にカテゴライズされ、外見も少年の姿だが――それでも、国として生まれた責任がある。

 帰れないなんて、言わせない。信じない。

 だって、何よりも大切な国民たちや兄たちが待っているのだから。

 

「…そう。じゃあ、行き先を変更してタバサの部屋に行きましょ」

 

 僅かに重くなった空気を打ち消すためか、キュルケが明るい声を上げた。

 

「サボるの?」

 

「いいじゃない、行かなくても平気よ。使い魔とのコミュニケーションの取り方とか心構えとか、人を召喚したタバサには必要ないでしょ?」

 

 会話が出来るんだもの、とキュルケは茶目っ気たっぷりに言った。

 タバサは堂々とサボリを宣言するキュルケに、無表情ながらどこか呆れたような視線を送ったが、やがて諦めたように頷く。

 

「じゃあ、さっさと――」

 

 立ち止まっていた二人に痺れを切らして、アイスランドが二人を促そうとした、その時。

 

 

ド――ン!!

 

 

 背後から響く盛大な爆発音が、辺りの空気を振るわせた。

 

「うわっ!? ……え、何?」

 

 慌ててアイスランドが振り返ると、自分達のいた輪の中央で、大量の砂煙が上がっていた。

 大勢の人間の声が聞こえるが、何を言っているのかは、ここからでは聞き取れない。

 笑い声が大半を占めているので、深刻な状況ではなさそうだが……。

 

「ああ、もうルイズの番なのね」

 

 大したことじゃないと言わんばかりに、キュルケが軽く肩を竦めた。

 

「いつものこと」

 

 タバサも、眉一つ動かさないまま、淡々とそれだけを言った。

 そんな二人の様子に、アイスランドはますます困惑する。

 

「いつものことって……、大丈夫なの? 結構大きな爆…」

 

 言い終わらない内に、再び爆発。

 声をかき消すその大音量に、思わずアイスランドは肩を竦ませる。

 

「他のみんなと同じように見学したい所だけど、長くなりそうだし、明日の楽しみにとっておきましょ。それじゃ、改めて出発~」

 

 どこか面白そうに爆心地を一瞥すると、キュルケは楽しそうに二人を先導して歩き始めた。

 その間にも、爆発音。

 

「……いいの?」

 

「いいの」

 

 改めて隣のタバサに確認してみれば、短い答えが返ってきただけだった。

 

 この世界は、思った以上に物騒なのかもしれない。

 未知のこの世界に、漠然とした不安を感じたアイスランドであった。

 

 

 

 

 その謎の爆発はしばらくの間止むことはなく、ようやく聞こえなくなったのは、三人が校舎に辿り着いた頃だった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。